第2学年1組 社会科学習指導案          社楽へ
                           第5時限 2の1教室  指導者 土井 謙次(平成7年度実践)
 
1 単 元  日本の中央部
2 立案の立場
   本校では、「学ぶ意欲を引き出し、生徒が主体的に学習に取り組むことのできる授業」の研究に取り組んでいる。学習意欲を高め、学習方法を習得させることが、生涯にわたって学び続けようとする人間の育成につながると考えられるからである。
   このような、主体的に学ぶ意志と能力を持った生徒とは、社会科では次の生徒像が考えられる。
  @ 知的好奇心に満ち、見近な事象に対して常に問題意識を持つ    …意志        A 気づいた問題に対して、意欲的に立ち向かう              …意志 
  B 新たな問題に対しても、いろいろな方法を駆使して工夫して解決する… 能力
               ↓
  C 学習したことを生活に生かし、社会にはたらきかける 
   身近な事象から生じた疑問を自分の力で解決した満足感と、生活に生かすことができた成就感が、さらに次の学習意欲を育てる。
   そこで、日頃から、つぎのことを心がけて授業を行っている。
   ・ 身近な事象から生徒が自分で課題を作り、自分の力で解決する授業
   ・ 課題を解決する方法を習得できる授業
   ・ 自分で考える活動をくり返すことで、思考力・判断力を育てることができる授業
   本単元、「日本の中央部」は、自らが生活する地域であり、生徒が課題を見つけ、解決する活動には、最もふさわしい単元である。この身近な地域を学習することによって、生徒自身に社会事象に関心を持たせ、問題意識を持ち、課題を見つけることができるようになってほしいと考えている。ここでは、古都奈良・京都、経済・工業生産の中心地である阪神・中京・京浜地域、日本の屋根といわれる日本アルプス、世界一の豪雪地帯である日本海沿岸など、変化に富んだ地形・気候と、過去・現在にわたって日本を政治的・経済的に支えてきた地域を扱う。そのため、こうした比較的身近な地域から、日本全体を大観させたい。
   さらに、日本の産業の様子を、概念的にとらえるのではなく、働く人の生の声を聞いたり、具体的な資料を豊富に用いるなどの工夫により、社会的事象を具体的にとらえることができるようにしたいと考えている。
   本学級の生徒は、初めは調査活動にとまどっていたようだが、調査の方法を習得するにつれて、行動範囲も広がっていった。夏休みには、手紙やインターネット・電話での問い合わせ、現地での直接取材・直接体験など、幅広い積極的な活動が見られた。こうした調査活動の成果を、授業で生かし、成就感を与えることで、次の学習意欲へつながるように支援したい。
   また、本学級の生徒は、班での話し合い学習を比較的スムーズに行うことができる。今後は、@ 一人一人が自分の考えを持ったうえで話し合いに参加する、A 全員が話し合いに参加し、満足感を持つ、の2点を目標に、話し合いの場を設定していきたい。
 
3 進路指導との関連
学習指導の重点目標1 @ 課題解決学習  
 4月以来、いろいろな課題解決の方法、まとめ方を指導してきた。課題の解決も文献だけに頼ることなく、新聞・テレビや、手紙・パソコン通信など、できるだけ生の声、またはそれに近い方法で裏付けるように指導している。また、地理の学習では実際に、そこで生活する人、働く人の声を聞くことにより、様々な地理的条件を生活に生かす工夫や、勤労観・職業観も知ることができる。
 本単元では、4月に考えた課題をもとに、夏休みなどを使って解決してきた成果を授業に生かしながら進めていく。自ら体験をしながら、生の声を取材したグループも多く、働く人の気持ちが聞き取れればと思う。
 中部地方では、生徒は次のような調査活動を行った。
  名古屋と中京工業地帯 … トヨタ自動車の見学と聞き取り
  東海地方の集約的農業 … 実地体験と聞き取り
  中央高地の産業    … パソコン通信
  北陸地方の雪と産業  … 伝統産業の実地体験と伝統を守る人の気持ちの聞き取り
 
学習指導の重点目標2 B 話し合い学習
 話し合い学習は、各々が自分の考えを持つことが前提となる。そこで個人の思考の高まりを図るため、課題を100文字でまとめる論述練習を重ねてきた。さらに、自分の考えを持った上で、班で話し合い、班の考えをまとめさせてきた。
 本単元では、個の考えを生かした班の話し合いを重ね、学級全体でのディベートに向けて小集団・大集団での話し合いの訓練を積み重ねたい。また、一人一人が生きるような役割を分担した班の活動も取り入れていきたい。
 
4 単元の目標
[関心・態度]・ 日本の中央部の事象に関心を持ち、課題を見つけ、すすんで観察・調査し報告することができる。 
[思考・判断]・ 日本中央部の事例から、自然を生かした産業の特色や傾向、人々の生活の多様性を的確にとらえることができる。
        ・ 地域の変貌や人々の生活の課題を考察できる。
[資料活用]・ 目的に応じて資料を収集、選択し、それらを効果的に活用することができる。
        ・ 地理的事象の観察・調査を行った結果をまとめ、発表することができる。
[知識・理解]・ 日本の中央部の地理的事象を通して、地域の生活の変化や他地域との結びつきとその変化について考える。
        ・ 日本の中央部の自然と人々の生活の特色、産業の特色から日本全体を大観する。

5 指導計画
(「日本の中央部」20時間完了) 
   第4章 日本の中央部                       
       自然と暮らし・課題作り2時間
       近畿地方5時間
  中部地方    4時間(本時 2/4)  
1 名古屋と中京工業地帯             
2 東海地方の集約的農業 (本時)
3 中央高地の産業
4 北陸地方の雪と産業 
       関東地方5時間
       中央部から日本を考える2時間
       テーマ学習 港湾都市 横浜1時間
       テーマ学習 公害と産業廃棄物1時間  
6 関 連
  1 年 …「世界から見た日本」
  3 年 …「地方自治」 
7 本時の授業
(1) 本時の目標
[関心・態度]・ 東海地方の農業に関心を持ち、すすんで課題に取り組むことができる。 
[思考・判断]・ 電照菊や石垣イチゴなどの事例から、自然を生かした農業の特色や傾向を的確にとらえる。
        ・ 既習知識をもとに農家の工夫について考えることができる。
[資料活用]・ 目的に応じて資料を収集、選択し、それらを効果的に活用することができる。
        ・ 地理的事象の観察・調査を行った結果をまとめ、発表することができる。
[知識・理解]・ 茶やみかんの生産の全国的な地位をつかむ。
        ・ 恵まれた気候条件を生かして、施設園芸が集約的に行われていることを理解する。
(2) 準 備
    教 師 … ビジュアルプレゼンテイター、スライド、写真、資料
    生 徒 … 発表資料、評価カード
(3) 指導過程

    学 習 活 動 活動形態    指導上の留意点・支援    評 価 












 

1 何を栽培している写真か考え、東海地方の農業であることに気づく。
 茶・みかん・電照菊・メロン2本時の学習課題を知る。

全  体



 

・ 関心の低い生徒が興味を持てるように発問を工夫する。  E1・E4がわかったときは、自信を持たせるために指名する。

・事象に関心を持つことができたか。
 (関・態)
 


 

 東海地方の農業の特色を考えよう。                    
 

  



 



 
・ 課題のイメージをつかませるために、既習事項である九州・四国地方の農業の特色を想起させる。


 















 

20





 

3 興味のある問題を選び、資 料の確認をする。
 〔茶・みかんコース〕
    生産量や全国的地位、   立地条件など
 〔メロン・電照菊コース〕
    生産地、生産の工夫など

4 手分けして、教室にある資料で調べる。
 ○ 適切な資料を選択する。 ○ 資料を読みとり、解答を考える。
 ○ 班で確認し合う。
5 問題の答えを話し合う。
 〔茶・みかんコース〕
   
  
       
 〔メロン・電照菊コース〕


 

グループ







個  人




グループ全  体







 

・ 調査方法の多様性に気づかせるため、多くの資料を紹介する。





・ できるだけ、自分なりの根 拠を考えるように助言する。  特に、E4・F1・F4に 資料の見方を助言する。
  A5には資料を紹介し、ユ ニークな発想を生かしたい。・ 考えた根拠・資料の出典を を明確にさせ、調べ方を確認 する。
・ 発想はいいが挙手できない D4、A1、C5などは、指 名して自信を持たせたい。
・ 考えが分かれたものは、討 議させる。
 

・主体的にコースを決めることができたか。(関・態)




・適切な資料を選び、正しい読みとりができたか。
  (資料)

・根拠づけて説明することができたか。 (思・判)・茶やみかんの生産の全国的動向をつかむことができたか。(知・理)




















19






 

6 石垣イチゴを作っている農 家の収益を上げるための工夫 を考える。

全  体














全  体










 

・ C1・C2・C4がわかる と思われるが、A2やE6・ A1・B1あたりにも気づか せたい。そのために、次の助 言をする。
 @ 太陽の角度
    冬の太陽高度 30度    石垣の角度 約60度 A 土と石の暖まり方の違い・ 仕事がしやすいと答えた生 徒には、石垣を組む写真を示 し、農家の人が多くの労力を 使っていることを助言する。


・ アメリカの大規模な農業の 様子と対比させるために、写 真資料を提示する。
  補助資料として、2階建て 養豚場の資料を準備する。






 

・収益を上げるための農家の工夫に気づくことができたか。
 (思・判)









・農業の特色に気づくことができたか。(思・判)・集約的農業という用語の意味を理解できたか。
 (知・理)


 



 

 なぜ、イチゴを石垣に、
また斜面に作るのでしょう
 



 
 ○ それぞれが予想する。
  ・栽培しやすいから
  ・収穫しやすいから
  ・土が付かないから
  ・肥料がやりやすい
  ・日当たりがいいから
  ・温度が上がりやすい
 ○ 全体で話し合う。

7 石垣いちご・メロン・電照
 菊の共通点を考え、東海地方
 の農業の特色である集約的農
 業について理解する。






 

 東海地方のこれらの農業は、アメリカの農業と比べて大きな特色があります。その特色とは、何でしょうか。
 






 













 

8 生徒の発表を聞く。
   電照菊・茶など

 ○ 質疑応答をする。

9 次時に、東海地方の農業について100文字前後でまとめることを知る。

10 評価カードに記入をする。


 

全  体




個  人






 

・ 実際に調査した農家の人の工夫や喜び・苦労を紹介するように助言する。


・ キーワードを含むように助 言する。
・ 時間があれば、B4かC1 に発表せたる。
・ 積極的な発言、発想が豊か な意見を評価するように助言 する。
 

・調査内容を
わかりやすく
表現すること
ができたか。
 (資・表)







 
8 評 価
 (1) 東海地方の農業が、温暖な気候と地形を利用していること、施設を用いた集約的農業であることが理解できたか。
 (2) 必要な資料を選択し、正しく読みとることができたか。
9 反 省
 
10 高 評                                     
  
【板書計画】
 

 学習課題

  東海地方の農業の特徴は何か              温室メロン 静岡・愛知で 66%

                  キーワード
茶 静岡 全国の49.2%
              温暖な気候   大規模な施設 電照菊   照明により開花時期
               と       を利用した       を遅らせる
ミカン 愛媛・和歌山に次ぎ  地形を利用    集約的農業
   全国3位
                             石垣イチゴ   太陽の角度
                                   土と石の暖まり方の
                                   違いを利用


 
【 資 料 】
   座 席 表
 

教 卓
 


          

A1

   

B1  ☆

   

C1 ◎ ☆

   

D1

   

E1   △

  

F1   △

   
























 

A2 ◎ ☆
 班長
   

B2

   

C2

    

D2
 班長
   

E2

   

F2
班長 話し合いに支援が必要

A3

  

B3

     

C3

    

D3  ◎ ☆

   

E3

    

F3

    

A4

    

B4 ◎

   

C4

  

D4

   

E4 ◆◆ △

   

F4◆◆ △

   

A5 ◆◆
 班長
   

B5

    発表者

C5

  

D5

 

E5 ◎ ☆
 班長
   

F5  

  

A6

   

B6

    

C6 ◎ ☆

   

D6
班長 話し合いに支援が必要

E6

    

F6

   発表者

A7

  
 




 
   
D7

   発表者
 



 
 
@ 話し合い活動の中での支援の必要な生徒 …  △
A 話し合いをリードする生徒       …  ☆
B 資料活用能力の高い生徒        …  ◎
C 本単元で特に支援する生徒       … ◆◆ 

E 4
 
 1学期はほとんど授業に参加できなかったが、単元の初めの「問題作り」で問題を多数作ることができてから自信を持ち始めている。賞賛の機会を作り、授業への満足感を高めてやりたい。

A 5
 
 1学期の終わりの調査で、学級で唯一「調べ学習はつまらない」とし、理由を「めんどくさい」と書いている。また、社会科を暗記教科ととらえる意識が強い。身近な地域を学習することを機会に、調査活動の楽しさを味わわせてやりたい。

F 4
 
 何をするにも自信がなく、人前で話をすることができない。問題を指摘するだけで、すぐ涙ぐむこともある。本人のわかった問題では、意図的に指名し、発言させてやりたい。さらに賞賛により、少しずつ自信を与えてやりたい。
  
  当日配布資料
   課題一覧、調査票
   調査活動の方法、
   パソ通返信例
   100字論述例
   座席表・支援の内容
   プリントノート
   個の活動状況
   自己評価
 
【問い合わせ先】(平成7年当時)
 みかん 三ヶ日町経済課       053ー524ー1115
     三ヶ日農協柑橘課 若松さん 053ー525ー1016
     三ヶ日みかん狩り組合    053ー526ー2253
     三ヶ日西小学校       053ー525ー0047 
 茶   菊川町農林課 勝浦さん   0537ー35ー2111
     県立茶業試験場       0548ー27ー2311
     茶業協会                     
 石垣いちご・茶
     静岡市役所 学校教育課 海野さん 054ー254ー2111 
 赤羽根町役場 経済課 大羽さん 053145ー3114
     農協 鈴木花卉課長 営農センター 053145ー3761  
 渥美町農業水産課 粕屋さん     05313ー3ー1111
 東海農政局生産流通部農産普及課 原 慎一さん   
   〒460 名古屋市中区三の丸1ー2ー2  п@052ー201ー7271 内303
 東京書籍 中部支局  п@052ー211ー2323
 
当日の問題
 〔茶・みかんコース〕
Q1 静岡県の茶・みかんの生産は全国の何%・何位か?
Q2 静岡県の茶の生産量が多いのはなぜか、また静岡で特に有名な地域は
Q3 つみとった葉はどこで加工されるか
Q4 静岡県のお茶の栽培はいつ頃からか
5 お茶畑の周りにあるプロペラのようなものは何のためにあるのですか
Q6 みかんの生産量で静岡県の地位が低下したのはなぜか                                
 〔温室メロン・電照菊コース〕
Q1 渥美半島でさかんな農業は何か
Q2 温室メロンの生産高 愛知・静岡の割合は
Q3 菊の生産 愛知県は全国何位
Q4 なぜ、菊を栽培するのに電気を使うのか
Q5 豊川用水ができるまでとできた後での農業にどのような影響があったか?
Q6 東海地方は、なぜ施設園芸が盛んか