大島教授の[暖蘭亭日記][2000年 7月 31日 (月)〜2000年 8月 06日 (日)] [CONTENTS]

2000年 7月 31日 (月) 晴れ。夏の日。

 8時半過ぎ、Hの友人からの電話で起される。

 朝食、ハム・トースト、チーズ・ケーキ、茹でグリーン・アスパラ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。
 昼食、納豆、ご飯、キャベツの味噌汁、胡瓜の山葵漬け。

 昼食をはさんでヒデ坊に頼まれたアンディ・アーヴァインのプロフィールを書く。いざファックスを送ろうとするとどうもおかしいので、音友・Sさんに聞いた事務所に架電。本人から聞いた番号が間違っていた。あらためて送る。

 昼食を食べていたら1時ごろ、ラティーナ・Kさんから電話。原稿はOKとのことで、二つほど確認。

 3時過ぎ、ラティーナ宛CD送付。郵便局で佐渡山豊のCD代を送金して申込む。

 夕方、東京創元社・Yさんから電話。昨日送った Jonathan Raban の梗概について。その他彼の他の著作等について長電話。キアラン・カースンの最新作は権利も取れて、栩木さんがやることになったそうだ。めでたい。『フィンバーズ・ホテル』の解説も力の入ったものの由。Psion Revo を買ったそうで、そのうち様子を聞こう。

 早速Amazon.co.uk に行き、BAD LANDS と OLD GLORY を注文し、新作のエッセイ集の予約をする。

 6時ごろ、ヒデ坊から電話。アンディ・アーヴァインについてのコメントに若干追加と訂正をして再送。再度電話で、OK。東京は26日 ON AIR EAST になりそうとのこと。明日、Kさんの帰国を待って最終決定をする由。

 夕食、豚肉舞茸の中華風炒め、トマト、ご飯、ゆかり。
『フィンバーズ・ホテル』
○Show of Hands COVERS; Hands on Music, 2000
Show of Hands  カヴァー集はうたい手としての力を試されるが、スティーヴ・ナイトリィは歌うたいとして超一流の二流だ。下手であるはずはないし、限られた声域の使い方もよく心得ている。が、ニック・ジョーンズやヴィン・ガーバットやあるいはここでとりあげているレイ・デイヴィスといった歌い手たちの域に達するには何かが決定的に欠けている。実はショウ・オヴ・ハンズの魅力はそこにある気がする。ないことが魅力なのだ。しかもそれがマイナスではない。ひねくれているのではない。背伸びをしない魅力だろうか。いわゆる「おにゃんこクラブ」的な、素人の魅力でないことはもちろんだが、では何か、今ひとつ捉えられない。まあ、捉える必要もなかろう。とまれどの曲もよく練上げられ、作者が意図したものではなくなっている。今のところ白眉はやはり "Willin'" で、アクセントがいつもとは違うのだろうか、歌の皮が一枚剥けて、とてもストレートに響く。"Courting is a pleasure" はむしろ、この中では最低の部類。評判の悪い "Waterloo sunset" は良い。それにしてもビリー・ジョエルという人は、良い歌を書いているらしい。

*郵便振替00180-7-42291 (株)トランジスターレコード
 送料込み\3,800
 トランジスターレコード
 maru2323@tk.xaxon.ne.jp
 Tel: 03-5722-3513
 Fax: 03-5722-3507


2000年 8月 01日 (火) 晴れ。風あり。

 8時起床。朝食、ハム・トースト、コーヒー、バナナ、グレープフルーツ・ジュース。

 歯科。右上奥、麻酔をかけて詰め物を削り、さらに何やら削る。その後で上下の型をとる。最後に仮の詰め物をする。これの匂いがなかなかきつい。やたら時間がかかり、9時10分のアポで終ったのは11時。

 朝刊経済欄のコラムの今日の筆者は「三連星」。この人は一番まっとうなことを軽妙で切れ味鋭い文章で書く。今日の話題は経営破綻して一時国有化した銀行の譲渡にまつわる「瑕疵担保特約」。ひとことで言えばこの特約は腐ったメロンを売りつけるために無理矢理入れたものの由。メロンがどのくらい腐っているか、本来は売手が買手に示すべきだが、売手も実はわからない(無能だから?)。それで疵物だったら買いもどすよ、と約束をつけたわけだ。メロンが腐る一歩手前のちょうどいい熟れ具合であることを天に祈ったのと同じ。なぜそれほどまでにしてこのメロンを売りたがったのか。そこが問題だ。

 The Living TraditionからCD19枚。
 留守中、『CDジャーナル』Sさんから電話とのことで、かけるとゲラのチェックの依頼。ファックスで送ってもらうとなるほど意味不明の文章だ。何でこんなものを送ったのか。暑くていかれていたか。ともかく一部書直し、ついでに他のてにをはも直して返送。

 昼食、昨夜の残りの豚肉舞茸、ご飯、鰹節。
 昼食後、昼寝。

 その後、『青』に手をつける。今日始めるのは儀式のようなものだが。
 ひとしきりやった後レニー・ブルース。いつの間にか今月末締切になってしまった。
 夕食、焼きそば。

 夕食前、メールを見てボイジャーのサイトから『平田晋策著作集』をダウンロード。さっそく「昭和遊撃隊」を見るが、どうも読んだ記憶のあるものと違う。確か「八島王国」という日本の同盟国が片方の当事者だったはずだ。解説をざっと見てみると今回の復刻は三一書房の「少年小説大系」を底本にしている由で、これは「少年クラブ」連載版をもとにしているらしい。そして昭和十年に「八島王国」版が単行本で出ている。しかし読んだ覚えのあるものは単行本ではなかった気がする。

 とまれ、三分の一ほど読んでみたが、いや、ひどいものだ。八丈島の南に巨大な島があるのは許せるとして、そこから富士が望めるというのは凄い。もっともこんなことはむしろかわいいくらいのもの。単行本化にあたって多少手が加わったかもしれない。もっと筋立ては単純で、荒鷲爆撃隊と八島王国の艦隊および飛行潜水艦「富士」との戦いに集中していた記憶がある。

 やはりパソコン画面で読むのは辛いので、「少年小説大系」を借りてこよう。しかしこれは一応チェックしたはずなのだが。
 復刻監修者の前書きや解説は目一杯背伸びしたもので、「昭和遊撃隊」と同じくらい支離滅裂。まあこの方がふさわしいといえばふさわしい。

 昼間読んだ山田風太郎の『あと千回の晩飯』に「少年時代の読書」として「少年倶楽部」に読みふけった話が出てくる。それによれば例えば吉川英治とか大仏次郎とか、あるいは山本周五郎といった人びとが全力投球した作品を書いていたそうだ。小説家としてのこうした人びとの後の大成はあるいはこの「少年倶楽部」時代の修業が基礎にあるのかもしれない。風太郎自身、自分が戦後小節を書いて糊口を凌ごうとした時たちまち書けたのはこの読書のおかげだとしている。もっともこれは額面通りには受取れないだろう。少なくとも同時に戦前、禁を犯してほとんど命がけで見ていた映画のおかげもあるはずだ。

 「平成復刻版」には「昭和遊撃隊」の書誌データがないのではっきり言えないが、昭和十年に単行本になっているのならおそらくその前年ぐらいの連載だろう。とすれば風太郎がこの作品を読んだ可能性は高い。こういう「B級作品」(あるいはC級かもしれないが)に対する感想を訊いてみたい気もする。

 夜スティシー・アールの新作を聞こうとおもったら、どこへまぎれ込んだか行方不明になってしまった。

○Tuath REELS & RONDO; (own label), 1999
Tuath  REELS & RONDO  リマリックの音楽一家 O BBriain の女性四人男性一人の姉弟によるアルバム。女性たちの一部はクラシックの教育も受け、ことに長姉はクラシック歌唱の訓練を受けてここでも披露している。そのせいか、全体としては伝統音楽とクラシックの折衷の印象。「サンタ・ルチア」のゲール語版もあるが、これは父親が歌って聞かせたものだそうだ。アルバムとしてそれほど質の高いものではないが、一番の醜女 Orfhlaith の歌唱は印象に残る。この人が一番伝統に近いようだ。トラックとしてはダンス・ステップとパーカッションの「対話」である[10]が聞物。録音も良い。家系としては伝統音楽どっぷりだが、むしろ伝統音楽オンリーではなく、こうした折衷型が普通なのではないか。自分たちが幼い頃から親しんできた音楽の全体像をそのままアルバムにしたものだろう。"Danny boy" のゲール語版を英語版とならべてうたっていて、これはなかなか。当然かもしれないが少しメロディも変わっている。ただ、英語版を聞いて改めて思ったのは、この曲がだんだん嫌いになってきたのだ。ことに後半の高音域に跳ねあがる部分。ここが一番の聞かせどころで、泣かせどころでもあるのだが、クラシック的な作為がぶんぶん匂う。伝統音楽ではこういうメロディの動きは絶対、と言ってよいほど無い。第一、クラシックの訓練を受けていなければ、まともに歌えまい。以前はそれほど気にならなかったものが、近ごろ特に鼻につく。
2000年 8月 02日 (水) 晴れ。

 朝食、ハム・トースト、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。

 午前中散髪。行く時期が2週間ほど遅れて、だいぶ髪の毛がうざったくなっていたので、実にすっきり。
 昼食、ハンバーグ、大根卸し、人参のグラッセ、じゃがいもと玉葱のバター炒め、ご飯。

 風見さんから著書。今年はなんと二ヶ月に一冊出されている。ディーボから『平田晋策著作集』の領収書。考えてみるとあれで2,100円は高い。半額がいいところ。鳥居さんからガムランのサンプル2枚。

 先週の日記の整理。レニー・ブルース。その後『青』。どちらも一応ノルマ達成。
 ダディ・オー・Hさんからアンディ・ホワイト・ライヴのチラシのゲラがファックスで来る。問題なし。後で電話で確認。

 夕食、秋刀魚塩焼き、大根卸し、肉じゃが、キャベツ若布、和布と榎の味噌汁、胡瓜と大根と茄子の漬物、昆布の佃煮、ご飯。Mが嫌いな肉じゃがのせいかひどくのろのろと食事したため、食べおわったのが8時半。先に子供たちシャワーに入らせたら、一時間かけて入っている。

 浜野さんからのメールを見て、久しぶりに松平維秋さんの拾遺のサイトに行く。駒場高校時代の詩をダウンロード。エキスパンド・ブックで読む。一読、仰天。こういう詩を書ける人ならばこそのあの文章だったのだ。とりわけ「夏休みの終わりに」の一篇に感動。松平さんはまず何よりも詩人だったのだ。

 夜、ふと汗を拭いていて思いつく。iBookにこぼした液体というのはひょっとすると汗かもしれない。

○Loobie STRANGE AFFAIR; (own label), 1996
 三流シンガー・ソング・ライターの三流のアルバム。地元のライヴではそれなりに支持層もあるのかもしれないが、このアルバムを聞くかぎりではわざわざ聞く気にはなれない。女性デュオ・ヴォーカルが売物の由だが、ハーモニーがほとんど聞えない。エンジニア兼プロデューサーの Jon Strong 自身の昔のアルバムは結構良かったはずだが。バーゲン品だったのでまだ許せる程度。一番ましなのはルー・リードの "I'll be your mirror"。ダギー・マクリーンの曲がトリだが、どこがこの歌の魅力か全然わからず。

2000年 8月 03日 (木) 晴れ。

 朝食、ブルーベリィ・ジャム・トースト、チーズ・オムレツ、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース。
 昼食、カレー・ライス。

 午前中、MSIのロニー・レーン&スティーヴ・マリオットのライナー翻訳と歌詞対訳の原稿見直し。レニー・ブルースの5章原稿見直し。どちらも昼食前にメールで送る。

 午後、Jさんから電話。スケジュールが遅れ、締切10月になる。
 SNOからカセット2本、ようやく届く。一本はダビングしたもの。
 午後、レニー・ブルース。

 5時前、家を出る。吉本家でキャベツ味玉ラーメンで夕食。あまり食欲無し。
 渋谷へ出て、クラブ・エイジアでケツァルのライヴ。イースト・ロサンゼルスをベースにする多国籍バンド。中心はチカーノの兄妹のヴォーカルで、妹が主にリードをとり、ボンゴを叩く。全くの初見参で、ただただプランクトンが呼んだので見にきたのだが、実際には宮田信さんが仕掛けたものの由。この後宮崎でライヴがあるそうだ。このバンドがどの程度の位置にあるのかもわからないが、見事なバンドではある。

quetzal_photo  リード・シンガーの女性はチカーノの文化の継承を前面に打ち出し、かなり政治的な主張をしているが、音楽そのものはラテン系をはじめ様々な要素をからめたものに聞える。その意味ではチカーノ文化はいわば精神的支柱なのだろう。メンバーもイースト・ロサンゼルス出身はこの兄妹ぐらいで、パーカッションはブラジル人、ベースはイタリア系、ギターはアリゾナ出身のメキシコと日本のハーフ、という具合。

 ライヴの始めは兄妹が横の階段を降りながらア・カペラでスペイン語の歌をうたいながら登場。これはすばらしかった。歌のほとんどはスペイン語で、MCも兄の方は徹底してスペイン語でやっていたが、打上げの席では英語をしゃべっていたから、わざとだろう。リズム・セクションではクワルトが利いている。フロントではチカーノだと言う背の高い女性の弾くヴァイオリンが面白い。クラシックの訓練を受けたことは一目瞭然だが、要所要所で聞かせるアドリヴは全くルーツ的で、ジャズの要素もある。後で佐藤英輔氏がディランのローリング・サンダー・レヴューでフィドルを弾いていたスカーレット・リヴェラを思出したといっていたが、まさにその通り。このヴァイオリンの存在はバンドの要だろう。ヴォーカルの二人が大きな手振り身振りを交え、感情をいっぱいにうたい踊っている(妹の方はステップ・ダンスも二度ほど披露)のに対して、ほとんど表情を変えず、クールに弾きまくっているのは気持ちよい。この人と左端のギター、その後ろのブラジル人パーカッショニストの三人が、同じリズムで体を左右に揺らしながらリフを演奏している。自分のアドリブの時だけ体の動きは止まる。

 ギターはアコースティックとエレクトリック、それに3本だけ弦を張ったアコースティックを3曲ほど弾いていた。この三弦ギターはペグは六本あるものの一、三、五のところだけ張っていたようで、恐ろしく硬いサウンドを出す。
 パーカッションとは別にドラム・キットがあり、これは抑え気味のシュアなリズムを刻んでいた。ゆっくりしたダンサブルな曲が大半だが、リズムそのものはかなり複雑だ。
 文化的、政治的主張はともかく、音楽としては立派なものだ。会場で売っていた二枚のCDは楽しみ。このバンドが孤立したものとは思えないから、この周辺の音楽には大いに興味がわく。

 終演後、英輔さんと外に出て、向いの舗道に腰を降ろして休憩。ポール・フィッシャーも来ていた。五郎さん二人組に鈴木亜紀さん、イタリアの二人組にタッド。東さん、長嶺さん、アオラの高橋さん(ダンナ)等々。白木さんは声だけかけて帰ってしまう。のざきとだべった後、打上げ会場に先乗り。のざきは集金係。打上げでは宮田氏、恵子さんはじめ、メンバーが次々に一言いう。リード・シンガーの女性はここでも自分たちの文化護持を強く主張している。相当に圧力が強いのだろう。最後はその兄さんが英語で挨拶。いずれ日本をはじめ、世界中の音楽を自分たちの地元に招いてみんなで楽しみたい。

 現代企画室の太田氏、鈴木コージさん、五郎さんが挨拶。鈴木さんは上半身裸になって踊る。バンドの親戚でもある画家も来ていて、会場にはその日との描いた絵が飾られ、演奏中後ろの幕にスライドが映しだされた。

 のざきがさすがに疲れたようで先に帰ると言うので、一緒に11時半前に辞去。帰宅〇時半過ぎ。Jonathan Rabanの第二章を読上げてから就寝。この章はマンハッタンをメイシーズを核に描く。レーガン政権末期、大統領選の真只中。今のニューヨークはまた多少変わっているらしいが、それからすると一番ひどい時期といえるかもしれない。ある意味で抱腹絶倒、しかし実態は深刻な社会の疲弊を激しい言葉や表現は一切使わずに暴き出す。印象に残ったのは、著者がある時、消火栓に腰かけて休みながら、まわりの通行人を観察したシーンと、メイシーズ脇で鳥の笛をうっているウクライナからの移民の話。

2000年 8月 04日 (金) 曇。

 9時過ぎ起床。
 朝食、ホットケーキ、コーヒー、トマト、グレープフルーツ・ジュース。

 MSI・Oさんから昨日送った原稿が文字化けしているとのことで、確認の電話。歌詞は電話でやり、ライナーはファックスを送る。
 昼食、昨日の残りのカレー・ライス、ゆかりと海苔、ご飯。

 Good Book Guideから購読更新通知。トランジスター・レコードから葉書。MSIからニーヴ・パースンズ新譜のサンプル・カセット。

○Niamh Parsons IN MY PRIME; Green Linnet/MSI, 2000
Niamh Parsons  やはり人生の苦難は芸に磨きをかけるものなのだろうか。あるいは迷いがなくなったということだろうか。ア・カペラの "Anan water" に結晶しているうたの厚み。傑作としか言いようがないのだが、ようやく本当のキャリアのとば口に立っているという気がする。

 3時過ぎ、車にて皆で出発。箱根。東名・御殿場から入る。チェック・インして一休みしてから、6時過ぎ、「さくら」にて早めの夕食。スペシャル・ディナー(沖縄)というのを食べる。本日のスープは南瓜のクリーム・スープ、前菜、サラダ・バー、胡桃パン、バター、魚、肉、コーヒー、デザート。材料はそれぞれ沖縄から取寄せたものの由。肉の付合せにニガウリなど入っている。泡盛を一杯、ロックで飲む。

 コテージのメインの寝室のベッドの方が広いので、子供たちはそちらに入り、われわれはリビングのソファー・ベッド。狭い。

2000年 8月 05日 (土) 晴れ。

 7時過ぎ起床。
 朝食は「さくら」にてバイキング。和食で、卵焼き、蒲鉾、白洲、漬物、浅蜊味噌汁、魚(白身)、ご飯、グレープフルーツ・ジュース、コーヒー、果物。

 リゾートに来ること自体がバカンスのはずだが、皆、ここからまたどこぞへ出かけてゆく。
 箱根も暑い。昨日乙女峠トンネルを抜けたところの気温表示が24度だった。陽射しは強い。が、風は木の間を抜けてくるので涼しい。鳥の声はあまり聞えない。蝉は昨日夕方カナカナがよく鳴いていた。全体に虫は少ない。殺虫剤を撒いているのだろう。

 部屋に朝日と日経が配達される。日経はPDAの記事を載せているが、さり気なくマイクロソフトのポケットPCの宣伝をしている。発売される秋まで待てとの結論。出広の様な形で金をもらっているのかしらん。

 午前中は部屋に残って読書。Jonathan Rabanの HUNTING MR HEARTBREAK。四章はアラバマ州の寒村に滞在しての話。昼食は中華の「獅子」。豚肉搾菜入りつゆ蕎麦。ここのは麺がだめであることを忘れていた。餃子、杏仁豆腐、ちまきなど残飯整理。

 午後、子供たちを駒ヶ岳のロープウェイに乗せる。乗ったのは4時。降りてくると5時。山頂ではHはこういうところは得意で、先に立ってあちこち飛びまわる。

 夕食、岳父も加わり、義弟も成田からまっすぐ駆けつけ、「さくら」にて。建物内で子どもが一緒に食事をとれるのはここだけ。H、ステーキをあちこちからもらい、むさぼり食う。
 今日は「さくら」ディナーというやつ。サラダ・バー、スープ(クラムチャウダー)、魚、ライス、コーヒー、デザート、泡盛ロック一杯。まずまず。サラダ・バーが食べたいのでこのコースにした。前よりも料理の質は上がっている。

 前の通産大臣の深谷が、二十人近い団体で来て、一番奥のテーブル、すなわちわれわれの隣で食事をしていた。
 食後、そのまま寝てしまう。

2000年 8月 06日 (日) 晴れ。昨日の朝よりは涼しい。

 8時半起床。

 朝食、新館一階でバイキング。和洋折衷。チェックアウト。K、子供たちと船に乗りに行き、こちらは義母と義弟を岳父が出席している会合が開かれているパレス・ホテルまで送る。Kたち合流。ロビーに座ってみていると、ホテルの前には赤蜻蛉が群を成している。日曜とて、箱根は車の洪水。

 昼食はホテル一階のカフェ・ラウンジでとる。シーフード・ピラフとコーヒー。
 1時半、まっすぐ御殿場から帰宅。道路はあちこち混んでいる。

 夕食、鰹叩き茄子と生姜の味噌汁、南瓜煮付、胡瓜塩揉み、ご飯。さすがにくたびれて食後、横になり少しうつらうつら。
 メール・チェック。緊急を要するもの無し。
 午後、ヒデ坊より電話。

 留守中Amazon.co.uk よりJonathan Rabanの本二冊届く。Good Book Guide。London Review of Books購読更新案内。Good Book Guideの購読更新案内も来ているが、考えてみると不要の気もする。
 宿で配達される日経と朝日を眺めていた。確かに情報量は多いが、質は毎日とそれほど変らない。

 日経を眺むるにソーラーハウスは「得」かという記事あり。思うにこの新聞がとりあげる経済は「明日」の経済、長くとも四半期先ぐらいの経済でしかない。ソーラーハウスは例えいま現在は「損」だとしても、原発と比べれば後処理の問題、つまりコストでは遥かに安い。十年、二十年、あるいは子供たちの時代を考えれば「得」になる。

 通信のように半年先が不明の経済もあるが、十年、二十年、あるいは五十年先のための経済もあるはずだ。日経の紙面に代表される「経済」にはその視点が見えない。それを欠いた「経済」は仏作って魂入れず、木を見て森を見ず、世も経せず、民を斉することもできぬ片端ではないか。

 もっとも資本主義システムは四半期が問題なのであり、十年後二十年後までは「計算に入れない」ものなのだろう。

[CONTENTS] [ ← P R E V] [N E X T → ]  [DIARY TOP]