1999年8月1日日曜日 晴れ、風あり。
昨夜はなかなか寝つけず。よって今朝は起床10時。
昨夜、急にインターネットにつながらなくなった件、iMac を立ち上げてやってみるが症状は同じ。PowerBookでも同じ。いろいろ考えた末、ルータのファームウェアをインストールしなおしてみたら直った。QuickTime 4 をインストール。途中何回かエラーで切れ、それでもつづけているとちゃんと前回切れたところからダウンロードが続いて20分ほどで全部ダウンロードでき、すぐに自動的にインストールがされる。ほっとしたのも束の間、PowerBookのクリック・キーの調子がおかしい。ぽんと押しただけでは反応しなくなってしまった。念を入れてていねいにうんと押してやらなければならない。それでも押したままメニューを渡っていくときなど、途中で切れてしまうことがある。また修理に出さねばならないか。それとも、iBook が出るまで待って、それから出すか。いずれにしても修理そものものはまだタダでできるはずだ。と思ったら、ソフト的なものだったらしく、使っているうちに直ってきた。
朝食、葡萄パン。昼食、そうめん、プチトマト。夕食、ゆで鶏に大葉、茗荷、生姜、胡麻ダレをかけたもの、豆腐とあぶらげの味噌汁、ご飯。胡麻誰は金胡麻を煎り、醤油と酢であえる。
仕事は午前中『緑』、午後『アイルランド』のゲラ。 |
1999年8月2日月曜日 晴れ、風あり。夜に入り、涼しくなる。
夜、中山(義雄)さんから電話。デイヴィ・グレアムの資料がないかという問合わせ。白石(和良)さんがないと言って困っているというので、それならこちらにもないと応える。あとは雑談。Tom Pacheco の新譜がすばらしいという話。
Tower UK からCD二枚。Good Book Guide、Book World 2週分。どちらもこれといったものはなし。邦楽ジャーナル。来月号で定期購読が切れるという通知。東京創元社・Yさんから神田三省堂本店のベストセラー・リスト。ホーガンが12位と健闘。重版が出てくれればいいが。
夕方、Amazon へ行き、A S Byatt の中編集2冊と Lyle Lovett の新作ライヴを注文。仕事は『緑』。
K、子供たちを連れて鵠沼プール・ガーデンに行くと言って出かけ、夕方5時半帰宅。結局持っていった割引券が使えなかったので、プールに入るかわりに海で遊んできたそうな。
朝食、昼食、夕食と宮崎市定『東西交通史論』を読みつぐ。ひっかかっていたところを越えるとやはり面白い。
朝食、クロワッサンにイチゴジャムと葡萄パン。昼食、北京餃子(冷凍)、キャベツたっぷりの味噌汁、トマト、ご飯。夕食、釜揚げうどん、南瓜のソボロ餡煮、メロン。 |
1999年8月3日火曜日 晴れ、風あり。
起床9時。朝食を食べながら宮崎市定『東西交渉史論』中公文庫読了。途中、南洋史概説のところで退屈になり、ひっかかったが、あとは面白く読む。特に後半、アジア大陸を舞台に東西の人間の動きとそれに伴う歴史の動きがダイナミックに、しかも意表をつく角度から描き出されているのには巻措くあたわず。「宋元時代の西域」以降の5編。 仕事はブラウンのゲラ。
ソウル・フラワー・ユニオンのライヴ。渋谷 ON AIR EAST。ゆっくりめに着くようにするが、それでも開演30分前ぐらいには着いてしまう。場内に入り、缶入りのジン・トニックを飲んで待つ。入ったときはまだ半分ぐらいの入りだったが、やがて満杯。Sさん、志田さん、I君が見える。Kさんは他の用事があるとかで、結局終演間近に来て見ていたらしい。開演前の音楽は例によって凝っている。キャブ・キャロウェイらしいものがあり、ジョセフ・スペンスもあった。待つほどに音楽が変り、サックスのソロが大きくなるとメンバーが出てきて、始まる。中川さんは絶好調という感じ。今回は太田恵資氏がおらず、六人編成。この方がバンドとしてのまとまりはいい。しかし今日はとにかく中川さんが「怒りまくって」いて、その怒りをそのままエネルギーに換えてがんがんに攻めまくる。バンドもそれに合わせてハードに迫る。三日前の韓国・釜山でのコンサートのことなどもしゃべっていたが、大受けに受けたらしい。もっとも「満月の夕べ」など、神戸の長田ちゅうて在日コリアンがたくさん住んでるところで、オーッ、震災では大変だった、オーッ、という具合だったそうだ。このバンドはすでに演奏がどうのこうのというレベルは越えているが、サウンドがひどく、聞くところによるとPA用のスピーカーを安いものに換えてから悪くなったそうだが、特に後半、少し音が大きくなるともうだめ。大熊さんのクラリネットもほとんど聞えない。音の塊になってしまう。それでも中川さんの歌だけが突抜けてくる。ヒデさんのマイクもひどくて、歌詞はほとんど聞取れず。しかし、とにかく「ロック」のライヴだ。個々の音が聞取れなくてもグルーヴやハートの部分では熱いことは確か。実に楽しい。中間部、「寒いタイム」はちょっと短めで、もう少しじっくり聞きたかったが、とにかく中川さんが「怒って」しまっているから、じっとしていられないのだろう。アンコール2回で2時間半。
終わってから一度外に出る。しばらくしてもう一度中に入ると、メンバーが三々五々出てくる。ヒデさんとは久しぶり。中川さんがやたら元気だったのは一人だけ3200円のユンケルを飲んでいたためだそうだ。他のメンバーは1000円ぐらいのやつだったらしい。韓国ではとにかく釜山が全員気に入ってしまい、ぜひともツアーに組入れたいと思ったそうだ。テレビの全国中継も入ったらしいが、露出度が高く、髪を染めているヒデさんだけは韓国のNHKに相当するものでは放映されなかった由。衛星とかではかまわないらしい。中川さんは出てこず。ばててしまったという。Sさんに小野島大さんに紹介される。
そこから打上げ会場に移動。Kさん、I君、志田さんなどと隅に座って飲んでいるとメンバーがやってくる。平安隆さんも一緒。隣に大熊さんが来て、あとでKさんが紹介してくれる。管楽器のことでいろいろ面白い話が聞けた。クラリネットというのは実はいろいろ種類があって、バスクラは全く別の楽器なのだそうだ。コンポステラはライヴ音源もあり、『東京チンドン』の第2集も録音は終わっているらしいが、リリースのめどは立たないという。何とか世に出てほしいものだ。
今日は覚悟してきていたので、そのまま残る。2軒目に残ったのは10人ほど、小野島さんがあちこち案内するが満員で、結局ガード下の二十四時間営業というせまい居酒屋に入る。2軒目では平安さんとヒデさんに捕まる。おかげで面白い話は聞けた。ヒデさんの御母堂とドーナルが同い年であることをドーナルが知って驚いたとか。アイルランドに行ったとき、ドーナルに以前使っていた大正琴をあげたら、大喜びして弾きだしたのはいいが、使い方はわからないから抱えてしまったそうだ。それでもしばらくあれこれやっているうちに自分のものにしてしまったらしい。ちょうどその時録音していたマイレートとトゥリーナのアルバムにかなり使っていたという。これは音が楽しみになってきた。セッションもやって、とても楽しかったそうだ。
平安さんも、先月カナダのケベックの大がかりなフェスティヴァルにブロッツマンに誘われて行き、大成功したという。その時出会ったギリシアの天才的ブズーキ奏者と意気投合し、ギリシアに行く話が持ち上がっているそうな。その人はやや知恵遅れらしいが、ことブズーキを持つと前人未到の域に行ってしまう。ケベックのフェスティヴァルは音楽だけではなく、大道芸やアートも含み、町全体が一週間ほどの間、お祭りになるそうだ。そこに招かれたミュージシャンなどは街全体のゲストで、規則に従い身分証明書をぶらさげて歩いていると、店から声をかけられて食べ物や飲物をくれようとするし、飲食店に入っても料金をとらない。行く前に大使館に行ってビザなどもらうときも、招待状をもっていくとその場で判がもらえた。一週間、世界中から集まってきた一流のミュージシャンたちと自由にセッションできて本当に楽しかったという。時には楽屋で予定にないセッションが始まり、そのままステージに出てやってしまったこともある。平安さん自身、観客にもミュージシャンたちにも強烈な印象を与えたようで、すでに来年も来てくれという話になっているそうな。とにかくボブ・ブロッツマンとの出会いは、平安さんにとっては最高の転機になったことは確かだ。沖縄にこだわっていた自分が小さく見えてきた、という言葉は大きい。
もっとも沖縄の音楽に対する愛情は人一倍で、羽織袴着て民謡を歌うなんてナンセンスと切って捨てる。沖縄民謡の名を高からしめた人たち、嘉手苅林昌も照屋林助もみんな遊び人であり、民謡なんてしゃちこばってやるもんじゃない。登川誠仁先生がことし出したCDなんぞ、遊びまくっている、と熱弁を振るう。確かにアイルランドでもそうだが、伝統音楽のコアの人たちは別に格調高い「古典芸能」をやっているわけではなく(といって必ずしも低俗なわけでもないが)、音楽自体は遊びでやっているものだ。ひょっとするといわゆる音楽評論家たちが沖縄民謡を「格調高い」「純粋な」ものとしてまつりあげてしまっているのだろうか。
すっかり夜も明け、さて出ようという段になってヒデさんがトイレに入ったまま出てこない。どうやら鍵の開け方がわからなくなってしまったようで、店のおばさんとかがすき間からドライバーのような物を入れて開けようとしたりしてしばし大騒ぎ。 |
1999年8月4日水曜日 晴れ。風弱く暑し。
5時半頃に店を出て帰宅。家に着いたのは7時半前。それから寝ようとするが、子供たちがうるさくて眠れず。少しうとうとしたか。
留守中、五郎さんの出版記念会の案内のファックスが入っていた。
10時過ぎ、ビクターのO氏より原稿督促の電話。あとで送付先メール・アドレスがファクスで入る。 |
1999年8月5日木曜日 晴れ。風なく、暑い。
午前中『緑』。午後、ビクター・O氏のための曲解説。Oさんからもらったトラック表が見当たらず、さんざん捜しまわる。机横に積みあがった書類も整理する。結局パソコン台の脇においてあった。締切8月2日とちゃんとメモしてある。夕方までかかって何とか書上げ、メールとファクスで送信。トマス・ムーアの曲についての情報がない。あの本はどこかに貸してあったっけ。夜はニフティの書込み。
朝食、ホットケーキ、トマト。昼食、鰹の叩き、キャベツ和布、茄子の味噌汁、オクラ。夕食、カレー(チキン、ジャガイモ、人参、玉葱、南瓜、ピーマンなど) |
1999年8月6日金曜日 晴れたり曇ったり時々雨。
起床8時半。今朝は比較的涼しい。
○平安隆&ボブ・ブロッツマン 童唄;リスペクト、1999
唸ってしまう。2回繰返して聞いてしまう。まさにまさに新しい。そしてまたここには伝統の核がある。異なる伝統のぶつかり合いがある。異なる伝統の本当の意味での融合がある。これは楽しい。傑作。
Amazon から本1冊。ポール・マコーリィの短篇集。のざきからジェリィ・オコナーの見本。
朝食、ハム・トースト、フレンチ・トースト、トマト。昼食、カレー(昨日の残り)、鰺の開き、ご飯、胡瓜。
MSI・Sさんから電話。9月に Poozies と Kate Rusby をやるというので歌詞対訳の依頼。その前に各曲の邦題を来週火曜日までに。
かものはしに架電。荷風展に行くのを日曜をやめて10日の火曜日にする。
昼食後、メールのダウンロード。Iomega の新しいドライバ等ダウンロード。T-Time のリビジョン・アップをダウンロード。そこの記述を見て、QuickTime 4 のコンポーネントをダウンロードしてインストール。これだけでかれこれ1時間かかる。
メルダックよりメアリの新譜のサンプル・かセット。ドーナル、スティーヴ・クーニィ、メアリ自身のプロデュースだそうだ。通算9枚目だというが、もっと出しているような気がしていた。
夕食はシソを巻込んだとんかつ、キャベツの千切り、豆腐の味噌汁、ご飯。Hに米伽と仕掛けを任せたら、水を入れずに炊いていて急いでやりなおし。その騒ぎで風呂はやめてシャワー。
夜、Aさんから電話。例によって長話。0時半まで。クレジット・カードが嫌いなのでニフティにもプロバイダにも入れないというので、ケーブル・テレビはどうかと言っておく。短いメールなら携帯から送れるそうで、あとでメールが入っていた。
電話を終えてからメールの送付とダウンロード。iMac に QuickTime 4 を入れたら、WXGで日本語入力し、確定するとシステムが落ちるようになってしまった。さらにはデスクトップが現れた時点で止まってしまう。とりあえずデスクトップファイルの再構築をすると立上げだけはできるようになったので、日本語入力を使わずにメールを送る。月曜日にWXGの新版をアップするというエー・アイ・ソフト・Sさんのアナウンスがあったが、それでどうなるか。
就寝1時半。寝る頃に雨が結構激しく降ってくる。 |
1999年8月7日土曜日 曇。
起床9時。
昨日着いた檜の枕で寝てみる。細かい檜の屑を袋に入れたもの。香はいいし、通気が良くて汗もかかないが、いかんせん小さい。昼寝にちょうどいいかもしれない。
今日みたいな日は午前中、蝉の声がほとんどしない。小学校の外壁の塗り替えで、古いペンキを削り落としているのかグラインダのような音がかしましい。
音友からスコットランド音楽の本。著者は以前論文を見たことがある人で、スコットランドのトラヴェラーの研究をしている人だ。この本もスコットランド音楽全体というよりも、トラヴェラーとその世界から見た音楽という感じらしい。
午前中は断続的に『緑』。昼食後、昼寝。結局1時間ほど寝たらしい。おきると3時15分前。昼食の食器を洗うと3時。4時過ぎ出発。スイミングで子供たちを拾い、そのまま実家へ向かう。宮前平の駅でおれだけ降り、渋谷へ出る。久しぶりに「げんこつ」で腹ごしらえ。「桂花」のターロー麺に対抗してげんこつ香油ラーメンというのを作っていたのでそれを食べてみる。肉は似たようなものだが、ちょっとしつこい。スープはまあまあ。ターロー麺の方が微妙な軽さがある。
行きの車の中で、昨日着いたメアリの新譜 SPEAKING WITH THE ANGELS のサンプル・カセットを聴く。一聴、これはいい。曲もいいし、アレンジもいいし、メアリの歌唱もまた幅が広がって、油が乗っている。
クワトロでヒートウェイヴのライヴ。完売だそうだ。中に入るとやはりいつもとは客層も違う。今日は知っている人はI君だけ。Kさんは家庭の用件で来れず。開演前のアナウンスの最後で「それではケツの穴をしめてもうしばらくお待ちください」と言ったので場内爆笑、喝采。やや押しで始まったステージはアンコール二回を含め終演10時。最後はさすがに少々くたびれた。もっとも立ち見もだいぶ慣れてはきた感じがする。
ライヴはすばらしいもので、バンドの演奏能力も一体感(山口さんの言葉を借りれば「グルーヴ」)も上がっている。本人たちの体調も良いようだ。ややゆっくりめの新曲インストで始まり、3曲目あたりから全開。ザ・ブームの宮沢氏は初めて見聞したが、日本に置いておくのがもったいないほどのヴォーカリスト。もう一人のゲストの近藤氏はふだんは英語で歌っているそうだが、二曲歌ったヒートウェイヴの歌はなかなかのもの。宮沢二曲、近藤三曲。近藤氏とは山口さんとのアコーティック・ギターのやりとりもあって面白い。アンコール前のラストの曲はノリにノっていた。一番心に沁みたのは、「満月の夕べ」で、ヒートウェイヴ版が初めて説得力を持って聞えた。感動。もう一曲はアンコールで宮沢氏と山口さんが二人だけで、アコーティック・ギターだけを伴奏に歌った歌。こういうのだけのステージも悪くないのではないか。もちろんもっと小さなところで見てみたい。
終演後、I君と場内に残っていると、ポール・フィッシャーさんがやってきた。平安さんの新譜がすばらしいことを話す。英国でのリリースが決まったそうだ。Rough Guide を出している Worldmusic Network の由。fRoots誌編集長イアン・アンダースンも気に入っているという。fRootsの年間ベストにも入るかもしれない。おそらくブリテンでライヴすることになるだろうとこと。カナダではすでに大スターだそうだ。ご本人が言っていたギリシアはまだわからないが、南アフリカの東にある島には行くことになるらしい。もちろんボブ・ブロッツマンと一緒。平安さんはすでに世界を相手にしているのだ。
とにかく喉が乾き、ビールを飲みながら待っているとメンバーが出てきて、山口さんに挨拶。ソウル・フラワーと比べるとこの人は本当に等身大で、ファンも仲のいい友だちとして一緒に騒いでいる感じだ。中川さんは一応の仕切りは立てている。多分あれは無意識のもので、心を許したというかこいつは大丈夫だと見極めた人間でないと近寄らせないのだろう。そういう場合でも、相手が近寄るルートを中川さんの方で指定している按配だ。山口さんはもう少し鷹揚というか、のんびりしているというか、比較的誰とでもわけ隔てなく接する。ファンの方も一段高い人間とは見ていない。クリエイターとしては中川さんの方に分があると思うが、パフォーマーとしては山口さんの方が上だろう。打上げの店でぎりぎりまでおしゃべりする。I君と二人だけで話をしたのは初めてで、なかなか面白い。プランクトンに入ってよかったと思っているというのを聞いて納得。帰宅は1時半。家族が実家に行って誰もいなかったのに家の中が暑かったのでエアコンをかけて1時間切タイマーにする。エアコンが止まるまで Byatt の The djinn in the nightingale's eye を読む。半分まで来てようやくタイトルのジンが出てくる。そこから俄然幻想小説になる。 |