大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 2月 21日 (月)〜 2000年 2月 29日 (火)] [CONTENTS]

2000年 2月 21日 (月) 晴れ。

 朝食はチーズ・トースト、プチ・トマト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○ザ・ブーム NO CONTROL; 東芝EMI, 1999
 実は結構面白いことをやっているのだが、プロデュースがぶち壊している。なんでこんなに余計なものをごてごてとつけなくてはいけないのか。オーヴァー・プロデュースと言うも愚か。完全に失敗だ。キーボードなど要らないし、ストリングスも不要。宮沢和史のヴォーカルも引込んでいる。これが全ての鍵だろうに。後半はそれでも多少救いがある。「オキナワ」以降、特に「ありがとう」「ごはんがたけた」はなかなか。宮沢のヴォーカルは好みが別れるところだろう。ここまで鼻にかけなくてもいいと思う。ヒートウェイヴのゲストとしてクワトロで聞いた時には、こんなにかかっていなかった気がする。もっとストレートに出していた。一度ライヴで見てみたいものだ。

 午前中はマイレート&トゥリーナの歌詞対訳。

 朝刊に、先日、国内初の「敵対的TOB」を仕掛けて「失敗」した、元通産官僚の若い社長に論説委員がインタヴューしている記事がある。そこでの言葉で印象的なのが、リストラすべきは経営者だというこの社長の弁だ。効率的な資本・資産の運用ができず、ムラ的な馴合い商売に甘んじている人間に経営者の資格はない。

 昨日の新聞には、エスエス製薬にやはり「敵対的TOB」を仕掛けて「成功」したドイツの製薬メーカー社長へのインタヴューがあった。スピードを重視し、今やらなければだめだという判断と、個人株主が応じる分でできるという目算の上にやっている。そして、この成功で海外からの同様なTOBが続くだろうと予測していた。経営権が替わることで、われわれの生活にどのような影響があるのか、よくわからない。それによって危ない薬がどんどん出てくるようならば、当然困る。が、国内に経営権があることによって、その危険性が低く押さえられるという保証もない。基本的には今はやはり「変化」を求める時だろう。変化することが丁と出るか半と出るかはわからないが、少なくとも良くなる可能性も半分ある。変化しなければその可能性はゼロに近い。悪くなる可能性を見るか、良くなる可能性を見るか、の問題だが、悪くなればそれはまた次の変化の契機となる。振子は動きはじめれば、反動があるのだ。オーストリアで反極右の動きが盛上っているが、あれも反動だろう。行くところまで行けば、また反対側に振れる。

 オーストリアで面白いのは、今朝の新聞に出ていたいわゆる識者の発言で、オーストリアには保守の「陣営」と社会主義の「陣営」とは別に、親ドイツ・親ナチスの「陣営」があるという話。ドイツ併合時代が一番良かったと感じている人びとが多数いて、今回の極右の台頭の裏にはその人びとの支持があるという。この人びとはなぜそう感じているのだろうか。多分、ヨーゼフ・ロートなどとは対極の立場にある人びとなのだろうが、階層や職業、出身等に何か特徴があるのだろうか。

 昼食はクサヤを焼き、キャベツの味噌汁、ご飯、林檎。
 午後、PTA。本部役員集合。来年度専門委員選出のための準備。
 マイレート&トゥリーナのライナーを書きなおして、夜メールで送る。

 夜、iBook の方でメールを送り、ついでにチェックすると日本語のメールが文字化け。メール・サーバをマウントして読むとちゃんと読めるが、ダウンロードするとだめ。スリープ復帰後に問題があるのかもしれない。

 夕食は豚肉・小松菜、ご飯。今日のはトウバンシャンがやけに効いていて、辛い。Mはそれでも割合平気で食べていたが、Hは辛い辛いを連発し、牛乳をがぶがぶ飲む。

2000年 2月 22日 (火) 晴れ。

 朝食、エボダイの開き、大根の味噌汁、隠元胡麻和え、ご飯。

○Greg Wall & Frank London Band BIRTH & REBIRTH; Not Two, 1999
 今まで聞いたフランク・ロンドンの中では一番普通のジャズに近い。あまりユダヤ風味は強くなく、良質のモダン・ジャズというところ。悪くはないが、ロンドンの他のアルバムを聞いてしまうと、何となく物足りないところもある。

 昼食は昨日の残りの豚肉・小松菜、ご飯。
 午後は、のざきのためのライナー執筆。ケヴィン・クロフォードのソロ。オリジナル・ライナーを翻訳し、それにつけ加える。3時過ぎに書上げてメールで送付。携帯に電話を入れると、プランクトンに行く途中だった。
 やはり3時頃、Tさんから電話。マイレート&トゥリーナのライナーの件で、小さな手直し。
 ケヴィンのライナーを書くので、ちょっと点検してみたら、フルート・アルバムが結構出てきた。未聴のものだけで10枚ほどある。やはりトレンドなのだろう。
 夜は『緑』。

2000年 2月 23日 (水) 晴れ後曇り。

 朝食はフレンチ・トースト、茹でブロッコリ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Lucy Kaplansky THE TIDE; Red House, 1994
 ショーン・コルヴィンのプロデュースで、引締まったいいアルバム。リチャード・トンプソンの "When I get to the border" を取上げているのはコルヴィンの差し金であろう。その他の選曲も良く、彼女のアルバムの中では一番いいかもしれない。

 午前中、歯医者。右上手前。また薬を入れる。
 昼食、鱈子、海苔、キャベツの味噌汁、ご飯、昆布の佃煮。

 午後、Tさんから電話。マイレート&トゥリーナのライナーの改訂版を送ったとのことでダウンロードしてみる。一番の問題はマイレートの名前の表記で、営業が「モレート」にこだわっているらしい。その方がわかりやすいということらしいが、「モレート」が「マイレート」になっただけでわからなくなるのだろうか。タイトルやプロモーションではともかく、ライナーの中では勘弁してくれと粘る。名前の表記についての一節を書いて、挿入することにして、後で書いて送る。この件でなんだかエネルギーを消耗してしまい、仕事進まず。

 夕方、マイレート&トゥリーナのアルバム・ブックレットに出てくるゲール語の発音の件と、歌詞の内容の件でドーナルにファックス。夜、10時半頃、電話がかかってくる。11時半頃、ファックスで返事。ドーナルはなかなか達筆だ。
 夜は、マイレート&トゥリーナの歌詞対訳。

2000年 2月 24日 (木) 晴れ。

 H、昨夜、咳が出はじめる。が、朝起きると出ない。寒くもなかったというのだが。  朝食は鰺の開き、葱の味噌汁、菠薐草の胡麻和え、ご飯。味噌汁はおれが作ったがちと薄かった。

○Sachi Hayasaka & Stir Up! 2.26; enja, 1994
 すばらしいアルバム。「チルドレン、チルドレン」はタブラトゥーラ時代の曲の再演だが、はっきり言って比ではない。う〜む、やはりこれはライヴを見たい。それとここでの「発見」は永田利樹のベースとケン・ツノダのドラムス。斬新で、冒険精神にあふれる。ジャズはこうではなくてはいけない。

 朝、Apple Data Detectors を探し、ようよう Apple のサイトの解説ページを見つけるが、ダウンロードしようとするとそのアドレスは見当たらないと出てしまう。仕方がないので iMac に入っているものの中から、必要なものを iBook にコピーしてシステムフォルダに入れる。再起動すると、うまくいって、普通はコンテクスト・メニューが使えないソフトでも使えるようになった。国内のサイトで、これの解説をしているところを見つけてプリント・アウト。参考にする。

 マイレート&トゥリーナの歌詞対訳続き。4時過ぎにしあげ、見直して送る。
 昼食は朝Kが弁当用に作っていった、豚肉生姜焼きの残り、味噌汁の残り、菠薐草の残り、ご飯。

 昼食を食べようとしていたら、Tさんから電話。トゥリーナの資料として、以前キングから出したもののライナーがあれば送って欲しいとの依頼。デジタル・データが残っていなかったので、ファックスしようとしたが、ブックレットをファックス・マシンがちゃんと食べてくれない。昼食をすませてから、スキャナで取込み、OCRでテキスト化してみる。今回は Scan Suite USB というスキャナに付属の読込みソフトを使ってみる。こっちの方がはるかに速い。あれやこれやのソフトに転送もできるらしい。ついでにジャケットも読込む。TIFF か PICT でしか保存できないので、PICT で保存して、クラリスワークスにとりこみ、メールに添付して送ったら、添付ファイルが650KBになってしまった。

 昨日の夜のニュースでやっていた、秋田県だかの陸上部監督を兼ねる県立高校教師が猥褻容疑で逮捕された件。今朝の朝刊では、教頭の弁として、前から噂があり、何度も注意していたというのが出ていた。こういうものは初犯で捕まるのはまずあるまい。被害を受けた生徒側は、損害賠償請求もすべきだ。逮捕された教師は、高校女子駅伝に二年連続で出場させたそうだが、ひょっとすると自分は偉いとでも思ったのか。おそらく教師は辞めざるをえないだろうが、体育関係の団体などで「救済」されることになるのだろう。

 青弓社の社長から、2冊目の企画をもらえないかという催促の手紙。ひじょうに素気なく、やる気があるのかないのか、よくわからない。まあ、一度会って話してみるしかあるまい。

○Nomos SET YOU FREE; Grapevine, 1997
 相変わらずニール・ヴァレリィのコンサティーナは凄い。ジョン・スピラーンの歌つくりもずっと良くなっているし、バンドから浮かなくなった。とはいえ、やはりダンス・チューンと歌がまったく二つの世界になっているのは変らない。それぞれのレベルは高いのに、それが一つのバンドの活動として有機的に迫ってこない。だから、よりレベルの高い方、つまりチューン演奏に耳が行ってしまう。ジョン・スピラーンがノモスを出たのは正解だが、後のシンガーはケヴィン・クロフォードによれば同じようなタイプだそうだが、果たしていまどうなっているのだろうか。

 夕食はソーセージ入り野菜スープ。苺ジャム・トースト、葡萄パン、ロイヤル・ミルク・ティー。
 Hは質の良くない咳が出ているので、入浴はやめさせ、代わりにお湯で絞ったタオルで体を拭いてやる。

 夜は松山さんから借りていたボヤン・ズルフィカルパシチの KORENI を AIFF ファイルでHDに保存。さすがに600メガになる。ついでにブックレットもスキャナで取込み、jpeg ファイルで保存。TIFF の半分以下になる。クレジットの文字部分をOCRにかけるが、てんでだめ。手打ちした方が速い。帯は色がついているせいか、Scan Wizard で取込もうとするとスキャニング・ソフトが落ちる。

 それにしてもテキスト処理以外のことをマックにやらせるのはなかなか面白い。

2000年 2月 25日 (金) 晴れ。

 朝食は鰺の開き、昨日の菠薐草の残り、葱の味噌汁、キャベツ若布(久しぶり)、ご飯。子どもたちは早良の西京漬け。

○KONN AND THE GYPSIES: Nine Encounters with Gypsies in Finland; Kansanmusikki-Instituutti, 1997
 フィンランドのジプシーたちを1970年代にフィールド録音した記録。すべて歌。フィンランドの伝統音楽色はあまり強くなく、様々な他の地域の音楽が入りこんでいる。ちょっと不思議な気分になる。基本的な音楽の才能、と言うよりはもはや遺伝子の一部で、生物としてのこの人たちの基本要素ではないかと思われる。顔の造作はこうで、手が二本あるとか、指は五本だ、歌はこれだ、という感じ。それはもうまったく当たり前のことなので、歌をうたえないというのは障害者と同じなのだ。多分。ほとんどは無伴奏かごく簡単な伴奏だけ、終りの方で、何やらリズム・ボックスみたいなものが出てくるが、これがまたなんともとぼけた感じで、現代のものとはとうてい思えない。スカンディナヴィアの他の地域のこういう記録はないものだろうか。

 iMac 調子悪し。どこがどうと決まっておらず、何となく不安定、何でもないことでフリーズする。こういうのが一番困る。

 昼食は早良の西京漬けを焼き、朝の残りの味噌汁とキャベツ若布、ご飯。
 昼食後、『スポーン』の色校のチェック。

 1時半過ぎ、家を出て、『スポーン』色校を投函。本厚木からはまっすぐ鎌倉駅へ出る。ビクター・Tさんと東口の改札で待合せ。松山さんちに電話を入れるがずっと話し中で4時半にようやく繋がる。中山さんが来たところだということで、中山さんの車で迎えに来てくれる。駅からは車で十分ほど。家の周りに結構敷地があり、物置もある。家そのものも大きく、二階も含めて八部屋あるそうだ。さすがに寒い。真ん中の床の間つきの六畳が一応かたづけられていて、そこでお茶、後で豚しゃぶ。こういう季節とて、美味であった。ジュリちゃんは寝たり起きたり。

 Tさんによるガムランをめぐる事情が面白かった。ガムランの対抗試合があり、その時はおたがいフーリガン状態で、モノは飛ぶは、野次は壮烈だは、大変なものだそうだ。また、毎年大量の新曲が生まれ、踊りも新しくなり、口コミでの一種のチャートもあるという。こういう話は普通のガムランの話の中では出てこない。

 Tさんのガムランとのなれそめもちょっと聞く。芸大の尺八科(Tさんが第二期生)にいた時、ガムランの調査旅行に同行し、そこで習わされたのが最初だそうだ。
 9時半過ぎまで。Tさんを鎌倉駅まで送り、その後、中山さんが家まで送ってくれる。帰宅11時。

2000年 2月 26日 (土) 曇。

 8時過ぎ起床。朝食、チーズ・クロワッサン、アンパン、ハムをはさんだロールパン、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Fela Kuti JAZZ SIDE OF FELA; Victor, 1998
 このシリーズのもうひとつのコンピである FLOOR SIDE にはそれほど感心しなかったのだが、これはすばらしい。どこが違うのかはよくわからないが、フロントのサックスとトランペットとバックのリズム・セクション+コーラスのバランス、そしてそのサックスとトランペットのフレーズの一つひとつがヴィヴィッドだ。一曲ずつが長く、大河の流れのように流れてゆくのもいい。しかもその流れには急流もあれば、淀みもある。細くなったり、太くなったりもある。

 終日『緑』。後15頁。

2000年 2月 27日 (日) 晴れ。

 8時半過ぎ起床。朝食はチーズ・クロワッサン、パストラミ・ポークを乗せたトースト、プチ・トマト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

 相変わらず『緑』。最後の追込み。

 昼前、松平未亡人から電話。今朝の朝日朝刊・東京版に、「青空文庫」に関連して、松平さんの仕事がかなり大きく取上げられたそうな。朝日のウェブ・サイトに行ってみたが、ローカル版までは見られないようだ。何にしても、松平さんの仕事が注目されるのはいいことだ。これが活字化の契機になるといいが。

 今日の読書欄は面白そうな本がたくさん。中でも五百旗頭真が評している戸部良一の『日本陸軍と中国』(講談社選書メチエ)はまず読んでみたい。戦前の日本の失敗は中国に対する認識を誤ったからだとして、その原因に陸軍の「支那通」たちの失敗をあげている。「支那通」と言われながら、実はまるで中国をわかっていなかった、それゆえに身に受けた報いを逆恨みし、侵略戦争にのめり込んでゆくエリートたち。となるとどこかで見た映像だ。明治維新以来、中国が目覚めることへの恐怖が日本の指導層の第一動因としてあったのではないか、という仮説を思いつく。むしろ、維新そのものも、列強の「分割」によって、中国が動きだす前に「近代化」をして、欧米列強の一角に食込んでおかないと、いずれ「近代化」を果たした中国に圧倒されてしまうという「恐怖感」がその背後にあった、というのはどうだろう。その意味で日経の記者らしき村山宏が現地取材して書いた『中国「内陸」発』(日本経済新聞社)がならんでいて、こちらも面白そうだ。

 昼食、釜揚げ饂飩、茹で卵、茹でブロッコリ。
 夕食、豚肉の茸焼き、大根卸しと大葉、浅葱。大根と榎の味噌汁、ご飯。

 夕方、『緑』のノルマができたので、メールの返事を書いてあちこちに送るのとチェック。
 夜、Aさんから電話。また長話。パソコンは何を勉強すればいいか、という相談と、オーディオの話など。らっぱ堂がとうとう昨年末に閉店したそうだ。閉店のときは何か連絡が来るだろうと思っていたが、いきなり『ステレオ・サウンド』に閉店セールの広告を出してそれで終りだったらしい。スペクトラル・ショップはイケオンになるとのこと。

 Aさんの話によると、受売りではあるがB&Wは大したことはないらしい。CDプレーヤーはマランツのCD94というのが一番良く、最近ではソニーのCDウォークマンが気に入っているそうな。スペクトラルもSDR-1000の方が2000よりも良いという。そういう意味では、オーディオに関しては比較的恵まれた環境にはある。マイクロメガもこれはこれで気に入っている。

2000年 2月 28日 (月) 晴れ。

 朝食、パストラミ・ポークを乗せたトースト、茹でブロッコリ(昨日の残り)、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Bill Bonk SPAGHETTI WESTERN; own label, 1996
 リチャード・トンプソン・バンドに入ったそうだが、確かにアメリカ人にしてはイングランド的なセンスはある。一応バンドはついているが、文字どおり、ほとんど自作自演で作っている。かなり多才で多彩な人なのだろう。もっといろいろなことをやりたいのだが、方向が見えないまま、一応アメリカのシンガー・ソング・ライター・フォーマットに従っているようなところもほの見える。

 新潟県警の今回の不祥事の構図は警察だけではないはずだ。国税庁をはじめ、政府官庁の中央と出先機関は多かれ少なかれ同じ構造だろう。いわゆる制度疲労なのだろうが、では代わりのシステムはあるのだろうか。あるいはあるとして、その転換はどうすればいいのだろうか。おそらく、ネットがその一つの回答ではあるはずだ。

 蝸牛氏の国会報告では、越智通雄はふだんああいう露骨な利益誘導発言はしない人間と言われていたそうで、蝸牛氏は今回の言動を選挙ゆえの「変身」としている。が、ひょっとすると今までは露骨な利益誘導ができない、あるいはしにくい立場だったのかもしれない。ここがチャンス、選挙対策もだが、自民党内で発言権を大きくするチャンスと思った可能性はないだろうか。実際、森や亀井は擁護している。

 今回のようなことはもちろん珍しいどころか、むしろそれが国会議員の仕事とされていたわけだが、それが表沙汰になり問題視されて、政府中枢からは排除されることになったのは、やはり現在の状況の評価と判断を誤っている。というよりも、評価と判断の基準を変えねばならないことに気がついていなかった、と言うべきか。人間、今までやってきたことを変えるというのは大変難しい。年をとればとるほど、成功すればするほど、難しい。ここらでおれも今までやってきたことを変える必要があるのだ。が、さて、どの方向へ変えるべきか。

 アイルランド友の会のメーリング・リストでクマさんが「テロは絶対悪だ」といったことにひっかかっている。テロはいわば身内が身内にしかけるもので、地下鉄サリン事件が典型だろうが、しかし当事者にしてみれば、あれは「戦争」なのだ。オウムにしても本音はそうだろう。世間の中で最後の砦であった教団を破壊しようとする「外部勢力」との戦争だ。むしろ、テロとはエイズ薬害を引起こした厚生省の役人、医師の一部、ミドリ十字の経営幹部にこそあてはまることではないか。かれらにとって、血友病患者は何ら危険な存在ではなかったのだから。あるいは尼崎交通公害訴訟の原告にとって、あの道路を直接間接に利用している「世間一般」こそはテロではないか。

 もう一つ、「絶対悪」があるとすれば、それはわれわれにとっては地球を破壊する行為だ。
 和久井さんからライヴの告知。三月三日だそうだが、もっと早く言ってくれればいいものを。
 ソニー・クラシカルからサンプル。思いがけず、アンドレアス・ヴォーレンワイダーの新譜。実に久しぶり。

 シマンテックからNUMの新版のCD-ROM。早速、これで iMac を検査、SpeedDisc をかける。問題は特に出てこない。するとやはりハードの問題か。
 昼食は薩摩揚げを焼き、昨日の残りの大根と榎の味噌汁、茹でブロッコリ、ご飯、海苔。
 四時前、『緑』一通り脱稿。

○The Lounge Lizards QUEEN OF ALL EARS; Strange & Beautiful Music, 1998
 マーク・リボーが入っていると聞いて買ってみたのだが、別のアルバムだったらしい。とまれなかなか面白い音楽。チェロが効いている。渋さ知らズにも通じるところだが、今一つのところで突きぬけていないような気もする。狂気と冷静な計算がぶつかり合っているのだが、計算を活かすために狂気を矯めているところを感じる。どこかお上品なのだ。渋さ知らズともう一点違うのは、個々の曲に個性が感じられない。全てが一繋がりの感じなのだ。とにかくマーク・リボーの入っているのを探そう。

 『緑』を終えた後、iMac の増設メモリをはずしてシステムのCD-ROMで立上げたところ、無事立上がった。ただ、この時は付属のキーボードとケンジントンの Orbit 以外ははずしていたから、そのせいかもしれない。もう一度メモリをさしこんでやってみたら、今度はうまくいった。やはり余計なものはすべてはずしてのこと。

 ドライブ設定でパーティションを覗くと、なぜか Linux 用になってしまっている。直すのも億劫なのでそのままにしておく。システムやデータはいいのだが、辞書のイメージ・ファイルを作るのが面倒。

 夕食は豚肉・小松菜、ご飯。
 明日は四百年に一度のうるう日で、コンピュータ2000年問題の副産物として、今夜はまた徹夜で警戒にあたる人たちがいるそうだ。
 入浴後は読書。

2000年 2月 29日 (火)  晴れ。

 K、バス当番のため、早く出勤。

 朝食は苺ジャム・トースト、白菜・人参のスープ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。  今日は確定申告のための経費リストの整備。

○Bijoux Du Bayou CANAJUN PARDI GRAS; ?
 カナダのケイジャン・バンドから送ってきたサンプル。二流で、つつましく自分たちの好きな音楽をやってます、という感じ。カナダのリンディスファーンになれるか、というところ。もとはケイジャンよりはレゲェの方が好きなのではないか。そっちの曲の方が元気。個々のテクはやはり二流で、特に蛇腹は何とかしてほしいが、バンド全体でもってゆく行き方ではある。ライヴを重ねて固定ファンを掴めば、飛躍も望めるか。

○Andreas Vollenweider COSMOPOLY; Sony, 1999/2000
 とっ散らかったアルバム。いま流行のベテランが豪華ゲストを集めて、相手方の音楽を演奏するというスタイルで、スティーヴェルがすでにやっているわけだが、はっきり言ってあちらの方が上。この人はカリスマがない。ゲストの多彩さと幅の広さはあるが、それに一本芯を通す強さが足りない。面白くないかといえばそうでもないのだが、主人公がいないのだ。

 昼食は昨日の残りの薩摩揚げに帆立を解凍し、キャベツたっぷり味噌汁、ご飯、林檎。

○Varttina ILMATAR; BMG (sample cassette), 2000
 前作があまりに派手過ぎ、完成度が高すぎたので、これはいささか地味な感じだが、聞込むとやはり良くなりそうな気配。前と違うことをやろうとしているところも見える。いずれにしてもこのバンドにしかできないことをちゃんとやっている。

○Maria Manuela PARA MIGUEL; Do Fol/Ahora, 1999/2000
 すばらしいシンガーのアルバム。バックは古楽やクラシックの室内楽から土着のものまで幅広く、レパートリィも相当に広そうだ。聞込む価値あり。

 3時過ぎに作業をきりあげて、家を出る。

 下北沢でかものはしに教わった酒屋に行こうとするが、地図がよくわからない。結局かものはしに架電。下北沢の「西口」というのが井の頭線ホームの吉祥寺よりの端にあることが判明。そちらへ移動して地図をたよりに行くと、比較的簡単に見つかる。しかし、かものはしが言っていたほどには種類はない。それでも、ギネスの細長い方の缶があったので、あるだけ(半ダース)と、二階で九州の焼酎と生ハムを買う。てくてく歩いて下北沢にもどり、また電車に乗って山口洋氏宅へ。Jさんはすでに来ていた。ドーナル本について意見を聞く会。山口夫人はオアシスの取材で留守。山口さん手製の料理は実にうまい。大根の煮込み、ポテト・サラダ(茹で卵入り)、ボンゴレとナポリタンのパスタ。ぎりぎりまでいて、最終小田原行きに間に合う。

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