7月27日(水)
お葬式
何だ、この音は!
朝の4時にいきなり起こされた。
音楽やドラを鳴らし、所々爆竹を鳴らしながら、30台あまりの車がゆっくり隊列を作って進んでいる。初めは新種の暴走族かと思ったが、葬式のお祝いだそうである。中国では、70歳以上で亡くなると、天寿を全うしたということで、お祝いをする。それも縁起の良い時間に(たとえ夜中でも)お祝いの行列をする。これもお国柄か…。日本では考えられない。
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ホテル前の前夜のショー | 景電賓館 | ショーが行われた場所 | ここを葬式の列が… |
景泰県から古浪県へ
なんと、我々のバスをパトカーが先導してくれることになった。それだけでも、いかに今回の一行が、中国側にとって重要な視察団であるかがわかる。
車窓から見えるのは、延々と続く沙漠の風景。日本では決してみることができない光景だ。
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先導はパトカー | 車窓風景は1時間以上ひたすら沙漠 |
Mさんのお話
バスの中では、JBICのMさんからお話を聞くことができた。一部を紹介したい。
ODAについて 節水灌漑のプロジェクト 先日は、発電所の日本製タービンがいいと感激していた。円借款のメリットとして、民間投資の触媒効果がある。円借款によりインフラが整備されると民間投資が促進される。 |
植林地域に入る。文字通りの秘境である。命の感じがしない。
「貧困を解消するためには道路を造れ」という言葉があるそうである。『日本列島改造論』を思い出してしまうが、確かにこのような秘境では、道路がなくては話にならない。インフラ整備の重要性はよく分かる。
貧困者とは、一人1日1ドル以下で生活する人のことを言うのが国際基準である。
この基準に当てはめると、中国の貧困は一人当たり1年で800元以下で生活する人になり、実に1億3千万人いる。
中国の基準では600元を貧困としているが、それでも3000万人いる。その多くが、こうした内陸部にいる。
沙漠の何が問題か?動くことが問題なのである。せっかく開発しても、沙漠が動くと埋まってしまう。草方格という、砂漠を固定する技術がある。藁を、1m四方の方眼で埋めていくのである。
また、植林の敵は羊や山羊の放牧である。そうした放牧で生活している人に生活の場を与えてこそ解決になる。そこで、円借款ではお金になるもの、たとえばブドウなどを植える。それで収益を上げて借金を返す。
無償資金援助では、お金にならないもの、すなわち利益の上がらないものを対象にする。
もともと遊牧民を潅漑設備に定住化させることで、草を生やすことを、ここではやっているそうだ。
バスの中で聞いた話
葬式はよく6時前に行う。70歳以降になくなるとお祝いをする。 甘粛省はゴビなどの沙漠、オアシス、東は黄土高原がある厳しい自然環境である。多くは人が住むには厳しく、年間降水量も年に100ミリ、蒸発量は1000ミリを越える。 黄色い大地 十年前はもっとひどかった。1999年西部大開発がはじまり改善が始まった。植林、植草がふえ、雨も増えた。 かつてはここも草原だった。 匈奴がいたところで、漢王朝と長年の戦争が続いていた。気候の変化、戦争により自然が破壊された。 三国志の舞台もこの甘粛省。泣いて馬謖を斬るのもここが舞台。馬超、董卓もここの出身。 諸葛孔明の後継者も甘粛省の出身である。孔明は7回 魏と戦争をしたが、甘粛省を通る。李白もここの出身だ。 歴史上いろいろなことが起きたところだが、経済発展では立ち後れている。省のGDPは1062億人民元しかない。蘇州の街ひとつにも及ばない。農民の収入は年3000元(4万円ほど)しかない。中国で3番目に貧しい。 産業は農業がメインで、9割が農業に従事している。しかし、農業に適する面積は15%しかない。400万人が絶対貧困状態。年625元以下の収入しかない。国連の基準では、1千万人以上が貧困にあたる。 14の市と州、2つの州は少数民族の自治区で回族など。86の県の中の68が財政赤字 地方公務員の給料も払えないので、中央政府から借りて払っている。これは工業が発達していないからだ。鉱業もあるが農民は潤わないので、農民の収入を増やすことが大事だ。小さなまちを作ることが必要となる。 西部大開発は国債に頼っているほか、世界銀行やアジア銀行、円借款に頼っている。円借款の地位は大きい。今、甘粛省の円借款は817億円になる。道路、生態系の保護、灌漑など。生態系改善のプロジェクトで124億円使っている。政府が主導権を握って行っている。 黄砂は日本へ飛んでいる。木を植えることで解消に近づけたい。古浪県はもともと沙漠だったところ。これから案内する所は一番すばらしいわけではないが見てほしい。日本のお金は無駄遣いされていない。 |
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車窓からは沙漠と山羊の放牧の風景が見える。民家にはらくだやろばが飼われている。一カ所、高い土塁があった。万里の長城である。
左写真左端中央部から建物に向かって伸びている。わかるかな?
甘粛省水源管理・砂漠化防止事業視察(有償資金協力)
まずは、データを見てみよう。
5 甘粛省植林植草事業(有償資金協力) |
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熱烈歓迎 | セレモニー | 円借款を知らせる看板 | みんなで植林 |
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草方格 | 日本のローンで… | 大用トイレ | ブドウ園 |
ここでも熱烈歓迎。多くのスタッフが出迎えてくれた。県のトップクラスの人の挨拶の後、参加者で植林を行った。乾燥に強いニレの木を植えた。すぐに水を与えるが、次の灌水は1ヶ月後だそうだ。
地球的視野で見れば、地球温暖化防止、人口増加に備えるためにも、沙漠の緑化は全人類的な課題である。沙漠化の原因である遊牧民による放牧を抑えるためにも、灌漑と緑化、農業への転業を促進しなければならない。そこに使われる円借款は、無駄ではない。草一つはえていなかった沙漠だが、「草方格」により低木が根付き始めている。
※ 「草方格」とは、沙漠が移動しないようにするための技術。1m四方の方眼に藁を埋め込む。
問題は灌水で、人間が1本1本手作業で水をやるそうだ。周囲は有針鉄線がはってある。山羊の侵入を防ぐためである。
彼らは「沙漠退治」と言っていた。このまま順調に進めば、あと3年ほどで流動する沙漠はなくなるそうである。年100ミリの降水があるので、1年たてば根付き、自然の雨で育つようになる。
ブドウ園がある。ワインを作るためのもので、水は地下水、井戸を掘っている
時折見かけたパイプラインは灌漑用の水が流れている。
沙漠がこれだけ緑化されれば大したものだ
※ 造林と育林 : 造林は植林をして、育林は保護して自然植物を育てること。
このあたりも昔は畑だったが、沙漠流動化のために沙漠で埋まってしまった。昔は、生態系の保護に対する関心が薄かったため。水は地下水に頼っている。
1ヘクタールの緑化のコストは年間4500元。1日60人の仕事量である。これには人件費、苗代もはいっている。毎日気温は36度以上あったが、昨日の雨で30度ぐらいに下がっている。とてもラッキーだそうだ。
村人は全部移民。環境が改善され、人口が増えているし、生活水準も上がっている。移民前は年間収入400から500元だった人たちが、 ここでは2000元の収入が得られる。前は天気任せの農業だった。南の丘陵地区からの移民が多い。
ブドウ園に続く道の両側はポプラ並木。ブドウ園1ヘクタールあたり5万2千元の投資で4500から5000元の収入が得られる。ただ、いきなりは無理で、まず小麦を作って土壌を改良してからブドウを作った。
その後、スイカをいただく。そして食事。豪華なメニューだ。この歓迎ぶり、そして至る所にある、日本からお金を借りて作ったという看板は、日本に対する素直な感謝の表れだろう。
昨日のホテル
景泰川の街では最高級のホテルだったのだろう。しかし、今朝はお湯が出ないばかりか水さえちょろちょろ。もちろんドライヤー、冷蔵庫はない。ただ、テーブルにスイカと桃がおいてある。このサービスはうれしい。
今日の感想
植林植草案件は、とても印象に残った。
地球の沙漠化防止は、なにも沙漠をもつ国だけの問題ではない。人類全体の課題だ。沙漠は移動し、どんどん耕地を浸食していく。沙漠化による耕地の減少は、食糧不足の大きな原因になりうる。
また、沙漠緑化は、大気の循環に影響を与え、降水量を増やす働きをする。二酸化炭素削減の役割も果たす。
中国の緑化は、黄砂の防止など、日本に直接的影響がある。しかし何より、中国の内政の安定は東アジア全体の安定のために必至であり、特に1億3千万人と言われる最貧困者層の減少は人道上も必要だ。ここにODAが使われることは、大半の日本人の理解を得ることができるのではないか。
万里の長城の一部を発見
尋ねたところ 明の時代のものだそうだ。東は山海関から伸びており、ここは西の端に近い。昔から遊牧民族が活躍し、もともと遊牧民族の人の土地。漢民族は流刑で来た人が多い。社会科教師から見ると大感激ものの史跡だが、何も説明もなく通り過ぎるのがいかにも中国らしい。
Kさんより
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空から
18:00発CA1222便
天候に恵まれ、中国の大地をしっかりと見ることができた。赤茶けた山々の間を流れる黄河の流れ。それにしても木がない。
命を感じない。これを見ると、この2日間見てきた、沙漠に命を与える仕事は人類にとって貴重だと思う。
北京に近づくと、万里の長城を見ることができた。写真に収めることができなかったのが残念。
北京に到着。京倫飯店に向かう。
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CA1222便 | 黄河の流れ |