大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 4月 24日 (月)〜 2000年 4月 30日 (日)] [CONTENTS]

2000年 4月 24日 (月) 晴れ。

 朝食は早良西京漬け、キャベツの味噌汁、菠薐草胡麻和え、ご飯。

 歯科。左下、レントゲン2枚。新米の助手がまだとろく、撮りなおし。神経の入口がふさがっているのだそうだ。徐々に穿けてゆくという。

 歯医者に行く前に、郵便局にて、『CDジャーナル』と中山さんにCDを投函。『グラモフォン・ジャパン』5月号。オーディオのページの翻訳は全部茂木がやっている。Rogers が潰れたそうで、代わりのBBCモニターとして、新しい英国メーカーの小型2ウェイ・スピーカーのリポートが載っているが、やたら誉めている。NHKも大量購入したとかだが、それはともかく、高さが22センチ足らずというのは魅力的。値段もペアで税込み6万弱だから、ちょいと面白い。限られた用途ではなく、ハイエンドにつなげば、それに見合うだけの音を出すらしい。と言って、まあ、今の音に何の不満もないのではあるが。

 昼食は昨夜の豚肉小松菜の残り、鶏の唐揚げ(弁当のおかずの残り)、ご飯、キムチ。
 昼食後、やたら眠くなり、一時間ほど寝てしまう。
 仕事は「グリーン・マーズ」。

○Frifot SUMMER SONG; Northside, 1991/1996
 Caprice からのファーストから6曲、セカンドから14曲を収めたアメリカ盤。セカンドがこれで全部かどうかは不明。ダイナミズムが増し、三人の絡みあいが精妙になっているのは当然だが、それだけでは説明のつかない、どこか豊かな感じがある。音の厚みはそのままに、そこに詰っている音楽がぐっと豊饒になっている感じだ。曲そのものの質、アレンジの構想力、いずれも高まっていて、同じバンドではあるのだが、ファーストの曲がはっきり浮きでて聞える気がする。いずれにしても、この三人は、現在世界有数のアンサンブルであることは間違いない。

 リエナ・ヴィッレマルクの仕事が気になり、Caprice のサイトに行ってみる。全部、スウェーデン語だったが、検索窓は見当がついたので試しに入れてみると結構出てくる。Elise Einarsdotter との共演盤が気になるところ。だが、今度はどこで買って言いのかわからない。リンクをたどり、Sweden Music Information Center というサイトに行着く。その中に The Sweidish CD Shop があり、ここはどちらかというとクラシック寄りらしいが、一応検索をかけると四枚出てくる。Enteli と Nils Lindberg 以外の二枚を注文してみる。しかしここも、Caprice のものは一枚も出て来ない。メールで問合せる手もあるか。

 夕刻、雷雨。それが上がりかけた六時ごろ、南東の空に鮮やかな虹。完璧な半円で、しかも二重ないし三重。真ん中の一晩はっきりした虹のを境に、空の色が変わっている。内側が薄いグレー、外側は黒に近い。Mが虹が出たと教えに来て、写真を撮れというので、一応撮ってみる。

 夕食はハム・トースト、菓子パン、バナナ、菠薐草胡麻和え、飲むヨーグルト。夕食前、右耳が塞がれたようになるので、入浴はやめておく。

 Back Porch Music から返事。相変わらず、すばやい。
 ジュディ&バディ・ミラーのメーリング・リストを見て、Village Records というオンライン・ショップへ行ってみる。ここは、アメリカのルーツ系、シンガー・ソング・ライターの専門店らしいが、なかなかの品揃えで、一発で気に入る。送料が、航空便で何枚でも10ドルというのは、まとまった数を買えば、かなり安い。
2000年 4月 25日 (火) 晴れ。

 朝食、ハム・トースト、バナナ、炒り卵。

 朝食後、家を出て、新しい免許証を受けとり、市役所、銀行、郵便局と梯子。有隣堂で本3冊。『音楽のヨーロッパ史』(講談社現代新書)は予想通りクラシック中心だが、一応参考図書として読まねばなるまい。中野美代子の『西遊記』(岩波新書)を帰りながら読みはじめるが、やはり面白い。山口昌男『敗者の精神史』(岩波書店)は先日その余沢である『敗者学のすすめ』の書評で触れられていたもので、初めを立読みして買う。書かれたのは『「挫折」の昭和史』の方が先だが、扱っている時代はこちらの方が先だ。ラオックスで AppleWorks6 を買う。一箱だけあった。

 ラティーナ・Hさんから嘉手苅林昌の資料とマリンスキーの紙資料。
 久田師匠に日記原稿を、Jさんにレニー・ブルースの第二章の原稿を送る。
 昼食は薩摩揚げを焼き、キャベツの味噌汁でご飯。
 昼食後、AppleWorks をインストール。ついでにアップルのウェブ・サイトで登録もしてしまう。

○McNamara Family LEITRIM'S HIDDEN TREASURE; Drumlin Records, 1998
McNamara Family  リートリム東部、東にキャヴァン、南にロスコモンと接する一帯の音楽。リールは四小節フレーズの古い形を残す他、独特のレパートリィやスタイルを持つという。フィドルの音はなかなか個性的。確かにあまりアイルランドで聴いたことのない乾いた響き。だからといってアメリカのような空からではない。選び抜いているのだろうが、曲も佳曲が多く、やはりこういう他では聴けないものは新鮮だ。もちろんユニゾンだが、いろいろ組合せを変えたり、ソロを交えたりして、通して聞いても飽きない。いわゆるケイリ・バンド・タイプではなくて、締まる時は締まる。と言って年がら年中突走ってもいない。バランス感覚がいい。茂木が誉めていたが、なるほど。

 公明党・赤松正雄氏のメール・マガジンの今日の号は、神戸で公明党が他の野党と選挙協力を組もうとしていることの弁解に終始しているが、説得力はない。しまいには、震災を体験したから特別だと思ってくれとまで言っている。震災が選挙協力の原因なら、なんで自民党を外すのだろうか。
 もう一つ、「独裁政治を否定し嫌う立場ですから、今のような不安定な政治であってはならず」という一節。この二つがどうして直接結びつくのかよくわからない。政治はなぜ「不安定」であってはいけないのか、という点が一つ。独裁政治を嫌うのがなぜ「安定」政治になるのか、が二つ。「独裁」というのは何も個人独裁だけではない。宗教団体による独裁もありうる。

 政治家、特に与党の政治家は、二言目には「政治の安定」ということを口にするが、それがどうしてわれわれ有権者の利益、ひいては国全体の利益に結びつくのか、明確ではない。確かに、与党にとっては利益であろう。与党にとっての利益が、有権者の利益に直結するというのは傲慢だ。
 という論理の裏には、選挙がまともに行われていない、という認識もあるが。

 午後1時半頃、ラティーナからの荷物を見て、MSIに架電。Oさんが出て、また夏ごろにロニー・レーンのライヴが出るとのこと。80年ごろのものなので、SEE ME のツアーらしい。病気が出はじめの頃だろう。ロニー・レーンのものは途切れずに売れている、一番売れているのは ANYMORE FOR ANYMORE だそうだ。あとでSさんから電話。マリンスキーの紙資料の件を確認。白石さんがライナーを書くそうだが、それは締切がまだらしい。

 タワーの musee の編集部から、夕食後、電話。リスペクトの特集を組むそうで、中川さんとソウル・フラワーについて1600字で書いてくれとの依頼。
 夕方から夕食をはさみ、『スポーン』25号の原稿のチェック。みんな Sarah を「サラ」としている。違うっちゅうに。夕食後、そこへメディアワークス・Sさんから電話。

 『グラモフォン・ジャパン』から Kokoo のレヴュー依頼。『ラティーナ』とダブるが、書くことはたくさんあるから、書きわけられるだろう。
 みのさんからは日曜日に上京するので会いたいとのことで、結局自宅に来ることになる。
2000年 4月 26日 (水) 雨。

 朝食、葡萄パン、プチトマト、バナナ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

 家事の後、駅前に出て、銀行。国民年金を一年分、一括で払いこむ。何か、ひどく無駄なことをしている気分。タハラでCD5枚。買物して帰宅。昼前。
 昼食はハム・エッグ、キャベツの味噌汁、トマト、ご飯。
 昼食後、15分ほど昼寝。今日は眠りこまなかったので、すぐ起きる。

 ヴィデオアーツからサンプルCD1枚。ブラジルの女性シンガーだそうだ。
 iMacがやはりおかしいので、思いきってHDを初期化、インストールしなおす。「キッドピクス」も今回はちゃんとインストールできたから、やはりどこか決定的におかしくなっていたのだろう。パーティションはシステムとその他の二つだけにする。

 夕食はハンバーグ、トマト、キャベツの千切り、ご飯。薫は夜、学童の保護者会。
 結局これで一日暮れる。
2000年 4月 27日 (木) 曇。

 朝食、鰺の開き、キャベツの味噌汁、茹でブロッコリ、ご飯、昆布の佃煮。
 午前、散髪。

○Virginia Rodrigues NOS; Natasha/Hannibal, 2000
Virginia Rodrigues  ビデオアーツからのサンプル盤。国内版を出すのか、届いたのは輸入盤そのまま。はじめは声に頼りすぎ(本人のせいではないが)と思ったのだが、聴いているうちにだんだん良くなる。特にラスト3曲は、じっくり聞いたせいもあるのか、すばらしい。声自体十分特徴的だが、もちろんこういううたい手の例にもれず、はまった歌のうたいまわしは比べられるものがない。ラストから二曲目の、ぐうっと高く伸ばしていくあたりは至福。やはりファーストは聴きたい。

 昼食は釜揚げ饂飩、茹でブロッコリ。
 カード請求書。
 午後から「グリーン・マーズ」。

○Marina Rossell Y RODARA EL MUNDO; Picap/ビーンズ, 2000
Marina Rossell  『そして世界をめぐれば』という邦題がついている。アオラからのサンプル。カタルーニャのシンガーで自身曲も書くマリナ・ロセイユの最新作。歌詞がわからないのがもどかしいが、歯切れのいいスペイン語(カタルーニャごには聞えないが)で、どちらかというとほうりだすようにうたう。ジャズをベースにした洗練されたバック、特にフルートやホィッスルの類がいい。感じとしてはメアリ・ブラックの位置だろうか。声には頼らず、テクもひけらかさないが、うたうべきものをうたっている自負と、うたへの愛情から生出される心を洗ううた。きりっと引締まっているが冷たすぎず、甘さはないが、暖かい。

 6時少し前にK帰宅。入代わりに出かける。下北沢で、グラフィック・デザイナーのTさんと会食。ウェブ・サイトを立上げるにあたって、一緒に遊ばないかとのお誘い。話が弾み、「中村」という店で閉店までいたら終電はなくなり、もう一件、ジャズのかかるバーに連れていかれる。宮仕えしていた頃、初めてTさんと飲んだ時に連れていかれたところ。入った時にはグラッペリがかかっていた。そこで2時過ぎまで。ずいぶん飲む。樽出しのアイリッシュだというウィスキーを飲むが、これはちょっと角が立ちすぎている。Bushmills のモルトの10年物で口直し。マスターは来月アイルランドへ避けの仕入れに行くそうで、ゲール語の「乾杯」をもう一度教えてくれと頼まれる。

 そのままタクシーで帰宅。三時。個人タクシーで、結構年輩の人だったが、運転は割と乱暴。それでいて、一応サーヴィスはきちんとしようという意図はある。途中眠り、目を覚ますと厚木の料金所だった。


2000年 4月 28日 (金) 晴れ。

 朝食、鰺の開き、小松菜の煮浸し、あぶらげと若布の味噌汁、ご飯、細切り昆布の佃煮。

 ちょっとことえりを使って文字入力の取りこぼしがあるかどうか、確かめている。HDの Advanced Power Management もデフォルトにしてみる。
 みなを送りだした後、ご飯だけ仕掛けて、また寝なおす。正午少し前に電話が鳴って目が覚める。出ると切れている。すぐには飯を食べる気にならず、メール・チェックなどしてみる。1時頃、ゆかりと海苔、朝の小松菜煮びたしの残りでご飯。

○Malinky LAST LEAVES; Greentrax, 2000
 すばらしいバンドの出現だ。Karine Polwart は写真ではまだ若い。若手の女性シンガーということではマッケンジー姉妹と肩を並べる。どちらかというとアルトで、ロゥランド出身だろう。スコッチ訛りが快い。うただけでなく、インストの腕もなかなかだし、さらに加えてアレンジのセンスが今までのスコッチばなれしている。"Alison Gross" は秀逸。デイヴ&トニ・アーサー以来だ。歌ものをじっくり聴かせてくれるのもそうだが、インストとのバランスもすばらしい。

 昼食後、国文社・Nさんに架電。昨日ファックスで来た、ブラウンの最終チェックでひっかかった箇所の修正。その後、またメールなど見ながら時間を潰し、2時半少し前学校へ。
 PTA総会。特に問題もなく、1時間程で終了。
 Swedishmusicshop からCD3枚。うち一枚は、初めて利用したのでサーヴィスのサンプル。

 午後、リスペクトのTさんから電話。ハシケンのアルバムはどうでしたというので、ファックスを送るのを忘れていたのを謝る。
 夕食前、NHKエンタープライズ21のSさんから電話。星川さんからの紹介。スコットランドの文化紹介の番組を作っていて、スコットの回で、スコットにまつわる音楽がないか、との相談。THE MINSTRELSY OF THE SCOTTISH BORDER の中の曲がいくつかあるはずだから調べてみましょうと答える。5月5日にロケに出発するそうだ。

 夕食はそのオムレツと葡萄パン、小松菜煮浸しの残り、コーヒー。
 ファックスを送るとき、やはり AppleWorks とMyFAXのセレクタ書類が合わないので、MyFAX の作者のサイトのサポート用掲示板に書きこむ。
2000年 4月 29日 (土) 晴れ。さわやかな五月晴れ。

 8時半過ぎ起床。
 朝食はクロワッサンにブルーベリィ・ジャムを塗り、葡萄パン、トマト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

○嘉手苅林昌 ジルー:レア・トラックス・オブ; ビクター、2000
 ラティーナからのレヴュー用カセット。付属の紙資料がほとんど役に立たず、初録音の時期も『風狂歌人』のブックレット所収の年譜で確認。吉村喜彦氏の回想は読ませる。林昌さんの姿が髣髴としてくるいい文章。音の方は別に文句なし。ただ浸るのみ。

 午前中、ラティーナのディスク・ガイドのための原稿書き。昼食をはさみ、三枚一気に書く。
 Amazon.comから本三冊。
 昼食、焼き餃子、キャベツ若布、豆腐と葱の味噌汁、ご飯。

 Michael 氏がibtrad-lに書いていたのを見て、キャサル・マッコネルの兄のコラムを見に行く。ちょっと感傷が過ぎるような気もするが、肉親でなければわからない部分は確かに大きいだろう。

 夕食をはさんで「グリーン・マーズ」。
 夕食はKが作っていったハヤシライス。Kは子供会仲間の母親たちの宴会。
2000年 4月 30日 (日) 晴れ。

 9時前起床。
 朝食は葡萄パン、炒り卵、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

 午前中は家の掃除。昼前、メール・チェック。推理作家協会報用の原稿を書きはじめる。夕方、書上げる。
 昼食、飲茶セット(焼売、春巻)、チーズ入りささみフライ、菠薐草の胡麻和え、ご飯。

 昼食前、みのさんから電話。昼食後、駅前のダンケまで迎えにゆく。もどると入代わりにKと子どもたちは出かける。夜、実家の一家と会食して帰ってくる。

 みのさんは四時半頃、愛甲石田の駅まで送る。お土産のCDをいろいろいただく。お礼に、ダブったCDをさしあげる。一挙にかたづいて助かる。帰り、本厚木駅前に回り、夕食を吉本家で味玉・薬味葱ラーメンでとる。ヴァージンでCD一枚買って帰宅。

○THE MIYUMI PROJECT; Southport/Asian Improv Records, 2000
 シカゴ在住の日本人ベーシスト、タツ・アオキを中心として、日系、韓国系、アフリカ系、ユダヤ系(?)のメンバーによる、フリーな音楽。メロディーではなく、リズム、それも和太鼓、韓国太鼓がたたき出す隙間の多い、シンプルなリズムを組合せ、そこにサックスやリードが乗る形。どこか祭の囃子の響きもあり、ミニマリズムでもあり、そうどこかに渋さ知らズにも通じるセンスを感じる。個々の曲は独立した作品というよりは、音による軌跡を示し、総体としてある空間を生みだしているようだ。必ずしも曲順に聞く必要はない。ジャズのように、個々の演奏者が独立して音を出しているというよりは、演奏者と演奏者の間に生まれる音楽というべきか。

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