■6月15日(火)晴れ
朝7時に起き、とり急ぎ身じたくして新村駅に向かう。何食わぬ顔を作ってはいるが、正直ちょっとドキドキだ。日本から持ってきた3ヶ月分の生活費のトラベラーズチェックを、無事に銀行に預けなければいけないからだ。

■4ヶ月に1回のご当日「民防訓練」
駅前の「ポポイス」(フライドチキンの国内チェーン店)で、とりあえず残り金で食べられる朝食…ビスケットとコーヒー、を買う。ところで、韓国のこの手の店で出すビスケットは、日本のそれとはなぜかひとあじ違う。日本の「ビスケット」はどちらかというとパンに近い柔らかさだが、こちらでは皮がもっとこりこり堅焼きになったものが主流で、とても香ばしくておいしい。
食べながら前の通りを見ていると、トラックで街灯に「民防うんぬん…」という旗を刺している。そうか、今日6月15日は、今年二回目の民防訓練の日だ。もともとはいわゆる「北の来襲に備える訓練」として毎月行われていたが、ここ数年は年4回前後に減っており、訓練内容も防災が中心になってきたという。もっとも、訓練時間は毎回20分前後だし、普通の人がやることといえば、車を止めるか、ビルの中などに隠れるくらいのものだ。
そうは言っても、ラジオお宅としては黙っていられない(笑)。この時間は、ほとんどの局で通常番組に割り込んで特別に訓練の警報放送を流すのだ。ちゃんと覚えていて録音用ウォークマンを持って出てくればよかったなあ(^^;;)。
9:30に銀行で口座を作る。キャッシュカードを貰うと、ここが生活の場になったという実感が湧くものだ。

■一獲千金か幻想か?韓国「キャラクター業界」
今日は、昨日の保証人の方と「ソウル国際キャラクター博覧会」という展示会に行くことにしていた。新村駅で待ちあわせ、地下鉄に乗って一緒に会場入り。
この展示会は、韓国で7月公開予定の特撮怪獣映画「ヨンガリ」のキャラクター製品を中心に、いわゆるキャラクター開発企業の展示があると聞いていたが、やはり最近の不景気か、「ヨンガリ」関連キャラクター以外の製品はあまり出店されていなかった。
「ヨンガリ」は、日本企業が上映権を買ったという噂もあり、日本でも上映されるかもしれない。しかし、映像を直接見てないので何とも言えないが、日本の特撮ファンを納得させる仕上がりになっているかどうか…。
キャラクターといえば、今韓国では「少ない設備投資=アイディア勝負、で高い収益が期待される事業」として、キャラクター産業の振興が国を挙げて勧められている。「月刊キャラクター」という雑誌が発刊され、今月発売されたキャラクター製品、今度どこどこ企業のキャラクターに決まった「●●」、人気漫画の「××」はキャラクター(製品)的に有望、というような記事が満載だ。日本人から見れば違和感がある表現かもしれないが、「キャラクター業界」という言葉を使う人もいるくらい、しかも「キャラクターデザイン学院」などという専門学校まである。
しかし、正直なところ、個人的な感覚だが、リサーチやコンセプトの面で「うまくはまっているなあ」と思うものや、デザインの面で魅力的と思えるものにはなかなか出会えない。作り手が受け手側の心理を把握しきれていないのもそうだが、キャラクターを消費するほうも、じゃあどういうキャラクターなら好きになれるのかということを、まだきちんと言葉に出来ない段階のように見受けられる。ちなみに、海外キャラクター事情はというと、キティちゃんは日本と同じ名前の直営店チェーンが出来ており今や定番。しかし、今年の春夏一番のブレイクは、意外にも?日本では2番手グループ、という印象の「テレトービ」である。

「ソウル国際キャラクター博覧会」の入り口。よく見ると「今日は無料です」の張り紙あり。昨日まではこの内容で入場料を取っていたのか!?

「ヨンガリ」のキャラクター製品たち。怪獣自体のデザインはかっこいいのに、わざわざ2頭身キャラを開発してしまうあたりに、業界の底の浅さがそこはかとなく感じられてしまう(苦笑)。
■入国早々、危機事態発生!?
いまいち後味悪く(苦笑)展示会場を出た後、部屋に外線電話をつなぐための手続きをすることにした。保証人の方に、韓国のNTT「韓国通信」の支店に電話をしてもらい、加入金を振り込むため手近な銀行に入る。ところが、銀行のロビーにテレビが置いてあったので何となく見ていると、どうも雰囲気がおかしい。韓国のいわゆる地上波ネットワーク局は、特別番組がないかぎり昼12時〜5時は休止することが多いのだが、ニュース速報ふうの画面で、時々海軍の哨戒艇の映像が流れる。
「あら、東海(トンヘ・日本から見ると日本海のこと)で南北の海軍が交戦したんだって。」
保証人さんが字幕を読んでくれた。
「うっそお!ひどいよ昨日きたばっかなのに!!!」
これってやばい事態に発展するんだろうか、なんだよ人がせっかく3年間周囲を説得してやっとこさ留学出来たって言うのに、じゃますんな両国海軍!
しかも保証人さんが追い打ちをかける。
「こんなことになるなら、トラベラーズチェック両替しないほうがよかったね。戦争になったらおろせないよ。うははは」
…これが恩人でなかったら、入国早々最初のマジぎれをかましてやるところだ。人がどんな気持ちで親を説得して、ここまで来たと思ってるいるのだ!
そうは言っても、彼も内心は複雑なのだ。彼も彼の奥さんも、親戚一族の本家はもともと北側にあったのだそうだから。
そうだ、こんな事態の時はラジオを聴いてみるに限る。テレビ放送だと、なまじ昼間は普段やることがない分だけ、大したことないニュースでもだらだら特番にしてしまうこともあるから、ラジオでの騒ぎ度の方が、事態の正確なバロメーターになりうるだろう。取りあえず各局の音楽FMチャンネル、なんだ、みんな相変わらずの音楽かけてるじゃない。
さっきまでのドキドキと怒りから一転、あっさり安心して、二人また事務所にもどる。
そうはいっても、日本でも大っきく報道されちゃうんだろうな。「テレビ各局は昼の休止時間いっぱい緊急報道番組を続け、云々…」とか言って(笑)。それでも夜には親に電話しておいたほうがいいかな。
…後で分かったことだが、この日の民防訓練は、この交戦騒ぎのため結局行われなかったそうだ。そりゃ、こんな日に訓練なんてやってる場合じゃないだろう。

■弘大前オープンカフェの夜は更けて…
今夜は、久しぶりに再会する人がいた。出版社でキャラクター製品開発MDを手がけているスンヘお姉さんだ。さっきはキャラクター業界のことを余りよく書かなかったが、彼女は美大生時代から欧米の絵本や童話に大変詳しく、欧米のいいキャラクターを韓国でも成功できるよう展開したい、という夢を持っている。日本のキャラクター事情も詳しく、私たちが出会ったきっかけも、彼女がリサーチで東京に来たとき、保証人さんの紹介で私が案内をお手伝いしたことだった。おしゃれでかわいらしく、芸術センスばっちり、好きな仕事に打ち込むスンヘお姉さんは、私の理想の女性の一人でもある。
3人で事務所をあとに、ソーセージ屋さんでしばし食事、その後、お姉さんが弘大前に是非私を連れていきたいところがあると行って、とても素敵な洋書+アートグッズ+カフェのお店に連れていってくれた。韓国国内の展覧会カタログや作品集もいっぱいだ。カフェのテラス席は、夜風がとてもいい気持ち。カプチーノを頼んだら、ちゃんと本場風にかわいいトレイに乗って出てきた。なかなか気に入ったので、多分何かにかこつけて足を運んでしまうだろう。
今度の日曜日、スンヘお姉さんと一緒に、美容室(しかも一流チェーン店系)に行く約束をした。実は、韓国に来たら髪形を変えようと思って、暫く美容院を我慢していたのだった。週末が楽しみ…。

緊張したりにこにこしたり、たくさん歩き回ったけど、怒ったり笑ったりにも忙しかった一日だなあ。

<今日のおすすめ韓国関係Webサイト>
YONGUARI
映画マニアで有名なコメディアン、シム・ヒョンネ氏が制作指揮をとる怪獣特撮映画。
7月開封予定。ちなみに、作品レベルを憂慮した特撮ファンによる
「アンチYONGUARIサイト」もオープン中(笑)。

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