大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 3月 21日 (火)〜 2000年 3月 31日 (金)] [CONTENTS]

2000年 3月 21日 (火) 晴れ。

 朝食、早良西京漬け、大根の味噌汁、隠元胡麻和え、ご飯。
 昼食、吉本家でキャベツ・味玉ラーメン。
 夕食、ハム・トースト、葡萄パン、トマト、ロイヤル・ミルクティー。

 午前中家事をすませてから、バスで警察署。運転免許更新。写真は撮ってあったから、交通安全協会で待つ必要もなし。証紙だけ買って申請書を出す。すぐに視力検査をして、隣でビデオ。「死角をなくせ」というタイトルで、東京消防庁制作。ビデオとしてはあまり出来のいいものではない。金をかけていないのか、ちゃんと競争原理が働いていないのか。

 銀行を周り、郵便局で あちこち送金。期末のせいか、預金関係はひどく混んでいる。吉本家で昼食を食べてそのまま帰宅。歩きまわってくたびれる。
 東京創元社・Yさんから電話。ホーガンの訂正部分の打合せ。ものにもよるらしいが、重版がかかりそうなものは校閲にかけると聞いて驚く。その後、Jさんに架電。版元との打合せのため、今月中にレニィ・ブルースの冒頭部分の訳が欲しいとのこと。週明けに草稿を送ることにする。
 その後はまたひたすら『緑』見直し。第二部まで終らせる。

 夜、10時過ぎ、ヒデ坊から電話。松井ゆみ子さんの電話番号を教えてくれとのことだったが、彼女は今アイルランドだ。アイルランドでのゴシップに笑う。ドーナルにもらったブズーキがひどく気持ちよくて、ブズーキばかり弾いてるそうだ。いいことだ。これだまたソウル・フラワーの音楽が変わるやも知れない。

 歩きまわったせいにしては眠いのと、偏頭痛もあり、どうやら風邪をひいているらしい。腹が下っていたのもそのせいかもしれない。夕食にミルクティーを飲んだら、急に下腹部がしっかりした感じになる。11時過ぎに床に就くが、くたびれすぎていたせいか、すぐには寝つけない。

○Toss the Feathers RUDE AWAKENING; Magnet Music, 1995
 マンチェスターのマイケル・マクゴールドリックがかつて所属していたフォーク・ロック・バンド。マクゴールドリックのフルートとパイプ、別人のフィドルをフィーチュアしたフロントはなかなかだが、例によってリズム・セクションがそれについていかない。曲はほとんどオリジナルで、メロディ・ラインがいい。全体的にはそんなにひどいものではない。アイリッシュ系のフォーク・ロックとしてはまずまずの水準。
2000年 3月 22日 (水) 晴れ。

 朝食、ほっけの干物、ゆかり、大根の葉の味噌汁、茹でブロッコリ、ご飯。
 昼食、雉焼き丼、朝の味噌汁とブロッコリの残り。

 午前中からずっと『緑』の見直し。午後2時前に終って、すぐにメールで送ってしまう。
 2時半頃、郵便局に行き、アルタン祭のチケット代をプランクトン宛、振込む。

 昼食後、CDジャーナルのS氏から電話。毎月一回、輸入盤の紹介原稿の依頼。後で依頼書がファックスで来る。

 朝刊に「変われ! 裁判所」のシリーズ記事の第二回目が始まる。今回は長期拘留の問題提起。保釈請求を何度も出す弁護士に対し、「認めたいが、高裁が認めない。私もサラリーマンだから」と裁判官が言ったという話。人の一生を決める仕事もサラリーマンがしているらしい、この国では。結局裁判官も、大蔵省をはじめとする役人どもと、質は同じということか。サラリーマンが出す判決にどれだけの意味があるのだろうか。

 もうひとつの側面は、わが国社会の硬直化がここまで来ていること。「サラリーマン」は今の職場からほうりだされた場合、行き場がなくなっている。下っ端ほどそうだ。
 だいぶ良くなったが、まだ右下腹部に鈍痛がすることがある。

 Kが宴会でいないので、夕食はハンバーグを焼き、キャベツの味噌汁、プチトマト、ご飯。
 夜は、CDNow、Amazon.com、TowerEurope に行ってCDを買おうとするが、Amazon 以外はこれだと思っていたパスワードが違っている。CDNow では新たに口座を作るが、Tower ではメール・アドレスが同じだと新しい口座は作れないらしいので、問合せのメールを出す。

○Colum Sands THE MARCH DITCH; Spring, ?
 この人も、特に変わったことはせず、等身大の歌を作って淡々とうたっている。豊かな音楽。

2000年 3月 23日 (木) 曇、夜に入り雨。夜半、激しい。

 朝食、ほっけの開き、葱の味噌汁、キャベツ若布、ご飯、ゆかり。
 昼食、釜揚げ饂飩、味噌汁とキャベツ若布。
 夕食、ピザとフライド・ポテト。

 午前中、『グリーン・マーズ』の献辞、謝辞の部分を訳す。ブラウンのあとがきを一応仕上げる。ともにメールで送付。

 M氏から著書。『本の雑誌』連載をまとめたものに加筆したもの。すぐに読みはじめてやめられなくなり、昼食を食べながら、第一部を読む。ひどく「下世話」な話のようでいて、恐ろしくストイックな文章からかもしだされる香気が快い。さらりとしていて、しかもしっかりとした手ざわり。不思議な文章だ。

 遅くなったが、2時過ぎに家を出て、町田まで行く。厚木と町田とタハラをはしご。『CDジャーナル』用のディスクを探す。が、お目当てのリエナ・ヴィッレマルクはなく、これといったものもない。とりあえず、CD計5枚。東急とルミネを覗く。ルミネの五階の雑貨屋はちょっと面白く、感じのいいスタンドがあった。ハンズからルミネに引越した中島は、旧態依然の文房具屋で、想像力の欠片もない。東急でちょっと長めの茶碗と思って買ったが、帰ってよく見るとやはりビアマグらしい。

 子どもたちは子供会の行事でハイツ集会所で昼食会。Kも一緒。夕食はKの誕生日でHが奢ると言ってピザを取る。Mは絵をプレゼントしたらしい。
 夕方、キングベアーのIさんから電話。『バビロン』重版の知らせ。これでiBookのHD交換ができる。

 青弓社のY氏から先日送った企画に基本的にOKが出るが、条件のひどさにやる気が失せる。初版部数はまあ仕方がないとして、初版印税率3%というのは馬鹿にしている。これで書く著者がいるのだろうか。

○Marcas O Murchu FROM MOUTH TO MOUTH; Clo Iar-Chonnachta, 1987
 ベルファスト出身のフルーティスト/シンガーのソロ。切れ味の良い、めりはりの聞いた演奏。フルートはアクセントのつけにくい楽器で、ホィッスルやフィドルにはその点で一歩後れを取る。が、これはその弱点を感じさせないすばらしい演奏。うたい手としても熟成されていて、名盤と言っていい。

○Cathal McConnell LONG EXPECTANT COMES AT LAST; Compass, 2000
Cathal McConnell  ソラスを中心にして、トレヴァー・ハッチンソンなども加わり、さらにはリチャード・トンプソン、リンダ・トンプソン、デイヴ・マタックスまで入る超豪華メンバー。とはいえ、そのメンバーの凄さを全く感じさせない主人公たるマコンネルの存在感が見事。この人ぐらいになれば、もうテクがどうこうというレベルではない。
2000年 3月 24日 (金) 晴れ。

 昨夜は暴風雨。5時前、あまりの風の音と尿意に目が覚めて、トイレに行く。朝、ちょっと出てみると、階段下の掲示板に張られていた紙が、全て、ずたずたに吹飛ばされていた。

 朝食はハム・トーストに昨日のキャベツ若布の残り。コーヒーとグレープフルーツ・ジュース。腹具合はようやくほぼ復調。
 終業式で子どもたちは早々と帰宅。Hはそのまま遊びに出てゆく。

○Michael Clarkson & Gerry Jones THE FAR SET; Outlet, 1999
 ベルファストのフルート/フィドル奏者とブズーキ奏者/シンガーのデュエット・アルバム。特にどこがどうと言ったものではないが、例によって水準の高い演奏。この人のフルートはあまり音を切らず、流れるようにうたう。メドレーはあまりつながない。ブズーキは録音の仕方にもよるのか、あまり切れ味が良くない。ジャケットのイラストではラウンド・バックで、クレジットには "bazouki" となっているのは故意だろうか。歌もとりたてて言うほどのものではないが、これまた例によって味わい深い。まずはアイルランドの水準的アルバム。

 昼食は前からのリクエストで、鱈子、海苔、キムチ、若布キャベツ、ご飯。
 iMacでCDジャケットの取込みや、データベース作り。
 ようやく TowerEurope のサイトの password が来たので、注文を出す。ついでに Amazon.co.uk や Amazon.com で、いろいろ買ってしまう。

 夕食は豚肉、豆腐、葱、椎茸の鍋、ご飯。

 TCP/IPでファイル共有をすると、FireWire でつないでいるMOのディスクが共有されない。iMacでマウントしていてもiBookからは見えない。iMacのデスクトップで共有情報を見ようとすると、共有の起動中なので今は見られないというアラートが出る。普通のAppleTalk だと大丈夫だったはずだが。仕方がないのでiMac側からiBookを呼出し、マウントしてMOからコピーする。

2000年 3月 25日 (土) 晴れ。

 朝食、チーズ・クロワッサン、アンパン、コーヒー、プチトマト、グレープフルーツ・ジュース。

 Kは演劇部の監督で朝から出かける。
 EFDSSからCD、CD-ROM、ブックレット。CDは William Kimber の録音を集めたもので、Enhanced になっている。アーカイヴもののフィルムなどがけっこうたくさん入っている。CDの解説とは別に、分厚いバイオがついているのがすばらしい。唯一の欠点はカヴァーのデザインのひどさ。センスがない。

 アバディーン大学で作ったスコットランド北東部の伝承についてのCD-ROMは、インストールしてたちあげようとすると、"NE Scotland" CD-ROM を入れろ、と言ってくる。製作元のサイトを見てみたら、これの発売は昨年11月だが、こういう現象については何の報告もない。

 朝一番でメールをチェック。K君から返事。やはり、青弓社は資金繰りが急速に悪化しているのではないか、という意見。収入の少なさもさることながら、自分の本が資金繰りのための捨て石にされるのはたまらん。中小出版社はどこも同じかもしれないが、やはり再版制度の上に胡坐をかいてきたということなのだろう。

 昼食は釜揚げ饂飩、昨夜の鍋の残り。
 腹具合はまだ完調とはいえず。

 午後はレニィ・ブルース。途中で子どもたちをスイミングに連れてゆく。生協で買い物をして一度帰り、レニィ・ブルースの続き。また子どもたちを迎えに行って、後は夕食までレニィ・ブルース。
 夕食はすき焼き、ご飯。

 夕食後もレニィ・ブルース。寝しなに松平さんの文章を読む。オーク店長時代に、あるミニコミ誌に掲載されたインタヴューはちょっとショック。松平さんの不運は、多分、ものごとが見え過ぎてしまうことだったのだ。ここに現われた「奈落」に比べれば、ぼくなどはよほど鈍感で、無邪気、何も見えていない。まさにいま崖から跳びこもうとするレミングだ。五郎さんの『二五年目のおっぱい』への見事な賛辞にほっとする。
2000年 3月 26日 (日) 晴れ。陽射しは暖かく、動くと暑いが、空気はひんやりしている。

 朝食はチーズ・クロワッサン、ハム・トースト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。腹具合は今ひとつで、食べる前は空腹だったが、食べていてあまりうまくない。めまいがしたり、風邪がぶり返した感じ。

 11時前に家を出て、爺様の墓参りにまっすぐ麻布の寺に向かう。今日は一人だったので、バスで行ってみる。誰か最近来たとみえて、花は結構入っていた。またバスで銀座へ出る。歩行者天国で外堀通りへ回ったのは良かったが、数寄屋橋の停留所は交差点を渡ったところで、この交差点を渡るのにやや渋滞。

 昼食、銀座・はしごで中辛坦々麺と焼売2個、ご飯。食欲はあり、相変わらずうまかったが、食べていると右脇腹に痛みが走る。まだきちんと回復していないらしい。
 バスを降りる場所をミスったのと、はしごが混んでいたので時間がなくなり、伊東屋へは寄らず、そのまま渋谷へ出る。待合せ場所には五分前に着いた。松平さんの仕事の完成記念の座談会。やがて浜野さん、ワーナーのジャンパーを着た山本さん、北中さんが見える。鈴木常吉さんは五郎さんの家に遅れるという電話があったということで、先に四人で五郎さんの家に向かう。五郎さんの家はスモール・ピンクと呼んでいるそうだが、なかなか瀟洒な三階建。その二階のリビング兼リスニング・ルームで座談会。というか、浜野さんのリードでおしゃべり。五郎さんと山本さんはあまり自分からは発言しない。北中さんはポイントを抑える。途中で鈴木さんが来られ、六時近くまで続ける。

 今日は『ラ・カーニャ』で女性ミュージシャンばかりによるライヴがあり、五郎さんの奥さんの青木ともこさんも出られるので、そちらに回る。下北沢まで鈴木さん以外の四人で歩く。鈴木さんはこの辺ぶらぶらしていきますわ、と別れた。
 『ラ・カーニャ』は結構本格的なライヴ仕様になっていた。エフさんがいたので、その隣の壁際にすわる。ここは柱がじゃまになってステージの中央部分が隠れる。あまり調子も良くなかったので、目をつむって聞いていた。最後の中山ラビのときだけ、演奏のすばらしさに一つ椅子をずらして横から覗く。

 今日は四組のミュージシャンで、一人30分。まず青木ともこさん。十数年ぶりの本格的ステージということで、やはりブランクはあるが、うたい手としてのすばらしさは十分わかる。ライヴを重ねれば、すばらしい歌を聴かせてくれるはず。バックはギター2本、ベース(エレキとアップライト)。ともこさんがピアノとギター。

 二人めは片桐麻美。ギター一本のソロ。五郎さん好みの、ソプラノがきれいなうたい手。詞も結構面白い。

 休憩が入る。飲物をおかわりし、ウオッカ・トニックにする。こちらの方が腹には良かったらしい。プランクトンのI君が遊びで来ていて、ちょっと話す。

 後半はまずリング・リンクス。これはリード・シンガーの宮武嬢がぐんと若く、最年長とは十歳以上離れているらしい。『小笠原古謡集』からのメドレーが圧巻。ステージが狭いのと、出演者が多かったので、ドラムスはスネア一つだけ、スチールがなくてガット・ギター。浜野さんが座談会の時、昔のはちみつぱいもはっぴいえんどもみんな下手だった、と言っていたが、こうして見ていると今のバンドは格段にうまい。

 トリは中山ラビ。これがあったので、来た甲斐があった。五郎さんと同世代だそうだが、黒い革のホットパンツ、ワンレンを総金髪に染め、切れ味鋭いギターを弾きまくり、堂々たる歌をうたう。ハギワラーと呼ばれていたこちらも中年で、頭の半分はげたおっさん(かつての浅川マキのバンドの伝説の人だそうだ)が渋いギターを合わせて、盛りたてる。今度は6月にライヴがあるとチラシが入っていたが、ぜひ見に行こう。最高だったのは仏となった自分と向合い、自分で自分の三回忌を出す歌。曲のタイトルも言わず、MCもほとんどなく、どんどんうたっていくのは気持ちよい。昔のバンドのメンバーと会えたと言って、ともこさんのバックに入っていたギタリストと、客席にいた女性のピアニストを呼出してのぶっつけ本番のホンキィ・トンク・ナンバーもご機嫌だった。アンコール二曲。ちゃんと締めくくりの挨拶までして、司会の五郎さんもいらないくらい。終演、10時近く。

 夕食は食べそこね、ライヴがはねてからエフさんと下北沢駅前の「ザック」というレストランに入る。普通のレストランだと思ってロール・キャベツを頼んだら、これが見るからに不味そうな代物で、実際ひどい味。まるで一週間前に作って冷凍しておいたものを、レンジで解凍したようだ。腹が減っていたから一応食べたが、二度とこの店には入らん。値段も特に安いわけではなく、あんなものでよくやっていられる。ウエイター、ウエイトレスたちも客はそっちのけで、おしゃべりしては大声で笑っていた。時間が遅いせいもあって、気が緩んでいるのかもしれないとはいうものの、基本がだめ。

 隣の席で、体のでかいおっさんが、コーヒー一杯と吸い殻山盛りの灰皿を前にして、紀伊国屋のカバーをかけた文庫本を3冊ほど、解説とおぼしき巻末のページを頻りに見ながら、何やら原稿を書いていた。書評でも書いていたのか。

 11時の閉店と同時に出て、エフさんは新宿に向かい、帰宅0時少し前。お茶を飲んで寝る。

2000年 3月 27日 (月) 晴れ。

 朝食はハム・トースト、茹でブロッコリ、ロイヤル・ミルク・ティー。昨日また腹の調子が思わしくなかったので、今日は大事を取る。

 Kは演劇部の大会の監督。子どもたちは学童保育。
 家事の後、郵便局に行き、ダディ・オーからの荷物を受取る。アンディ・ホワイトのCD2枚。

 洗った包丁をぬぐっていて、左手の中指を浅く切る。
 ニフティにISDNでつないでみる。さすがに速い。それにしてもインターウェイから入るのに、いちいちパスワードを入れなくてはいけないのは、いささか面倒。
 昼食はKが子どもたちの弁当用に作っていったチキン・ライスとポテト・サラダ。
 アドビから GoLive 登録完了通知葉書。

 夕食前にレニィ・ブルースの一章を挙げてJさん宛送る。後刻電話がかかってきて開けないとのことで、DOSのテキストに変換して送りなおす。
 夜、久しぶりにニフティのSF巡回。

○Annbjorg Lien BABA YAGA; Grappa, 1999
 ちょっとやりすぎ、という気もしないでもないが、センスの良さには敬服。
2000年 3月 28日 (火) 曇。後雨。夜に入り、風雨強し。

 朝食、胡桃パン、葡萄パン、コーヒー、飲むヨーグルト。
 昼食、皆で吉本家。キャベツ、味玉ラーメン。
 夕食、鮪赤身刺身、根深汁、菠薐草の胡麻和え、ご飯。

 8時半過ぎ起床。朝食もそこそこに歯医者。右上手前の歯の根の治療の仕上げ。最後に確認のレントゲン写真。まっすぐ帰宅。昼は皆で出かけ、ヴァージンでドゥルス・ポンテスの新譜を買って駐車場代を浮かせる。『ラティーナ』のレヴュー用に頼まれたものがないかと探すが、影も形もない。

 The Living TraditionよりCD10枚。今回は課税なし。うち2枚ダブリ。てっきり新譜と思いこんでいたら、旧譜も混じっていた。
 留守中MSI・Sさんから電話とファックス。ナタリー・マクマスターのゲラ。すぐ見て、架電。他の仕事は『CDジャーナル』の原稿だけ。今日は湿度が高いせいか花粉症の発作がひどく、朦朧として思考能力ゼロ。アンビョルグ・リーンの新作をとりあげることにして、必死で書く。アンビョルグの出世作など、聴直す。今聞くと、ずいぶん時代に先んじていたのがわかる。アイリーン・アイヴァースやナタリー・マクマスターがつい最近始めたことを十年以上前にやっていた。Tower Europe に行き、持っていなかった旧譜など注文。

 朝からJさんと電話やメールのやりとり。なぜかメールの添付ファイルで送った原稿が先方で開けず。結局メールの本文に貼りつけて送る。てっきり窓だと思っていたらMacを使っているとのこと。そのせいか。夕方、Jさんの改訂が入った冒頭部分が返ってくる。

 午後、Mさんから電話。後任のHさんからのメールで知っていたが、『ラティーナ』をやめる件。休もうと辞めることにしたらしいが、すぐ次の仕事が入っているそうな。それも英語教材雑誌のウェブ版の編集という。これからその方面の仕事は増えるのだろう。
 さるパティオの発言を発言者に無断で外部に送った件。管理者からイエローカードをくらう。考えてみれば当然のこと。

○BUKKENE BRUSE; Grappa, 1993
BUKKENE BRUSE  先日町田のタハラで見つけたもの。原稿を書くために聞く。ハーダンガー・フィドル二人に縦笛と男性ヴォーカル。ヴォーカルはハーダンガー・フィドルの一人でトリオ。組合せとしては珍しいが、昔からあるもののように聞える。スタイルも曲目も伝統的なものだろう。楽器はもちろんすべてアコースティック。ダンス・チューンで踊らせるのではなく、歌を核としてじっくりと聞かせる音楽。この歌が見事だ。声の中に空間があるようで、しかも底が固い。ハーダンガー・フィドルの音も天高く響かせるのではなく、むしろ地上をゆったりと進む。もっと聞きたい。

 夕方、KがHを皮膚科に連れてゆく。例によって疣の切開。この次は一月後になった由。これで瘡蓋が取れ、きれいになっていれば完治だそうだ。

 花粉症の発作でくしゃみをしすぎたせいか、寝る頃には偏頭痛がんがん。
2000年 3月 29日 (水) 晴れ。風強し。

 朝食、胡桃パン、葡萄パン二切れ、キャベツのバター炒め、コーヒー、飲むヨーグルト。

 羅門さんから著書。
 朝起きた時はまだ偏頭痛が残っていて、布団をあげるとまたがんがん。喉が渇いたのでグレープフルーツ・ジュースを飲んでみたら、どうやら脱水症状だったらしい。たて続けにオレンジ・ジュースも一杯飲むと、だいぶ気分が良くなる。今日は晴れなので、花粉症は軽い。
 朝一番でメールをチェック。『CDジャーナル』に送った原稿が一行多すぎると返事が入っていたので、一文カットして再送。

 Amazon.co.uk から ROUGH GUIDE TO WORLD MUSIC: Europe & Middle East が本を注文したのにCDが来たぞと出したクレーム・メールの返事。こっちが注文したのは確かにCDだとのこと。invoice には本と書いてあるのに。もう一度サイトに行ってみると、本で検索してもCDが出てくる。おまけに本の方は昨年11月刊行のくせして、いまだ available になっていない。ひょっとして Amazon では買えないということか。一応注文しておく。

 昨日ダウンロードした Liquid というテーマに変えてみる。MacOS Xの Aqua を模したもの。何となくこちらの方が動きが滑らか。全体に明るく、見やすい。

○Kepa Junkera TRICKY!; オルターポップ, 2000
Kepa Junkera  バラカンさんのセレクションになるベスト盤。さすがに選りぬかれた内容で、演奏スタイルや編成もヴァラエティに富み、ケパの音楽の楽しさが体験できる。曲の並びも神経細やか。欠点といえば、これさえあればあとはいいという感じになることか。

 昼食はKとともに、薩摩揚げ、根深汁、菠薐草胡麻和えの残り、ご飯。
 12時半頃、東京創元社・K氏から電話。『緑』の原稿を送ったメール自体が届いていないとのことで再送する。が、何度送っても届かず、結局出版部の方のアドレスに送ってようやく着く。念のため編集部からメールを送ってもらうと、なんとアドレスが間違っていた。

 『グリーン・マーズ』ノヴェラ版、雑誌掲載のものと単行本収録のものを一応段落の頭だけチェック。まず違いはない模様。

○EAMONN COTTER; own label, 1996
EAMONN COTTER  クレアのフルート奏者のソロ。ダンス・チューンは急ぐこともなく、自分のペースでゆったりと演奏する。何ということもない、見事な音楽。何も言うことなし。

○Connie Dover THE BORDER OF HEAVEN; Taylor Park Music, 2000
Connie Dover  従来になくアメリカ色を濃くしている。むろん基調は変らず、アメリカ人にしてはウェットな声とスタイルでじっくりと聞かせる。テンポもいつもより遅いようだ。「ケルト」に憧れ、どっぷりと漬かったまま無我夢中でうたっていたのが、自分の足元に目を向ける余裕が出てきたのかもしれない。フィル・カニンガムのプロデュースはその変化をしっかりと捉え、隅々まで見通しが良い背景でヒロインの歌を浮きあがらせる。ラス・バレンバーグ、ジョン・ハートフォード、ジェリィ・ダグラスといったメンツが勘所を押さえる。ザン・マクラウドのギターがいい。テンポが遅いことがかえって緊張感を保つ。よくあるカントリー調にはならない。傑作。

2000年 3月 30日 (木) 晴れ。

 暖かい一日。
 8時過ぎ起床。朝食はハム・トースト、レタス、コーヒー、飲むヨーグルト。

 10時すぎ、家を出て、まっすぐ秋葉原。アミュレットには12時半過ぎ着。昨日電話で予約しておいたiBookのHD交換を依頼。2時間かかるというので、銀座へ出て、芳蘭で腹ごしらえ。久しぶり。醤油ラーメン。伊東屋で前から目をつけていた Lexon のボールペン。二種類あるものを両方見せてもらい、結局重い方にする。山野で瞽女のCD2枚。アンビョルグ・リーンの最新作もあったので念のため買っておく。まだ時間が余ったので、いつもの阪急地下の喫茶店でレニィ・ブルースの本を読みつぐ。

 3時すぎにアミュレットにもどる。動作確認をしてiBookを受取り、そのまままっすぐ帰宅。
 夕食は旗魚のフライ、キャベツの千切り、隠元胡麻和え、ご飯、豚肉小松菜の残りを味噌汁がわり。

 夕食をはさんでiBookにシステムをインストールし、外付HDに保存しておいた初期設定ファイル等もろもろをもどす。AirMac とWXGとSCSI・USB接続コードのドライバは新規にインストール。ところがAirMacを設定しようとしてベースステーションのパスワードを忘れる。保存しておいた初期設定でキーチェーンを復帰できたので、それでようやく見ることができた。変なものにしてあったものだ。10時前にようやくメールのチェック。

 確かにHDのスピードは上がっていて、仮想メモリ・オンでもWXG+Nickey で取りこぼしがだいぶ少なくなった。やはりこの辺のことなのかもしれない。HDのキャッシュがもっと大きければ、あるいは完全になくなるのかもしれないが。


2000年 3月 31日 (金) 晴れ。


 8時半過ぎ起床。慌てて仁に言ってゴミを出させる。
 朝食はハム・トースト、ガーリック・パン、コーヒー、飲むヨーグルト。
 朝食を食べる前にしかけ、iMacからiBookへ辞書類のイメージ・ファイルを転送。ようやく環境が整う。

○Brian O'Connor COME WEST ALONG THE ROAD; Magnet, 1997?
Brian  なかなか面白いアルバム。ドラムス〜ベースが入る曲もあり、最後の曲はクリス・ジョーンズのスライド・ギターがぎんぎんに入るブルース・ナンバー。音程的にはフルートのはずだが、他のフルートとはまったく違う感触。むしろホィッスルに近い。タンギングのせいなのか。リズム・セクションはドイツ人で、普通のロック・バンド。この辺が「先進地域」かどうか別れるところではある。それと、ドラムスに人が出るには、やはり環境も大きいだろう。自由に練習できたり、ドラマーの需要が大きくなければならない。全くこのレーベルはいい加減で、曲のクレジットがほとんどない。スティーヴ・クーニィの曲はわかるが、他は全部トラディショナルなのか。

○瞽女うた:高田瞽女編;オフノート、2000
瞽女うた  最後の30分近いバラッドのソロ演奏を聞いていて、わけもわからず、涙が出てきた。歌詞の意味を追わなくとも、うたい手の三味線と声だけで、泣いてしまう。録音の音質の悪さなど、もちろんどうでもいい。こういう歌が、かつて生きていた。そして今は死んでいる。こういう歌を支えた社会体制が崩壊したからである。では、代わりに生まれた体制から、これに相当する歌は生まれているのだろうか。そのことは考えてゆかねばならないし、そのための基礎でもある。解説による瞽女の生態は、アイルランド中世のブラインド・ハーパーそっくりだ。やはりこういう盲者支援システムが、かつてはあったのだ。おそらくその他の障害者にも同様の支援システムがあったのではないか。そう言えば、「傷痍軍人」もアコーディオンを売りにしていた。それにしても、よくぞ、よくぞ残しておいてくれたものだ。そして、よくぞ出してくれた。
 多分長岡瞽女が集団の芸であるとすれば、高田瞽女は個人の芸なのだ。

 アオラからサンプルとCD。
 一時半に出発。まっすぐ新宿。茂木と東京創元社・Yさんと打合せ。『アイリッシュ・ソウルを求めて』と『マジック・バス』の文庫復刊の件。うまくいけばいいが。

 6時前に別れ、アカシアでロール・キャベツとKRBで食事。タワーに行き、ワールドとジャズのところを眺める。ジャズで一枚、ニフティの「これもジャズ」の会議室でタイトルが出ていたロシア人のアルバムを見つけて購入。

 7時15分前にリキッド・ルームに入る。ドリンク代200円徴集。中のバーのカウンターの隅っこに陣取る。場内満杯。開演直前にSさんが来る。
 ソウル・フラワー・ユニオンのライヴ。ヒデ坊のブズーキがいい感じ。三曲ほどしか弾かなかったが、特に新曲の「夏到来」は光った。ハイライトはあと「平和に生きる権利」。アンコール二回。大満足だが暑かった。

 Sさんは、演奏も安定し、曲順もよく練られていて、以前の、何が起きるかわからないようなスリルがないのが、かえって不満の様子。が、それだけ中川さんも成熟し、音楽で真向勝負という姿勢が出てきているのだろう。よけいなMCもない。映画のサントラから、奥野さんのオリジナルをやったときだけ、ちょっと中川さんがしゃべった。これはなかなかの佳曲。そう言えば、今日は三線を持たなかった。フジロック・フェスティヴァルは、メイン・ステージじゃなきゃ出ないと言張っているので、どうなるかわからないとのことだった。

 終演後、一度ロビーに出るとリスペクトのTさんがいるので、ライヴの正規盤をまだ買っていなかったことを思出し、購入。ポスターがついてくる。今日はチケット完売だそうだ。山口さんも来ている。名残惜しかったが、明日が早いので、会社にもどるというSさんと早々に退散。

 さすがに年度末の金曜日で、電車も混んでいた。小田原行きの急行で、本厚木まで立ち通し。深夜バスに間に合い、帰宅11時半過ぎ。

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