大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 3月 01日 (水)〜 2000年 3月 10日 (金)] [CONTENTS]

2000年 3月 01日 (水) 晴れ。

 朝食は葡萄パン、フランスパンにハムをはさんだもの、白菜と人参のスープ。

○The Lakatos Family BEST OF LAKATOS FAMILY; King, 1999
 全く何の音楽的感興もわかない。うまいことは確かにうまいし、いろいろ革新的なこともやっているのかもしれないが、とにかく音楽として聞えてこない。ちょっとショックだ。音楽をやっていることの喜びが伝わってこないからだろうか。お仕事を見事にこなしています、としか聞えない。

 The Living Traditionからようやくロイ・ハリスのCDの交換盤。MSIからの新譜案内の中のアメリカ60年代ガレージ・サウンドのコンピレーション MONDO FRAT DANCE BASH A GO GO の宣伝文句がいい。
 「キングスメン影響下のつたない演奏。死ぬほど空疎でハッピーな曲調。恐ろしく間抜けで意味のない歌詞」
 実にそそられるフレーズだ。

○KLEZMER MUSIC: A Marriage of Heaven & Earth; elipsis arts..., 1996
 ハードカヴァー形式のCD。最新のクレツマー・ミュージック集。ラカトシュの後でアリシア・スヴィガルズを聞くと、音楽を支えるのは結局志なのではないかと思ってしまう。やはり「ロック」はここにはなく、「ジャズ」の方向だ。個々のミュージシャンの個性が強すぎ、音楽の質が高すぎて、全体としての構成はぶち壊し。そこが凄い。

○Muzsikas with Marta Sebestyean MORNING STAR; Hannibal/Video Arts, 1999
 安定した演奏で、ホーミィなど入れてみても、かられの世界が変わるわけではない。これは単なるお遊びで終っている印象。マールタの歌唱はやはりこの連中の中に入ると輝く。変な脂身がするりと抜けていく。聞物は最後のライヴ。

○Herb Ellis & Stuff Smith TOGETHER!; KOCH Jazz, 1963/1995
 スタッフ・スミスの晩年の録音の一つになるのか。この時期の他の録音同様、気楽なスイングで若い連中とやることを楽しんでいるのかと思いきや、時として往年の狂気がふっと迸るようなところがあって、をを、と息を呑みかけると、いかんいかんとまたお気楽スイングにもどっている。ジャズ・アルバムとしては多分質の高いものの中に、そうした「破綻」が漏れるのを今か今かと待構えて聞いている。多分そう言う聞き方をされるとはここに参加している誰も思いも寄らなかったにちがいない。

○『ナビィの恋』オリジナル・サウンドトラック; BMG, 1999
 映画のサントラだからと言ってしまえばそれまでだが、何ともごった煮のアルバム。音楽がではなく、アルバム全体の構成がだ。沖縄を舞台にした映画だから、登川誠仁、嘉手苅林昌、山里勇吉、大城美佐子が入代り立代り出てきて、渋くご機嫌な歌や三線を聴かせてくれる。それはいい。なぜかアシュリィ・マクアイザックがいて、これまた例によってエッジの効いたダンス・チューンを聴かせてくれる。これもいい。マイケル・ナイマンのテーマ音楽も、これはこれでまあ、映画のテーマだと思えばそんなものだろうと思ってしまう。問題はなんでここにクラシックの声楽が出てきて、「トゥバラーマ」を朗々と歌いあげなくてはならないのか。映画がそういう話だから、サントラに文句をつけても仕様がないのだろうが、こうして沖縄の伝統的な歌い方と並べられると、どう考えてもこれは勘違いとしか思えない。まさか、クラシックが勘違いであることをわざわざ示すために入れたとも思えない。

 夕飯は水餃子を茹で、キャベツの味噌汁、トマト、ご飯、昆布の佃煮。

2000年 3月 02日 (木) 晴れ。暖。

 朝食、ハムをのせたフランスパン、プチトマト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。
 歯医者。右上手前の続き。削って薬を入れてまた埋める。

○知らねえよ; オルターポップ, 2000 (cassette for review)
 ラティーナから送ってきたレヴュー用カセット。いまどき素裸のロックもできないから、トリティキシャをメインに据えたルーツ色を出汁にして、バスク語で英米流市場音楽ロックをやろうとしたアルバム。二十年前にすでに欧米では使命は終えているこういう音楽が本当に生きているのなら、バスクはやはり「田舎」だ。と思って聞いていると、どうもずれている感じがしだした。ひょっとするとこいつらは…

○VARTINNA; MIPUCD/Innovator Finlandia, 1987
 ちゃんと聞いていなかったのでヴァルティナの始めの三枚を聴直す。
 これは未完成というよりは、とにかくやりたいことを全部やってみました。方法論も何もなく、体当たりで伝統にぶつかって跳返され、全員雪の上にぶっ倒れたその姿を留めたもの。同時にやはりその後のヴァルティナの要素はすでにほとんどそろってもいて、やはり興味深い。現地盤はスペクトラルのプレーヤーではかからず。

○Yasue Turale; BMG 1999 (CD single)
 BMGから来たサンプル。何でも自分で作った言語で書いた詞をオリジナルの曲にのせてうたっているのだそうだ。バックはキーボードと打込み。ギターもちょっと入っている。特に何ということもないうたい手。にしてもだ、こういうものを聞いていいと思う感性はまったく理解できない。ただ音が鳴っているだけで、音楽に聞えないのだ。BGMにすらならない。雑音と同じだが、なまじっか「秩序」があるだけに、雑音のように無視するのも難しい。

 昼食、ハムエッグ、若布ご飯、キャベツの味噌汁、トマト。
 仕事は『バビロン』の赤入れ。
 仕事部屋とリビングのCDを少し入替える。

 夕方、お宝鑑定団をチェックして、Adaptec Toaster の新版が出ているとの広告を見て見に行く。が、申込書をダウンロードしようとすると、PDFファイルが出てくるのだが、すぐネスケが爆弾を出す。MacOS9のフルセットにしてもだめ。アピアランスをデフォルトにしてもだめ。
 夜はここ数日、聞きためたディスクの入力。

○Pablo Ziegler QUINTET FOR NEW TANGO; BMG, 1999
 すばらしいタンゴ・ジャズ/ジャズ・タンゴ。ジャズの使い方が粋で、しなやか、紛れもないタンゴでありながら、自在なジャズでもある。BMGからのサンプルなのだが、いつもらったのか記録がない。
2000年 3月 03日 (金) ○桃の節句 晴れ。

 朝食、苺ジャム・トースト、スクランブルド・エッグ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Varttina MUSTA LINDU; Olarin Musikki, 1989
 現在のヴァルティナの事実上のファースト。一番大きな違いはジャズの導入だろう。導入というよりは採用かもしれない。クラリネットやラッパを使ったり、ダブルベースがリズムをキープするだけではなく、ジャズ的な構成・アレンジをほどこすことで、全く別の音楽に生まれかわっている。レゲェまで含む、多様なリズムを使っている点。ロック的な役割分担ではなく、楽器の相互作用を重視するアレンジ。そして一体となったコーラスによるリード・ヴォーカル。当時にあってもこれはぶっちぎりの前衛だったはずだ。

 朝は『バビロン』の校正。活字になると不適切な文章が目につく。

○Varttina SELENIKO; Spirit, 1992
 OI DAI, SELENIKO, AITARA の三部作はやはりこのバンドの頂点だ。上昇気流にあるバンドの凄味。バンドの一体感、リード・ヴォーカルの自信と成熟。これに比べると、一昨年のあれすらがあざとく感じられる。それにしてもこれがヒジャズ・ムスタファの切れ味鋭いプロデュースとなると、パディ・モローニは結局ここでも他人の後を追っているわけか。

 Kは昼に帰ってきて昼食を食べた後、雛人形を出す。昼食はえぼだいを焼き、白菜の味噌汁、ご飯、キムチの残り。二時過ぎにMが帰ってきたので、記念撮影。Mの足指の疣らしきものを見せに皮膚科に連れてゆく。5時頃帰ってくる。まだ疣と断定はできない。ただし、できたのは前と同じ指。その後、雛祭のためのケーキ作りと夕食。Mが手伝う。ケーキはやまゆりのスポンジ・ケーキに、チョコレート・クリームを塗り、苺を入れたショート・ケーキ。夕食は手巻き寿司。やまゆりの手巻き寿司セット。鮪、烏賊、アマエビ、イクラ。蛤の吸い物、隠元の胡麻和え。

 Hは友人の家に遊びに行き、五時過ぎに帰ってきてからずっとテレビを見ていたせいか、夕飯をいざ食べようという時になって頭が痛いといいだす。偏頭痛らしい。結局、隠元とネタを入れないですし飯を海苔に巻いたものを三本、林檎の摩りおろしを食べる。Mは超元気。

 午後からはニール・ヴァレリィのソロ、ライナーのための資料集め。
 ネスケと Acrobat の不具合はどうしてもだめなので、iMac のデフォルトのブラウザを iCab に変える。JAVA も使えるようになっている。

2000年 3月 04日 (土) 曇りのち晴れ。

 朝食、クロワッサンにイチゴジャムを塗り、葡萄パン、キャベツと人参のスープ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。
 ニール・ヴァレリィのライナーのために、コンサティーナのアルバムを聞く。

○Elizabeth Crotty CONCERTINA MUSIC FROM WEST CLARE; RTE, 1999
 クレア西部のコンサティーナ伝統の巨人の一人のフィールド録音。1950年代後半から本人の死の数ヶ月前までの録音。ソロのみならず、パブでのセッションも含む。あまりポルカやジグはなく、リールが多いのは晩年、各地に旅行したせいだろうと解説にある。個々の音を際だたせる演奏。

○Gearoid O hAllmhurain & Patrick Ourceau TRACIN'; Celtic Crossroad, 1999
 現在はアメリカ西海岸に住む、クレア出身のコンサティーナ奏者とパリ生まれの若いフィドラーを中心としたアルバム。ピアノ、ギター、曲によってはベースやハープも入る。全体に突っ走るリールは一つもなく、ゆったりと演奏者なりのペースで悠々と演奏しているのが、実にいい。リールは少なく、ジグ、ホーンパイプ、ワルツまであるが、北米在住者らしく、ケベックやケープ・ブルトンのレパートリィもある。伝統音楽は柔軟なのだ。

○THE RUSSELL FAMILY: Traditional Irish Music from Doolin Co. Clare; Ossian, 1989/1997
 マイコ、パキィ、ガシィのラッセル兄弟の録音。パキィのコンサティーナは流れるようなスタイルで、音を切ることがほとんどない。"Devil among the tailor" などもやっているが、解説によると、クレアではスコティッシュ・チューンは珍しくないらしい。意外や意外、何と録音がジョン・タムスとニール・ウェイン。

○DOG BIG AND DOG LITTLE; Claddagh, 1989
 キアラン・カランが若い頃参加していたバンド。フィドル、コンサティーナ、ピアノ、それにカランは「シターン」とクレジットされている。全体的にはルーズなケイリ・タイプのアンサンブル。スピード感はないが、ほのぼのした演奏。拾い物はコンサティーナ奏者がうたう歌。この人はかなりのうたい手。カランが伴奏をつけるものもあり、そのうちの一曲 "Pat Reilly" のメロディーはドロレス版の "Bonnie light horseman"。ラストのポルカがいい。もっとこういう曲を入れてほしかった。ケイリにはリールよりもポルカやスライドが合う。

○TERRY BINGHAM; Ossian, 1997
 ダウン出身で今はドゥーリンに住む、コンサティーナ奏者のソロ。写真では若いが、70年代からやっているそうだから、40以上ではあるはず。ノエル・ヒル、メアリ・マクナマラと同世代のようだ。ギター、ブズーキが伴奏につく他、ダーモット・バーン、メアリ・カスティが参加。モダンなスピードの良くのった演奏。が、あまり音は切らず、流れるようなスタイル。ニール・ヴァレリィほど速くはない。音はとてもみずみずしく、アコーディオンのダーモットに感じが似ている。ギターとブズーキの音をごく控えめにした録音は見事に当たり。聞きすすんでゆくうちに良くなってくる。傑作。

 昼食は豚肉と白菜の蒸煮、ご飯、隠元の胡麻和え(昨日の残り)。
 午後、ニール・ヴァレリィのライナーを書く。何とか書上げて夕食前に送る。ついでにメールをチェックするとC3PIOさんからのメールで Lia Luachra にもコンサティーナが入っていることに気がつき、もう一度のざきさんにメール。

 夕食は釜揚げ饂飩と巻繊汁、林檎。デザートに昨日作ったケーキを食べたらお腹がいっぱいで動けない。
 メインのブラウザを iCab にしようとは思うが、なぜかルータの設定画面を出してくれない。何も映らないのだ。

2000年 3月 05日 (日) 曇。

 朝食、ハム・トースト、葡萄パン、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース、蜜柑。  今年初めて、本格的な花粉症の発作。

 駐車場抽選会。

 『ラティーナ』のためのディスク・レヴューを書いてメールで送る。と、昼過ぎ、Mさんから電話。日曜日でも仕事をしているらしい。バスクのロック・バンドのアルバムの日本語対訳が欲しいとレヴューに書いておいたら、実は歌詞対訳が付いています、と言ってファックスで送ってくる。それを見て、あらためて聴直し、原稿書直し、送り直し。

 昼食は昨日の残りの豚肉・白菜、巻繊汁に牛肉・牛蒡・人参の煮付、ご飯、蜜柑。

○TARAF DE HAIDOUKS; Vap, 1996/2000, video for reviewing
 やはりこういう音楽は見て何ぼのものだ。音だけではわからないのだ。視覚的要素、だけでなく、匂いや触覚にまでいたる、五感プラスαを通じての、つまりは生身の存在と空間を共有することでしか伝わらないものが音楽の本質なのだろう。もちろんこれはビデオだが、それだけにステージだけではわからない、その後ろにあるものもいろいろと見せたり、聴かせたり、感じさせたりしてくれる。空間的移動は昔よりは容易になったが、われわれが彼らの村に行くことは容易ではないし、そこでかれらの日常生活を実感することも容易ではなかろう。

 午後、Kがチェックした経費関係のリストの訂正・仕上げ。
 夕食は回鍋肉と蟹玉、ご飯、蜜柑。蟹玉はなかなか美味。

 いちいちルータのファームウェアの設定を変えるのがめんどくさいので、やはりリンククラブ一本にする。ニフティは一応バックアップとして残しておこう。いざとなればAOLもある。
 夜、BEATERS のための日記の整理、昨年十月分。

○Ben Lennon & Friends THE NATURAL BRIDGE; Clo Iar-Chonnachta, 1999
 ファーマナ/リートリム地方の伝統音楽のスタイルだそうだ。のんびりほのぼのと、先を急ぐこともなく悠々とフィドルを奏で、仲間たちとのセッションを楽しむ。チャーリィ・レノンは弟だった。ここではその兄弟たちや、息子、昔からの友人たちが集まる。ベン・レノンは主人公というよりは、いわば集まるための口実、長屋の大家みたいなものだ。二曲うたっている Gabriel McArdle はやはりかなりのうたい手。

2000年 3月 06日 (月) 曇。

 朝食はハム・トースト、茹でブロッコリ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Speedy Keen Y'KNOW WOT I MEAN?; Edsel, 1975/1996
 松平さんが高く評価していたイングランドのシンガー・ソング・ライターというよりはロック/ポップの人であろうが、その今のところ最後のアルバム。といっても出たのは1975年。その復刻が1996年。Thunderclap Newman を含め三枚しかないそうだ。パンクで葬られてしまった良質のポップ・ミュージシャンの一人、ということだろうか。とはいえ、いわゆる主流にも受入れられたはずはない。もちろんこの人もヒットを夢みてこうした音楽を作っていたのだろうが、「売れる」だけの俗悪さを備えていなかった。ビートルズを筆頭とするブリティッシュ・ポップの中でこの人がどういう評価をされているか知らないが、ジャンルや時空を越えたこの音楽はイングランドの生出した最良の音楽の一つだ。

 家事をすませて9時半に家を出、まっすぐ税理士のIさんの事務所に向かう。用件をすませてから、米山、C3PIOさんらとやっているバンドが先日銀座の「ロッキー・トップ」に出た際のライヴを聴かせてもらう。結構面白い演奏もある。

 0時半に辞去して銀座に出て、はしごで坦々麺の昼食。旭屋で文庫二冊、『ミュージック・マガジン』の三月号、中川さんと小沢彰一の対談が載っているのを買う。最後の一冊か、もともとここは配本は少ないだろう。松屋を覗くがなんだかつまらなくて、伊東屋に行く。フランス製の水性ボールペン。が、あとで店じゅう見ているうちに、Lenox とか言うメーカーのボールペンがデザインがいいのを見つける。が、金がないので今日は我慢。Rotring が新しいのを出していて、これもなかなかいいが、高い。新宿で甘栗を買って帰る。帰宅、5時前。

 夕食はかき卵スープ、昨日の回鍋肉の残り、餃子、ご飯、昆布の佃煮、ゆかり。

○FESTIVAL TO GO: an All-Canadian Sampler, Vol.2; 1999
 多分Dirty Linenに付いてきた、カナダの多分ディストリビュータが作ったカナディアン・ミュージシャンのサンプラー。[16]のフランス系ルーツのトラックが一番。フランスにもヴェトナムやインド/イスラム系の移民がいて、それぞれの音楽をやっている。ヴェトナムのものはちょいと面白い。Madagascar Slim なんて名前のミュージシャンもいる。ジャズもロックもある。とはいえ、やはりカナダでなければ聞けない音楽をこちらは求めるわけで、そうなるとスタン・ロジャースやフレンチ・カナディアンということにどうしても耳は向かう。初体験では Carlos Del Junco はなかなかだ。ハーモニカ・ジャンプ・ブルースというところ。ジャズやロックが好きな人は、個々に追いかけることになるのだろうが。既存のものでは Willie P Bennett が面白い。この人、こんなものをやるようになっていたのだ。もう一度、聴直してみよう。Jerry Holland はアイルランドよりはスコットランド系のフィドラー。パイプとのデュエットらしいのがケープ・ブルトンとするとちょっと珍しい。

2000年 3月 07日 (火) 晴れ。暖。

 朝食、ハム・トースト、葡萄パン、キャベツのバター炒め、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○Rawling Cross MAKE IT ON TIME; Wea Canada, 1998
 このバンドも枚数を重ねるにつれ、「普通」のロック・バンドになってしまったか、と思いきや、大逆転が待っていた。[10]Rockaway。バネの効いたコーラスから入ったアップテンポな曲にかぶさるロッキン・ハイランド・パイプ! ハイランドでここまでやったのは初めてだ。デイヴィ・スピラーンのブルース・パイプに勝るとも劣らない。これは完全に「ブレイク」している。脱帽。

 PTA今年度活動報告兼総会資料の製本。作業自体は一時間ほどで終り、その後本部だけ残り、明後日の運営委員会、合同反省会の打合せ。12時半散会。
 一度家にもどり、車で駅前に出る。吉本家で葱・味玉で昼食。今日も花粉はぶんぶん飛んでいるようだ。
 タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのディスクを聞いてから、ビデオのレヴューを書いて送る。

○TARAF DE HAIDOUKS; Nonesuch/ワーナー, 1999
 選曲にはちと不満。なるべくいろいろな形を聞かせようという意図はわかるが、一番いいところだけを集めたわけではない。横井さんの解説にはちょっと首をかしげる部分もある。ビデオ中にも出てくるが、かれらは決して自分たちが好きな音楽だけをやっているわけではない。プロのエンタテイナーとしての側面も半分は確実に持っている。西欧が驚いたのは、やはりそのテクニック、「芸」としての完成度の高さだろう。フォークかどうか、ということは実はどうでもいいのだ。ただ、かれらにしてもアイルランドにしてもそうだが、音楽は頭や手先でなく、体の芯、いわば骨で覚えるのだ。フィドルを弾いているのはカリウの腕や筋肉ではなく、骨なのだ。あるいは楽器にもかれらが持った瞬間、本当に血管が繋がり、血が流れはじめるのだ。

 キング・ベアー出版・Iさんが送ってくれた『バビロンの大富豪』の愛読者カードを見て気がつくが、この本は大金持になるハウツー本ではない。資産形成の第一の、そして一番大切な要素は、資産を作るぞという決意、他の全てのことにもまして資産形成を目指す決意の核を持つことだ、というのがこの本の主張なのだ。資産を作るのに難しいことやトリックをする必要はないし、それではできない。むしろ簡単なことを着実に実行すれば資産はできる。問題をそうやって金を作ることへの動機づけだ。その動機づけを寓話の形で何度もくりかえすことで植付けようとする。実は人間は、そうまでして金が欲しいとは思わないのだ。生活に不自由がなく、たまには贅沢や遊ぶのに何とか足るだけの金があれば、それで満足してしまうのである。

 本当に強烈な欲望、なににもまして金が欲しい、他には何も要らないと、身を焦がさんばかりに求めている人間は極稀なのだ。その動機づけさえできれば、あとは一つひとつは単純な、簡単なことを重ねていくことで、いくらでも金はできる、というわけだ。  Hは今日はうちにみんなを呼んできて遊んでいる。ところが遊びに夢中でおやつを食べなかったため、夕飯前に腹が減りすぎて頭が痛くなったらしい。仕方がないので夕飯を食べさせると、元気回復。  夕食はハンバーグ、キャベツの千切り、小松菜の味噌汁、ご飯。豚肉と牛蒡の大蒜炒めもあったが、これは一口食べて明日の昼飯用に残す。

 夜はブラウンの再校ゲラのチェック。カトリックの礼拝関係のところを調べるのを忘れていた。

2000年 3月 08日 (水) 晴れ。

 今日も花粉が凄い。

 朝食は葡萄パン、胡桃パン、キャベツのバター炒め、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。  家事をすませてから9時半のバスで図書館。ブラウンで調査が漏れていた、カトリックの礼拝様式について調べる。結局頼りになったのは『キリスト教大事典』だけだった。30分ほどできりあげ、さっさと帰る。

 昼食は昨日夜の豚肉と牛蒡の大蒜炒めと小松菜の味噌汁を暖め、ご飯。林檎。
 仕事はブラウンのゲラのチェックの続き。初校ゲラの赤入れとの照合。これであとはあとがきだけ

○Hart Rouge BEAUPER'S HOME; Highway 13 Music, 1997
Hart Rouge  やはりこのバンドは只者ではない。三人の兄弟のヴォーカルともう一人の打楽器を軸にして、融通無碍、ジャンル横断、鋭く、また表情豊かな歌を聞かせる。ナンシ・グリフィスの名曲 "Love at the Five and Dime" のカヴァーはナンシの歌のカヴァーとしても一、二を争う。ケイト&アンナがやっていたフレンチ・カナディアン・トラッドの[06]はそのケイト&アンナをも凌ごうかというほどの出来。
○FESTIVAL TO GO: an All-Canadian Sampler; Festival
 ずいぶん前に送られてきていたカナダのサンプラーの一枚め。何と言っても[06]。これは凄い。中国とブラジルの異種交配。見事な成果だ。中国であって中国でなく、ブラジルであってブラジルでもない。カナダゆえに生まれたものだろう。もう一つの収穫は[17]で、こちらは確かCDを買ってある。にしてもすばらしいうたい手。その他にも結構面白い。カナダは今「買い」かもしれない。

 夕食は鰻。菠薐草の胡麻和え。Hの疣治療のため。今日は格別痛かったらしく、治療室で「疣の馬鹿野郎」とわめいたそうだ。早々に寝かせる。

 夜、BEATERS 用に日記を整理していたらやめられなくなり、結局就寝1時過ぎ。

2000年 3月 09日 (木) 晴れ。

 朝食は目刺、大根の味噌汁、キャベツ若布、ご飯。子どもたちは二色ご飯。

○Hart Rouge NOUVELLE FRANCE; Red House, 1998
Hart Rouge  アメリカ盤で、オリジナルの模様。セカンドにあたるらしい。アメリカ盤ということもあってか英語の歌が多いようにも思うが、切れ味の鋭さは相変わらず。シンプルな編成でアレンジもシンプルな曲が多いのだが、情報量の多さは並み大抵ではない。ヴォーカルも楽器も、実に表現が幅広く、奥行きが深い。音楽表現の質の高さは、音数の多さとか楽器の数に比例しないことは当然だが、かれらの場合、それ以上に次元が違う気がする。おそるべきバンドだ。

 午前中、また日記の整理。今日は今年一月分。
 11時、歯医者。右上手前の続き。確かに良くはなってきている。今日はガラガラで、入るとすぐに診察室に呼ばれ、終っても次の人はいなかった。あとで聞いたところでは、花粉症で外出ができず、キャンセルした人が多かったらしい。

 昼食は帆立の刺身、朝の残りの大根の味噌汁とキャベツ若布、ご飯、林檎。
 1時半から今年度最後の運営委員会、その後合同反省会。まあ、皆さんそれなりに楽しまれたようで何より。4時半、子どもたちを拾って帰る。

 帰ってからは11月分の日記をまとめて、久田さん宛送る。
 ARENA バグを修正したリヴィジョン・アップ。
 夕刻、東京創元社・Kさんから電話。「グリーン・マーズ」中編版の依頼。雑誌掲載版と短篇集所収版が変更されていないかどうか、点検して欲しいとのことで、了解。
 夕食は焼きそば。

 リビングのテレビ対面の棚のCD段から本やダブリのCDをどかし、アメリカ盤の未聴分を入れる。  M、昨日から頬がやたら赤い。学校では林檎病ではないかとみんなに言われたそうだ。熱を計っても無し。食欲も変らず。念のため入浴は控える。

○Maire Brennan WHISPER TO THE WILD WATER; Epic, 1999
 相変わらず。今さら変えるとも思えないが、こういうゴミのような音を垂流しつづけられると、正直うんざりしてくる。まだ前作の方が聞きどころはあったように思う。世間的には売れるのであろうが、聞いた時間は全く無駄だった。サンプルでもらうので聞くのは一応の礼儀と考えて耳に通してみたが、それすらも苦痛。

2000年 3月 10日 (金) 晴れ。

 朝食、雌旗魚の付焼き、目刺、大根の味噌汁、ご飯、ゆかり。

○Danu THINK BEFORE YOU THINK; Shanachie, 2000
Danu  ファーストはまずまずのできだと記憶するが、これはブレイク。すばらしいバンドのすばらしいアルバム。フルートとブズーキの兄弟を中心にして、フィドル、アコーディオン、ギター、バゥロン&イラーン・パイプ、そしてヴォーカルの七人組。ディアンタ、ソラスがバンドとしての活動を停止している現在、新星バンドと言っていい。若者ばかりなのはちょっと気になるが。




○Barry Kerr THE THREE SISTERS; Spring, 1998
 シェイマス・タンシィの最大級の推薦とともに現われたフルートの新星。ホィッスルやイラーン・パイプも披露する。ギター、バゥロンの伴奏で、スロー・エアなどではキーボードがついたりもする。スロー・エアはだが、もう少し味わいが欲しいところもある。マット・モロィと比べては酷かもしれないが。テンポ感覚はひじょうにバランスがとれたものがあり、ちょうどいいスピードが気持ちいい。メロディのくずし方、装飾音の入れ方にもモダンなセンスが光る。

 青弓社のY氏からメールが来て、企画のたたき台としてアウトラインを出してくれとのこと。印税等の条件はきつくなると、というのは少々しつこい。文句を言う著者が多いのか。だいたいもうけるためだったら本なんぞ書くものか。あるいは書き方を全く変える。

 昼食は鱈子、海苔、朝の残りの味噌汁、朝薫が作っていった、ジャガイモ挽肉、ご飯、ゆかり。

 昨日ついたナタリー・マクマスターのプロモ・ビデオを見る。一曲だけで短いものだが、ちょっとエッジが立ちすぎてている。こういうのが一つの流行なのか、細かく、ざっくりした映像を一瞬の切れ目もなくつないでゆく。せわしない。音楽の中身ともあまり関係ない。ヒロインのイメージもいささかぼやける。

 ブラウンの訳者あとがきを書きはじめる。が、著者情報があまりに少ないので、ネットでトリニティ・カレッジ・ダブリンのサイトにみて見たら、ちゃんとメール・アドレスがあった。早速メールを出してみる

 夕食は香辛料つきの鶏もも肉と手羽をオーヴンで暖めたもの、チーズ・クロワッサン、ロイヤル・ミルク・ティー。キャベツの人参のスープ、伊予柑。

 夜は一月ぶりにニフティ音楽巡回。まだ、少し取りこぼしがあったりする。やはりそろそろ限界か。こまめに回ればいいわけだが。わんさんがスタッフを降りられたのにはびっくり。

[CONTENTS] [ ← P R E V] [N E X T → ]  [DIARY TOP]