大島教授の[暖蘭亭日記][2001年 5月 21日 (月)〜2001年 5月 27日 (日)] [CONTENTS]

2001年 5月 21日 (月) 晴れのち曇り。

 朝食、苺ジャム・トースト、胡瓜味噌添え、オレンジ・ジュース、珈琲。

○Various Artists SONGCATCHER; Vanguard, 2001, USAmerica
SONGCATCHER  こうして聞くとジュリィ・ミラー、エミルー、ギリアン・ウェルチがいかに個性的か、よくわかる。全体としてのハイライトもまずジュリィ・ミラーの "All my tears" で、ここでのバンジョーは何とギリアン・ウェルチ。ギリアン・ウェルチもデヴィッド・ロゥリングスともう一人男性との三人のア・カペラ。エミルーはエミルーとしては可もなく不可もなし。むしろ、この "Barbara Allen" では、エミルーのトラックのイントロとして入っているEmmy Rossum という若い人らしいうたい手のア・カペラがいい。この人はもっと聞いてみたい。終りの方にデヴィッド・マンスフィールドによるオリジナル・スコアとともに収められている映画中のものと思われる二つのトラックが聞物。俳優なのか、それともロケ先などでみつけたのか、ほとんどフィールド録音のような、市井の人の歌。
○Cristina Branco POST-SCRIPTUM; L'empreinte Digitale, 2000, Portugal
Cristina Branco  この人も新世代のファドのうたい手の一人らしい。カーネーション革命以降に生まれた世代として、ファドは古いものとして、アメリカのポピュラー音楽を志向していたのが、ある日アマリア・ロドリゲスのレコードをプレゼントされて開眼、一気にはまり込んだという。ファドとしては必ずしも伝統的なスタイルやレパートリィを守ったものではないというが、それを言うならドゥルス・ポンテスにしてもマリア・アナ・ボボンにしても同じこと。個性的な人は皆同じ。アルバムとしてはやや単調なところもあるが、これはおそらく聞込み不足。

 朝、SETI@homeをつないでみると、ようやく正常に繋がって、解析を終わったワーク・ユニットが送られ、新しいものがダウンロードされる。が、三たび、今年1月2日の 12:57:54 受信のユニット。こうなると偶然ではあるまい。周波数はまた少し落ちたもの。

 昼食、納豆、キャベツの味噌汁、ご飯。

 fRoots6月号。Interzone5月号。トリニティーからパディ・グラッキン&ミホール・オ・ドーナル、トゥリーナ、スカラ・ブレィの紙資料。London Review of Books。
 Kは先日テニスの試合の監督で休日出勤した代休を午後取る。

 ヨーロッパ向けモノノケ・ベスト盤の曲解説英訳の件で、中川さんに架電するも留守電のため、ファックスを送る。
 AirMac 1.3.1J と起動ディスク9.2.1をソフトウエア・アップデート・コンパネでダウンロード+インストール。

 夕食、豚肉と舞茸の中華風炒め、ご飯。
 今日は舞茸の量をいつもの倍にしたので、たっぷり入っていて美味しい。ただ、豆板醤が少々効きすぎ、子どもたちはややもてあます。

 栩木さんから「クラン・コラ」用の原稿をいただいたのだが、真黒ソフトのワードのファイルのため、見られない。THE ULTIMATE GIFT の改定版だといって送られてきた原稿もワードのファイルなので、先日出た ThinkFree Office をダウンロードしてインストールしてみる。30MB近くあり、1時間弱かかる。それでも真黒ソフトを買うよりは安いものだ。これは Java アプリなので、スピードは遅いが、どうせファイルを開くだけなので支障はない。ファイル・ダイアログが「窓」のものなのは、やはり腹が立つ。

 栩木さんのファイルも無事これで開くことができた。THE ULTIMATE GIFT の方は、プレゼン用画像入りのものがだめ。普通の文書ファイルはOK。互換性は完全ではないらしい。もっともプラットフォームが違うはずだから、無理もないかもしれない。

 夜、八郎さんから電話があったので、開けなかったファイルの方を念のためテキスト・ファイルの部分だけ送ってもらうよう依頼。
 LightWayText 4.0 ベータが出ていたのでダウンロード。こちらはますますワープロの方角へ行っている。

 寝ようとして床に就いていたら、中川さんから電話。ポールの勘違いで、既存のものをもとにしてやってくれとのこと。

2001年 5月 022日 (火) 曇時々雨。

 朝食、えぼだい開き、和布と榎の味噌汁、菠薐草お浸し、ご飯、細切り昆布の佃煮。

 トイレに入っていると宅急便。DHCからレニー・ブルースの刊本。
 朝一番で歯科。右下手前、虫歯を削り、あとを詰める。それほど大きくなく、根の治療もないので、次回型を取る。麻酔をしたので、唇も痺れ、嗽をしにくい。

○Koja Misako/古謝美佐子 天架ける橋; DM, 2001, Okinawa
古謝美佐子  がっかりの一枚。プロデュースの勘違い。古謝さん本人の歌には何の文句もないが、これをクラシックの文脈で飾ろうとしたアイデアがまず失敗。ドヴォルザークの「家路」に沖縄語の詞を載せて歌わせていて、これはもともとボヘミアのトラディショナルをもとにした音楽だから、音階やメロディに通じるところはもちろんあるわけだが、クラシックのフィルタを一度通って、西欧市民社会の倫理の枠に押込められた、その「汚れ」がいかんともしがたい。旦那さんで、プロデューサーでもある佐原氏がクラシックの訓練を受けた人なのか、あるいはクラシックに妙なコンプレックスでもあるのか。弦楽四重奏で沖縄音楽をやろうとする試みをするのはかまわないが、何も古謝さんの歌でやることはあるまい。近所の人たちの拍手と本人の三線だけでうたわれる「ヒンスー尾類小(じゅりぐわー)」での、解放された、生き生きした歌を聞けば、他のトラックの飾りがいかに余計で、歌に枠をはめるものかわかろうというもの。それほどごちゃごちゃした音作りをしているわけではないが、これまたオーヴァー・プロデュースの最たるもの。

 iBookのメモリを昨日着いた256MBのものに試しにつけかえてみようとおもって開けてみるが、すでに入っているメモリの外し方がわからない。がっちり入っているので外そうとしてどこか壊すのが怖くなり、やめる。

 「Macお宝鑑定団」のニュースによると、本日からすべてのMacがMacOS Xと9.1のデュアルブートで出荷されるそうだが、iBookのCD-ROM版の出荷時メモリは64MBで、MacOS Xは起動しないはずだ。どうするのだろうか。

 昼食、鱈子、海苔、和布と榎の味噌汁(朝の残り)、菠薐草お浸し(朝の残り)、鰹節、ご飯。

 何度目かに隆慶一郎の『一夢庵風流記』を読みなおしていたら、この話の胆にぶち当たる。朝鮮に渡った慶次郎が漢城の東平館で景轍玄蘇に会う条。玄蘇の問いに慶次郎が答える。
 「滅びの美しさに酔っている国と見ました」
 「滅びることは美しいかな」
 「滅びたものは美しいが、滅びるものは無惨でしょう」
 「その無惨を避けたいとこうしてねばっているのだが…」
 「何人にも、どう手の下しようもないからこそ滅びるんじゃないですか」
 玄蘇は声を失った。正にその通りなのだ。だがそれでは人は何のためにあるか。
 「天の道に逆らうのが人と云う者かもしれぬ」
 話ながらどこか弁解めいて聞こえるのが自分でも判り、一瞬恥じた。
 慶次郎が大きく笑った。
 「和尚もかぶかれるとは知りませんでしたな」
 (新潮文庫版、383-384pp. 一部省略
 人として生きることは「天の道に逆らう」、かぶくことである、つまりは人として生きる以上、「かぶく」ことは必然的について回るのだ。これを敷衍すれば、かぶかない者、反逆しないものは人として生きているとは言えない。反逆しないものは文学とは言えない、という大西巨人の言葉の反覆でもある。文学は、人の生そのものなのだから。

 これをさらにおし進めるならば、反逆しないものは人間ではないことになる。しかし反逆するには、相手が必要だ。その「相手」とは何ものか。同じ人間であったり、人間の産出したシステムであったり、あるいはもっと得体の知れないものであるやも知れぬ。そして反逆してなおかつ生きつづけるにはそれなりの「力」と「技」が要る。「力」といっても必ずしも「腕力」とはかぎるまい。「技」と言っても必ずしも手先の術とはかぎるまい。とにかく、何らかの形で他人に影響を及ぼす能力。できうれば反逆する自分に共感させる能力。反逆を、やむを得ざるもの、と認めさせる能力。

 しかし、そういう能力と反逆そのものとどちらが先かといえば、反逆が先に立つことはいうまでもない。反逆しなければ、そうした能力は生まれようもない。
 反逆の対象をつかむ。それがまず第一。

 コアマガジン・Kさんから、ワトスンの日本語版への序文のテキストが来る。午後、やってしまい、すぐ送る。

 そこでワトスンが言及していた、60年代末 Essex House という版元から出ていたアメリカの詩人たち David Melzer、Michael Perkins が書いていた斬新なSF仕立てというハードコア・ポルノが読みたくなり、Amazon.comで見ると、Perkins のものは最近のペーパーバックが2冊ほどみつかるが Melzer は影も形もない。中野善夫氏のサイトからBibliofinder.com という、古書店連合が集まったサイトに行って捜してみると、一冊だけみつかる。30ドル弱でちょっと高かったが、注文してみる。送料、手数料込みで40ドル。同じところで Perkins も検索すると、こちらは古いものは何もない。

中野善夫(世界の本屋)
http://www3.justnet.ne.jp/~yoshio-nakano/index.html


http://www.bookfinder.com/

 夕食、苺ジャム・トースト、ハム・トースト、バナナ、ロイヤル・ミルク・ティー。

 Kは卒業生と会いに行ったので9時過ぎ帰宅。
 夜、日記を一つ整理して久田頼師匠宛送る。

2001年 5月 23日 (水) 雨。終日断続的に、時にかなり真剣に降る。少し身体を動かすと汗がにじむが、気温は低い。

 朝食、早良西京漬け、和布とあぶらげの味噌汁、小松菜煮浸し、ご飯、細切り昆布の佃煮。

 最近就寝前に竹踏みをしないと、寝つきが悪い。なぜだと思っていたら、Kにいわせると更年期障害だそうだ。

 朝立上げるとiBookの調子がおかしい。カーソルが消えたりし、ついには単語登録を起動するとフリーズする。ノートンをかけるが何も出ず。続いて Speed Disk をかけると、2番目のパーティションで、ディスクが壊れているからできないよと出る。DiskFirstAid で調べ、修復するとOKになる。初期設定にも何やら妙な文字が並んだファイルが一つできている。こちらはノートンで修復するが、一度修復したはずが、念のためもう一度かけるとやはり出てくる。Speed Disk をかけた後、FileBuddy で初期設定の掃除をしてから検索するが、不可視ファイルの検索をかけても出てこない。

 システムを置いているパーティションは時々、強制再起動した時に DiskFirstAid が立ちあがって点検・修理しているが、データやアプリを置いているパーティションはまずかけたことはない。
 今これを書いていたら、HDの辺りで「カチ」とかなり大きな音がする。これで二度目か三度目だ。ちょっと不安。
 とまれ、一応妙な症状は消えた。

 iBookのメンテをしながら The Joyce Gang を聞く。

○The Joyce Gang NO TRUE ROAD; Pickaxe, 2000, England, Fivetree in England
The Joyce Gang  ポール・ダウンズが参加しているバンドの4枚目で最新作。ダウンズは伴奏にまわり、ジョン・レドモンドがリード・ヴォーカルでバゥロンを叩く。曲も大半がこの人のオリジナルだが、歌つくりとしてはやや力不足のところもある。ダウンズがリードをとる曲を聞いて、健在を喜ぶ。歌うたいとしてはむしろダウンズの方が上ではないかとさえ想うが、ライヴではまた違うのかもしれない。わが国で言えば和久井さんのバンドに相当する位置にいるのではないかと思うが、こういうバンドはたぶんまだまだ他にもたくさんあるはずだ。ショウ・オヴ・ハンズはそういったフォーク・シーンの中でトップにいるという構図ではないか。
○The Joyce Gang IN YER FACE: Live; Pickaxe, 1996, England, Fivetree in England
The Joyce Gang  すばらしいライヴ。これのCDが残っていないのはよくわかる。レドモンド、ダウンズ、マッキュオンの3人になっているが、ゲストで蛇腹とフィドル、それに前作ではメンバーだったラッセル・フランプトンが電気ギターとマンドリンで一部参加。蛇腹はテクニックよりも友情を見せているが、フィドルはなかなかで、センスではリック・サンダースよりも上。ダウンズのマンドセロが乗りに乗っていて、ドーナル顔負け。こういう演奏はスティーヴ・ナイトリィはちょっとできないだろう。楽器に入れこんでうたわなくなったのかもしれない。基本的に、このマンドセロとサックス、それにレドモンドのバゥロンと歌、という編成はまずユニークではある。歌うたいとしてのレドモンドもここではずっと評価できる。"Reynardine" のメロディに載せてほとんど自分のバゥロンだけを伴奏に歌いあげる "Green fields of Canada" は聞物。アイルランド的なダンス・チューンをサックスをリードにやるのもおもしろい。装飾音がどうこうというレベルではないが、サックスの太い音がドライヴとなり、大らかでのびやかなサウンド。
○The Joyce Gang DEADHEADS DON'T DANCE; Pickaxe, 1994, England, Fivetree in England
The Joyce Gang  セカンドでここでは4人。もう一人の Russell Frampton はギター類とともにフィドルとホィッスルを担当。フィドルはややアメリカン・スタイルだが、悪くない。いやいやこれは熱い。これぞ二流の心意気。技術の不足を勢いとそして何よりも志で補ってあまりある。サックスのテクニックは4枚目などよりも劣るが、気にはならない。すべてアップテンポでちょっと単調といえば単調だが、ためにするアップテンポではなく、各自の体内からむくむくと湧きあがるものにどうしても速くなってしまうというけしき。ドラムスではなくバゥロンをリズム・セクションにしているのはやはり正解。ただ、サックスもいるが、ジャズにはあまり振れていない。精神としてはパンクに通じる。これを聞くと、上記ライヴでのサックスはずいぶんうまくなっている。それなりにライヴを重ねているのだろう。これなら、Four Men and a Dog のイングランド版といってもかまわない。4枚めはちょっと熱が冷めている感じ。

 昼食、えぼだい開き、荒挽きウインナ、小松菜煮浸し、ご飯。

 昼食後どうしようもなく眠くなり、昼寝。20分のタイマーをかけたら鳴る前に目が覚める。

 燕たちは雨にもかかわらず、盛んに翔びまわっている。他の鳥たちの姿は見えない。いつもは傍若無人な鴉も姿を見せない。今日はどうしたはずみか、うちのすぐ前の欅とベランダの間の空間に飛びこんできては、ひらりと返ってゆく。ほとんどが右手、すなわち南西側から飛びこんできて、ひらりと回り、またそちらへ返ってゆく。これが燕返しというやつか。左回り、つまり反時計回りにまわるのがほとんど。7〜8羽がくり返し飛びこんできているらしい。

 巽さんから久々に著書。『「2001年宇宙の旅」講義』(平凡社新書)。国境なき医師団から先日請求したカードの申込書。クレジット・カードを使うと使った金額の0.5パーセントが自動的に寄付されるというもの。アオラからサンプルCD2枚。一枚はライナーを書いたリッカルド・テシのバンディタリアーナの新作『タプソス』。もう一枚はハンガリーの FONO からの一枚で、Lajko Felix。解説は横井さん。楽しみ。

 Kは休暇をとって1時半頃帰宅。休暇を取って家で仕事をするという最悪のパターン。去年あたりから試験などで午後生徒も帰って学校にいなくてはならない理由がまったくなくとも、5時までは帰れないというアホな制度が強化されたため。どこかの馬鹿なやつがそういう時早く帰って家の修繕などしていたのを、トラブって喧嘩していた隣人にタレコマれて以来のことらしい。

 ひとしきり『青』をやった後、音友・ガイド本のためのディスク・タイトル、ミュージシャン名のチェック。Rough Guide to Irish Music と照らし合わせ、入っていないものを入れてゆく。結構知らない人が多い。手に入るものは全部聞かねばならない。

 4時前、民音・Iさんから電話。パンフの件。表記の統一をしたこととディスコグラフィの取扱。ディスコグラフィはやはり各自のところに一枚ずつでもつけ加えたほうがいいということになる。

○Paul Downes OVERDUE; HTD, 1996, England, MusikFolk
 実に久しぶりのポール・ダウンズ。バックはThe Joyce Gangでの仲間のデイヴ・マッキュオンとThe Joyce Gangのアルバムにゲストで参加していたアシュリィ・リードのフィドル。この人、実になかなかのフィドルを弾く。フィル・ビアと比べてもいい。この二人ならばもう一つのショウ・オヴ・ハンズも可能だろうが、同じフォームでやっても面白くはなかろう。オリジナルは冒頭の曲をはじめ、The Joyce Gangとダブる曲もある。"Black is the colour" や "Sheath and knife" のトラディショナルもとりあげ、どちらも入魂の歌唱。The Joyce Gangはやはりレドモンドに合わせている部分が大きいのだろうか、こちらは身の丈にあったテンポを守る。するとうたい手のしての成熟が現れる。むしろ、バート・ヤンシュやニック・ジョーンズから語法を借り、イングランドのシンガー/ギタリストの系譜に連なる。"Go to work on Monday" はマッコールが書いたといってもおかしくない。と思ったらサイ・カーンの曲。一曲共作し、一曲とりあげている "M Ryan" とはミック・ライアンのことだろうか。地味なアルバムだが、じっくり聞くほどに滋味がにじみだすスルメ盤。The Joyce Gangもいいが、もっとこういうソロ・アルバムを作ってほしい。

 夕食、鶏肉とカシューナッツの中華風炒め、かき卵スープ、ご飯、細切り昆布の佃煮。

 iBookの増設メモリの外し方についてマックメムに質問を送ったが、通り一遍の回答で失望。
 夕食後、民音・Iさんからファックスとその後電話。パンフのゲラの細かい打合せ。原稿料の件など。その後、もう一度ファックスできたゲラを見直し、さらに一ヶ所訂正箇所を見つけてファックスを送る。

 先ごろ、被告・政府側前面敗訴の判決が出たハンセン病訴訟に対して、政府は夕刻、控訴しない方針を決定。首相・小泉としては控訴した場合、人気凋落の可能性もあることを勘案したのだろう。そういう点での判断力はまだあるらしい。この判断自体は当然のことで、控訴しない場合に問題が多いなどというのは役人どもが責任逃れしたいがための口実に過ぎまい。

2001年 5月 24日 (木) 雨時々曇り。

 今日は燕たちは家の前を翔びすぎている。方向も一定しない。時たま、昨日同様に右から来て反転して行くのがいる。
 朝食、ハム・トースト、プチトマト、胡瓜味噌添え、オレンジ・ジュース、珈琲。

○SOL DE NIT; Punteiro, 2000, Spain/Catalonia, Tower Shin'juku
SOL DE NIT  カタロニアの5人組バンド。写真によれば男性2人、女性3人。ヴァイオリンとチェロの女性2人はおそらくクラシック畑の人で、そちらの志向が強い。女性の蛇腹が一番伝統畑。この二つの志向のかけあわせはあまりうまくいってはいない。クラシックに引張られていて、ダンス・チューンも踊る気にはなれない。いわゆるケイリのようなライヴもやっているらしいが。試みとしてはおもしろい可能性があると思うが、あるいは経験不足か。録音優秀。。
○ZIGANA MAMA; Sottosuono, 2000, Italy, Tower Shin'juku
ZIGANA MAMA  イタリアでロマ流バルカン音楽をやっているらしいバンド。6人組で女性は1人。名前からするとイタリア人らしい。ヴァイオリンは女性で、これもクラシックの訓練を受けているようだ。ヴァイオリン奏者は大陸では意外に不足しているのかもしれない。もっとも、上記のバンドのヴァイオリニストとは一味違い、ロマやクレツマー系のフィドルになっていて、クラリネットと対抗できる。このクラリネット奏者がフロントで、バルカンの名手たちとならべても遜色ない。このバンドの一つの特色はドラムスで、ドラム・キットではあるが、かろやかに鋭いドラミングで、こういうリズム・セクションはバルカンではあまり聞けない。ベースもエレキだが、2人ともジャスの経験豊富であることは明らか。ゲストでツィンバロンが入っているが、名前からするとイタリア人なのか。録音はローマだが、長靴の脹ら脛の方はバルカンからの影響は濃いはずで、住民も共通する部分が多いだろう。ここではイタリア音楽の色はほとんど見えず、バルカンの地元になりきっている。こういうのを聞くと、ロマ系バルカン音楽も、レゲエやアイリッシュと同様、普遍音楽化のプロセスが始まっているのかもしれない。このCDは珍しく収録時間が50分ぴったりで、プレーヤーの表示窓に「5000」と並ぶ。

 朝、アマゾンで John Muir の本を検索し、結局ジャパンのサイトで Library of Amrica の版と Canongate Classics の版を買物籠にいれる。すると、前に入れておいたはずのものがすべて消えてしまっている。使ったのはiMacで、ふだんはiBookだから、ひょっとするとマシンが違うと買物籠の中身が違ってしまうのか。冗談ではないぞ。アマゾン・ジャパンに文句のメールを出す。

 昼食、ハンバーグ、キャベツの味噌汁、胡瓜味噌添え、プチトマト(いずれも朝の残り)、ご飯、大根卸し、甘夏。

 『青』の中でミシェルの言葉として地球の産業社会はアポロ・コンプレックスとヘラクレス・コンプレックスの産物で、父系社会だ、というのが出てくる(ペーパーバック版054pp.)。ユダヤが忌避され、迫害されるのは、キリスト教による父系社会のまっただ中で、かれらが母系社会であることもあるのかもしれない。

 昼食後、昼寝。目が覚めると3時。
 『青』なんとか5頁。

 H、6時過ぎに帰ってきてしばらくじっとしていたが、そのうち頭が痛いといいだす。布団を敷いて寝かせ、Mと夕食。鰹の叩き、キャベツの味噌汁、沢庵、ご飯、甘夏。そのうち、H、腹が減ったといいだす。細切り昆布の佃煮で残っていたご飯を食べさせる。8時前に二人とも就寝。

 メールを送る際、念のためチェックしたら、Read Ireland からクレジット・カードがだめと入っている。ここも古いものをとっておいたらしい。ファックスを送る。

2001年 5月 25日 (金) 晴れ。

 朝食、塩鮭、大根味噌汁、胡瓜塩揉み、ご飯。

○Tenore "S Gavino" Oniferi SU BANZIGU; Kuntzertu, 2000, Sardinia, Tower Shin'juku
Tenore  テノーレス・ディ・ビッティ同様、サルディニアの男性4人のコーラス・グループ。メンバーのうち3人が同姓で兄弟か、あるいは親族か。全編アカペラ・コーラスで全曲トラディショナルらしい。テノーレス・ディ・ビッティに比べるとリードとコーラスの役割分担がいくぶん近く、一体感が強い。一族ということもあるのかもしれない。一つの曲の中でテンポを変えることもある。録音はやや落ちるか。こういう音楽はある意味で録音がすべてなので、録りかたによってまるで音が変わってしまうだろう。水準は越えているが、もう少しハーモニーをしっかりとらえてほしい。そういう録音が一番難しいものではあろうが。もう少しこの島のポリフォニーをいろいろ聞いてみたいものだ。

 10時半過ぎ、ソフマップから電話。すぐにiBookを引取りに行く。AirMac カードも買おうとしたら純正のものはなく、ファラロンのカードを買う。

 昼食、鰹魚角煮、大根味噌汁、胡瓜塩揉み、ご飯、甘夏。

 昼食後、iBookにメモリを増設。AirMac はiBookに内蔵するカードだと思って買ったのだが、デスクトップ・マシンのPCIバス用のカードだった。アホであった。しかしソフマップは店員の教育がだめだ。女の子のアルバイトだかなんだか知らないが、「エアマック・カード」と言っても、きょとんとしていた。もうソフマップでは二度と買わない。

 メモリ増設してたちあげ、最低限の登録だけする。この登録は中止できない。あるいは中止する方法がわからない。ケーブルでつないでインターネットも確認。繋がるのがやけに速い。時刻を合わせただけで、あとは手をつけずにおく。
 それにしても新しいマシンは静かだ。これに比べると、最近iBookはHDの回転音がやけに耳につく。

 午後、『CDジャーナル』のための原稿、一気に書きあげ、夕方他のメールとともに送る。

 データ確認のためSETI@homeのサイトを見ると、この17日が2周年だと書いてある。正式にこのプロジェクトが始まったのは1999年5月13日と、計画報告にある。もっと長いプロジェクトだと思っていたのだが、そうすると俺はこれが始まってからほぼひと月で参加していることになる。ちょっと信じられない。

 午後、Macお宝鑑定団のニュースに、iBookを製造している台湾のメーカーの株主総会での報告が出ている。それによると、iBookは第3四半期に14インチ・モニタを乗せたものが出るらしい。それなら買いだ。おそらく値段は20万円代半ばぐらいではないか。しかしPowerBookG4の安い方が30万だから、20〜25万の範囲で出てくる可能性がある。楽しみ。

 夕食、納豆、鶏ささみチーズフライ、エビフライ、レタス、ご飯、苺。

2001年 5月 26日(土) 曇。

 朝食、チーズ・デーニッシュ、ハム・トースト、オレンジ・ジュース、珈琲。

 子どもたちは子ども会のイベントでTボール教室に小学校に出かけてゆく。Kは美容院へ飛びだす。

○Lajko Felix es Zenekara KONCERT '98/禁断のヴァイオリニスト; FONO/Ahora=Beans, 1998/2001, Hungary, sample
 横井さんの推薦でアオラからのFONOレーベル第一弾なのだが、全くのゴミ。ナイジェル・ケネディと比べられるのは当然で、小手先でやっているのはまったく同じ。ただ、ケネディは元にしているのがクラシック作品だったりジミ・ヘンだったりで、もともとが商品として作られたものだから、それを面白おかしく料理するのはそれなりにおもしろいのだが、こちらは一応ベースが伝統音楽なのがだめな原因。伝統音楽はどんなにつまらないものでもその背後に永年無数の人びとによって演奏され伝えられてきた膨大な蓄積がある。その上に演奏者の日常生活の裏打ちがある。小手先で料理してまともなものができるような柔なものではない。パガニーニとかリストとか、「超絶技巧」で人を驚かしたのと軌を一にするもの。そういえばこの録音はそのリストの名を冠したホールでのコンサートらしい。とすればまことにふさわしいとも言える。半分まで聞いてそれ以上聞く気をなくす。

 AppleWorks の書類のエイリアスを起動項目フォルダに入れておいても、元の書類を修正して保存すると、起動項目フォルダ内のエイリアスは消えてしまう。これはバグではなかろうか。バグでないとしても不都合極まりない。

 Appleに問合せようとしたが、サポートの Discussion Board に入ろうとするとユーザIDとパスワードを求められる。いったい何を入れればいいのか、さっぱりわからない。どこで登録すればいいのかもわからない。Tell Us という要望窓口に文句を書く。

 Macお宝鑑定団のニュースによると、昨日流れた台湾のiBookメーカーの話として夏に大画面の新iBookが出るという報道をAppleが正式に否定した由。そりゃまあ、否定するだろうなあ。んなこと認めたら、発売したばかりのiBookの売行きに響く。

 タムボリンからCD7枚。

 昼食、素麺、甘夏、ブルーベリー・サイコロ・パイ。
 サイコロ・パイは新製品らしいが、なかなか美味しい。ただし冷蔵で来て、なるべき早く食べろとのこと。

 5時半のバスで出かける。PTA旧本部役員のご苦労さん会。駅前まで1時間。バスの中でうとうと。校長が15分ほど遅れて駆けつけて始まる。この辺で一番古い小・中学校の同窓会だったそうだ。3年に一度続けていて、今日は2時過ぎからやった由。百数十名集まるというから、たいしたものではある。中には北海道から駆けつける人もいるというが、何がそれほど強い結付きを作るのか。共同体とはそういうものなのかもしれない。こういう結付きは都内の小・中学校ではまず生まれないだろう。教頭さんは転勤先の小学校で、先日6年の遠足のバスが事故に会い、色々あったらしい。TVのニュースにも出ていたそうな。9時過ぎ散会。帰宅10時前。Mが舌ベロが痛いと起きてきたところ。Kが見ると舌の先が赤いそうで、また噛んだらしい。
 念のため、メール・チェック。

2001年 5月 27日 (日) 雨後曇り。

 二日ほど前の天気予報は見事にくつがえり、朝から結構真剣に降っている。
 8時前起床。
 朝食、バナナ、チーズ・デーニッシュ、健康パン(Mと半分ずつ)、レタス、オレンジ・ジュース、珈琲。

 Kと子どもたちは買物などに出かける。

 昼食、ロール・パン、トーストに角型ソーセージを乗せたもの、レタス、バナナ、あんパン、牛乳。

 マイレット&トゥリーナ来日記念「クラン・コラ」臨増号製作に着手。

 夕食、豚肉・筍・搾菜の中華風炒め、春雨・人参・胡瓜の中華風サラダ、餃子、ご飯。

 夜、中山さんから電話。なんでも友人がシティバンクにウン千万からの貯金があり、これをユーロからドルに変えて為替差益を得ようと思うと言っているのだが、リスクはないだろうか。そんなことを俺に訊くな。結局いつもの雑談になる。イングランド北西部に行ってきた話。牛のおかげで、湖水地方は閑散としており、観光産業は大打撃。フェスティヴァルも軒並み規模縮小。フォーク・クラブの衰退がシンガー/ギタリストの衰退を招く。ローグ・フォーク世代以降、イングランドに最近まで新人は出ていなかった話をする。結局〇時過ぎまで。入浴できず。
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