2008.4.14

YASUKUNI

イラク戦争における米軍の戦死者が4,000人を超えたのだそうだ。軍関連各機関の警備要員と称する「傭兵」の如きは数に入っていない、正規軍の統計だ。USATODAYには戦死者のページというのもある。無数の点にマーカを載せると、一人一人の戦死の状況のデータが表示され、軍に広報写真があれば、戦死者の写真も見ることが出来る。しかし戦死者全体となると、一人一人の顔は遠くへ消え、タダの青い点としてしか、捉えることが出来ない。

米軍の死者が4,000人を越えたところで、イラク人の死者はどのくらいかと言うと、米国ジョンスホプキンス大の65万人という「推計値」が発表されている。「割と正確な数値である。」「誇張に過ぎず、実際は数万人。」など諸説紛々なのだが、太平洋戦争での米軍の死者が20万人強に対して、日本軍が約300万人、戦争によって様々な死に方をしたアジア人の総数が2,000万人と言われるところからすれば、当らずと雖も遠からずであろう。

USATODAYの戦死者のページを真似てこのページの背景を作ってみた。4ドットx4ドットのマスに1ドットx1ドットの点がある。巾が532ドットなので、高さを960ドットにすれば510,720人を表す点が見えているのだが、見たところ一面のピンクにしか見えない。「國のために命を捧げる」というのは、このピンクを作ることなのだろう。

ジンバブエでは多年「独裁」と言われていたモブツ氏が総選挙を行ったら、反対派が政権を取りそうな勢いとなり、モブツ氏は軍隊・警察を総動員してモブツ色に異議を唱える人々を押さえ込みに掛かっているらしい。

北京オリンピックの聖火リレーが始まったが、北京色に塗りつぶされるのは嫌だ、というチベット人が騒いでいる。こちらは多年「政教一致」の権力下にあった歴史遺産、という匂いもする。白人経済は「人権は尊重するが、対中貿易をボイコットするのはイヤだ。」という構えだ。当の中国人民はオリンピックで浮かれているのであろう。

時を同じくして中国人の李櫻さんという人の作った"YASUKUNI"という映画が上映され様として、賛否両論が起こっている。靖国神社は明治政府が「国家のために死ぬのは犬死ににではない」ということを目に見える形にしたものだ。当時はこれを「てやんでい、べらぼうめ」の類の一般大衆に教える必要があったのデスネ。

神仏分離騒ぎの頃、「神話と歴史を混同するな」と言ったのは、時の東京帝国大学歴史学教授久米邦武博士であったが、日本人にとっては「神話」と「歴史」だけでなく,「国籍」も「人種」も「信仰」も「言語」も分明でなくごちゃまぜで済むのだから、幸せと言えば幸せなのだ。

見もせんで何も言えまいと思い、先年東京へ出た折に靖国神社を見物に行ったことがあった。雨の降る日であったが、祀られている「国事殉難者」に礼を失するかと思い、ビニールのコンビニ傘を鳥居に立て掛けて、雨の中を拝殿近くまで進んだのだが、カーキ色の街宣車からゾロゾロと降り立った戦闘服の若者達が、コーモリ傘をさしたままゾロゾロと進んで昇殿し、ゾロゾロと拝殿へ入って行ったのが印象的であった。