海外産業博物館 NO.6


アイアンブリッジ峡谷博物館  The Ironbridge Gorge Museums

ヘイ・インクライン

女性産業考古学徒が図面化、身近な遺産で学ぶ意義大


石田正治  by ISHIDA Shoji


ヘイ・インクラインの遺構の調査

 アイアンブリッジにあるブリスツヒル野外博物館は広い。その最も奥まったところにヘイ・インクラインの遺構がある。博物館の入口から歩いて約40分のところ、遠いためにここを訪れる人は少ない。
 インクラインとは、高低差のある運河間を移動する船のための施設で、船を台車の乗せ、斜面に敷設されたレール上を走らせて上げ下げする。
 ヘイ・インクラインは下のセバーン川と上のシュロップシャア運河を結んでいる。下からは鉄鉱石などの原材料を運ぶ船を引き上げて、上からはブリスツヒル製鉄所で造られた鉄製品を下ろしたのである。二組の幅の広い軌道が当時のままに残されていて、上から見下ろすと四本の錆びたレールが彼方では一点に結ばれているように見える。 インクラインの枕木を踏み締めて斜面を登り詰めるとそこには石積とレンガの遺構がある。台車を上げ下げした蒸気機関とロープ伝動装置のあった跡である。
 ここで、めずらしい風景に出会った。熱心にレンガのインクラインの遺構を調査している若き女性の産業考古学徒がいた。水平に基準となる糸を張って、遺構のレンガをひとつひとつ丹念に図面化しているのである。産業考古学研究の模範である。 この例を考えてみれば技術史の研究課題と教材は私たちの身近にいくらでもあるようだ。本物の遺構・遺物に直接触れてみること、そこから体験的に学ぶことは大変意義あることではいか。(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


 →海外産業博物館INDEX  →HOME http://www.tcp-ip.or.jp/~ishida96


This site is maintaind by ISHIDA Shoji. For more information about the this site, please write in Japanese, in english, auf Deutsch : ishida96@tcp-ip.or.jp


本文並びに写真の無断転載をお断りします。論文等に引用される場合は、石田正治 ishida96@tcp-ip.or.jp にお問い合わせ下さい。商用に利用される以外、特に不都合がない場合を除き、本文の引用並びに写真の転載を許可致します。その場合、通常の印刷物と同様に出典を明記していただきます。


Copyright(c)1997 by ISHIDA Shoji. All rights reseaved. Update : 1997/7/1
Last Update : 1997/7/1
0000 since 2007/02/01