News    大府高校 全国家庭クラブ研究発表大会入賞

  新潟県教育委員会賞

    
愛知県立大府高等学校家庭クラブ  


 
8月1日(木)~2日(金)の第61回全国高等学校家庭クラブ研究発表大会(開催県:新潟県)において、「北陸・中部ブロック」代表として、学校家庭クラブ活動の研究成果について発表しました。その研究成果について紹介します。
 


<研究テーマ> 

隠れた大府の宝物! ~たまねぎで大府を変えよう!~

Ⅰ 題目設定の理由

私たちは長年玉ねぎを栽培しているが、玉ねぎが大府の特産であり健康にとても良いことをあまり知らない。「健康に良い玉ねぎ」をおいしく食べ、多くの人が健康で長生きする街づくりに貢献し、大府市の産業を少しでも活性化したいと考え、この題目を設定した。
Ⅱ 実施計画 
  1 調査研究
  2 実践活動
  3 評価と今後の課題

Ⅲ 実施状況

1 調査及び研究目標の設定
 (1)意識調査
 家庭クラブ員と大府市民に玉ねぎについてアンケート調査を行った。玉ねぎを好きな人が大部分であったが、子どもは42%、高校生は24%が玉ねぎ嫌いであった。理由は臭いや辛み、触感が苦手であるようだ。また、玉ねぎが大府の特産と知らない人は全体の半数以上と意外な結果であった。
 (2)玉ねぎの効用
 特有の成分は、硫化アリル、硫化プロピル、ケルセチンである。これらの成分は加熱すると失われるといわれているので、名古屋市内にある「日本食品分析センター」で、加熱後のケルセチン量の成分測定を依頼した。その結果、生の玉ねぎでは26㎎/100g、加熱した玉ねぎは16㎎/100gのケルセチン量が含まれており、玉ねぎを加熱してもケルセチンは生の約6割残ることが証明された。
 (3)問題点の把握と目標の設定
 家庭クラブ員・市民ともに玉ねぎが大府の特産であることを知らない人が多く、また、料理の脇役であるという意見もあった。そこで、
  ①玉ねぎの健康成分を分析し、大府市民と共に健康を目指す。
   ②地元の企業の協力をいただき、玉ねぎを使った新しい商品開発に取り組む。
これらの活動を通じて、地域の方々への普及活動に取り組み、大府市の産業を活性化することで、地域に貢献したいと考えた。

2 実践活動
 (1)玉ねぎ料理を考える
 げんきの郷の野菜ソムリエから大府市の玉ねぎについて教えていただいた。玉ねぎの生産量は愛知県が全国で4位、大府市は愛知県内で2位となっている。種類は「白早生」「もみじ」が多く、「赤たまねぎ」は知多半島が中心である。「愛知の伝統野菜」の中に大府市特産の「知多3号」があり、水分が多くシチューや玉ねぎステーキ、丸ごと料理などに向き、おいしいことを教えていただいた。
 そこで、家庭クラブ員に玉ねぎが主役となる料理を募集した。約100点ものレシピが集まり、調理しやすいように見直しレシピ集を作成した。「オニオンリングメンチカツ」は、リング状の玉ねぎをみじん切りに変更し、手軽に食べられるようにパンにはさみ、「おぶたまバーガー」と名付けた。「玉ねぎジャム」は、ジャムに入っているしょうがの臭いが強く風味が良くなかったので、しょうがを除き、大府特産の巨峰を加えることにした。味・色を考えながら、砂糖の種類を変えて試作したが、臭いがとれないので野菜ソムリエに相談したところ、臭いをプラスに考え、玉ねぎを主張させると良いとアドバイスをいただいた。さらに、巨峰でなく年中手に入りやすいりんごに変え、おいしいジャムを完成させることができた。
 (2)玉ねぎジャムの商品化
 2年生の家庭クラブ員は玉ねぎジャムの商品化に向け、星城大学経済学部の先生方から講義を受けた。そして、それらの知識を生かして玉ねぎジャムのラベルを考え、「りんごと玉ねぎのときめきジャム」のラベルが完成した。げんきの郷の畑を借りて100kgのジャム用の玉ねぎを育て収穫し、ジャム加工会社へ搬入し加工した。ジャムの瓶にラベルを貼り、完成した商品を手にした時はとても嬉しかった。パンにつけるだけではなく、ジャムを使った春巻きのたれ、焼き肉のたれなどのレシピを作り、ジャム販売時に配布した。
 (3)玉ねぎの皮の再利用
 活動する中で大量に出る皮の再利用も研究した。抽出液を利用し、玉ねぎ茶やゼリーなどを作った。また、絞り染めをしたハンカチや、毛糸を染めてシュシュを作った。「優しくて温かみがある」と好評だったので、染色方法のプリントを地域のイベントで配布した。 また、文化祭で行われるファッションショーの垂れ幕を玉ねぎ染めをした布で製作した。きれいなグラデーションに染め上がり、多くの生徒に玉ねぎ研究をPRすることができた。さらに、玉ねぎドレスを製作した。化学繊維は天然繊維に比べて染まりにくいので、牛乳・豆乳液で下処理し、優しく素朴な色に染めた。丸い玉ねぎを表現した作品と、薄皮の軽さを表現した作品の2つのデザインを製作した。

3 交流普及活動
 (1)キャラクター作り
 玉ねぎのキャラクターを家庭クラブ員1年生、320名から募集し、その中から「おぶたまちゃん」を採用した。「おぶたまちゃん」は、地域の催しの広告に掲載された。また、普及活動で活用できるように「のぼり」を製作した。
 (2)料理講習会
 「おぶたまバーガー」を家庭クラブ料理講座や1年生普通科「家庭基礎」の授業で実習した。
 (3)PR活動
 文化祭ではパネル展示やレシピ配布、ジャムの試食会を行った。PTA役員会では、玉ねぎドレッシングや玉ねぎのお菓子「シリアルバー」を試食していただき、大府の玉ねぎをPRした。また、大府市長、大府商工会議所会頭、大府市内の県立特別支援学校へ持参した。さらに、大府市健康推進課主催の「食と農の親子料理講習会」で、家庭クラブで考えた「おぶたまバーガー」と「玉ねぎジャム」を小学生と一緒に料理し、大変好評であった。
 玉ねぎジャムは、地域のイベント「 あきんどフェスティバル」、「福祉健康フェア」、「産業文化祭り」で試食販売を行った。また、地域の商店、喫茶店、げんきの郷を訪問して、ジャムを販売していただいた(写真9)。喫茶店では、カレーライスに入れていただき、お客様には「ジャムが入るとマイルドになりおいしかったよ。」とジャム入りカレーがたいへん好評だったと教えていただいた。また、大府市商工議所を通じて、宮城県遠野市産業まつりでも販売していただいた。これらの活動は、地域の新聞やケーブルテレビ、商工会議所の機関紙などで紹介された。イベントなどで地域の方から「大府は玉ねぎの産地なのだよね。」「先日、新聞を見たよ。」と声をかけていただき、大府高校家庭クラブの活動や、大府市が玉ねぎの産地であることをPRすることができた。
      
Ⅳ 評価と今後の課題
 玉ねぎが大府市の特産であることを知っている高校生は30%から51%へ増加し、健康効果の認知度も25%から83%へ増加した。脇役だと思っていた「玉ねぎ」が、料理の主役となり、廃棄することが当然だと思っていた「玉ねぎの皮」に色々な利用法があることを知った。特に、「玉ねぎジャム」の開発は、何度も何度も試行錯誤を重ねた。家庭クラブ員が一緒になって考えていく中で、アイデアは無限に広がり、みんなで考える楽しさを実感することができて嬉しかった。また、様々な活動をしていく中で、地域の方から温かく声をかけていただき苦労が報われた。さらに、商工会や市役所の方から多くのイベントに参加するよう依頼され、地域での貢献が認められ、大府市の中での大府高校家庭クラブの存在が定着し、地域との交流活動の基礎作りができたことを何よりも嬉しく思う。 地域の特産である玉ねぎを知ることから始まった活動を通して、私たちは大府市に愛着を感じてきている。玉ねぎは私たちにとって色々なことを考え行動するきっかけとなった宝物であり、大府市にとっても産業を豊かにする宝物である。
 今後は、ジャムの甘みを更に抑え、健康に留意したレシピを開発していきたい。さらに、げんきの郷内にあるパン屋において、玉ねぎジャム入りのパンの試作をしていただいている。ジャムの販売だけでなく、ジャムを使用した商品開発を地域の方々と協力して考えていきたい。そして、研究で培った地域の方々との絆を大切にして、みんなが笑顔で健康に長生きできる「健康都市大府」の一員として、支え合える活動の輪を広げていきたいと考えている。

<この研究に対する問い合わせ先>
〒474-0036
愛知県大府市月見町6-180
愛知県立大府高等学校 家庭クラブ担当
TEL :0562-46-5101   FAX:0562-44-0668 

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