![]()
http://www.tcp-ip.or.jp/~ainuzuka/
20071220jh-toyohashi
豊橋市研究部研究大会助言資料
心通い合う実践的コミュニケーション能力の育成
愛知県総合教育センター
犬塚 章夫
アクション・リサーチの手順

@ 生徒実態の分析
まず、現在の生徒の状態を分析します。「宿題を出さない生徒が多い」「教科書を読む声が小さい」「コミュニケーション活動に参加しない生徒が多い」などから、「ALTとの会話ですぐにつまってしまって沈黙が続く」などまで、様々であるが、それを教師の感で記入するのではなく、ある種の数字(データ)にとして示したい。テスト・アンケートなど、いかに生徒の実態をとらえるか工夫したい。
A 手だてを考える
生徒の実態から改善したい内容を洗い出し、それを改善するための手だてを考える。1つの改善したい実態に対して、1つの手だてを考えたい。複数の手だてがセットで、1つの改善したい実態に対応するのはよいが、複数の手だてを用いて、複数の改善したい実態を改善するように仕組んでしまうと、何が効果をあげているのかがわからなくなり、応用がきかなくなる。「いろいろ一生懸命やったから、改善した。」では、今後の参考にならない。
B 授業実践
考えた手だてを実際に授業で行ってみる。その時の生徒の様子、変化の様子など、記録できるところはデータとして残したい。毎時間の生徒の感想や生徒の活動を録画したビデオ(研究単元なら)、毎時間後の教師の反省メモなど、数時間にわたる単元を実践する場合には、必要になる。いきあたりばったりでは、必要な記録があとで考えて足らないということになるので、単元に入る前にどんなデータをいつとるのかを考えておきたい。
C 生徒実態の分析
授業実践を終え、生徒が変容をしたのか、確かめるために@で行った調査を再度行い、そのデータの変化を具体的な数字として表わす。教師の観察による生徒の様子の変化なども、なるべく客観性をもたせてたすこともできる。
D 複数で考察
授業者だけで生徒の実態の変容を考察していくと、どうしても独りよがりな結果を導きやすいので、同じ学校の先生や研究グループの先生、研究をいっしょに見てくれている指導者の先生などとデータを見ながら、手だてがどのようにデータの変容に関係をしているのかを客観的に調べていきたい。話をすることによって、新たな発見があり、授業者の大きなプラスになることは間違いない。このアクションリサーチのチームを作ることが非常に大きい。
@ そして、あらたなアクションリサーチがスタートする
1つの単元を終えた瞬間に、またあらたな改善すべき生徒の実態があらわれてくるものである。逆に、自分の授業に満足してしまったら、もう進歩はなくなり、生徒の変化に応じきれず後退していくだけになってしまう。
バックワードデザインを取り入れて

日々の授業で何を目指すのか。中学3年の卒業時に、生徒にどんな力をつけさせたいのかという最終目標を決めておかないと話にならない。文科省の示す学習指導要領を読み、目の前にいる生徒の実態や学校の体制、自分の力量を考えあわせ、目指す生徒像として具体的に記述しておきたい。そして、そこから逆算して中学2年の最終段階での目指す生徒の姿、中学1年の最終段階での目指す生徒の姿、またそれぞれの学期最後での目指す姿を具体的に決めていきたい。そうすることで、今、授業で何を高めなければいけないのか、目標が見えてくる。
私の目指す中学3年生の英語力は、「英語ディベートができる力」だ。過去2回チャレンジしたが、これは難しかった。まだチャレンジ中である。もう1つある「ALTと1対1で2分間の英会話をすることができる力」だ。あらかじめ用意しておいた内容は1分間で尽きる。それ以後、どう話を続けていけるかが生徒のコミュニケーション能力次第となる。2分を超えれれば、5分だって10分だって、会話を続けるスキルは応用できるはずである。
別の次元で、考えないといけないのが、中学以降の英語学習へのビジョンと、中学以前の英語学習への対応である。
中学を卒業した後、生徒たちの多くは、英語難関の時代=高校時代へ突入することになる。特に進学校では、大学入試への対応に大きくシフトされた英語教育と付き合うことになる。さらにその先の社会が求める英語力の段階になると、最近話題のTOEICなどの数字への挑戦の世界になる。給料に反映されることだけに、必死にならざるを得ない。でも、全員がその世界に入るわけではなく、英語と気楽につきあっていける道もある。そんな生徒の将来を思い描きながら、中学の授業でこれからの世界を語れるようになりたい。
また小学校英語の動きも知っていないといけない。どんな生徒が入学してくるのかを知らないと、4月の授業が組み立てられないから。小学校で行われる「外国語活動」が何を求めているのか、それに中学ではどう対応していけばいいのかを考えておきたい。
生徒の英語学習の目的はどうなっているのか

永倉由里「英語教育の目的は何かー中学・高校・大学の生徒・学生と教師へのアンケート調査からー」p63
犬塚章夫・三浦孝編著『英語コミュニケーション活動と人間形成』成美堂2006より
英語学習の目的を2000名近いデータから考えてみると、@英語コミュニケーション能力、A高校入試・大学入試対応の英語力、B英語検定・TOEIC対応の英語力、C異文化理解と異文化間交渉力などが目立っているのが上のグラフからわかる。

三浦孝「Relating Soul to Soulー人間関係の育てあいとしての英語教育を今こそー」p8
犬塚章夫・三浦孝編著『英語コミュニケーション活動と人間形成』成美堂2006より
これをまとめると上の図のようになる。現実的目標としてある「受験対策的目的」がどうしても強調される教育現場があるからである。でも、現実問題これを避けて通ることはできない。したがって、生徒のニーズがある以上、これも大事にしないといけないわけだが、本来的目標をやらないで終えてしまってはいけないであろう。「運用的目的」と「文化的目的」は学習指導要領で強調されている事項であるのだから。しかし、それにとどまらず、その先にあるものを目指していきたい。それが「人間教育的目的」である。英語を通して、人を育てるための授業を展開したいと考えている。

三浦孝「Relating Soul to Soulー人間関係の育てあいとしての英語教育を今こそー」p17
犬塚章夫・三浦孝編著『英語コミュニケーション活動と人間形成』成美堂2006より
英語の授業では、さまざまな英語コミュニケーション活動(言語活動)が行われているし、教科書にもそれらの活動が示唆されている。この活動には、上の図が示すように、4つのレベルがあると考える。レベル1は、パターンプラクティスに代表されるような、あまり意味を考えないで機械的に反応する力をつける活動を指す。レベル2は、場面や文脈を与えた活動である。そこには意味の授受が含まれる。しかし、同じクラスの生徒と、Who is your homeroom teacher?と会話していたのでは意味がない。レベル3は、インフォメーションギャップを用いた会話活動である。お互いに知らない情報を英語を使って質問しあい、情報交換をするコミュニケーション活動である。これが本当のコミュニケーションとして望まれる活動である。図の中では、上向きの矢印で示されているが、レベル3のコミュニケーションでは、レベル1・レベル2の活動も基礎として行った上での活動ということを意味している。パターンプラクティスのような活動をすべきではないと言っているのではない。そして、めざしたいのは、その上のレベル4のコミュニケーションである。本当の意味でのコミュニケーションの活動を意味しており、授業が終わった後でも、人と人とのコミュニケーションにつながる活動を指している。お互いがどんなものが好きか、どんな思いをしているのか、将来どんなことをしたいと思っているのかなどの情報を交換しあうことで、他者理解、自己理解、社会性などが培われると考えている。そんなレベル4の活動を授業の中で学期に1回でもいいので、作っていきたいものである。
授業と評価をどのように
大きく上の3つの方法で評価を組み立てていきたい。
@ ALTとの1対1の会話を仕組みたい
下に示すように、同じテーマで少し難易度を変化させながら単元中に3回、ALTと1対1の会話を仕組んでいく。その様子をALTに観点を示しておいて評価してもらったり、JTEが横にいて評価(ビデオに録画しておいてあとからでもよいが)する。コミュニケーションへの意欲関心や、表現の能力などの観点が評価できる。

A まとまった内容の英作文は、添削後、清書ノートに清書させたい
1冊の清書ノートを1年生から3年間使うことで、自分の学習の過程が見てわかるポートフォリオとしての価値がでてくる。自分の中で一番出来の良い作品を目指す向上心にもつながる。また、優秀作品はカラーコピーをして教室掲示をしたりすると、それを見ることでどんどん生徒のレベルが上がっていく。また評価としては、コミュニケーションへの関心意欲態度、表現の能力などの観点で点数をつけることができる。コミュニケーションは、話すことだけではなく、このような書く形式も、含まれるべきであろう。また、表現の能力の中でも、テーマに沿った内容であるかどうかの「適切さ」や正しい英文を書いているかの「正確さ」の2つの観点から評価できる。

中学3年単元「ディベートに挑戦」家でビデオを見るのがよいか、映画館で見るのがよいかの議論での意見文(生徒作品)
生徒の動機付けを高める授業を設計したい

ゾルタン・ドルニェイ著 米山朝二・関昭典訳『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』大修館書店2005に示されている35のストラテジーを、学校現場の実情に合わせて上の10のチェック項目にまとめてみました。
小中の英語教育の連携
@ まずは小学校で行われる「外国語活動」を知る
←この図をクリック
本年度開催された教員研修センターの研修会で学んだことをまとめてみました。
これを受けて、来年度から愛知県でも中核教員の研修会、さらに中核教員による校内研修が始まります。
A 豊橋市のような教育特区は、独自の取り組みとなる。
[新しい「豊橋の教育」パンフレット](PDFファイル/342k)
B それを受けて中学校では何をすべきか
その他、質問にお答えして
「質問事項」として、下記のような質問をいただきました。可能な限り、何かヒントになることをお伝えしたいと思います。
|
Q1 モデル対話を用意し、空欄のみ「適する単語を入れて会話しよう」というペアワークにしても、教師が例としてあげた単語しか入れることができないようです。既習の単語で他にも当てはまるものがあるはずですが、教師の例以外でもペアワークできるようにするには、どのような工夫、支援が必要でしょうか。 |
| A1 下の図のようにまず本当に単語を入れ替えてストーリーができるのか教師が例を10個くらい考えてみることだと思います。可能であれば、どのような表現・単語・文法事項をそれ以前の授業で徹底的に入れておけばいいのかがわかりますし、もし不可能なら、課題を変えたほうがよいと思います。先生にできないことが生徒にはできるわけないですから。あとは、意欲を出させるような工夫をしたり、会話自体への興味を増すようなモデルを示すとよいと思います。そして、モデル対話の変形だけにとどまらず、自由な会話をさせる場面も作ったらどうかと思います。 |
| Q2 コミュニケーション能力を評価するためのよい観点と評価方法、評価場面を教えてください。 |
A2 上の4に述べたとおりです。また一般的な観点別評価などについては、下記のページにまとめてみました。 ←ここをクリック |
| Q3 自分が英語教員であるにもかかわらず、自分の英会話に自信がもてず、ALTとの打ち合わせや意志の疎通を図るのに苦労します。どのような方法が、自分の英会話力を上げるのかご指導ください。 |
| A3 英語教員って、たいへんですよね。教師自身の英語力を高め、それを維持する努力を強いられているんですから。国も英検準1級以上とか、TOEIC何点とか言ってますよね。英語力そのものを高めるには、@単語を覚える、Aリスニング(英語を聞く機会)を多くする、B英文を覚える(日本語から英語に訳せるように練習・暗記する)、そしてCALTとの会話を楽しむ、D自分の好きな分野(読書、映画(DVD)、洋楽、など)で英語に親しむ。などなど、生徒に言うのと同じです。何か自分で目標をもって取り組まれると意欲が継続すると思います。英検やTOEICを目標にしたり、1ヶ月でペーパーバック1冊読むとか、何でもいいと思います。ALTとの打ち合わせに直結したことで言えば、言いたいことを前もって英作文しておいて、ALTに添削してもらいながら、話をするというのはどうでしょうか。 |
| Q4 「英会話をすること」にスポットをあてすぎてしまい、書く力や長文などを読み取る力が落ちてしまうのではないかと心配です。高校入試を突破する力をつけることも私たち英語教員の使命だと思いますが、どのようにバランスよく指導していけばいいのでしょうか。 |
| A4 上の3でお話しした通りです。高校入試も1つの目標だと思いますので、工夫していきたいところですが、もっと先のことを考えていくと、生徒のコミュニケーション能力をいかに高めるかということになると思います。ターゲットになる入試問題を分析して、生徒にいかに興味をもたせながら、対策問題に取り組ませるかの工夫かと思います。 |
| Q5 フォニックスを授業の中に取り入れていきたいと思っています。よい指導法・参考書・インターネットのサイト等どのような情報でもよいので教えてください。 |
| A5 フォニックスの複雑なルールは知らなくても大丈夫だと思います。でも特に小学校では、フォニックスアルファベットはぜひ導入しておきたいですね。現行のニューホライズン1年の最初にあるアルファベットのピクチャーページは、フォニックスアルファベットを練習するのにはよいページだと思います。あとはマジックeくらいでしょうか、わかりやすくて役立つのは。あとは、教えたことがありません。 リンク 松香フォニックス研究所 http://www.mpi-j.co.jp/elementary/ アプリコット公式ホームページ http://www.apricot-plaza.co.jp/ |
| Q6 「実践的コミュニケーション能力育成」のための小中英語教育の連携で、小学校側ではどのような英会話活動が効果的なのでしょうか。また、それをうけて中学校側ではどのような準備をして彼らをむかえればよいのでしょうか。 |
| A6 上の6に書いてあります。さらにリンク先をたどっていただけるとよいと思います。あとは、下の本が小中連携について詳しく紹介しています。私のその中の一部を書かせていただきました。また、小学校外国語活動(豊橋市の特区英会話とは少し違うが)と中学英語の連携研究が、来年度(平成20年度)愛知県総合教育センターで始まりますので、平成21年の教育センター発表会くらいには、研究成果を紹介できると思います。 |
| Q7 教室にコンピュータとプロジェクタを持ち込んでLANでコンピュータ室のコンピュータとつなぎ、インターネットを使うことも可能になりました。英会話の授業での効果的な活用法を教えてください。 |
| A7 英会話の場面で直接校内LANを使った実践は難しいですね。今、愛知県総合教育センターで、私が主務で研究している「インターネットの教育利用(参加・交流)」では、今年、TV会議システムの利用などを進めていますが、これは愛知県の高校と教育センターをむすんだエースネットというコンピュータネットワーク上でした使えないので、残念です。(一般的な、メッセンジャーシステムで、テレビ電話風にインターネットを介してお互いに顔を見ながら会話をすることはできるかと思います。) 一般的に英語の授業での校内LANの利用については、@サーバーに置いたプログラム(例:東京書籍の「デジタル教科書」など)を、教室のコンピュータで使う。Aパワーポイントなどで作ったファイルを使って、文法導入をしたり、海外の様子を紹介したりする。(これについては、下記の「わくわくワークシートホームページ」から、パワーポイントファイルなどがダウンロードできます。)、Bこれは見た実践ですが、英作文を3人のグループでさせる授業で、紙の辞書や電子辞書を使ってもいいし、その選択肢として、教師机に置いたコンピュータで、アルクのホームページから、英字郎で英語を調べさせたりしていました。Googleのホームページ(検索窓)から、"go straight"のようにダブルクォーテーションで囲んだ文字列を検索することで、その文字列が使われているホームページのリンク数を調べたり、そのリンク先のホームページの英文を調べたりして、正しいコロケーションかどうか、正しい使われ方かどうかの傾向を調べることもできます。 |