10.60%目標の検証

所得の向上、高齢化などによるライフスタイルの変化から、住宅への好ましくない影響が出ています。政府の予測は、1996年から2021年のあいだの、イングランドにおける世帯数の増加を380万世帯としています。この世帯数の増加を未開発緑地の減少なしに実現するには新規住宅供給のほとんどは都市部の既に開発された敷地に立地しなければなりません。政府の10年計画では新規住宅の60%を既開発地の再開発に拠るものという目標をたてています。タスクフォースは今までに入手可能な資料と、新たに全国土地利用データベース(NLUD)に集録された空き地、放棄地、空き家についての調査結果を元に再開発用地供給の可能性について検証しました。

私達の検証結果と、そこからの推論をまとめたものが表-1です。左端の列は、現在空き地、空き家となっているもの、将来そうなると予測されるものの面積です。二番目の列はそのなかで今後2021年までに住宅用地として利用可能なものの集計、3番目の列が利用可能な敷地の上に現状での住宅密度の平均地を基に想定した実際に建設可能な住宅戸数で、空き家の利用も含みます。

現行の政策に基づいた私達のこのモデルからの推計結果は今後25年間に想定される再開発による住宅供給は200万戸をわずかに上回る、というものでした。これは政府の計画で再開発に拠るとされた住宅戸数の55%に過ぎません。別の言い方をすれば、わたしたちが現在の道のりをたどり続ければ政府の目標には到達できないということです。これに加えて、地方の現況に基づくこれらの数値の分析では、イングランドで土地のリサイクルによる再開発の可能性の最も高いのは中部、北部地方ですが、これらの地方で想定される住宅需要はそれほど高いものではありません。北西部、北東部では都市部の再開発煮よる住宅供給の可能性は未開発緑地のうち、開発者によってすでに予定済みのもの、取得済みの用地によって削りとられています。

現在、本当に用地が必要とされていない地方で過大な未開発緑地が開発のために放出され、それと同時にロンドン周辺と南東部では住宅需要があまりに過大なため、市場が混乱に陥り、これまでにもまして田園地帯が開発目的のために併合される、という危機に直面しています。しかし私達が土地と建物資産を別の、もっと独創的な方法で維持管理する道が確立されれば、こうした事態を避けることも出来ます。このレポートではこれ以降、手遅れとなる前に求められる変化を作り出す方法に焦点を当てます。

既存の 予測される供給数
表1:既に開発済みの土地・建物(既開発地)
土地の種類 合計面積(ha) 住宅開発適地 住宅戸数
放棄地28,800 5,600 164,000
空地 16,2005,300 150,000
空家 n/a n/a 247,000
小計 n/a n/a 1,526,000
合計 45,000 10,900 2,087,000


11.変化のための計画

土地利用計画のシステムは私達の都市が望ましい変化を遂げるための能動的な役割を演じています。現在の都市計画システムは都市状況の複雑さ、多様さに必ずしも対応しきれているとはいえません。時として計画認可に至るまでに時間が長くかかりすぎ、計画のコントロールに重点がおかれすぎる嫌いがあります。私達は都市計画の手続きがもっと密接な、迅速なもので、計画の実現にもっとアクテイブな役割を果たすことを期待しています。

政府は都市計画法(PPG)を見直すことで都市再生と開発問題をより大きな一貫性をもって主導することが出来ます。都市計画法(PPG)はより明確な政策の選択を提供し、土地利用と交通計画煮関する目標を明らかにする役割のために改善されなくてはなりません。地方における計画主体もまたその役割、基準、手法を見直し、望ましい変化の妨げとなる要素に変更を加え、あるいは廃止しなければなりません。

私達は計画が今よりももっと柔軟なアプローチをもつことを望んでいます。開発許可機関が需要が見込めない用地についてさえ、業務用、その他の非住居用途にかたくなに固執していることが多すぎます。地域開発計画でも将来の中心となる用途は、時間を超えて受け入れられる住宅、レジャー等の用途の混在するものとするべきです。

開発基準は細部にこだわるべきではなく、より戦略的なものでなくてはなりません。都市計画は地域の交通・経済・住宅戦略を統合した包括的な将来に向けての意思表明となるべきです。未開発緑地の新規開発から、既開発地の再開発へ、という必要な変化は、用地のリサイクルに関する計画認可の迅速化で促進されます。近隣住宅地の「マスタープラン」と開発要項に基づく単純認可手続きは意思決定の迅速化に役立ちます。自治体は再開発地域において計画認可の実行チームを展開することで認可の迅速化を進めることが出来ます。総務省は重点都市地域で適切な期限内に開発認可を出せなかった自治体に代わり、認可を代行する権限を与えられるべきです。

私達はまた、開発認可に際して、開発主体から道路・コミュニティ施設の提供を受ける(プラニング・ゲインと呼ばれる)制度を支持します。しかし多くの開発で認可のプロセスに時間が掛かり過ぎる、あるいは一貫した運用がされていない、という点を懸念しています。特に小規模開発についてはより明快な政府の指導基準と、プランニング・ゲインに代わる標準化された開発影響税による認可が改革に含まれるべきです。

主な提案
  • アーバンルネサンスの促進を支えるPPGの改正。
  • より柔軟な基準に基づく戦略を強調して、地域開発計画を単純化する。
  • 詳細多岐にわたり過ぎる住宅開発のための政策を解体し、地域開発戦略に基づき、住民参加を全面的に取り入れたより柔軟なものに改める。
  • 地域開発計画の業務用地に関する目標を見直し、業務用地としてすでに需要の無い敷地を住宅開発用に放出する。
  • 地域の計画機関に地域独自の条例、基準、手続きの全てについて、都市開発促進のための見直し・廃止の検討を求める。
  • 小規模都市開発について、プラニング・ゲインによる協議に代わる、標準化された開発影響税等の導入を検討する。



12.土地供給の最適化

私達は最も持続可能な選択だと考えられる場合、住宅地に適した用地のリサイクルのため、全力を尽くさなければなりません。私達は再開発のためのインセンティヴを調査した結果、未開発緑地の新規開発圧力を下げる手段として有効と考えられる「緑地税」を定義することが出来ませんでした。これに代わり土地利用の最適化には経済的な手法に支えられた有効であるという結論に達しました。特にPPG3を住宅供給の「計画・助言・最適化」のための手段、とする考えに基づく改正案のアプローチに賛同します。同様に新規住宅開発のための土地放出に段階的なアプローチを取り、認可後であっても、他に再開発用地の放出が可能になった場合には未開発緑地の開発許可を取り消す、という手法を推奨します。

しかしこうした新しい手法は全ての自治体に一貫したものであり、住宅供給の過不足に対する取り組みについての明快な手続きが無ければ有効には働きません。私達は地方自治体が住宅需要予測をする場合、各々の地域でどのくらいの新規開発を受け入れることが出来るか、行政区域を超えた共同作業を求めることを提案します。

開発システムの全ての過程で、未開発緑地が過剰でないことを確認する手だても必要です。これには地域開発計画によって開発適地の指定を受けた土地であっても、国および地域の政策目標に照らして整合性を失ったものについては指定を差し戻すことも含まれます。グリーンベルトにおいて開発を禁じた一般指定は残すべきであり、重要な都市緑地についても同様の扱をすべきだと考えます。

私達は未開発緑地の新規開発に対する課税に代えて、環境への負荷を補償する環境税のような形で開発側に総合的な計画に対する負担を求める方向に向かうべきだと考えます。

私たちは公共セクターと土地所有者、開発主体との間で、地域再生を目的とした土地集積過程での新たなパートナーシップを提案します。既開発地で利用されていないものに対する課税がそうした土地の有効利用をもたらすインセンティヴとして用いられるべきです。地方自治体はまた放棄された土地が都市環境を劣化させないために、強制収用権を強化されるべきです。

土地強制収用命令は場合によっては土地の有効活用のために最適の手法となります。私たちは現在政府が進めている土地強制収用命令の見直しを迅速、強力な法案として支持します。私達は重点都市地域における自治体の権限として、特定の再開発スキームのもとに経済価値を実証することを省いて、強制収用を行うことを提案します。商業地域における地権者に、土地価格だけでなく、開発による営業補償を行うことが出来れば、現在ある反対、遅れの原因の大部分を取り除くことが出来るでしょう。追加補償については時間的格差を設定することで早期解決を促進できます。

主な提案
  • 地域、区域の住宅需要との調和を計るシステムに支えられた住宅用地、建物の放出許可の段階的アプローチを導入する。
  • 全ての自治体に一貫した基準での住宅需給調査を義務づけ、必要な場合には隣接自治体との共同作業とする。 ・国および地域の政策目標に照らして整合性を失ったものについては、地域開発計画から指定を差し戻すことを自治体に求める。
  • 都市部の公有地で過剰なものを都市再生のために放出する法的義務を公共団体に課す。
  • 重点都市地域での強制収用につき、特定の再開発スキームのもとでの経済価値の実証を省いて土地集積を助ける。