2013.2.1 
 
-市中山居
-イマドキの壁
-縦に住む
-熱気を動かす
-OpenHouse
-Slide Show
-街角の家
-実施図面(pdf)



殆どの家は道路に面している訳ですが、この家の場合、25m道路のカーブ正面にあって、隣は小公園という、まあ「街角の家」です。かってはクリーニング業を営業され、併用住宅でしたが、今回は専用住宅への改築でした。




営業店舗であれば、なるべく目に留まりやすい建物、となりますが、専用住宅で、しかも「街角の家」となると、ゆったりした暮らしの為には、逆に「なるべく目に留まりにくい家」が望ましくなります。

外観をなるべく「目に留まりにくく」する為には「フツーの素材」となります。「フツーの素材」はいかにもこの通りらしい素材でもあります。

前面道路は昭和25年に現在の形に改修されました。その頃建てられた家も、大分減りましたが、パラパラ残っています。米国では"Traditional Neighborhood Design"という言い方があります。「出来た頃のまちなみ景観を継承しなさい。」というわけです。中心市街地の25m道路に面して、暮らしやすい住宅を考えるには、通り沿いの景観を尊重する、というのも有効な考え方ですね。

当時のまちなみを作り上げていた素材で、現在でも使えるものには、土壁・波トタン・木などがあります。準防火地域ということで、木は建物本体に使うのは難しい様です。「波トタン」と呼ばれていたものは「成形ガルバリウム鋼板」と呼ばれる様になりましたが、外壁通気には優れた素材です。

5年程で格子の色がグレーに変わり、落ち着いた「街角の家」になってきました。昔の人は暮らしの美しさが外から見えることを「サビが利いて来た。」などと珍重したものですが、周りを見ると目新しい建材ばかりで、古くさくなるのが心配です。

「新建材は嫌だ。」という消費者の願いにもかかわらず、「画期的新製品」と称して、新工場の建設費を消費者に転嫁する様な新建材は、御免蒙りたいと思います。

建築設計に、時間を経るに従って美しくなる工夫がないと、住宅が「資産」となることは有り得ません。最近の「住宅は耐久消費財」という風潮にも困ったものです。

建て替える前の写真。昭和25年竣工。その後右半分を美容院に貸したもの。1999年撮