■6月17日(木)うすぐもりのち晴れ |
■「トンデモ日本語印刷物」の裏事情… 今日はちょっと寝坊をした。11時に保証人さんの事務所に行く約束。外国人では加入手続きが厄介だろうと言うことで、携帯電話を一緒に買いに行ってもらうのだ(実際はそんなに大変でもないという話も聞くが、まあ楽なので…)。 事務所には、韓国で日本向けの印刷物制作事業を立ち上げたい、という方が相談に来ていた。私が日本でDTP制作の仕事をしていたと紹介され、彼の話を聞いてやってくれという。こんなことなら、会社員時代にもっと勉強して、DTPエキスパートの資格でも取っておくんだった!恥ずかしい…。制作からフィルム出力まで韓国側で内制し、制作費のコストダウンを売りに日本で顧客をとりたいとのことで、取りあえず、どんな機器をそろえるつもりかとか、校正はどうするかとか聞いてみたりする。ちょうど手近に、韓国のとある出版社が日本向けに作った会社案内らしきものが転がっており、広げて見てみた。 「これくらいの品質で作れれば…」と先方。しかし日本語のページを見た瞬間、凍った。一言で言うと、あの「VOW」か「奇妙な果実」で採用されかねない内容だ…。海外の観光地で配っている、よじれた日本語フォント、超訳な文章が満載の折りたたみ観光ガイドマップをご想像頂ければ、まあ近いだろう。さらに韓国の場合、日本で言うところの旧字体の漢字が普及しているので、「戰」とか「區」とかいう字を平気で使ってしまう。なまじ代用できるだけに、日本人には違和感がある、ということに気がついてくれないらしい。コピーの内容がさらにまずい。どうも自動翻訳ソフトにかけてそのまんまの文章で、結果的に書き手側が威張っているような文体になってしまっているのだ。しかも、おそらく「剣劇小説界」とでも言うべきところで、思いっきり「ちゃんばら小説業界」。これじゃパンフレット配って営業どころか、お客さんが逃げちゃう! 「…これ、日本語めちゃくちゃです。フォントもコピーも。」これだけは言って置かなければ。 「ええっ!?これじゃだめなの…?」 「…。」 …ともかくも、日本語をきちんと入出力するなら、日本語システム(MacOSなら漢字Talk…)を入れないと良くないと思う、ATMフォントも買わないと…、コピーも日本人のライターがリライトを…、等々、分かる範囲で意見を言ってみる。 でも、冷静に考えれば、クライアントと制作との間に距離があるのは仕事をするうえで相当面倒くさいんじゃないだろうか。データは通信でやり取りすればいいが、製版のチェックは?色校正のやり取りは?フィルムを出力し直してDHLで送ったら何日ロス? 彼が帰った後、保証人さんと「日本相手に仕事をするより、もっと高品質な日本向けの印刷物を作りたい韓国のクライアントを探した方が、現実的でいいよね」と思わずぼやいてしまった。 そうは言っても、今韓国も不景気のまっただ中、日本進出で一もうけを狙うことが、ある種のブームみたいな雰囲気も感じるし、すぐに日本相手の商売を考えてしまうのも無理がないなとも思う。 ※しかし、このトンデモな日本語印刷物、けっして笑ってる場合じゃなくて、むしろ他山の石としなければならないだろう。これからワールドカップを控えて、それぞれ相手国向けの印刷物が増えていくであろう中、日本で作ったハングルフォントの印刷物が韓国でVOW扱いされる可能性だって、十分にあるんだからね(苦笑)。 ■ソウルでケータイ初体験! 気を取り直して昼食、バスで龍山(ヨンサン)に向かう。 龍山は、日本のPCマニアやジャンク系コレクターの中では結構有名な場所かもしれない。町一つ位の規模の大電気製品市場なのだ。家電や電話から、怪しいゲームソフト、怪しい輸入本の類いまで、韓国の秋葉原といえば近いだろう。 でも、今日は携帯のほかにFAX電話も買うんだ。ゆっくり見物はおあずけ、携帯電話ショップに直行しなくては。 ところで、実は私、今まで日本で携帯電話やポケベルの類を使った経験が全くなかった。特にネットを始めてからは、家の留守電もろくに動かさず「留守電を入れない人間は現代人として失格!」とまで言われたほどの電話嫌い。たまに友人の携帯を使って電話を掛けさせてもらう時でも、ボタン操作がわからずおろおろするのが関の山だった。 しかし、留学中の身ともなれば、知人との連絡は大事だし、携帯を持てば両親も安心するだろうし。ソウルで一丁携帯デビューをしようと、覚悟を決めていた。 そして、せっかく携帯を持つのなら是非やってみたいことがある。「着メロ」(笑)。 もちろんメロディーは韓国ラジオ各局のステーションジングル、町でがんがん鳴らして目立ってやるぜ!(笑)と思っていた。 「あの、韓国で、着信メロディー作れる携帯電話って出てます?」恐る恐る保証人さんに聞いてみる。 「あ、メロディー?最近は何種類か選べるんだよね」 「…、そうじゃなくて、自分で音階を入れるやつですよ!(<ちょっと怒っている)」 「うーん…。」 「…お店で聞いてみます…。」 お店での加入手続きはすぐ済んで、いよいよ電話を選ぶ番だ。 「自由にメロディーが作れるのがいいです!」 「じゃ、これですね」 お店の人はすぐに選んでくれた。 FAXも買って、保証人さんと別れ帰宅。取説と首っ引きでFAXの時間設定や受信設定をする。まずい、動作音がうるさい。いくら改装したてできれいと言ってもやっぱり安普請、個室の仕切り壁が薄くて、他の部屋に音が筒抜けなのだ。まずはベルの類の音量を絞らなければ。携帯も部屋では振動に設定しておこう(これは考試院の使用規則にも書いてあったし)。 で、肝心の着メロ機能だが、取説を読んでいたら「あなたの好きなメロディーを登録できるマイベル機能」と言う項目があった。「これだ!」早速読んでみる。 「まずは××番に電話をします、案内コメントに従って、最新ヒット曲、歌曲、トロット(演歌)等の中から好きな曲を選び…」 …なんだ、やっぱり出来ないんじゃん(泣)。 ■韓国のいけてるキャラ「タルキ」ちゃん 日本では全く興味の無かった携帯電話だが、いざ持ってみると、今度はかわいいストラップが欲しくなってしまた。携帯グッズが何であんなに人気があるのか、今更ながら分かった気がする。ちょっと鞄やサンダルも探したいし、日本でもファッションの町で有名な、明洞(ミョンドン)まで出ることにした。 韓国に「SSAMZIE(サムジィ)」という、個性的なグッズで人気のブランドがある。製品自体のセンスもいいが、現代美術や音楽界で活躍するアーティスト達にバッグや靴のデザインをさせて、その作品でファッションショーを開いたりなど、クリエイティブを強調した販促展開でも知られ、その手の分野に興味のある10代〜20代層に大いに支持されている。私もSSAMZIE製品の大ファンなのだが、今度は「タルキ(いちごちゃん)」という、イチゴの女の子のキャラクターグッズを出したという。早速何か買ってみよう。 明洞の真ん中にあって、日本の旅行ガイドにも良く載っているファッションビル「UTOO ZONE」。この地下に「タルキ」の売り場がある。小憎らしいキャラ、レトロな設定、ロリータっぽいデザイン、個人的には韓国キャラ製品ではいち押しな雰囲気。早速タルキちゃんの携帯ストラップを買って付け替える。まだまだ先だけど、新学期用にノートも買っておこう。 上の階にあがって、今度はスポーツウェアブランド「SSAMZIE SPORTS」で、スェードの楽ちんなサンダルを買う。昨日帽子を買ったときも、あれこれ選んで結局SSAMZIE SPORTSだったし、最近SSAMZIEづきすぎたかな。そろそろ新しいブランドも発掘していかなければ。 |
「タルキ」のプレミアムのバスケット。本来は草履を買うとこれに入れてくれるそうだが なぜかショップのお姉さんが譲ってくれた |
■屋上からソウル案内… 夜はお洗濯。洗濯機を回している間、屋上でラジオを聴きながら読書などしてみる。 そういえば近くにあまり高い建物がない。屋上から、ぐるっと360°、この麻浦区一帯が見渡せる。 考試院前から南に2kmくらいのところに、ソウルの中央の大きな川、漢江(ハンガン)が流れているのだが、中洲の汝矣島(ヨイド)のオフィスビルたちの夜景が、ずっと遠くに見えた。昔住んでいた東京杉並辺りから見た、新宿の高層ビルみたいだな、と思う。 その手前には、工事中の高層アパート群。ざっと見ても、それぞれが20階以上はあるだろう。未来都市みたいでかっこいいというか、威圧感あるというか…。 そのアパートの足許には、いかにも韓国らしいレンガ造りの家が並ぶ。ほとんどの家が西江大生の住む下宿屋だ。バス通り裏の路地には、学生相手のコンビニやちょっとした食堂、本屋などが並んでいて、夜は店先のテーブルに近所の家族づれがやって来てくつろいだりしている。かと思うと、古びたビルの2階には、ネットゲーム屋の看板が見える。今韓国では「スタークラフト」を始めとしたネットゲームが大流行、専用線を引いて10数台のPCを用意し、中ではゲーマー達が夜通しプレイしているのだ。 そして考試院のすぐ裏には、廃線も時間の問題?みたいな、腐ちかけた貨物専用の線路が通っている。いくら貨物とはいえ、ソウル市内なのになんと単線!それでも1時間に一度ほど、セメント車やあれこれの荷物を引いたディーゼル(!)の牽引車や、回送車が往来する。 何ともおかしいのが、線路沿いに住んでいる人たちの緊張感の無さ!列車が通らないときは、自由自在に線路を横切って行ったり来たり、そして、「べこ、べこ、べこ」という頼りない踏み切り音が聞こえると…、聞こえてもやっぱり悠然と横断してる! …ここに越してきて、いま4日目、この考試院がとても落ち着くのは、もしかしたら、何とも言えない懐かしい周囲の佇まいのせいかとも思う。 私が小さいころ、少し東京の立川近辺に縁があったのだが、確か自衛隊の立川の施設のすぐそばに単線があって、線路沿いに歩いて街に出たり、時々トロッコが通るのを眺めに行ったりしたものだった。 高層アパートとかネットゲーム屋までもひっくるめて、屋上から見下ろす考試院裏のあれこれが、20数年前の立川や10年前の杉並と、なぜかいま無性にシンクロしてしまう。 ソウルの下町からも、日本の思い出とおんなじ気持ちを感じることができるんだな。そう気がついたときから、私のソウルリピート癖が始まり、いつの間にか、昔見た風景とよく似た場所に、引きあわされているのかもしれない。 |
考試院の屋上全景。ご覧の通り近くに高い建物がないので視界良好 |
屋上から汝矣島方面。左上の金色のビルが韓国で一番高い「63ビルディング」。手前は貨物路線 |
<今日のおすすめ韓国関係Webサイト> |
●龍山ガイド「YOUNGSAN NETWORK」 龍山地区電器街のコミュニティが運営する、龍山地域の総合情報サイト。新製品情報や、地域案内図、ショップ検索、レアものの競売情報などがある。 ●SSAMZIE アパレルブランド「SSAMZIE」のサイト。言葉はわからなくても凝ったページデザインはなかなか楽しめるはず。Shockwave&Flash必須。 |