■6月18日(金)うすぐもりのち晴れ
■ついにSOHO完成?と思ったら…
またしてもちょっと寝坊して9時頃起床。11時くらいに、食事がてら展覧会でも見に行こうと家を出て、新村駅方面に歩き出すと、携帯が鳴った。保証人さんからだ。6日の日曜日に船便で出しておいた荷物が届いたそうだ。まる2週間はかかると思っていたので少々拍子抜けしたが、すぐ取りに行くことにする。部屋に戻ってカートを用意し、事務所に向かう。

荷物は大きめの段ボール一箱とMac用プリンタの箱。よくプリンタが税関に引っ掛からなかったものだ。まあ、箱も中身も相当くたびれているので、どう見たってこれから売りさばこうってものには見えない(もちろん自分用!念のため)。さすがに引きずって帰れないので、タクシーを拾った。ところがタクシーのおじさん、いきなり日本語で「日本人でしょう?」と話しかけてくる。最初は正直ちょっと怪しんだ。見知らぬおじさんが脈絡なく日本語で話しかけてくる時は、観光客を騙そうとしているに違いない、なんてどうしても考えてしまうからだ。ところが話を聞いてみれば、彼が日本語を話せるのは、昔漁船に乗っていて、日本の船と無線交信をする必要があったからとのこと。韓国にいると、こうした思わぬ事情で日本語を話す人に出会うことが多々あり、日本にいる時以上に、いろいろな形での韓国と日本との深い因縁を感じる。結局?最後には荷物をトランクからおろして、玄関まで運ぶのまで手伝ってくれた、やさしいおじさんだった。

…考試院の部屋が2階でよかった…。大きい荷物は、郵便局で計ったら14Kgあったはずだ。ともかく荷物を持ち上げ、着替え(正直足りなくなりつつあった)や必要なものを引っ張り出した。箱の置き場所どうしよう。快適とは言っても、個室の広さは3畳間くらい、その半分はベッドスペースだ。仕方ないので、勉強机の下に箱をいれてしまい、自分はベッドの上に座ってMacをいじったりすることにする。椅子は仕方ないからお客さま用か物置だ。
幅1m半程の机に、FAX、プリンタ、Macと並べたら、それなりのSOHO風インテリアになるじゃないか…。家具調度から言ったら「ウィークリーオフィス」風じゃん!(笑)。ところが、ここでLocalTalkのケーブルを置いてきたことに気がつく。プリンタが使えない!これじゃ「うそSOHO」じゃないか(泣)。
しかも、日本で買っておいたデジカメのケーブルも送っていたので、そっちも試してみなければ…と思ったら、こちらも、どうしても上手く接続できない!
結局、入力(デジカメ)、編集(Mac)、出力(プリンタ)全部揃ってるのに、全部スタンドアローン…。全く恥ずかしい、早くLocalTalk買いに行こう。

■シリーズ・韓国コーヒーの実態(笑)(2)
大体の整理が付いたので、展覧会を見に出かける。今夜は、実はチャン・ピルスンという女性フォーク歌手のライブに行くことにしていた。場所は現代美術画廊として有名な「カナ・ア−トセンター」。公演は7時半からなので、寄り道しながらぼちぼち行こう。
西江大のキャンパスは広いので、正門前の大通りを歩けば新村駅に出るが、裏門側の道に回って歩いていくと、隣の駅の「梨大前」にたどり着く。女子大のお膝元だけあって、この一帯にはいわゆる「女子大生お気に入り」的なレストランや雑貨屋が並んでいて、ちょっと竹下通りっぽい雰囲気があるかもしれない。観光ガイドにもよく紹介されているし。
梨花女子大の門の近くにある「MIGO」というベーカリーカフェに入った。ここはパンの種類が多く、しかもドイツ風のパンもあることで有名だ。前に旅行で来たときも、何度か足を運んでいる。しかしこれも実は、昔観光ガイドで仕入れた情報なのだった(汗)。
これは私の好き嫌いの問題なのだが、韓国の食べ物で、前に書いたコーヒーと並んで許せないのが、パン、特にコンビニのパンだ。私は、もともとドイツパン風の黒くて実とか胚芽とかいっぱい入ってて、あまり甘くないか、甘くても硬いパンが好きなのだが、韓国の市販の菓子パンはとにかく柔らかくて甘くて、甘いお菓子はなんでもこいの私でも、あの歯触りはどうしても食べられない!噂では、レシピ上の砂糖の量が、日本の市販のパンの倍、とか聴いたことがある。普通のベーカリーでは歯ごたえはまあまあなのだが、やはり味のバランス的には甘い。最近ではデパートの地下にフォションとか外資系のパン屋も見かけるが、ここまで来て外資ものに頼ってもしょうがない、できれば、地元のおいしいパン屋さん、と言える店を発掘して行きたいものだ。
昼食がまだだったので、ラウゲンという硬くて少々塩味のパンにサーモンを挟んだサンドウィッチと、モカコーヒーを注文した。パンの塩気とサーモンと野菜がいい感じでマッチしてなかなかいける。食べながら、ケースの中のラインアップをチェック。お、新しく「カヌレ」が入っているじゃないか!今度また食べに来よう。
で問題のコーヒーだが、この店では「MIGOの定番コーヒーはコナコーヒーです」とメニューに書いてある。他にモカとコロンビアがあるのだが、それはサブ的な扱いだ。そう、韓国でこの前の電話の店みたいな普通の喫茶店に入って、単に「コーヒー」と注文すると、なぜか、多分99.5%(残り0.5%はホテルの類…)コナ系のヘーゼルナッツ風味のコーヒーが出てくる。私は、コナ系のコーヒーは決して嫌いじゃない。日本時代は、近くにあったコナコーヒーの専門店に行ってブラックでがぶがぶ飲んでいたほどだ。しかし、コナをおいしいと言って飲めるのも、それは濃ければの話。においがなければ紅茶といわれても分からないような激薄抽出で、コナを飲んだら…。だから、コーヒー屋に入っても、メニューに「モカ」とか特定のブレンド名が書いてあれば、それを注文することにしている。
モカコーヒーは確かにまあまあだ。カップに注いでみれば若干薄いのが分かるけど。しかも、この店は、ホットコーヒーと炭酸飲料ならお代りがきくので、文句を言いながらもしっかり2杯目を頂く。今日は新作ケーキのサンプルを配っていた。チョコレートチェリーケーキ。おいしいけど、ちょっと甘いかもしれない。

■梨花女子大学校博物館「Dialogue」展
梨花女子大の校門をくぐると、すぐ左に石造りのきれいな建物が見える。「梨花女子大学校博物館」、かねてから一度訪れたいと思っていた博物館だ。6月末までの予定で、ここで現代美術の展示が行われているという。
今回の展示は、梨花女子大学のもと総長として韓国の女性教育に数々の功績があったという、キム・ハルレン女史(Helen Kim)の生誕百周年を記念する行事「Helen Kim
誕生100周年記念特別展」の一環で、2階にはHelen Kimの少女時代から、植民地時代の梨花学堂での活躍、またクリスチャンとして海外のキリスト教会議に参加した際など、彼女の生涯を紹介する写真展示があった。1階がインスタレーションの展示「Dialogue」。今回作品制作を行ったのは、韓国現代美術を代表する作家の一人キム・ドッキュンと、彼が梨花女子大の美術学部で教える生徒たちである。彼は、韓国の近代史をテーマに、昔のモノクロ写真をコンテで大きく写し取った絵と布、木でインスタレーションを構成した作品で有名だ。今回は特に、Helen Kimの写真で作品を構成、彼女自身の生涯、梨花女子大学という場所で行われた女性教育、そして韓国の女性史を表現しようとするものだった。私自身、元々キム・ドッキュンのファンだったので、まずは彼の最新作を見られた!という嬉しさ、自分自身が作品の中に投影されるような効果のある素晴らしい展示で、思わず会場を2周してしまう。
館の入口吹抜には、大きな鏡のモニュメントと、風に吹かれる白い布、そして吹抜の壁には、梨花女子大の歴代の卒業アルバムから切り取られた写真が数千、数万枚とまるでタイルの模様のように張り付けられている。一瞬、その1枚1枚が写真とはわからないくらいだ。そして、中央の恐ろしいくらい曇りのない鏡のモニュメントをのぞき込むと、中央に自分、天井に布、そして背後には数万の女性の象徴、ここで表されているのは、Helen Kimでもあり、「女性」でもあり、「自分自身」でもある、そんなことをだれかれ構わず突きつけてくる「鏡」であった。
ミュージアムショップで図録を買う。デザイングッズや梨花ロゴ入りのバッグなどもあるおしゃれな店だった。
道の途中で西江大に電話する。そろそろクラス分け面接の時間を決めなければ。語学堂によっては一斉試験のところもあるそうだが、西江では1対1の面接でレベルを見るとのこと。試験官とじっくりコミュニケーション出来ると思えば気楽だが、反面はったりも利かないだろう。月曜日の11時に来なさいとのこと。


机の上に取りあえず並んだFAX、プリンタ、PowerBook

梨花女子大学のキャンパス内にある
「梨花女子大学博物館」前景
■初ライブでのっけから大失敗!!
昨日行った雑誌展示館とミュージックランドを眺めて、カナアートのある有名な画廊街「仁寺洞」に入る。この時点でそろそろ7時半に近くなっていた。今日実はずっと引っ掛かっていたのだが、雑誌で見たライブの案内には「野外公演場」とあるが、カナアートは仁寺洞の通り沿いにあるビルで、野外公演場って何処のことを言っているのだろう。屋上なのか、裏庭があるのか、あるいは路上なのか?1階のキャラリーショップで「今日のチャン・ピルスンのライブは…」と店の人に聞いてみる。と、「え!ライブですか…」一瞬絶句、「ここではないんです。ピョンチャン洞のラマダオリンピアホテルの近くに、新しく『カナ・アートセンター』がオープンしたんです。」
えーっっっ!そこって、山の上じゃん!、そう、私は新しくできた『アートセンター』の存在を知らず、仁寺洞の『カナ・アートギャラリー』と思いっきり勘違いしていたのだ。
「ど、どうやって行けばいいんですか!!」「とりあえず、タクシーがいいかと…」
仁寺洞の通りの出口で、あわててタクシーを捕まえた。ところが、新しい建物だし何しろ画廊だから運転手さんもわからない、ついに自動車電話でアートセンターに直接聞いてしまうという奥の手まで出して、やっと発車できた。しかし、よりによって金曜日の夕方、この時間はただでさえ車の多いソウルの道は混雑がひどくなかなか進まない。それでも道が山に入るとどうにか車も流れ出した。ソウルは実は漢江を中心にした盆地で、ちょっと中心部を北に外れるとすぐ山に入ってしまうのだ。山道のバイパス道路沿いに、ちょっと開けた谷間ごとに店が並ぶような風景が、延々と続いていく。8時5分、あたりが暗くなりかけたころ、ようやくカナ・アートセンターを見つけた。車を降りると、建物の向こうから演奏の音が聞こえてきた。

カナ・アートセンターは、まだ入り口にセメント工事の砂が少し残っていて、本当に出来立ての施設のようだ。建物の左側に案内されると、山の傾斜を利用して、上から下に客席、ステージのスペースが作られ、回りをコの字型に建物が囲んでいる。ガラス張りでシンプルなつくりなのだが、周囲に細い竹垣のような囲いがあって何とも言えない涼しげな雰囲気を演出している。
見下ろすと、チャン・ピルスンとバックのメンバー4人が演奏のまっただ中だ。もう5曲くらいは終わってしまっただろう。セットという程ではないが、5人が上がるステージ台も作られ、照明も本格的だ。2曲ほどでバンドは一旦下がり、ゲストのキム・グワンジンの歌が始まった。観客は大体300人くらい、客層を改めてチェックしてみると、音楽ファンっぽい20〜30代が4割、夕涼みがてらの近隣家族連れが4割、2割がカナ・アートの会員特典で来場したと思われる生活水準の高そうな人(笑)。でも、チャン・ピルスンの爽やかなギターサウンドと会場の雰囲気とで、みんな一緒になごみながらステージを楽しんでいるようだ。時々後ろの芝生で子供が遊んでいたり、おじさんが一服したりしつつ…。ライブもクライマックスではロックアレンジの曲で大いに盛り上がった。チャン・ピルスン自身も、次回アルバムの本格レコーディングを控えているとのこと、なかなか気合が入っているようだ。
「今回は住宅街の中のこのような場所でライブをすることになり、ご近所に迷惑でないかと少々はらはらしました。でも、これから街ごとに、ここのように気軽に音楽や芸術を楽しめる場所が出来て、私や他の多くのアーチストのように、テレビに出なくても地道にライブ活動をしている人たちと皆さんとがもっと身近に接することが出来るようになると良いと思います」という挨拶で締めくくっていたのが印象的だった。
ライブの後、ちょっと館内を行けるところだけ回ってみる。展示室も広くてきれいだし、アンティーク風のテーブルセットが素敵なミニレストランまである。こんどはちゃんと展覧会を見に来なくては(苦笑)。


■くせになりそなソウル市内バス
ライブが終ったのが9時30分、タクシーで来てみたのはいいが、どうやって帰ろうか。車では前にも近くまで来たことがあるが、最寄りの地下鉄駅まではとても歩いて行ける距離ではない。とりあえずバスはまだあるはずだから、大通りに出てバスを待とう、とその時、丁度経由先に「新村・西江大前」と書かれたバスがやって来た。えっ!こんな山の中からうちの前まで、バス一本で帰れるなんて信じられない!位置的に言えば、カナ・アートセンターのある鍾路区ピョンチャン洞から新村は、市の中心を挟んで東寄りと西寄りにあたる。ソウルのバスといえば、路線が複雑で混雑して遅れるし運転も怖くて…、みたいに、日本ではあまり良い印象をもたれていないが、実は路線を良く研究して乗りこなせられれば、地下鉄よりも便利な足になるかもしれない。
失敗したけれどライブを見られてよかった、ついでに、バスも良い路線を発見できてラッキー!とどめに30分程のソウル横断バスの旅も楽しみ、うちの真ん前の停留所で降りる。明日は江南に展覧会を見に行く予定だが、バスでどうやって行けるか試してみることにしよう。

<今日のおすすめ韓国関係Webサイト>
梨花女子大学校博物館
今回の「Dialogue」展に関するページがある。英語での説明ページもあるが、実際に作品写真が見られるのは韓国語ページのみ。良く出来ているが、ページ自体、また写真が小さいのが惜しい。

gana art gallery
「カナアート」が制作する総合アート情報サイト。展示情報から、美術雑誌「カナアート」の紹介、Webのみで発表される作品のギャラリーなど、見ごたえたっぷり。代わりにプラグインはShockwave、Flash必須、画像はめちゃくちゃ重い。センターでは「サイバーギャラリー」のページだけをフロッピーに入れて配付していたが、当然である(笑)

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