環境デザイン論後期課題ブックリスト

(かなり片寄っています。少なくとも*は浜松市立中央図書館の開架にあり)
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3.環境とは何かについて
  • モモ
    ミヒャエル・エンデ
    岩波書店 1976.9.24
    子供の本というより「大人の童話」というべきで、近代における人間にとって「時間」とは何かを主題としている。人間にとっての時間と自然にとっての時間が敵対するか協調するか、ということを考えれば時間が環境にとっての重要な要素であることがわかる。1980年代のヨーロッパ環境主義を動かす大きな力となった本。エンデはその後「はてしない物語」を出版し、西ドイツの「緑の党」から国会議員へと進んだが、「はてしない物語」は政治的要素が強く「モモ」ほどには面白くない。
  • アーサー・ランサム全集[1]-[12]*(児童書)
    アーサー・ランサム
    岩波書店 1967.6.19-
    エンデがポストモダニズムをにらむのにたいして、現在の世界で「守られるべき自然」と考えられるものが、イギリスで成立した20世紀初め頃のイギリスの近代自然主義を美しく描く。原著は1930年から1947年にわたり、植民地の存在を前提にイギリス本土には美しい自然が守られる、という図式が良くわかる。
  • バウッ・他
    月刊宝島編集部
    宝島社 1989.5-
    歴史学に対して考古学があるなら、路上のコマーシャリズムに対するのがこれ、という宝島のお遊び連載モノ。やや下ネタ気味。ちなみにドイツ語で"BAU"と言えば「住まい」のこと。
  • 路上観察学入門
    赤瀬川原平・藤森照信・南伸坊
    筑摩書店 1993.12.6
    同じ様なことを「学問じゃー」と言い出だしたのが天竜市秋野不矩美術館を設計したF森教授とそのグループ。実を言うと彼等は今和次郎とバラック装飾社のグループがやっていた「考現学」というのに繋がっているらしい。
  • 西湖案内
    大室幹雄
    岩波書店 1985.11.19
    「名所旧跡」というヤツも中国では数千年の歴史が積み重なって、そのまま残されている、という話。西湖の竣洩を歴代の皇帝が直轄工事でやらせた、と言うのも面白い。
  • 山海経
    高場三朗
    平凡社 1994.2.18
    天下の奇書。中華帝国の外側はどうなっているか、について紀元前に書かれたことになっている。「この世の果てにはこんな生き物も住んでいるに違いない」、という話の羅列。マルコポーロがヨーロッパにもたらした手長・足長もこのあたりが元祖では。豊葦原瑞穂國なんて当然、人外魔境デアル。
  • 照葉樹林文化
    上山春平
    中公新書 1969.10.25
    稲作以前の、日本文化の源流を広く東アジアの文化比較から探った結構有名な本。主に南方からの影響に付いて述べる。これ以降の文明論に影響を与えている。
  • 騎馬民族国家
    江上波夫
    中公新書
    前掲書と同じく、日本文化の源流を広く東アジアの文化比較から探った結構有名な本。前掲書に対し、大陸北方これからの影響に付いて述べる。以降の文明論に影響を与えている。
  • 倭国
    岡田 英弘
    中公新書 1977.10.25
    「人外魔境」はヘタをすると8世紀ごろまで中国人が仕切っていたのデハナイカ、という仮説。結構説得性があり、ヒミコの話なども簡単に謎が解けてしまう。
  • 日本文化の基層を探る
    佐々木高明
    NHKブックス 1997.2.10
    国立民族学博物館館長が昔書いた「日本という環境」についての本。弥生人と縄文人の「住み分け」などを読むと、浜松付近がユーラシア大陸の北と南の境目であることがわかる。
  • 縄文学への道
    小山修三
    NHKブックス 1996.6.20
    国立民族学博物館教授が縄文時代の「日本という環境」に迫る。三内円山・吉野ケ里遺跡の研究速報も含む。昨年、天竜市で開かれた「森林都市」シンポジウムで講演を行ったが、講演が済むとお付きの市役所職員(20歳位の女性)を追い掛けていた。縄文時代の研究をしていると女性に対する行動パタ−ンが「縄文的」になるのであろう。
  • 日本のすまい
    エドワード・モース
    鹿島出版会 1979.7.10
    明治のお雇い外国人が見た日本のすまい。殆どバウッてる。が、少し昔の日本人にとって当り前なものが、今の若者にはバウッと化してしまうのが恐ろしい。
  • 杉の来た道
    遠山富太郎
    中公新書 1976.1.25
    主に時間軸にそって日本人の生活と杉との関係について概観する。
  • 竹の民族誌
    遠山富太郎
    中公新書 1976.1.25
    時間軸とともに、東アジアの空間をエリアとして日本人の生活と竹との関係について概観する。
  • 本朝食鑑1ー6*
    平凡社東洋文庫 1976.11.25
    元禄の頃に書かれた「食べ物の百科事典」。「医食同源」の観点から食べ物の役割に付いて書いているのだが、大体は「遠い海の底には身の丈、丈余の鮪も居るに違いない。」「広い海の何処かには長さ一丈を越す海老も住んでいるであろう。」という調子なのが面白い。 17世紀の日本沿岸の環境の様子、自給自足の食生活が営まれていたことが解る。
  • ヨ−ロッパの有機農業
    福士正博 他
    家の光協会 1992.9.1
    有機農産物の生産・流通・規制/誘導など。ヨ−ロッパ諸国が輸入農産物から地域の農業を守ることと、環境を守ることをどう組み合わせているか。
  • 飽食日本とアジア
    日本消費者連盟編
    家の光協会 1993.8.1
    前掲書と逆に日本の食料供給が急速に輸入に転換され、それが日本国内と東南アジアを初めとする原産地の両方に深刻な環境的影響を及ぼしていることを述べる。
  • 日本の農業
    原 剛
    岩波新書 1994.2.21
    では日本の農業の将来は、というとなかなか簡単ではないよ。という本。