大島教授の[暖蘭亭日記][99年6月1日〜 6月7日] [CONTENTS]

1999年6月1日火曜日 晴れのち曇り。
 寝不足は覆うべくもないが、酒が入っている分、眠りは深いらしく、気分が悪くなるほどではない。
 それでも仕事はする気にならず。ニーヴ・パースンズの歌詞対訳一曲のみ。後は出かける時間まで、ジェリィ・オサリヴァン關係のCDをあれこれ聞く。
 昼食はエボダイの開きを焼き、ご飯とサニー・レタス。
 午前中、昨日読み切れなかった『博士と狂人』を読上げる。題材はひじょうに面白いが、狂人の側の辞典編纂への貢献の仕方の再現が今ひとつつっこみ不足。ために、この状況全体の悲劇性の説得力が不足。くわえて、運命の皮肉というか、悲劇性と裏表の喜劇性への配慮がほぼ皆無。故に全体的に底が浅くなっている。主人公の精神が狂っていたために偉大な貢献をなしえた、その対照性が鮮明になっていない。情緒に流れている。やや扇情的な書き方。著者のあとがき等を見ると、問題への関心の持ち方からして扇情的なところもうかがえる。
 とはいえ、確かに埋もれていた物語を掘起こし、楽しい読みものに仕立てたのはなかなかの技。
 訳文は手慣れたものだが、ところどころ、不可思議な箇所あり。
 4時半に家を出る。出る直前、中山さんから電話。リンドレーのインタヴューは大変面白かった由。
 バスの中で Dee Carstensen の THE MAP を聴いていたら、駅前まで着かないうちにいきなり切れてしまう。バッテリー切れ。昨夜、勝手に動いていたせいか。仕方がないので後で有隣堂に寄り、岩波文庫の『岸田劉生日記』を買う。吉本家に寄って味玉・白葱ラーメンで腹ごしらえ。
 買う本を探しててまどったのと、降りる駅を勘違いして、表参道まで行ってしまったため、会場についたのは開演直前。アイリーン・アイヴァースのバンドを率いてのソロ・ライヴ。客は八分の入り。途中休憩が入って、終演は9時10分すぎ。
 終演後にラティーナ・Mさんとアイリーン・アイヴァースのインタヴューの打合わせ。アイリーンは階段の踊り場でサイン会。大盛況。ロビーでちょっと乾杯。しばらくして打上げ会場に移る。ラフォーレの並びの高級カラオケボックスという趣の店で、料理はちょっと凝っている。二十人ぐらい入れる個室で、巨大なカラオケセットがあり、後でカラオケ大会となって、バンドのメンバーたちも歌う。五郎さんは何と言われても歌わなかった。ダンサーのタリクは一番正体をなくしていた。トイレに行こうとして倒れ、食器を割ったり。帰るとき、車に乗った中にいなかったように思うが、無事宿に帰れたかどうか。
 松山さんが二時半過ぎに帰った他はだれも帰らず。4時ごろ、プランクトン・Kさんがお開きにしようと言って解散。出てくると空はもう明るかった。五郎さん、プランクトンの臨時スタッフ、志田さんと4人でタクシーに乗る。三人は世田谷でそれぞれに降り、後は厚木まで。帰宅五時。太陽がもうだいぶ高く昇っていた。
 皆が起きるまでそのまま起きていようかとも思ったが、やはり眠いので寝てしまう。
1999年6月2日水曜 曇り。少し風あり。蒸し暑し。
 目覚ましの音で一度目覚める。皆につきあって起上がり、出かけてから寝直す。正午の鐘で目が覚め、もう一度寝て次が一時半。そこで起床。やはりまだふらふら。
 メールのダウンロード。WXG のβ版の掲示板をみると本体が更新されていたのでさっそくダウンロード。掲示板で Jedit もも更新されていたのでこれもダウンロード。
 あがったさんから電話とファックス。先日の中川さんとの対談のまとめ原稿。
 音友・Kさんから電話。おれ以外は全部テキスト原稿入ったそうだ。
 市・県民税の通知兼納付書。一発完納で50万。分割で51万。
 日記などをつけていると早夕刻。
 5時前にIさんから電話。6時に駅改札で待合せ。パルコ2裏の変則中華料理屋で6時過ぎから11時前まで飲む。帰宅11時半。
 帰ってから歯を磨き、今日着いた『リーダーズ英和辞典第二版』の前書きと凡例に目を通す。
1999年6月3日木曜 曇り。
 やはり眠い。酒を飲むとやはり眠りが深くなるらしい。
 朝一番で WXG のサーバをチェックにゆくが、混んでいるとかでつながらない。メールのダウンロード。

○Dee Carstensen THE MAP; Exit Nine, 1998
 昨日聴けなかったので改めて朝のディスク。この人の魅力はギターの代わりのハープで、低く掠れた声とのマッチ(ないしミスマッチ)がよろしい。ヴォーカルはちょっと一本調子に過ぎるところもある。メロディも新鮮。なかなか良いディスクだ。

 『邦楽ジャーナル』。Book World 2号まとめて。クラダの Eoghan から、今回の請求をEC価格、すなわちVAT つきで計算してしまって申し訳ない、次回注文分から引くという手紙。
 音友・Kさんから本のタイトルの英語版で Roots と Rock の間にハイフンは要るかという問合わせの電話。要らないと答える。午後一番で残りのLPとCDのジャケットを送付。
 気象庁、梅雨入りを発表。そう聞いた途端、急に蒸し暑くなった感じがする。
 午後、MSI・Sさんから催促の電話。
 あがったさんからも確認の電話。後でファックスを見て送り返し、注とプロフィールを書いて送る。夕方さっそく電話。
 WXG のFTPサイトは全然つながらず。掲示板を見たら、当分復旧見込みなしで、至急欲しい人はメールをくれとの佐藤さんの書込み。すぐにメールする。いま使っている a7 ではファイルメーカーがやたらと落ちる。8時ごろ、もう一度メールを見ると届いているので解凍してインストール。

○Daryll Hall John Oates CHANGE OF SEASON; Arista, 1990
 R&Bのデュオだというのだが、どうしてもそうは聞えない。ただのポップス。アメリカ人が聞くとR&Bに聞えるのだろうか。ポップスとして聴けばそうひどくはなく、基本の音楽はしっかりしているようだ。ただ、ストリングスなどの妙な飾りが多すぎる。
 アイリーンの参加しているのは一曲で、そこでのフィドルにはアイルランド的なところは皆無。カントリーに近い。

○I Muvrini LEIA; Toshiba EMI, 1998/1999
 スティングの参加した一曲目を除き、なかなかのアルバム。コルシカのポリフォニー形式を使ったものもある。もっと鋭角的なものを予想していたが、むしろ大らかな、悠々と広がってゆく音楽。じっくりと味わいたい。
1999年6月4日金曜 曇りのち晴れ。蒸し暑し。梅雨に入ったが雨は降らない。
 朝、久しぶりに掃除。
 ニーヴ・パースンズの歌詞対訳。一気に終わらせる。量が多いので、ちょっと苦労する。
 クラダから荷物。CD18枚。同じくクラダからインボイス。Eoghan の手紙とは裏腹にちゃんとした額で請求されている。が、今度はCDが一枚足らず、17枚になっている。
 夕方はニーヴ・パースンズの資料をあさってネット探索するが、オフィシャル・ウェブ・サイトにつながらない。いつまでも接続中のまま。柴犬でもネコミでも同じ。一つだけ、Dirty Linenのサイトに記事の抜粋がある。ただ、キャリアはほとんど書いていない。
 仮想メモリを切ると WXG は安定度が増す。当たり前か。
 ディスクはサンプルのモーラ・オコーネル2枚。どちらも新たに聞くのと同じ。BLUE IS THE COLOUR OF HOPE は初めてかもしれない。どちらもいい。ジェリィ・ダグラスのプロデュースによる BLUE よりも k.d.ラングのプロデューサーが担当した REAL LIFE STORY の方がフォーク的な感じがする。選曲はこちらの方が上。五十嵐さんのライナーは手慣れたもの。
1999年6月5日土曜 晴れ、暑し。陽が落ちるとすうっと涼しくなる。
 朝一番でメールを落とし、WXG のメーリング・リストに目を通してからエー・アイ・ソフトのサイトに行き、最新版を落とす。すぐにインストール。試しにそのまま Tech Tool 1.1.8 でデスクトップ・ファイルの再構築をするとあっさりとできてしまう。これはだいぶ良くなってきた。
 まずは『スポーン』。昨日の続きで、昼食後、ようやくあげる。その後、ニーヴ・パースンズのライナー。ネットをあれこれ探索するが、オフィシャル・サイトには相変わらず繋がらず。仕方がないので雑誌を漁る。The Living TraditionとIrish Musicの古いものをどこに仕舞ったか忘れてしまい、本と雑誌の山をひっくり返す。ひっくり返しながら少し整理。手前の山を低くする。ようようIrish Musicの記事が見つかり、これでようやく書ける。ファーストに高橋君がライナーを書いているのも発見。一瞬雑誌記事と矛盾するのでは思うが、よくよく読んでみるとそう矛盾はしていない。夜までかかって書きあげる。
 朝はハム・トーストに胡瓜。昼は釜揚げうどんに竹輪、そら豆。夜は鰹のたたき、菠薐草胡麻和え、豆腐とアブラゲの味噌汁、甘夏。
 10時過ぎもう一度メールをチェック。WXG a10 が上がっていたのでダウンロード。インストール。仮想メモリを入れると途端に不安定になる。一度は入力している途中でシステムがクラッシュ。2度目は超日記に入力しようとスペースバーを押した途端にタイプ10で落ちた。環境設定ライブラリを入替えたら、以前の設定が消えていた。
1999年6月6日日曜 晴れ後曇。
 学童保育のボーリング大会。子供たちのリクエストでボーリングにはおれが参加。9時40分現地集合のため、朝は8時に目覚ましが鳴る。会場のパチンコ屋兼ボーリング場まで皆で車で行き、われわれ三人が降りる。三分の一は父親が来ている。こちらは三人なのですいすい進み、11時15分ぐらいには2ゲーム終了。皆終わってから二階に卓球室の空いている側にテーブルと椅子をならべて軽い昼食。一番ベーシックなハンバーガーとオレンジ・ジュース、フライド・ポテト。大部分が食べおわったところで子供と大人に分けてベスト3に表彰状。
 駅前に出て、図書館。『白秋全集』の小編一の巻とデ・ラ・メアの『ムルガーの遥かな旅』を借りる。子供たちもそれぞれに借りる。Hは完全に漫画ばかり。Mも兄の真似をして漫画を借りるが、2冊はばばばあちゃんの本にさせる。
 ボーリングでくたびれたが、クワトロに架電してデヴィッド・リンドレーのギグの時間や当日券の有無など訊くうちにむらむらと行きたくなり、結局出かける。吉本家で白根儀・味弾を食べてからちょうどロマンスカーがあったのでそれで新宿。車中眠れたのでだいぶすっきりする。
 クワトロで当日券を買ってからBook 1st で今朝の書評にあった中村雄二郎の『正念場』(岩波新書)を買い、プリムローズでコーヒー。少しは自分に厳しくと思って買ってみる。この人の本は初めてで、川崎和男が傾倒しているので記憶があった。これは新聞連載コラムをまとめたものなので、今ひとつ突込みが不足のような気もする。哲学らしくないのはおそらく故意にしているものと思われる。あるいはこちらの読込み不足と著者は言いたいのだろうか。
 5時半過ぎにクワトロにもどる。最終的にまずまずの入りになった。リンドレーはご機嫌で、前回と同じく、ワイゼンボーン6本に十二弦、シターン、電気ブズーキ(?)、サーズ。打楽器奏者の方は通常の最低限のドラム・キットに、まるでヒッピーのコミューンのようにごちゃごちゃといろいろな鳴り物を飾りつけたもの。それにコンガ、タブラもあったようだ。さらにダラブッカやその他のものも使う。八面六臂の活躍。ハイライトはやはり「ウェル、ウェル、ウェル」で、サーズが一段とうまくなった感じ。間奏ではほとんど西アジアの民族音楽奏者と変わらない。くたびれたが実に楽しいライヴだった。
 Robin さん、ピーター・バラカンさん、五十嵐正さんの顔を見る。終わってから少し雑談。五十嵐さんと下に降りてCDを買い、おしゃべりしているうちにサイン会とかで締出されてしまったので、そのまま下に降り、友人を待つという五十嵐さんを残して帰る。
 新宿に出てアカシアのキャベツで軽く腹ごしらえする。帰りも運良くロマンスカーがあった。終バスに間に合い、帰宅11時。
1999年6月7日月曜 雨。

○Afro Celt Sound System VOLUME2: RELEASE; Virgin, 1999
 これを聞きながら無償に書きたくなり、朝一番でニフティ用に書いてみる。
 その後ニーヴ・パースンズのライナーを仕上げ、歌詞対訳とともにMSI宛送る。
 やはり不安定なので、Nickey を外してみる。どうも安定しているようだ。テストのため「MacOS 8.6 すべて」に Nickey を加えてやってみる。
 Good Book Guide、Interzone、クラダから先日のインヴォイスに送料と保険料が入っていなかったと言って送ってくる。Good Book Guideに目を通す。一冊、アイルランドの女性の書簡を集めた本がある。なかなか面白そう。
 出かける直前、D小説大賞二次選考に手をつけ、短篇を一本読む。今年は短期決戦で行く予定。
 渋谷・Twin's Yoshihashi でクライヴ・グレグスン&ブー・ヒュワーディーンのウェルカム・パーティ。ロマンスカーで新宿に出てアカシアで腹ごしらえ。7時半の開演で着いたのは8時少し前。ちょうど五郎さんの番が終わり、和久井さんが始まったところ。そのまま外のロビーで五郎さんたちと待っているとプランクトン・KさんとI君が来る。 休憩になったところで中に入る。演奏者のすぐ脇のカウンターの椅子を外側に向けて座る。
 二人の演奏は休憩をはさんで一時間半ほど。見事なものだった。ほぼ、交互にヴォーカルをとる。後半はまず聴衆からの質問に答える。司会は五十嵐さん。ミュージック・プラントの客のうち、タイトルを募集し、それにクライヴが即興で歌を作るという企画。ブーが歌う。後半はほぼリクエスト・タイム。ビートルズの歌なら何でもというのがあったらしく、ブーが「ナンバ・ナイン」をやろうかとジョークを言う。結局クライヴが "Here comes the sun" を一人でやった。終演は10時半前。実にアト・ホームな雰囲気のいいライヴ。
 終わってから和久井さんが新著のU2本でおれの記述などを参考にしたといって挨拶に来る。Show of Hands のことなど話す。やはり知らなかった。五郎さんと和久井さんと住所など交換。
 結局うだうだと Bushmills black を飲みながらすごし、ミュージシャンたちを見送ってから神泉の駅に出て帰る。終電に間に合い、帰宅一時過ぎ。
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