研修1日目 2月22日(木)                             社楽の会へ    


13:40〜14:40

文科省講義「教育改革の推進」
        初等中等局長 主任視学官 田中孝一氏

 この時間は研修の土俵づくり。現在の教育改革の状況を広く浅めに話したい。
 中教審は、昨夜、初中分科会、制度分科会が合同で開かれた。3つの法案の改正について文科省がまとめ、委員から意見を聞いた。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/kaisai/07022004.htm 
25日は、朝から夜まで、終日で行う。このように3月はじめまでに3日間終日で行う。通常は1回2時間なので、いかに緊急かが分かる。 
 制度の改正が中心になって、学校や子どもから遠い話に聞こえるかもしれない。しかし、制度の改正は、学校がよりよくなるために行うものだ。これにより教師が授業をやりやすくなる。子どもたちの成長のために行っているととらえてほしい。
 国は、制度や状況を整えるのが仕事。それを受けて、都道府県、市町村教委がより具体的に決める。それぞれの役割があって、学校があって、先生がいて、子どもがいる。
 今朝の朝刊には、審議について報道もあった。ぜひこうした報道や、HPを見て、教育改革のプロセスに興味を持ってほしい。
 いずれは先生方は指導要領の出来上がったものを見ると思うが、しかし、突然できるわけではない。プロセスに参加する気持ちで、フォローしてほしい。そうすると、奥行きを持って受け止められる。
 それぞれの段階での審議、プロセスすに参加することの意義を忘れないでほしい。幸い、情報通信がさかんになり、公開が原則の時代だ。私は平成8年から文部省にいる。当時は「生きる力」の時代。その頃に比べると、現在は基本的にオープン。審議の予告や結果を毎回公表する。配布資料も傍聴者にあげている。資料はHPにもアップするし議事録も出ている。以前は、マスコミを通じて、間接的に知るしかなかった。今は、マスコミより早く生の資料に接することができる。検討のプロセスを知ることは理解を立体的にする。結果だけを知ること以上に、仕事のためになる。
 
1 教育基本法の改正について
 @ 教育基本法の概要
 A 教育基本法の施行について (18文科総第170号)
 B 改正前後の教育基本法の比較
 これらはすべて公開している。http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/index.htm 
 マスコミ報道は、愛国心に関するものが多かった。Bの資料で比較すると、新しいものが多く、生涯学習、特別支援教育など新設もあれば、男女共学のように消えたものがある。大学,私立学校、家庭教育、幼児教育、教育振興計画も増えた。
 昨年4月28日に提案し、継続審議、臨時国会で可決、即日施行した。これは、平成12年の教育国民会議設置から端を発している。中教審に平成13年に諮問し、15年に答申、その後与党における検討をしている。これだけの期間と多くの審議の回数をかけて検討している。
 基本法ができると、5年間のうちに基本計画を策定する。これは国としての約束事である。法案の改正と、基本計画の策定は別ものではなく、策定はこれからゆっくりと動き出す。行政は8月末までに予算要求を具体的に考えないと次の年度にできない。12月の半ば以降にそれまでの予算折衝がまとまり、次の通常国会で審議し、3月までに通す。期限があり、先の先を見通して動く。
 
2 国と地方の役割、教育委員会制度について
 教育基本法第5条第3項に「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。」とある。
 第16条には、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」とある。
 いじめのときも、責任が問題になった。この16条は続きがある。
 第2項 国は、…
 第3項 地方公共団体は、…
  と書き分けられている。
 教育委員会の制度をどうするか。地教行法の改正も大きな話題だ。再生会議では教育委員会の機能の重視を言っているが、実際には指導主事がいない教委もある。これは地教行法に必ずおけと書いていないからだ。
 また小さいと、機能を果たさない。だから複数の市町村でつくろうという話もある。事務局の規模を大きくして、指導主事を確保しようという動きも必要だ。
 今、再生会議では、教委改革を強く主張している。
 中教審でも、数の問題、公選制、任命性、などと併せて議論されている。議論の推移を見守っていただきたい。
 
3 学校評価について
 H14の学校設置基準(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/04/020427.htm )で自己評価、外部評価をするようにした。しかし、実際の公表は、まだ半分もやっていない。学校教育の充実、信頼を得るという点では、これらの評価を的確に行い、外部評価委員会をつくって評価してほしいと、ガイドラインをつくった。
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/03/06032817.htm 
 これに基づき、10校ずつ、モデル校をつくった。他には、第三者評価も行っている。全国で144校。自己評価、外部評価、第三者評価が3本の柱になる。
 先生が行うのが自己評価。外部評価は、その自己評価を中心に、地域の人が評価をする。
第三者評価は、まったく関わりのない専門家が行う。視学官が中心となって、全国を回って、実際に第三者評価を行った。来年度もこの動きを広げたい。
 4月24日には全国学力・学習状況調査がある。予備調査を行い、問題も公表した。
 そのための勉強をする必要がない。知識に関する問題と活用に関する問題が分けて出る。結果は、学校に返し、個人に返すので、指導改善に役立ててほしい。
 
4 不適格教員について
 一部いることは確かだ。認定のシステムをつくるとか、研修のシステムをつくるなど取り組みたい。17年度は500人ちょっとだった。
 
5 未履修問題について
 小中の指導要領は基本的に必修なので未履修は考えにくい。そもそも学習指導要領は何なのか?議会制民主主義の日本なので、議会で決めたことは、全員で決めたことになる。
法的に決められたものになる。学習指導要領は、法律に基づいて、国が納税者に対して、学校教育について約束をしたものだ。そして、教育委員会、学校はこれを実施する役割を持っている。
 高校で履修科目が定められ、時間が定められていればしなければならない。それをやっていないのなら、責任を果たしていないことになる。
 
6 いじめ・自殺問題
 資料として10月の通知(18文科初第711号)、2月(18文科第1019号)の通知がある。
10月;チェックポイントを見てほしい。
2月;出席停止、懲戒·体罰について理解してほしい。
 
7 認定子ども園について
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/06040515/06062708/002.htm 
認定子ども園  パンフレット
 http://gimu.oita-ed.jp/gimusido-18/homepagegimu/youjikyouiku/nintei/pamphlet.pdf 
 
8 学校教育法等の一部を改正する法律の概要
 現在の盲・聾(ろう)・養護学校の区分をなくし特別支援学校とし、特別支援学校の教員の免許状を改めるとともに、小中学校等において特別支援教育を推進するための規定を法律上に位置づけるもの。
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/06061611.htm 
 
9 平成19年度地方財政措置予定額の状況
 地方単独事業分;地方交付税
  図書、コンピュータ、特別支援教育支援員など
 国庫補助事業地方負担分
  放課後子どもプラン、教育相談体制の充実強化

☆★☆ コメント ☆★☆
 現在の日本の教育の課題を象徴するような60分だった。戦後60年の教育の流れを思い返しても、確かに大きな課題がある。
一つは、何と言っても教育基本法の改正だ。戦後施行されて以来の改正である。しかも理念法だった旧法に比べると、基本法としての性格が明確になった。今後の基本計画の策定を求めており、これにより教育行政のビジョンが具体的になる。
二つ目は、学校評価。全国学力·学習状況調査も含めて、成果の検証と公表が求められていることだ。企業マネジメントの発想で改革をするゆえんである。
三つ目は不適格教員の問題。公務員制度の根本的な改革である。担任を持たせられない教員、必ずトラブルを起こす教員には、より合った道へ変わってもらう方通い。
四つ目は未履修問題。個人的には制度も悪いと思う。受験教科と必修教科の連関がない。
主要教科の必修は、たとえばセンター試験で必修にすればよい。配転比率に傾斜をつけて、学部の質に対応すればいい。
受験生の負担?普通に学んでいる高校生なら当たり前にできる問題だけ出せばよい。
いじめの問題。あれはマスコミが誘引したことをきちっと押さえておかないと、またあの愚行を繰り返しかねない。また、文科大臣直訴し公表したことも総括してほしい。以後の公表を控えたのなら、やはりはじめから出すべきではなかった。
就学前の子どもの教育に関する問題。認定子ども園だ。これは、幼保一元化、さらには義務教育年齢の引き下げもふまえた大きな問題に発展する。
学校教育法等の一部を改正する法律。特別支援教育は、国連障害者権利条約にからむ国際的な問題だ。採択のために条件整備をしなくてはならない。