1 変わった(形の)真空管達
上の段、左から、6R−R8、6146、UY−227、6AG7、下の段、左から、5894(2B94)、815、2K25、2C43、ちょっと上に上がって、V2393C/1K
 いずれも昭和30年代末頃入手。

 2K25は、クライストロンという種類の真空管で、形が変わっているだけでなく、内容的にもかなり、特異。発振回路が内部に形成されている真空管で、必要な電圧をかけると、10000MHzくらいの電波が発生する。左下に出ているしっぽのような部分の先がアンテナで、ここから電波が発生する。ここから導波管と呼ばれる管でパラボラアンテナまでこの電波を導き、送信する。出力は、10mw程度。CQ誌の読者交換室みたいなところで手に入れた。やる気満々で買ったが、1本しかないのでは電波を出しても受信しようがないということもあって、結局使っていない。

 2C43は単なる3極管だが、数百MHz以上の周波数で安定的に使用できるように、こんな形になってる。灯台に似ているので、ライトハウス管と言われる。キャビティの中に組み込んで使用するんですね。これも、使用したことはありません。どこで、手に入れたのかも覚えてない。

 V2393C/1Kは、鉄屑やさんで見つけて、30円とかそんな値段で買ったのだと思う。鉄屑やさんでは、リレーとか、メーターとか、電電公社の払い下げの真空管とか色々手に入れた。これも電電公社の特注品と思われる。形から見て、2C43と同じようにキャビティの中に組み込んで使用するものと思われるが、内容は全く不明。勿論、使用したこともない。

 815(ハチイチゴと読む。略称でも通称でもなくこれが正式名称。)は、今までの3本に比べれば普通の真空管です。頭に角(ツノ)が2本あるけれど、これは、中に普通の真空管2本分の電極(2E26(という名前の真空管)相当だったと思う。)が入っていて、そのプレートが2つ出ているもの。先輩から200円で譲ってもらったような気がする。この真空管は私が使用したことがあっても不思議がない程度の普通のものだが、・・・とは言っても高周波電力増幅でプッシュプル回路(こういう2本分の電極が入った真空管をうまく働かせる回路)を作るのは難しそうで(うまくコイルを巻く自信がない。)、結局使用してない。譲ってもらった目的も使用するというよりは、形が気に入ってガラクタ箱に入れて置きたかっただけ。これは、100MHz位の周波数で30ワットくらいの出力が可能ではないかと思います。

 UY−227は、その形状からナス管と呼ばれる種類の真空管。欧米では、何というかと言うと、うーーん。ナスって何というのだろう。キュウリは有名な女性科学者が居るくらいでよく知ってるけどナスは知らない。ナス管は、後で少し紹介するST管(Standard Tube)よりも更に古い時代のものです。あまり古いのでよく知らないけど、昭和の初年くらいのものではないでしょうか。UY−227は、古い本などにもよく名前が出てくる三極管です。たぶん、ST管やGT管、MT管のようにたくさん(MT管が多分最も多くて、数百種類はあるのでないでしょうか。ちなみに、トランジスターはもっと、多いですね。)種類があったのでなく、5種類くらいしか種類が存在しないナス管の1つなのかも知れませんね。勿論、この真空管は私は使ったことはありません。

 6AG7は、GT管の一種ですが、メタル管といって表面は金属でできています。この金属の中にガラスでできた真空管があるわけです。この6AG7は、電力感度が高くて使いやすい真空管で、私も実験的に使ったかも知れない。よく覚えてない。真空管は無理な使い方をすると、内部の電極が真っ赤になって外から分かるんだけど、6AG7は、それは分からないですね。自分で作った回路で真空管を使う場合は、中が見えないと言うことは、けっこう気になるものです。

 5894(ゴオハチキュウヨンと読む。これは、TEN製で日本名は2B94)も形が気に入ってどこかで手に入れた真空管です。テレビの電波くらいの高い周波数の送信機に使用します。高い周波数で高い出力を出すのは、昔のトランジスターなど半導体は苦手だった時代があったので、今から、十数年前くらいまでは、この真空管を使用した機械が現役として働いていたかも知れません。

 6146(ロクイチヨンロクと読む。)と、6RーR8は、まあ、普通の形の真空管です。真空管を見たことのない人のために並べました。
 6146は、GT管といわれる少し大きい真空管の種類(この6146は、頭に角(ツノ)があるが、角はない方が多い。)、6RーR8は、MT管と言われる小さい形の種類(6R−R8は、そのMT管の中でもかなり小さい方です。)。真空管がトランジスターに代わられていくようになった最後の時期にはMT管が最も普通の真空管になりました(MT管よりもさらに小さいサブミニチュア管というものもごく一部にありましたが・・。これは1本だけ持っていたけど、ひびがあって空気が入っていて使えないもので、行方不明(発見しました。)。今の記憶では、長さ3センチくらい、直径1センチくらいで、足は直接回路に半田付けするようになっていた。電池で稼働させることが前提になっていて、プレート電圧は20ボルトくらいで働いたと思う。)。
 なお、6146は、アマチュア無線程度の小型の送信機によく使われた真空管で、これの改良型であるSー2001という真空管が日本で最後まで作られた真空管であると聞いています(おそらくアマチュア無線機用に作られていたのではないでしょうか。)。この2つは私が愛用した真空管の代表です(どちらも私が持っている中では数少ない純正品(箱入り新品)なので、とても高価で最も高かった方からの第1位と第2位。ちなみに、6R−R8は、定価5500円で、それを2750円で買った、と覚えている(あまり、高かったので、まだ、覚えている。私の当時の小遣いの2か月分)。 (真空管について解説している伊藤誠吾さんのホームページ)

 当時は、真空管は部品屋さんでは、定価の半額で売っていて、町のラジオ屋さんは、各家庭のテレビやラジオを修理すると、たいていの場合が真空管が切れているのが原因なので、それを取り替えて、真空管の値段(定価)だけもらっていた。つまり、真空管の値段の半分が手間賃。よく考えると変な話だが、当時は、真空管の値段のほかに手間賃を請求することはできにくい雰囲気だった。払う方も、電気屋さんが定価で真空管を買っているとは思ってないのだけど。(そりゃそうか。商品を買うのに、仕入れ値で買っていると思っている消費者はいないのだから。つまり、修理とは、売買に付随する無料サービスだったのだ。))。
 なお、GT管よりもっと大きくて、よりポピュラーだった真空管にST管があります。私も一番最初はST管から工作を始めたので、とても懐かしい感じがします。昔のラジオは裏側から中が見えたので、ほこり臭いような焦げ臭いような臭いとともに、このST管を見た経験のある人は私くらい以上の世代には多いと思います。( ST管についてのJR2BJEさんのホームページ

 ところで、この写真には真空管の大きさの目安を感じてもらうために、月刊誌 トランジスタ技術が一緒に写っていますが、このトランジスタ技術は、昭和39年10月号で、実は創刊号です。そして、この創刊号の表紙の裏にある広告が次の写真です。 そこに書いてあるように、世界初の電子式卓上計算機です。トランジスター530本、ダイオード2300本が使用されていると書いてあります。定価は53万5千円。重さは25キログラム。表示部の下にボタンがたくさん並んでいる部分が数値の入力部で、現在ならテンキーが果たすべき役割をこの多くのボタンが果たしています。各列数字は、1から9までで0はありません。1から9までのボタンを押さなかった場合は0であるということになるのです。すでに、当時、テンキーというものはあったようで、この製品についての説明には、テンキーとこのすだれ方式の入力部のメリット、デメリットが書いてあって、結局、このすだれ方式の方が優れているのだというようなことが書かれています。


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