8 教育関連情報
(1)「ゆとり」転換、主要教科の授業時間拡大…中山文科相
中山文部科学相は18日、子どもたちの学力低下問題について、「国語、数学などの主要教科の授業時間をいかに確保するかが課題だ」と述べ、授業時間を拡大したい意向を明らかにした。
そのうえで、体験重視の「総合的な学習の時間」を削減し、主要教科の授業に振り替えることも含めた見直しの必要性に言及した。文科相の地元・宮崎県で、記者団の質問に答えた。
「総合的な学習の時間」は2002年度に導入した新学習指導要領の目玉で、これを削減することは、文科省が推進してきた「ゆとり路線」から「学力重視」への大きな転換となる。
義務教育の改革案
<中山文部科学大臣の考え>
中山文部科学大臣は、「頑張る子どもを応援する教育」を目標として、教育基本法の改正とともに、次の4つの義務教育の改革案を示している。
1.学力向上 2.教員の質の向上 3.現場主義 4.義務教育費国庫負担制度の改革
これらの改革案を、「甦れ、日本!(PDF:164KB)」の名前で経済財政諮問会議に提出している。
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
第219回の社楽で、中山文部大臣には注意する必要があると言った。典型的なエリートで、大蔵省、経済産業副大臣など、企業側の論理に立つ人だ。その時にも「この大臣は総合をなくすかも」と予想したが、やはりそうだった。
中山成彬文部科学相は18日、初の「スクールミーティング」のため訪れた宮崎県小林市で保護者の質問に答える形で先の発言を行った。自分の母校でもあり、つい本音が出たのであろう。ただ、文科省内からは「ついに言ったか・・・」と言う声も聞こえてくる。
文科大臣が替わるたびに教育の軸がころころ変わっては現場はたまらない。現場としては、迷うことなく総合的な学習を実施し、成果を出すこと、これにつきる。
ただ、総合がすぐになくなることはないだろうが、「学力低下」は首相の所信表明演説にも出ており、なんらかのアクションがとられることはまちがいないだろう。
(2)津市の一身田中校長公募笠原さんに決定(三重)
津市教委は十二日、同市立一身田中学校の校長公募で、元ベンチャー育成投資会社部長の笠原哲(さとし)さん(55)(横浜市港北区)を校長候補者として発表した。四月に同中校長に就任の予定。
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
明確なビジョンを持って行うのならともかく、選挙のために目立つことをやりたいなどと間違っても思わないでほしい。
はっきりしてるのは、学校のしくみがわかっていない校長が来ると、これまでの校長の役割を教頭が担うことになる。そして教務主任が教頭の役割をこなし、他の職員にもしわ寄せが行く。高校や大学のような大きな組織は別として、小中学校では、民間出身の校長は、事情がわかったよほどの逸材なら別として、きわめて難しいことをふまえる必要がある。
(3)死んだ人が生き返る、中2で18.5%(長崎県)
長崎県教育委員は、昨年佐世保市小6女児殺傷事件を受けて、小中学校1000人を対象に児童生徒の「生と死」のイメージに関する意識調査について実施、このほど結果を発表した。結果によると、「死んだ人が生き返るか」の問いでは全体で15.4%が、中学2年生で18.5%が「生き生き返る」と答えている。
参照:児童生徒の「生と死」のイメージに関する意識調査について【長崎県】
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
衝撃を覚えて読んでみた。どうやら、生物学的にそう考えるのではなく、オカルト的に考えての意見のような気がする。このようなアンケートは、マスコミが興味本位で取り上げて、数字が一人歩きをするのが怖い。
(4)これからの教育の方向性に関する提言
日本経済団体連合会は1月18日、これからの教育の方向性に関する提言を行った。提言では、教育力低下について危機感を示し、今後の方向性として、教育機関間の競争促進 、受け手のニーズに対応した教育予算、国際化時代にふさわしい教育内容のあり方、組織的な学校運営の確立など示している。
これからの教育の方向性に関する提言【日本経団連】
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
この提言を読むと、経済界は国民全体のレベルアップというより、一部エリートを育てたいという感がしないでもない。勝ち組と負け組を作って、果たして日本がよくなるか?
しかし、気になる数点を除けば、賛同できることも多い。ぜひ読んでいただきたい。
(1)小泉内閣メールマガジン 第171号 ========================== 2005/01/13
● 主婦が思いがけず会社を設立
(アトリエ沙羅有限会社代表取締役 粕谷尚子)
会社を作ろうなんて夢にも思っていませんでした。働いた経験も少ない主婦の私にできる筈がないと思っていました。
洋裁は子供の頃から大好きでしたが、結婚してからは子育てが中心で本格的に仕事として取り組むようになったのは、50歳になってからでした。
ジュン・アシダのアシダ・ブライドで7年間ウェディングドレスの制作に携わりましたが、退職してから既に6年がたっていました。
起業を思い立ったのは、一昨年、姪の結婚式のためにウェディングドレスを縫ったことからでした。
通りすがりの方が「こんな素敵なドレスを見たのは生まれて初めて!」といわれて感激の涙を流されたのです。それを見て私自身が感動し、私にも人が感動するような仕事ができるんだとそのとき初めて気が付いたのです。
仕事を通して喜びや感動を分かち合える。そのような事が私にもできるのなら是非、会社としてスタートしたいとの思いが強くなってきました。
その頃始めたインターネットで資本金が1円でも起業できるということを知り、真剣に起業を考えるようになりました。メールマガジンやセミナーでビジネスの勉強をしている間にケンタッキーフライドチキンをつくったカーネルサンダースも64歳で初めてもらった年金を資金にして起業したことを知り、大きな勇気をもらいました。
ネットで手続きも全てしてもらえることを知り思い切ってスタートしました。はじめの一歩を踏み出すときは、勇気が要りましたがその後は、信じられないくらい順調に手続きが済み心配したことを後悔するほどでした。
資本金は10万円でスタートしましたが、半年後に100万円に増資をし、現在1年半が経ちましたが、資本金を300万円にすることができました。
昨年はパリコレクションにも参加することができ、パリの一流デザイナーにも評価していただき、小泉総理の所信表明演説で紹介していただくという、信じられないような状況になりました。
起業のハードルを低くして誰にでも起業できるチャンスを与えていただきましたことを感謝しております。ありがとうございました。
※ 経済財政諮問会議ホームページ(構造改革の進捗状況・起業)
※ 執筆者の紹介
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
「会社をつくることは、特別なことではない。誰にでもそのチャンスはある。」ということを子どもたちが知っているのはよいことだと思う。社会との距離が、また一歩近くなる。こうした実例は教材にもなりうる。
(3) Vol.151 教育情報 Magazine/ある小学校教師の独り言
[1]日本教育新聞社主催 “教育セミナー中国2005”参加記録
1月22日(土),見出しのセミナーに参加しました。一昨年の東広島についで2回目の参加です。印象に残ったことを羅列します。参考になれば幸いです。
■ まずは,文科省の大臣官房審議官のお話です。
・ PISAやTIMSSの結果の報告がありました。結果をかなり重く受け止めているようです。学習習慣をつける施策を検討していきたいとのこと。
新指導要領改訂についてはすでに検討に入っている,今回は検証を元に(先日,大臣が全国各地でヒヤリングを行うことが報道され,そのさきがけとして宮崎?で行われました。そこで総合的な学習を見直すといった爆弾発言をしました),慎重に見直すとか。
しかし,現在の枠組みを維持し,知育偏重に戻ることはないとのこと。
・ 学校と家庭,地域の連携をいっそう訴えていく。学校評議員制度に続き,学校運営協議会制度(コミュニティスクール)の拡大。
・ 小中高の児童生徒一人あたりにかかる年間教育費(税金)は小90万,中100万,高120万円。あなたの学級が30人であれば,あなたの学級だけで年間3,000万円近い税金が使われている。この事実をどう受け止めるか?
■ 加藤明氏(京都ノートルダム女子大教授)
・ 確かな学力とは,指導要録の4観点と総合的な学習のねらいを合わせたもの。言い換えれば「新しい学力観」でめざしてきたものと「総合的な学習」でめざすもの。
これを並列的に見るのではなく,どう構造化してとらえ,有機的に関連づけて位置づけるか。
・ 評価にこだわることの大切さ
授業は結果がすべて。いくらプロセスがよくても結果がよくなければその授業は成立せず。指導法にこだわることはよいが,目新しさのみを求めて,目標達成が後回し。結果に責任を持つ教育を行うために評価を活用する。指導の成果はあがっているか(出口にこだわる),その成果で十分なのか(入り口を見直す),成果を学習者に返したか(評価結果を子どもに返したか)の3点にこだわる。
・ 子どもたちは教師が期待するほどわかっていない。だからこそ指導の成果を確かめながら日々学習を展開する。
・ 成果を知識・理解・表現・処理の観点から判断するだけでは不十分。わかる,できる,覚えるといった成果を実現しながら,一人ひとりのものの見方・考え方・感じ方をどう伸ばし,豊かにするか,さらにそれらの成果の統合したものとしてどのように関心・意欲・態度を高めていくかまでの成果を実現させる。
・ 目標と指導と評価の一体化
指導と評価の一体化だけでは不十分である。これは過去に掲載した私の勤務校で取り組んでいる「目標分析」の概念と同じです。
・ 評価を返す
個人内評価の導入を。一人ひとりに「間違いが少なくなったよ」「以前と比べてここが伸びているよ」「ここがこれからのがんばりどころだよ」と,一人ひとりの向上や足あとをたどり,その成果を取りあげて個に返す。
■ 山極隆氏(玉川大教授)
他の講師陣がある学校の総合的な学習の実践を絶賛したところ,「この学校の生徒たちの学力習得状況はどうなっているのか聞きたい。未習得の生徒がいるのにそんなことをやっている暇はないはず」などと,いつもの毒舌。
・ 教育は時勢の流れによって規定される。経済の破綻や国際競争力の低下が現在の「確かな学力重点主義」を呼んでいる。
・ ゆとりとは,反復練習することができるゆとり,再チャレンジすることができるゆとり,深く考えることができるゆとりであること。
・ 小学校の場合,総合的な学習は教師主導で教科発展型(教科発総合的な学習行き)
・ 成果は事実に基づく証拠で語るべき。例えばNRTやCRTの数値結果で。
・ 基礎基本が身についていないのに総合的な学習をやる余裕はないはず。発展的な学
習も総合的な学習の時間を積極的に活用。特に文章読解力や文章表現力,算数と関連
した応用力,理科と関連した探究能力の育成。
・ 教員の資質や能力に応じた習熟度別学習を。能力の高い教師は発展的学習の内容を全員に習得させるべく習熟度別学習に取り組むべし。そうでない教師は最低基準の完全習得をめざす。
(2)門脇厚司氏の講演を紹介します
「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
平成17年1月7日 演題:「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
講師:門脇厚司先生(筑波学院大学学長)
○ 子どもたちの成長の仕方‥‥きわめて好ましくない
‥‥なぜこのような育ち方しかできないのか
○ 「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
・「社会力」‥‥人が人とつながり,もっといい社会をつくろうとする意欲・態度
「よりましな社会をつくろう」
もっとよくするにはどうすればよいか‥‥考える力(構想力)
できるじゃないか‥‥実行力
・脳科学‥‥どれだけ優れた力を発揮できるか(脳科学の面から分析)
社会力を高める→脳の機能を高める→学力はつくはず
・知的能力を高めることからの転換
英語が話せる,数学ができる→社会的な能力を高める→人間の価値を高める
このことが「社会力」を高める‥‥教育の目的に
・社会力の大もと‥‥自分以外への関心や愛着を持つこと,社会と関わること,そして実行すること。
‥‥他者を取り込むこと,その人のことをすっぽり自分の中に取り込むこと。
○ 「非社会化」の進行
・「社会化」‥‥次の社会を担う資質をつけること
さまざまな人といい関係を持ち,毎日をスムーズに生活し,しかも楽しい。
→高度な能力を身につけている証拠
現状:スムーズでない,楽しくない,人間関係がつくれない
他者に関心を持たない,人と関わりたくない
・こんな子に‥‥私も社会の一員である,私も役立っているという自覚を持てる子
○ こんな総合的な学習を
・生きる力の中核は「社会力」‥‥他者に共感し,他者と関わる
・舞鶴市中筋小の例‥‥市総合計画に盛り込まれている町の課題に取り組む
住みやすい町にするために,市民の協力を得ながら
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
まずもって、島原先生の積極的な行動に敬意を表したい。身銭を切って、全国各地に出かけるそのバイタイリティーを、ぜひ若い先生方は見習ってほしいものだ。
そして、その目の確かさにも注目してほしい。
(3)ワールド・ニューズ・メール The World News Mail@2005.1.21 No.543
[2]特集…インド洋大津波で「国境なき医師団」の苦言
●マスコミの過剰報道を批判
民間医療人道支援組織「国境なき医師団」(MSF)は今月六日、スマトラ島沖地震・津波の被災国への寄付金集めを中止する決定を下した。連日、世界中のメディアで被災国の惨状が報道され、先進国が競って支援金額を増額させている矢先の決定だっただけに、大きな衝撃を与えた。「国境なき医師団」は被災国の現状とマスコミ報道のズレを指摘、良心ある民間人の人道支援活動がミスリード
されていると批判している。(パリ・安倍雅信)
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●寄付の募金を中止
年明け早々の6日、スマトラ島沖地震・津波の被災国への寄付金集めを中止すると発表したMSFは、その理由として、「これ以上の寄付を被災国は必要としていない」「過剰な寄付受け取りは、寄付者への誠実さを欠く」と説明した。ノーベル平和賞を受賞し、長年の支援経験を持つMSFの決定は、大きな衝撃を与えた。
1971年にフランスの数人の医師によって設立されたMSFは、発足の翌年には、ニカラグア地震の救援活動で早くも実績を上げ、その後、ホンジュラス、レバノン、リビアなど、紛争地域や自然災害被災地で活動を展開し、今日に至るまで、派遣医師の犠牲者を出しながらも、多くの実績を残し、その功績からノーベル平和賞を受賞した。
MSFの活動は医療支援にとどまらず、下水道施設の設置など、広範なインフラ整備活動も行っている。日本を含め、世界中に支部を持つMSFは、その豊富な経験から、被災国への派遣のスピードの速さは世界一と言われ、今回のスマトラ島沖地震でも、48時間後には被災国での救援活動を展開していた。
今月15日に仏国営テレビ・フランス3に出演したロニー・ブロウマン元会長は、スマトラ島沖地震・津波報道について「実際の現状から懸け離れた報道で誤解を招いている」と公共放送の在り方を批判し、波紋を投げ掛けた。30年以上、人道活動の最前線に携わってきたMSF側の批判は、重く受け止められている。
ブロウマン元会長は、インタビューの中で「実際に現地で救援活動を開始して分かったことは、医療支援を必要とする重病患者や重症者は、予想よりもはるかに少なく、上下水道の整備などのインフラ整備でも、指摘されているような莫大(ばくだい)な費用は必要としていない」と語り、国連などが試算する百億ドル規模の復興資金の必要性について、「理解できない」と語った。
●バカンスの欧州人犠牲で強い関心
フランスでは、同被害支援に対して、MSFや国連児童基金(ユニセフ)、仏赤十字などの人道支援団体に対して、すでに1億2400万5000ドル以上の寄付金が集められていることが公表されており、「必要以上の寄付金を集めることは、寄付者の信頼を裏切ることになる」とブロウマン氏は寄付受け取りを中止した理由を説明した。
同時に、「これほど多額な寄付金が集まった背景には、公共放送メディアが、極端な過大報道を行ったことが挙げられる」と指摘、「大げさな報道が、事実を誤認させている」と語った。また、スマトラ島沖地震の過剰報道で「もっと支援の必要な、アフリカのエイズ問題などの影が薄くなった」と批判した。
実際、今回のスマトラ島沖地震の世界的な救援の輪の広がりは、過去のいかなる自然災害の被災例を上回る規模に達している。
死者数が16万人を超える数字は確かに大きいが、過去には1971年に起きたバングラデシュのサイクロンによる死者は30万人を記録しているし、同国では、その後もたびたび、多数の死傷者を出す洪水などに見舞われ、昨年雨期のインド、バングラデシュの洪水でも1800人を超える死者を出している。
今回のスマトラ島沖地震の場合は、被災国が数カ国に及んだことや、時期がクリスマス期で、西洋諸国では1年で最も人道活動が盛んに行われる時期だったことも支援額の増大につながったとされる。また、被災国が特に豊かな欧州やオセアニアの国々の人々のバカンス先として知られ、直接的な死傷者を出したことも強力なインパクトを与えた。
そのためもあってか、各国は支援額を次々と増額させ、あたかも国際貢献の競争状態に入り、過去最大の支援金が集められたほか、日米欧など19の債権国でつくるパリクラブ(主要債権国会議)も、被災国の公的債務の支払いを当面猶予することで合意した。
さらにNGO(非政府組織)の人道支援も活発化し、莫大な寄付金と救援物資が送られているほか、ボランティア活動家などが被災国で活動を展開している。(以下略)
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
寄付が必ずしも歓迎されないとは、思いもよらなかった。しかも、その声明を出したのは、ノーベル賞をも受賞した「国境なき医師団」(MSF)だから説得力がある。
ただ、せっかくの寄付である。国際機関で基金をつくり、もし余剰が出るようなら、今後類似した災害の時に使用していただきたい。国際社会がまとまろうとしていることは大切にしたい。
※ 書籍紹介
『生きるための知識と技能−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)−2003年調査国際結果報告書』 国立教育政策研究所編 ぎょうせい \3,800(本体)