6 教育関連情報
(1)小学校に刃物男、教員ら3人殺傷 17歳の卒業生を逮捕
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
これに関する報道にはいろいろ問題がある。しかし、藤川大祐千葉大学教育学部助教授が的確なコメントを自らのサイトに公開しているのでぜひお読みいただきたい。
寝屋川での小学校教職員殺傷事件について緊急コメント
1)大阪教育大附属池田小の事件以来、学校は外部からの侵入者への警戒を強めてきた。今回の事件も侵入者の犯行であるため、学校の安全対策が話題になることはあるであろう。もちろん、模倣犯への警戒等、学校関係者は安全対策を再点検することになろう。だが、完璧な安全などありえない。全国に何万件もある学校で、外部からの侵入者が殺人を企てた数は、ごくわずかである。こうした事件で子どもや教師が被害に遭う確率は、交通事故に遭ったり誘拐されたりする確率よりも、おそらくずっと低いであろう。学校の安全対策について、冷静な議論がなされることを期待する。
2)加害者の家庭環境についてはまだ何もわからないが、小学校低学年からのゲーム漬けは望ましくないはずだ。幼いうちは、身体を使って遊んだり、さまざまな人とコミュニケーションしたり、たっぷり睡眠をとったりすることが重要なのであり、長時間ゲーム漬けになることは、他の時間を奪うことになる。もちろん、ゲーム漬けが殺人に直接結びつくわけではないだろうが、時間管理のできない幼い子どもにゲームを与えることはまずいということを、私たち大人は再確認すべきであろう。
3)加害者が小学生時代からゲームに関わる仕事をしたいという夢をもっていたこと自体は、悪いことではない。しかし、ゲームに関わる仕事にはゲームにのめりこむだけではできないということを、おそらく学んでいなかったのであろう。私たちの「テレビゲーム・リテラシー」の授業に協力くださったエンターブレイン(『週刊ファミ通』の発行会社)社長の浜村弘一さんは「現実の世界のもの、サッカーや野球をまずやってみてください」と言っている。また、ゲームクリエイターの飯塚隆さんも、「ゲームをたくさんした人が、デザイナーになれるわけではない。むしろ現実の社会でいろんな見聞を広め、楽しいこと新しいことをたくさん吸収し、それをゲームの世界でうまく取り入れることのほうが大切だ」と言っている(以上のインタビューは『週刊朝日』2005年2月18日号「テレビゲームにはまらない子の育て方」より)。こうしたゲーム関係者の言葉を、ゲームにはまる子どもたちにもっともっと伝えたい。
4)今回の事件と直接関連づけたくはないが、テレビゲームは、産業としては日本の貴重な輸出産業であり、ゲームクリエイターは子どもたちに人気の職業であるので、社会科やキャリア教育の枠組みで、もっとテレビゲームのことを扱うべきである。私は以前からこのように考えて、企業教育研究会で継続的にこの問題に取り組んできた。こうした取り組みを、今後も積極的に進めていきたい。
5)衝撃的な犯罪が起こると、私たちは何かに原因を帰属させて落ち着こうとする。だが、同様の事件が続発しているのでもない限り、原因は加害者本人に求められるべきである。安易に学校の安全対策やテレビゲームの問題に原因を帰属させてはならない。
(2)この判断は過剰反応か、やむを得ないのか?群馬で朝練・夜練全面禁止
寝屋川市の教職員殺傷事件を受け、群馬県内の全公立中学校が、生徒の安全確保のため、早朝や夜間の部活動を全面禁止することになった。
県教委が、市町村教育長代表による会議で、スポーツ・文化系を問わず禁止を打ち出し、一斉実施を要請した。県教委は、校内に部活動担当以外の教職員がいない早朝と日没後の活動は危険として、全面禁止を要請。出席者からは「生徒が一生懸命取り組んでいる練習を禁止するのは疑問」などの反対意見もあったが、県教委は「教育的配慮と安全対策のバランスは難しいが、安全確保に効果がありそうなことはやらなくてはならない」と理解を求め、了承を得た。
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
苦渋の決断だったであろう。この判断に対してとやかく言うつもりはないが、それにしてもかわいそうなのは部活熱心な生徒である。
学校の安全に、絶対はない。特に、今回のような犯人に対しては、防ぎようがないのが実情だ。刑務所のような塀と警備員を配置した入り口を設置するならまだしも、普通の学校ではまず無理だ。
ここで問われるのが、バランス感覚に支えられた優先順位の判断だ。このバランス感覚が狂うと、多くの人が「あれ?」という感じを受ける。(「南セントレア市」がよい例だろう。)
ここでは、生徒の安全確保と、朝練・夜練全面禁止のどちらに優先順位をおくかである。さて、どちらを優先すべきか?
(3)教員養成学部募集が20年ぶり増員か?
文部科学省は16日、不足している教師需要を賄うため、教員養成系学部の新設・定員増を20年間認めずにきた規制を撤廃する方針を固めた。教員養成分野の定員はベビーブームに伴う児童・生徒の急増を背景に80年ごろまで増え続けたが、86年以降は抑制されてきた。今後、「団塊の世代」の退職者数が多数見込まれ、少子化の進み方を考慮しても教師不足が深刻化するため、方針を転換した。早ければ04年度末に文科省告示を改正し、来年4月から定員増が可能となる見通し。
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
教員養成系の大学の定員増は当然予想できる。ここで問いたいのは、カリキュラムである。
自分も教員養成大学を出たが、残念ながら、指導技術に関する授業、今の教育の流れについて考える授業、グループ学習につけるワークショップを行う授業にはほとんど出会わなかった。
もちろん、それ以外に学んだことはたくさんあり、すべてがむだと言うつもりは全くないが、ある程度のレベルの授業ができるまでに、3年は遅れたのではないか思う。
ぜひとも、教師としての実践的な力が身に付くカリキュラムを開発していただきたい。
(4)部活動引率中の交通死亡事故、逮捕
17日朝、北海道浦幌町上厚内の国道トンネルで、ワゴン車がスリップして対向車線にはみ出し、対向の大型トレーラーと衝突。ワゴン車に乗っていた釧路市の釧路北陽高校3年、境勇也さん(18)が頭などを強く打ち死亡した。境さんは2004年2月に米国で開かれたスピードスケート世界ジュニア選手権の代表選手で、総合11位。同年1月の全日本ジュニア選手権では総合2位だった。
ほかに同乗の高校2年の男子生徒(17)が軽傷。池田署は、業務上過失致傷の現行犯でワゴン車を運転していた同高校のスケート部顧問の体育教諭、榊稔容疑者(47)を逮捕した。境さんらは榊容疑者の引率で、帯広市のスケート大会に向かう途中だった。現場は片側一車線の直線道路で、事故当時、路面は凍結状態。同校の話では、榊容疑者も元スケート選手で、学校は教諭が生徒を乗せて車を運転することを認めていなかったという。
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
一部、職業として部活動をやっている人もいるが、ほとんどの部活動顧問はボランティアだ。善意でやっていて、「逮捕」というのではあまりにも悲しい。
確かに事故は不幸だ。一人の人命が失われたことは重く受け止めなくてはならない。
しかし、自動車のスリップは運転手だけの責任か?交通機関の未整備の北海道で、車を使うなという指示が通用するか?
こういった事故をきっかけに、部活動の顧問の引き受け手がなくなることを危惧する。これこそ、日本教育界の損失だ。
(5)注目の中央教育審議会における中山文部大臣のあいさつ
中央教育審議会は2月15日、第3期委員による初の総会を開催した。あいさつにたった中山成彬文部科学相は、現行の学習指導要領を全面的に見直すよう求め、教科の授業時間数の検討を要請した。
中央教育審議会総会第47回における文部科学大臣あいさつ
☆★☆ 土井のコメント ☆★☆
報道では、「現行の学習指導要領を全面的に見直すよう求め、教科の授業時間数の検討を要請した。」事ばかりが大きく取り上げられているが、実際には、もっと幅広い内容が語られている。マスコミ報道に踊らされず、原文に当たることが大切であることを痛感した。
内容については、これまでコメントしてきたので省略する。