大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 1月 21日 (金)〜 1月31日] [CONTENTS]

2000年 1月 21日 (金) 晴れ。朝は寒し。

 朝食はエボダイの開き、大根とエノキの味噌汁、昨夜の残りの肉じゃが、菠薐草の胡麻和え、昆布の佃煮。子どもたちは肉だんご。昨夜、米を研いだだけで、仕掛けるのを忘れ、急速炊きで炊く。やはり味は落ちる。

○annA rydeR POSCIT ON FIRE; Woodworm Records; 1999
 歌うたいというよりは歌つくりという方が適当だろう。歌のうまさでうならせる人ではなく、むしろ等身大の歌に親しむ形。バックはらっぱ類も使ってかなり面白い。じっくり聞込むのではなく、何度もさらさら聞くうちに良くなってきそうだ。

 午前中は松平さんを偲ぶ会に持ってゆくレコードの選定。

○Lucy Kaplansky TEN YEAR NIGHT; Red House, 1999
 この辺は何がどういいというのが難しいが、聴けば、ああ、いいなあ、という他ない。Larry Campbell のマンドリンが効いている。流れるような曲をややダルな声でごつごつとうたう。ジュリィ・ミラーのような触れれば切れそうなやばいところはない。安定感のある人だ。

 昼食は若布ご飯にして目玉焼き、朝の残りの味噌汁、菠薐草、肉じゃが。
 メールをチェックし、送ろうとしたら受付けられない。何度か時間を変えてやってみて結局リンククラブのサポートに架電。メーラーを変えてやってみてまた架電。アドバイスを受けながら、ふとルータのファームウェアを見てみると、so-net に送る設定に変わっていた。昨日アップデートしたとき、何かの拍子に変わってしまったものらしい。

○Whistlebinkies TIMBRE TIMBRE; Greentrax, 1999
 前作はきりっと引締まった佳作だったが、これはまたしっとりとスローからミディアムを聞かせるアルバム。もともと突走ることを嫌うバンドだが、今回はことにゆるやかな味わいを大切にしているようだ。うたは一曲以外全部ガーリックで、その一曲もまるで英語には聞えない。それとこれだけの人数のバンドなのに、音が清楚で、いっそすらりとしている。いたずらに厚みばかりあっても仕様がないが、もう少し膨らみが欲しいところ。

 ドーナル本の件で、山口・中川両氏と打合せ。夕方出かけるが、時間が早すぎ、駅についたときもまだ山口さんは帰宅していなかった。猛烈に寒かったので、駅近くの蕎麦屋に入る。熱燗を頼み、味噌巻繊饂飩。ようやく生返る。10時半を回って駅前にもどって架電。中川さんがその辺の店で食事をしているはずだというので、行ってみるとヒデちゃんと二人で飲んでいた。ここでも熱燗一本飲み、やがて迎えにきてくれた山口さんの車でご自宅に伺う。そこで飲みながらあれこれおしゃべり。結局4時頃に横になる。
2000年 1月 22日 (土) 晴れ。昨日よりは暖かい。

 目が覚めると昼近い。家に電話を入れたが誰も出ず。山口さんが昨夜から作っていたパスタをごちそうになる。実に美味しい。とりあえず中川、ヒデ坊と三人で駅まで行って電車に乗る。小沢昭一と対談するという中川さんは途中で乗りかえ、ヒデ坊はプランクトンに行くというので渋谷から歩いて案内する。プランクトンでちょっとおしゃべりしてから一人辞去して新宿。買物して帰る。

 『踊る地平線』上巻読了。イングランドのダービィの話、パリへの飛行なども目立ったが、何と言っても巻末のパリの章は秀逸の一語。続いて下巻に入るが、冒頭の闘牛の描写はこれまた見事の一言。
2000年 1月 23日 (日) 曇一時雨。それほど寒くはない。

 松平さんの追悼会。下北沢『ラ・カーニャ』。開場一時間前に着く。船津さんが送っていてくれた追悼の小冊子の製本などしているうちに、3時頃から、まずトラッド系の人たちがぼつぼつと集まりはじめ、やがて、年長組が現われる。松平さんのご遺族も、ご母堂はじめ、未亡人、お嬢さん、Nさん、皆さんいらしてくださった。浜野トオルさん、五郎さんや、矢吹伸彦さんのご一家も見えられる。入代わり立代わり、想い出を語り、あるものは想いでの曲をかけ、ある人は生演奏もしてくださる。トリは五郎さん。最後をMがハイランド・パイプで締める。はじめはちょっとどうなるか不安な部分もあったが、やっていくうちにいい雰囲気になった感じ。まずは楽しく送れたのではないか。10時過ぎに一応幕を閉じ、その後、主立った人たちとまたひとしきり飲む。マスターに礼を言い、ヴィヴィドのEさんとラーメンで腹ごしらえしてから帰宅。

 帰宅後、『洋酒天国』をめくって谷譲次の文章があったはずだと探す。36号(1959年5月)に「マダムを賭ける」の後編が載っていた。この人の文章を読んだのはこれが最初で、『踊る地平線』を読むまでは他にはなかった。この文章の活きの良さ、気息呼吸の巧みさには昔読んだときにも魅入られたのだ。よく見ると同じ号には巻頭に寿岳文章があり、埴谷雄高が連載している。昔読んだときには目に入らなかったと見える。それにしてもこういう雑誌を毎月作ってただ同然で配っていたサントリーという会社はりっぱだ。しかもやらせていたのが開高健だ。企業が文化に貢献することは結局最大の宣伝なのだ。
2000年 1月 24日 (月) 晴れ後曇り。

 暖かく、セーターを着て歩いていると汗ばむ。
 朝食はハム・トースト、昨日のブロッコリの残り。
 呆然とした一日。電話の日。

○The Celtic Fiddle Festival ENCORE; Green Linnet, 1999
 言うことなし。またまたライヴ。ここまで来ると、うまい下手、いい悪いの次元ではない。こういう音楽を、家にいながらにして浴びることのできる幸せ。

 歯医者。左上の続き。前回詰めたストッピングが減ってしまったので、今回は再び厳重な詰め物となり、固まるまで脱脂綿の塊を噛ませられる。浮いた分は歯を削るのと同じく削る。

 とにかく出かけようと駅前に出て、腹が減っていたので吉本家で早めの昼食。まずラオックスに行き、CD-Rドライヴを見るが、ここは周辺機器をガラス・ケースの中に入れてカウンターにしていて、見難いことおびただしい。Mac用は少なく、良くわからないので諦める。一階の書籍売場でパソコン音楽関係の本が見当たらないので、タハラに行く。一階でタブラトゥーラのアルバムを探すが見当たらず、店員に訊くと、既存盤は全部廃盤になっているという。二階でDTMの雑誌を立読み。地下に降りて、ドゥルス・ポンテスの新譜と山里勇吉のCDを買う。ところがこれをどうやらバス・センターのベンチに置忘れてきたらしい。持って行った『踊る地平線』(下)が面白く、夢中になって読んでいてのこと。おまけにバスの中ではくたびれたか眠ってしまった。

 ネットであちこちさがし、タブラトゥーラのアルバムのうち、新しい方の2枚、1枚は大阪のレコード屋のネット通販、もう1枚はオフィシャル・ウェブ・サイトで注文。ついでに Amazon.com に行き、Ashely Cleveland のCDをあるだけ注文。一緒に、Jim Lauderdale と Lucy Kaplansky の残りの1枚も注文。先日変更したパスワードを忘れてしまい、もう一度変更するはめになる。

 Jeremy's CSM の新版に G3&G4 のチップの温度を計るモジュールがついたというのでダウンロードする。インストールして再起動すると、はじめ画面がつかない。真っ黒なまま、普通にシステムが立ちあがり、起動ファイルが開いている音がする。仕方がないので、強制再起動をかけて、機能拡張をはずして立上げ、もう一度普通に再起動すると今度はOK。原因がわからん。
 夕食はホワイト・ソーセージの野菜スープ煮、ご飯。

 Hは食後、布団を敷いたところで気分が悪いといいだし、早々に寝てしまう。先週も似たようなことになったはずだ。Mは元気。
 終日、メールを読んだり書いたりで暮れる。
2000年 1月 25日 (火) 雨一時雪。寒。

 Hは一度起きて着替えるが、顔が真っ青。気分が悪いというので寝かせる。しばらくしてもどす。もどした後はすっきりした様子。もどしたものには昨夜の人参などが未消化のまま。その匂いでこちらももどしそうになる。だいぶ元気になるが、まだ少し腹が痛いというので10時過ぎに、番茶を飲ませる。

 朝食はH用に盛った二色ご飯、鰺の開き、大根の味噌汁、蕪の塩揉み。
 M、Kと出ていった後、雪になる。一時間ほどで止む。
 洗濯機が来るので、居間から風呂場の前、洗濯機の周りを掃除。引越し以来の埃が溜まってこびりついている。

 カナダの Back Porch Music に注文のファクスを送る。Lennie Gallant、メアリ・ジェーン・ラモンドの新譜、ガーネット・ロジャースの最新作など10枚。送料込み223.35カナダ・ドル。今朝の新聞のレートで16636.48円。
 昼前から左の耳がおかしくなり、昼過ぎにはとうとうほぼ完全に詰ってしまった。どうやら中耳炎らしいが、痛みはない。風邪から来たのかもしれない。

 タイ北部の病院に、ビルマの反政府武装組織とみられる集団が侵入し、職員、患者を人質に立籠っている。武装集団を含む大規模な難民の受入れを対政府に要求している。Daily Yomiuri に載ったAPの報道によれば、この武装集団は12歳の双子が率いる「神の軍隊」と名乗るものらしい。ビルマ政府軍の攻撃を受けて窮地に立たされたためらしいが、あの辺では不思議なことが起きているのかもしれない。占拠された病院はこの地方最大のもので、広大な敷地を占め、ために何人かは自主的に密かに脱出していたという。昼のニュースで、タイの治安部隊が突入、占拠していたカレン族のゲリラを射殺、人質を解放。

 Daily Yomiuri の Cyberworld の目玉は当然ながら、先日発表になった Transmeta の新しいモバイル用チップの話題。インテルもむろん指を銜えてはいないが、Linuxに向けて最適化されたものらしいから、この動向は面白い。このチップを使って、MorphyOne のようなオープン・アーキテクチャ・ハードウェアが出てくるだろう。

 『ユリイカ』2月号見本誌。これは久しぶりに『ユリイカ』らしい特集ではないか。おれの原稿はともかくとして、他のものはどれも読み応えがありそうだ。大野さんと栩木さんが大活躍なのも嬉しい。

 2時過ぎ、洗濯機が届く。乾燥器用の台は後日とのことで、とりあえず設置。水道の蛇口の中がぼろぼろになっているので、取替えた方がいいとのこと。洗濯機そのものは意外にコンパクトで、前のものより一度に洗濯できる量は倍近いが、サイズはむしろ一回り小さい。それはいいのだが、専用洗剤というのがついていて、これがまた界面活性剤だの、乳化剤だの、環境破壊のために作られたみたいな代物。Kがマニュアルを読み、この専用洗剤を使う方法ばかり書いてあると言う。専用洗剤と称するものを作るのは企業戦略としてわからないでもないが、水質汚染の最たるものといわれる合成洗剤を堂々と使うその神経がわからない。ナショナルは環境保全のことを全く考えていない、としか言いようがない。ナショナルだけではないのかもしれないが、いちいち全部のメーカーの洗濯機を買って確認してはいられない。中古市場があるわけでもないから、下取りにも出せない。専用洗剤を使うものかどうか、買う前に確認しないこちらもいい加減だが、洗濯機にまで専用洗剤が必要とはまるで考えもしなかった。以前、食器自動洗浄機を物色した時にも、日本製のものは全部専用洗剤が必要で、その成分を見るととうてい使えないものばかりだったので、ハードそのものを買うのを諦めた。浅羽莢子さんが使っておられるのは、熱湯だけで、洗剤を使わない方式のものだったそうだが、英国製ででもあるのか、そこらの電気屋では見当たらなかった。まあ、たかが衣類の洗濯だ。普通の石鹸を使って使えないことはあるまい。

 プランクトンより五月のアルタン祭の概要がファクスで来る。
 Hは午後にはほぼ回復。Mが帰ってくると二人ではしゃいでいる。
 一日かかってアナムのライナーを書上げ、夜、送る。
 夕刻、メールのチェックの後、リンククラブのサイトへ行き、USB接続のCD-Rライター・ドライヴを注文。
2000年 1月 26日 (水) 晴れ。

 陽が出ると居間は暖かい。
 昨夜も0時前に寝たので今朝も目覚めはまずまず。左耳もだいぶ良くなった。 朝食はハム・トーストに昨日の残りの蕪。朝食後、左の上だけ歯を磨く。


○Waterson: Carthy BROKEN GROUND; Topic, 1999
 今回は蛇腹が目立つ。すわイライザの彼氏かと下世話なことを考えてしまうが、この蛇腹はなかなかではないか。アンディ・カッティングの影響は明らかだが。おかげでダンス・チューンの活き活きしていること。アップテンポのそれと、歌のスロー・テンポの対照がいい。期待通り。

 昼食は昨日の残りの豚肉・小松菜とご飯。Hが食べなかったから、たっぷり余っていた。
 ダウランド&Co.からおととい注文したタブラトゥーラ関連のCD三枚、届く。すばやい。
 プランクトン・I君から電話とファックスとメール。アルタンの全国ツアー・スケジュール。ビクター・Tさんから電話。表記の問題。

 11時頃、ラオックスから乾燥器用の台をとりつけに来る。昨日と同じ人たち。台そのものの取付は問題なかったが、乾燥器を台に固定するねじがなく、またまっすぐ載せると乾燥器が左側の天上下のでっぱりに近づきすぎてしまう。かといって右に寄せると、洗濯機の脚が排水溝のへこみにはまり込んで不安定になる。結局適当なところで妥協しておく。

 乾燥器問題は結局Kが夕方、Hを皮膚科に連れていったついでにラオックスにねじこみ、乾燥器用の台は返品ということになる。乾燥器そのものは粗大ゴミとして処理することにする。
 ビデオアーツからキーラの新譜のサンプル・カセット。
 A.D.A.からついにメール! 先日注文した分、クレジット・カードが使えないよという件。あたらしいカード情報をファックスで送る。
2000年 1月 27日 (木)  晴れ。

 朝食、鰺の開き、大根の味噌汁、菠薐草胡麻和え、ご飯。

○Pete Ham GOLDERS GREEN; Ryko/Video Arts VACK-1164, 1999
 ヴィデオアーツからのサンプル盤。名前は初耳だったが、バッドフィンガーのリーダーと聴けばなるほど。"Without you" は確かにおれでも聞いたことがある。これはヒットしたその原曲で、この板自体、本人が独りで作ったデモ・テープ集だそうだ。意外にフォーキィな面もあり、スピーディ・キーンにも通じるところ。一方、キンクスのシングル集など聞いていても思うことだが、ヒットした曲としなかった曲を、音楽だけ聞いて判断などできない。ヒットするかしないかは、ほぼ九割までは偶然の作用なのだろう。

○タブラトゥーラ V; Dowland & Company, 1996
 オリジナル曲がぐっと増えている。前三枚と比べても音楽の面白さ、アレンジや演奏の大胆さもぐっと増している。4作目が聞きたいものだ。この集団は明らかにクラシックとか古楽の枠は無意味だ。

 昼食はハムエッグに朝の残りの味噌汁、菠薐草、野沢菜の漬け物、ご飯、蜜柑。
 夕食は香料・骨つき鶏モモ肉、白菜と人参のスープ、トーストにチーズ・ペーストを塗り、チョコ・クロワッサン、ロイヤル・ミルク・ティー。
 夜『スポーン』76話。
2000年 1月 28日 (金)  晴れ。

 朝食は、早良の西京漬け、キャベツの味噌汁、ご飯。子どもたちに昨日の残りの菠薐草。野沢菜の漬け物。
 家事の後、『バビロン』のゲラ。

○アンサンブル・エクレジア イギリスの古いキャロル; Tecla, 1991
 タブラトゥーラの別働隊。メンバーもほぼ重なる。いわば裏タブラトゥーラというか、向こうが裏エクレジアというか、そういう関係。どちらかというと、タブラトゥーラがどんどん大道芸の要素を濃くしていく中、こちらはあくまでも古楽の範疇に留まる。とはいえメンバーが同じだからタブラトゥーラが出てしまうこともある。だが、古楽と今呼ばれている時代の音楽はまだ「お芸術」ではなく、大道芸に近いものであったはずだ。この中ではヴォーカルが一番「単一音楽幻想」クラシックに近いが、むしろ現代音楽のアプローチではないだろうか。素材が昔のものであるだけで。

○つのだたかし リュート; Pardon, 1989
 これはまたまっとうなリュートの独奏曲集。ちょっとそれ以上でもそれ以下でもない感じ。この人はやはりバンマスとしてみんなでわいわいやっている方が合っている。他のリュート独奏の板ときき比べてみるとまた何か見えてくるかもしれない。

 昼食、豚肉の味噌漬を焼き、朝の残りの味噌汁、野沢菜の漬け物、ご飯。
 昼過ぎ、ラティーナ・Mさんから電話。バスクもののディスク・レヴューの依頼。例によって雑談。ライ・クーダーの悪口など。
 午後は『スポーン』76話。一気にかたづけ、夕刻、送る。

 昼、メールをチェックし、のざきからの返事をみて、松井ゆみ子さんに架電。延々と音楽やアイルランドの現状、馬の話。ヨーロッパの競馬界は、フラット・レースも障害物レースもアイルランド産の馬と騎手が引張っているのだそうだ。音楽では、ここ一、二年でジャズが流行りだした、という話が印象的。

 タブラトゥーラ新作のレヴューのために、旧譜を聞いているが、『2』が思いの他すばらしい。ファーストはまだ古楽の枠にとらわれていて、いわば「よそいき」の演奏だが、これは何とも楽しく、「嬉遊楽団」の名に恥じない。格段の進境だ。"Cantigas de Santa Maria" も力演。そして吉田日出子がゲスト・ヴォーカルで参加しているラストの一曲は、そのすっとんきょうで悲しい詞とバンドの演奏、それに声がどんぴしゃり。この一曲だけでもこのアルバムは価値がある。昔ちゃんと聞いたのだろうか。初めて聞いた感じがする。

 このセカンドから参加している早坂紗知が気になり、ネットで探すとちゃんとウェブ・サイトがあった。自主レーベルでのCDもあるので、注文してみよう。どうやら渋さ知らズに参加したこともあるらしい。ひょっとするとセカンドでのこの変身は、もともと備わっていた素地がこの人の加入によって刺激されたところもあるのではないか。
2000年 1月 29日 (土)  晴れ。

 朝食はチーズ・クロワッサン、ハム・トースト、白菜と人参のスープ、コーヒー。

 松井さんに教えられて昨夜深夜の放映を録画した "Little Jimmy Scott" がちゃんと映っているか確認しようとみているうちに、やめられなくなり、そのまま一時間見てしまう。本人と関係者の証言、それに本人の演奏シーンや古い記録映像だけで語りは一切ない構成。アメリカのドキュメンタリーにはよくある手法かもしれないが、ここでは素材の特異性もあいまって実に効果的に物語を語る。編集も見事。リトル・ジミィ・スコットはジャズ/ブルースのシンガーで、ショービジネスの悪辣な部分によって搾取られ、才能の開花をことごとく妨害され、一時は全く音楽から引退してしまう。二十年ぶりにラジオに出演したかれのうたを聞いたドク・ポマスが何とかもう一度かれを表舞台に引きだそうと努力を始めたとたん自分が死んでしまい、その葬儀で、なんとドクター・ジョンの伴奏で唄ったスコットの唄を聞いたサイア・レコードの社長がその場で契約し、脚光を浴びる。時に62歳。スコットは遺伝性のホルモン障害で男性ホルモンが不足し、第二次性徴が起こらない体だ。いわば天然のカストラートである。かれのうたの凄さは声だけではないが、声がまず大きな要素であることも間違いない。スタッフ・スミスもそうだが、こういう人がまだまだいるのだ。

 この人が最近アイルランドで人気があるという松井さんの言葉を思いおこしながら見ていて気がついたのは、この極端にスロー・テンポな、しかも感情の量の大きな歌い方はシャン・ノースに通じるのだろう、おそらく。とにかくこれはきちんと聞かねばならない。

 それにしても字幕はあまりよろしくない。はしょり方が当を得ていないし、表記もおかしい。「マック・レビナック」はドクター・ジョンであることぐらい、アメリカ音楽を多少とも知っている人間には常識だ。それともあえて本名のままにしたのか。

 スコットが世に出ることをことごとく妨害したサヴォイ・レコードの社長はひどいものだが、こういう人間がある意味、現在の音楽業界の基礎を作ってきたので、だから基本的な性格はおそらく変わっていないのだ。松井さんの話でも、昨今のアイルランドでのシンガーの青田買いはひどいものだそうだ。第二第三のネイミ・コールマンの悲劇が繰返されることだろう。コアーズが保っているのは、兄妹の結束が固いからではないか。

 ヨイヨイで舌も良く回らないくせに、記憶は全く衰えていないライオネル・ハンプトンの姿が印象的。

○Various Artists THE ROAD TO GALICIA; Beans, 1999
 長峰さんがBOAのなかから選んだサンプラー。さすがに質が高い。耳をそばだてられたのは Berroguetto の2曲。

 大阪のCDショップ、サウンド・セブンから、ネットで頼んだタブラトゥーラのベスト盤届く。店頭品切れということだったが、意外に速かった。それにしてもタハラは何だ。
※CDShop サウンド・セブン
 http://www.sound7.com/
 hasegawa@sound7.com

 昼食は、鮪の刺身、豆腐の味噌汁、菠薐草の胡麻和え、ご飯。
 午前中『バビロン』のゲラ。一気に終らせる。
 夕食、Kの手製焼売、豚肉の味噌漬、青梗菜と小松菜のスープ。豚肉の味噌漬は子どもたちがばくばく。

 夕方、背骨を伸ばすと、左肩がすううっと降りてゆくのがわかる。やはり毎日やるべし。
 夕刻から『緑』再開。
2000年 1月 30日 (日)  晴れ。

 朝食、アフタヌーン・ティーのパン各種。バナナ。コーヒー。

○タブラトゥーラ コレクション; Kitty, 1995
 4作目までからのベスト盤。ただし、ファーストからは長い1曲のみ。やはりこのバンドの真骨頂は、オリジナルな曲にある。早坂紗知の作品[02]や「満月の夜」「へべれけ」あたりの俊敏でとぼけた味わいは独特のものだ。スリル満点で同時に肩の力が抜けた体験をさせてくれる。底抜けに楽しく、かつ芸術的感興もたっぷりある。

 午前中はメール書きなど。
 昼食はクサヤを焼き、キャベツ味噌汁、ご飯。子どもたちはバナナ、こちらは林檎。
 午後、『バビロン』のゲラを送付。ネットで著者情報をあれこれ探すが、全然見当たらない。Encyclopedia Americana のサイトはユーザ登録していないと入れない。free trial もあるにはあるが、アカデミー法人でないとだめなようだ。eLibrary という有料の会員制情報サイトがあったが、どうやらクリッピングが主なものらしい。
 Musicfolk に注文を出し、ついでにイライザのうたっているという "Over the rainbow" ついての情報を訊ねてみる。

 夕食はすき焼き、育成会の行事で余った豚汁、ご飯。
 夜、中川さんに架電。小沢昭一氏は思いのほか声もしゃべり方もぼそぼそした感じで、中川さんとしてはあまりしゃべらなかったようだ。ヒデちゃん情報で、ドーナルの歴史をまとめたボックス・セットが企画されているらしい。それと中川さんプロデュースで登川誠仁さんのアルバムという話がある由。バッドニュースの藤田さんが仕掛け人だそうだが、まだどうなるかわからないそうだ。何とか実現して欲しい。
2000年 1月 31日 (月) 晴れ後曇り。

 朝食、目玉焼き、海苔、昨日の豚汁の残り、ご飯。

○Cormac Breatnach MUSICAL JOURNEY; private, 1999
 おそらくはモイア・ブレナックの親族。半分がロゥホィッスルの曲。松井ゆみ子さんが、最近ジャズ畑出身のギタリストと一緒にやっていると言っていたので、聞いてみる。ここではギターはスティーヴ・クーニィとポール・マクシェリィ。なかなか面白いディスク。アップテンポは少なく、大部分はミディアムのゆったりした曲。だが、なかなかに緊張感とリラックスのバランスがとれている。ちょっと面白い味わいだ。

 午前中は歯医者。
 帰宅後、昼食をはさみ、『スポーン』の翻訳原稿チェック。2時過ぎに終ってすぐ投函しに行く。ついでに、早坂紗知のCD代金、NuCMDict のシェアウェア代金を振込む。

 昼食、すき焼きの残り、ご飯。
 夕食、ジャガイモ・ベーコン・玉葱の炒め物、豚汁(ようやく食べつくす)、チーズ・トースト、ミルク・ティー。

 午後の残りと夜にかけてタブラトゥーラ新作のレヴュー執筆。夜、送る。11時になるととたんにメールのやりとりが極端に遅くなる。回線が混むのだろうか。それともプロバイダが原因か。ニフティもだめだ。
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