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<第 2 章>
本 文:えんやら
挿し絵:かつみこういち氏

この物語はフィクションです。登場人物・設定等は架空のもので、
実在のものとは一切関係有りません。

提 供 者

 再び退屈な入院生活が続いていた。仕方が無い。自分でそれを望んだんだから。
この数週間テントの中である。無菌室とかいうものらしい。
そんなある日、移植手術の日程が決まったと担当医が知らせに来た。
HLAの同型のドナーが意外に早く見つかったとか。術後にその人が面会にみえるとか、
言ってたな。う〜ん。血液型はO型のままなんだな、これだと・・・


「お返しよ」
	何と、術後面会に現れたのは彼女だった。えっ?それじゃあ

illust by Kouichi Katsumi
「そうよ、私がドナーです。でしたっ。驚いたぁ?」 いたずらっぽく笑う。やられた。医者も今まで知ってて隠していたんだ。 彼女は私の空白の時間のことについて語りはじめた。
回  想

「・・・ちょっ、ちょっと待ったぁ・・・ゼイゼイ」 「きゃぁ!痴漢!」 「・・・オイオイ・・・それはないんじゃ・・・ないのぉ・・・」 「こんな所でなにしてるの?」 「・・・へっ?何ってその??あれ?・・・だからとめにきたんですよ。」 「えっ?・・・・」 「・・・やっぱり・・・絶対だめですよ。そんなこと考えちゃ・・・  ちょっと疲れたんで横にならせてくださいね。ふぅ〜・・・  よくは知らないけどこの日の為に学校でいい成績取って歌手になった  訳じゃないでしょう?」 「・・・・」

illust by Kouichi Katsumi
「大体ここから飛び降りて何が解決するんですか?何も解決しやしない。  そればかりか、死んでもずっと苦しむ事になるんですよ。」 「ごめんなさい、わたし・・・」 「どうします?まだ飛び降りますか?ここまで言ってもわからないんだったら  もうとめやしません。どうぞ勝手にして下さい。  私もあなたのファンを今日限りやめます。」 「・・・もう、馬鹿なこと考えません。」 「ほっ・・・」 「・・・いま、ひとりじゃないんだなぁってわかったの。  あなたみたいな人がいて・・・」 「そう・・・ハハ。なんか照れるな」 「でも、どうしてここに居ることがわかったの?」 「それはね、その後のワイドショーとかで事細かに時間まで言ってくれたからさ。  家が遠かったので間に合わないかと思ったよ。警察に電話してもイタズラ電話と  誤解されるし・・・アワワ。いや、その・・・」 「あなた、いったい?」 「・・・へ?私?わたしはあなたのただの1ファンです。ほら、会員証。  名古屋の握手会来てたでしょ・・・って覚えてないよぁ。」 「え〜っとぉ・・・」 「う〜ん。なんかホッとしたらどっと疲れちゃったぁ・・・私はもうしばらく此処に  いますけど、あなたは早く下へ行ってケロッとした顔見せてきたほうがいいですよ。  きっと下では居なくなったって今頃大騒ぎになってるから・・・」 「あら、いっけない。忘れてた。」 「ほら、早く行って。みんな待ってますよ。」 「・・・はい。・・・あの・・・」 「何か忘れ物?」 「待っててくださいね。きっと戻って来ますから。  聞きたいことがあるんです。」 「いいですよ。当分動けそうにない。ハハ。」 「約束ですよ。それじゃぁ、ちょっと行ってきます。」 ・ ・ ・ ・ ・ 「戻ってみるとあなたは消えちゃってたのよっ。」 「そんなこと言ったのカナァ。全然覚えてない。アハ・アハハハ。」 「・・・でも良かった。私がお役に立てて。」 「ほんとにありがとう。私にとって貴方はやっぱり天使だ。」 「・・・いいえ、私こそ・・・」 ・ ・ ・ ・ ・ 夢のような時間は瞬く間に過ぎていった。
第3章へ(行動を選択してください)
彼女に帰ってもらう彼女を引き止める

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