大島教授の[暖蘭亭日記][99年6月22日〜 6月30日] [CONTENTS]

1999年6月22日火曜 曇りのち雨。
 Mは一月遅れの遠足。幸い、雨が降りだしたのは2時ごろだったから、遠足の間はなんとか保っただろう。
 朝からD小説大賞のための原稿読み。最後の4本。読み終わって評価をし、全体のリストを整理する。今年も飛び抜けたものはない。昨年同様、どれが最終選考に残ってもかまわない気分。面白くない。
 CDUniverseからCD2枚。

○Black 47 HOME OF THE BRAVE; EMI, 1994
 ニューヨーク・ベースのロック・バンド。アイルランドをモチーフにした曲を書く。"Danny boy" などやっていて、これはなかなか面白い。アイリッシュ/ケルティック・ロックと言うには少々アメリカが勝ちすぎている。曲自体はあまり面白くない。アイリーン・アイヴァースの入っている曲はポーグス風のもの。追いかけるかどうか、ちょっと迷う。
 
 夕方、音友・Kさんから電話。明日の件。早めに来てくれとのこと。
 PowerBookにもSETI@home をインストールして、データをダウンロードする。恐ろしく遅い。
 夜は本棚の後ろから見つけた『世界SF全集』の世界短篇古典編に入っていた「フェッセンデンの宇宙」を再読。作者は勘違いしていて、エドモンド・ハミルトンだった。
1999年6月23日水曜 曇。時々薄日。気温はそう上がらず。
 朝、出かける前になって音友から来ていたゲラを見だしたり、パイプのCDを探したり、創元・Yさんにファックスを送ったりしていたため、結局家を出たのは11時前。本厚木の駅で音友に架電。まっすぐ飯田橋へ出て、三州屋で昼食。久しぶりだが、まるで変わっていない。値段が少し高くなったか。と言っても刺し身定食になめこ汁で1000円。昼食時少しずれていたので比較的早くありつけた。
 音友には1時15分ぐらいに着。別館のスタジオの下の会議室。Kさんが小さいものだが段ボール4箱分の資料を運びこむ。そうこうするうちにデザイナーのF氏とT氏が到着。地域別にヴィジュアルとして使えそうな写真をレコードのジャケットなどから選んでゆく。イベリアは長嶺さんがいい写真をたくさん撮っていたので楽。南欧がなかなかなかった。三時半過ぎに各章扉用の写真まで決めて作業は終了。その後、持っていった自分のところのゲラに朱を入れる。4時半終了。編集部を覗いたらSさんがいたので、近くの喫茶店で三十分ほど話す。
 神楽坂を降り、深夜プラス1でA君相手に1時間ほど時間潰し。本の雑誌7月号と『天才数学者たちが挑んだ最大の難問』アミール・D・アクゼル/吉永良正・訳、早川書房を買う。
 しなので夕食。相盛りけんちん汁。
 食べながら『本の雑誌』の宮田さんの連載、笹塚日記、坪内氏の読書日記など読む。宮田さんは字幕翻訳の清水俊二氏のこと。試写室で立ったまま映画とシナリオを見くらべる氏の姿の厳しさに姿勢を正す。まっすぐ帰宅で9時。
 メールをチェック。WXG 新版が出ていたのでダウンロードしてインストール。iCab 新版がついに日本語対応したのでダウンロード。MRJが必要とのことで 8.6 のディスクから 2.1.1 をインストール。ついでに ColorSync 2.6.1 もインストール。WXGはPowerBookにも入れる。

○Ralph McTell TRAVELLING MAN; Leola, 1999
 2枚組ライヴ。全くの独演会。ディランの「北国の少女」以外すべて自作。ROYAL ALBERT HALL も全くのソロのライヴだったが、これもまたすばらしい出来。特別なことは何もやっていないが、なんともすばらしいの一言。フォーク・シンガーかくあるべし。

○Liisa Matveinen OTTILIA; Olarin Musiikki, 1996
 Niekku のメンバーだった女性のソロ。Tallari にも属していて、ここでもそのメンバーたちが共演。ソロ名義になっているが、むしろグループとしての演奏。凛とした、気品のある演奏。フィンランドの歌の伝統を改めてみせつける。

○Cordelia's Dad SPINE; Appleseed, 1998
 ようやく聞く。確かにフィドルが入ってインスト面が充実した。ティム・エリクセンのヴォーカルはますます気合いが入っている。今回は冒頭2曲がオリジナルだが、これがまた全くの伝統曲に響く。たいしたものだ。全体のバランスはあまり良くないが、個々の曲の演奏のとんがりぶりではこれまでで最高の出来栄え。

 帰りの電車で時間が余ったのでもっていった『夷斎筆談』を読む。「面貌について」。小説の「キャラクター造形」の無意味さをばっさり切る、痛快な論。さすが。
1999年6月24日木曜 曇、風強し。

○Kouerien REEDITIONS; Coop Breizh, 1997
 1970年代前半に活動したバンドの三枚のアルバムからのベスト盤。バンジョーがあったり、フィドルが活躍したり、ギターがリズムを刻んだり、まだ模索状態にあることは明瞭だが、それでもブルターニュらしいリピートの多い内部熱の高い演奏は今でも新鮮。女性のチェロ奏者やヴォーカルで何人か女性が入っていたようだが、ジャケット裏のかつてのメンバーの今の記念撮影には女性は一人も入っていない。ちょっと残念。
 ディスクユニオンからサンプル盤。初めて。珍しいこともあるものだと開いてみると、復刻専門レーベルらしい。英国のシンガー・ソングライターのアルバムを狙うらしい。第1弾のライナーは小山哲人氏。
 Paul McCann から資料とCD。翌朝10時着便というやつで来る。CDは昨年ライヴ会場で買っていたものと同じ。
 音友・Kさんから電話2本。昨日返してもらってもちかえったLPの中に一枚まだ必要なものがあったので送ってほしいとの依頼。Melusine のアルバム。ハーディガーディの写真がいるとのこと。東京創元社・Y山村さんから電話。昨日ファックスした件。すでにK氏が気がついて、修正済みとのこと。K氏にかわってもらい、星雲賞の訳者のコメントの件を伝える。窓口になっている企画担当者は返事が早いので聞いてみるとのこと。著者からの返事が来ないと言うことなので、一度メールを入れてみようと答えて、夜送る。
 午前中、掃除をしたりしてから『緑』ほんの少し。
 午後からはジェリィ・オコナー関連のCDを聞きまくる。意外なのは Gordon Duncan のアルバムへの参加で、ハイランド・パイプとバンジョーのデュエットというのがある。ファーストを聴直すと、これが実はかなりの出来。アレンジとかアンサンブルなどはシンプルだが、その分、バンジョー自体はこちらの方が前面に出ているかもしれない。
 朝刊1面の広告に、先日読んだばかりのD小説大賞一次選考通過作が6月新刊として出ているのを発見。タイトル、歌い文句、著者の姓が同じ。ひどいものだ。常識がない。すぐにYさんに架電。今回はいずれにしても外して惜しくないものだからいいが、優秀作品だったら問題だ。
1999年6月25日金曜 雨やんだり降ったり。
 朝、10時前に郵便配達のおばさんが来る。昨日配達しきれなかったのか、馬鹿に早い。
 Good Book Guideから3冊。NEW WRITINGS 8 とアイルランドとロンドンのスラングの辞書1冊ずつ。Blackmail からCD2枚。なかなか早い。一枚は品切れで後から。デイヴィ・グレアムの1枚は案の定ダブった。別便でアオラからサンプル2枚。マリア・デル・マール・ボネットとセドレンの新譜。
 午前中は昨日の続きで、ジェリィ・オコナーのアルバムに入っているミュージシャンの他の参加作を検索、打ち出す。1時過ぎに家を出て、池袋へ。ダブリナーズに着くと畠さんだけいた。しばらくしてからのざきさん、茂木と来る。ギネスを飲みながら、ジェリィ・オコナー MYRIAD についてしゃべくる。というよりも、おれが質問して話を聞く。6時過ぎまであれやこれや。終わってから畠さんは新橋へブルーグラスのセッションに行き、のざきはヴァン・ダイク・パークスのライヴへ行く。おれは別れてアカシアで夕食。今日はキャベツが冷たく、KRBもぱさぱさしてる。どうも、最近味が落ちている。店は相変わらずアベックや女性の二人組で満杯。おみやげに中村屋で甘栗を買って帰る。帰宅9時。帰りの電車の中で立ったままうつらうつらしてしまう。途中で座れたのだが、今度はあまり眠れず。メールをチェックするとキム・スタンリィ・ロビンスンから返事が入っていた。どこへ返事を送ったらいいかわからぬまま、忘れていたといって、回送してくれないかとメッセージも書いてあった。
1999年6月26日土曜 曇。蒸し暑し。朝のうち弱い雨。
 起きると9時すぎ。妙な夢を見ていた。目が覚めると皆忘れる。朝食後、一人で図書館。窓口で連絡があった旨伝えると、分厚い本を4冊持ってきた。全部県立からの借出し。やれやれ。予想通り、『過去と思索』は超弩級の本であった。
 帰ると中山さんのご母堂から日本酒の一升ビンが届いていた。ほかに、Amazon.co.uk からロシアの新進作家 Victor Pelevin のペーパーバック3冊。リンク・クラブの機関誌、bounce など。
 昼食後、ラティーナのHさんから初めての電話。映画『ウェイクアップ・ネッド』の映画評の依頼。喜んで引受ける。後でメールも確認。
 夜、先日ポール・マッキャンから来たファックスに目を通し、一点不明のものをSherlockで検索。Andrew Lloyd Webber 作のミュージカルであった。『ジーザス・クライスト・スーパースター』の先駆けとなった作品らしい。エジプトのヨセフの話。 夜、SETI@home の最初のユニットが終了し、送っていいかのダイアローグが出ていた。OKボタンを押すと、結果を送り、次のデータをダウンロードし、自動的に解析が始まる。今回の解析は前回のものよりも早く進む。
1999年6月27日日曜 雨、降ったり止んだり。
 7時半起床。義父の退官祝いに御馳走する約束。Hは始めしゃぶしゃぶなど嫌いだとかいっていたが、いざ食べはじめると一番量を食べていた。Mもひどくおとなしく、もくもくと食べている。最後のそばも含め、結局一番食べていた。2時前に出て、新宿のさくらやに寄り、Vine Linux 1.1 Commercial Release を買う。帰りはロマンスカー。眠って帰る。本厚木に着くと、どしゃぶり。帰宅5時半。
 帰宅後、夕方から夕食までの間にポール・マッキャンに頼まれていたジムの経歴の翻訳をかたづけ、夜、ファックス。
1999年6月28日月曜 曇。
 朝のうち雨が残っていたが、昼前には上がり、そのまま降らず。
 朝、昨夜考えた音友本の各章扉のキャッチコピーをKさん宛送る。メールをチェック。
 11時に出かける。新宿でソフマップを覗き、iMac 用の再起動スイッチがあったので購入。御茶ノ水に出て、ザ・ハンバーグで食事。200グラム、目玉焼きのトッピング。D小説大賞二次選考会。編集部から10人ほどとCとおれ。2時間ほどで5作品を選ぶ。終わってから山の上のワイン・セラー、神保町の日本酒の飲み屋、四谷のジャズ・バーとはしご。最終に間に合い、帰宅1時。
 Fred Hanna'sから荷物。MSIからCD2枚。History Ireland, New York Review of SF。Fred Hanna'sのものは THE COMPANION TO IRISH TRADITIONAL MUSICだった。
1999年6月29日火曜 曇りのち雨。
 やはり睡眠不足で、昼食後1時間ほどうたた寝。
 東京創元社・K氏と連絡。ロビンスンのメッセージの件。ロビンスンのメッセージを訳し、自分のメッセージをつけて、Kさん宛送る。
 プランクトンから頼まれていた沖縄音楽とアイルランド音楽についての原稿を書き、送る。
 iCab の日本語版、MacOS Runtime for Java, MacOS ROM Update, ColorSync などをダウンロード。インストールする。
 ゲルツェンの『過去と思索』を本格的に読みはじめる。沼野氏は訳も良いようなことを書いていたが、実際にはまだ学者訳だ。ましな方ではあるが、えっと思われるような文章がまだまだ多い。特に原注の文章にはいささか辟易した。内容は評判にたがわずすばらしい。冒頭、いきなり生後まもなく家族が巻込まれたナポレオンのモスクワ占領の様子が生々しい。
 夜、ふと最近のBookWorld を読み、Neal Stephenson と Elizabeth Hand の新刊が面白そうなので Amazon に行ってみる。思わずあれこれ買い物籠に入れてしまう。いざ注文の段になって、試していた iCab がセキュア・サーバに入ろうとしない。バグなのかどうか。結局落ちてしまう。
1999年6月30日水曜 豪雨後晴。
 午前中は猛烈な雨が断続的に降る。正午前に上がると、後はどんどん雲切れてきて、夕方には太陽が出る。
 午前中、PTA役員会。
 朝と午後、『スポーン』の訳稿チェック。3時半過ぎ、ポール・マッキャンから電話。先日送ったファックスが着いていないというので再送。どうやら番号をまちがえて送ったらしい。一ヶ所潰れて見えないというので、もう一度そのページだけ送る。
 プランクトン・Kさんに架電。昨日送った原稿は合格。沖縄に送って新聞社の担当者に読んでもらっているところだとのこと。追加の原稿があるかもしれない。夜、Kさんから電話。やはりリアム・オ・メーンリのことを書き足してくれとのこと。のざきさんから白石さんの書いたFellsideのライナー。Jさんからメールの返事が来て、そこに書いてあった彼女のバンドのサイトを覗く。かなりの大所帯で、なかなか本格的なようだ。一度生を見てみたい。
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