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SHINANSHA − 指南車

- Die altertumliche chinesische Technik -

石 田 正 治
ISHIDA Shoji


1.指南車を知っていますか  2.指南のメカニズム  3.宋史輿服志の指南車と記里鼓車


文化祭での取り組み −指南車、記里鼓車の復元模型製作−

  
豊橋工業高校第20回文化祭での展示ために、製作した指南車の復元模型(2種) 1989/11

 愛知県立豊橋工業高等学校では、例年、11月の中旬に文化祭を学校行事として行い、一般にも公開している。文化祭では、クラスやクラブ、あるいは学科を単位として、テーマを決めて展示をしたり、パーフォーマンスを演じる。生徒の自主性が大いに活かされる場でもある。しかしながら、テーマの設定には各クラス、思い悩むことも多いようだ。なかなか他に積極的にアピールできるようなものにならないからである。
 そうした中で、平成元年度第20回の文化祭に向けて、私が副担任をしていた定時制機械科3年の生徒諸君が、私の指南車をつくってみようという提案に取り組んでくれることになった。私自身が機械技術教育が専門なので、メカニズムには関心があったこと、また技術史への関心を深めている中で指南車の存在は以前から知っていて、いつかはこの問題に取り組んでみようと思い続けてきたことであった。さて、やってみることになったまではよかったが、いざ作ろうという段階になると、以外に指南車に関する資料は少なかった。「指南」という単語はよく知られているので、まず辞書を調べてみた。
 指南車は、百科事典、国語辞典など各種の辞書に解説があった。ところがよく調べてみると、磁石の上に人形が乗っているものと述べるものと、歯車の機構によるものと二つの説明があることがわかった。私が考えていたのは、もちろん歯車機構のものである。磁石によるものというのは、山車のような大きなものでは、機構的にむずかしいのではなかろうか。また、辞書を調べていると指南針という磁針を意味する言葉も隣にあって、実用の方位計としてあったようであることは前述のとおりである。では、指南車の歯車機構はどのようなものであったのだろうか。手掛かりは、会田俊夫著「歯車の技術史」に紹介されている機構図であった。ただ、この本では歯車の歯数や大きさに触れていないので設計データが全くわからない。それで、原著を探すことになった。大漢和辞典(諸橋轍次著、大修館書店)に、「古今注、輿服」並びに「宋史輿服志」に指南車が詳しく述べられているのがわかり 、その内、「宋史」は地元の愛知県図書館が収蔵していた。
 輿服志を調べてみるとそこには指南車の歯車の歯数や大きさ、円ピッチなどが詳細に書かれていた。図はないので、それらの歯車がどのように構成されていたのか不明であったから、王振鐸の復元図が参考になった。 写真1の指南車は、定時制機械科3年生の生徒諸君が筆者とともに製作したその復元模型で、1989年11月、第20回文化祭にクラス展示したものである。尺度は実物の大きさが不明であるので分からないが、データは忠実に再現している。右は現代のメカニズム、差動歯車による指南車の機構部分である。筆者の独自の設計で、その原理はランチェスターの提唱による差動歯車機構の指南車と同じである。指南車を調べていて、記里鼓車という別の歯車のメカニズムをもつ車が存在することがわかり、こちらも併せて製作することになった。写真は、その復元模型である。こちらは、走行計なのでメカニズムの構造は簡単であったが、太鼓を打たせるのに生徒は苦労したようである。
(いしだ しょうじ・愛知県立豊橋工業高等学校 教諭)


※愛知県立豊橋工業高等学校の文化祭で製作した2台の指南車の復元模型は、1992 (平成4)年6月から飛騨・古川町の起こし太鼓の里・古川まつり会館(岐阜県吉城郡古川町:電話0577-73-3511)に展示されている。


高山祭の屋台「指南車」をつくる


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