7 教育関連情報
(1)教育委の定数や担当事務、弾力化可能に…文科省方針
文部科学省は、都道府県や市町村の教育委員会のあり方を抜本的に見直し、各自治体が地域の実情に応じて教委の委員数や担当事務を弾力的に決められるようにする方針を固めた。教育委員会が形骸(けいがい)化しているとの批判に対応したものだ。来年の通常国会に地方教育行政法など関連法の改正案を提出する方向で検討する。(中略)スポーツ・文化施設の管理事務などを首長の所管に移し、教育委員会の事務は、地域教育の基本方針の策定など学校教育分野に限定するなど、メリハリをつけることを可能にする。
(後略)(2006年6月26日 読売新聞より)
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生涯学習担当課を教育委員会から首長部局へ移す動きが一部で見られるが、この報道通りになるのなら
教育委員会の所管事務を学校教育へ限定する動きが一気に進むものと思われる。
(2) 学校教育法等の一部を改正する法律の公布について 〔特別支援教育課〕
6月15日に開催された衆議院本会議において、政府提案の「学校教育法等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、21日に公布されました。
この法律は、昨年12月8日にとりまとめられた中央教育審議会答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」の提言を踏まえ、現在の盲・聾(ろう)・養護学校の区分をなくして「特別支援学校」とし、「特別支援学校」の教員の免許状に改めるものです。また、小中学校等において特別支援教育を推進するための規定を、法律上に位置づけるものとなっています。
なお、新たな制度は平成19年4月1日より施行されることとなっています。
文部科学省としては、今後、特別支援教育を推進するための新たな制度を円滑に進めるため、都道府県の教育委員会といった学校関係者のみならず、保護者を含めた一般の方々に対して、特別支援教育の趣旨・目的について十分にご理解いただけるよう各種の施策の充実に努めてまいります。
答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」
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特殊教育を特別支援教育に改めることで、学校にとっても大きな変化につながる法改正である。
第七十五条第一項中「特殊学級を」を「特別支援学級を」に改め、同項第六号中「心身に故障」を「障害」に…。名称の変更は内容の変更を含む。内容の変更についてはじっくり読み取る必要がある。
(3)小中学生対象に「東京ミニマム(最低限の学力基準)」を明示
東京都教育委員会は子どもの学力低下に歯止めを掛けるため、小・中学校で最低限身に付けていなければならない学習内容を「東京ミニマム」(仮称)として2008年度にも具体的に示す方針を決めた。「小学校卒業までに九九ができる」といったごく基礎的な内容を想定しており、学校や家庭で学力定着が不十分な児童・生徒を指導する際、「せめてこれだけは」という目標にしてもらう。
東京ミニマムの作成に向け都教委は、来年1月に行う学力調査で、小5なら小学校低学年、中2なら小学校卒業レベルの問題を少数出題することを検討。「本来解けなければならない問題」の解答状況を分析し、子どもがどこでつまずいているかを見極める。(後略)
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明示すること自体は、その努力に敬意を表したい。ただ、大切なのはその基準に達しない子へのフォローであり、LD児への配慮など留意しなければならないこともある。必要とわかっていながらこれまで避けてきたことへの、大いなる挑戦となろう。
(3)教職員給与1700億円削減=自民が決定
自民党は20日、党本部で歳出改革プロジェクトチームの公務員総人件費関係の会合を開き、地方公務員定員を2011年度までに6.2%削減する方針を正式決定した。
同チームによると、6.2%削減による歳出削減額は約1兆5600億円で、国・地方合わせた公務員総人件費の削減総額は2兆5000億円程度となる。また、一般の地方公務員よりも優遇される公立小中学校の教職員給与を見直し、1700億円削減する案も了承した。
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「一般の地方公務員よりも優遇」という表現が気になる。例えば「一般の地方公務員よりも医師の給料を優遇」というか?資格が異なれば給与表が違って当たり前である。ましてや教員の労働時間は、持ち帰り仕事を含めると膨大になる。時間外手当が払えるか?削減どころか、増加するだろう。
(4)トイレ掃除で生徒が変わる−愛知県の「便教会」世話人、高野修滋教諭
「方法論や技術や手法ではない、ただ身を低くして実践あるのみ」――この教育方針を掲げて、生徒とともに「トイレ掃除」を実践している教諭たちがいる。素手素足で行うトイレ掃除に生徒たちは当初たじろぐ。だが見る見るうちに変化し、定着すれば欠席、遅刻、早退が激減、授業への集中力も増す。その名も「便教会」。同会世話人の高野修滋・愛知県立碧南高校教諭は「この取り組みを少しでも多くの学校で用いてもらいたい」と考えている。
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前任校でも行っていたこの「便教会」。教育的効果はたいへんに高い。
8 MM紹介
(1)よみうり教育メール 発行日:2006.06.23(vol.1441)
毎日ではないが、「相談コーナー」がある。これは、「自分が相談されたら何と答えるか」という視点で読むとたいへん勉強になる。自分の仮想回答を考えてから、専門家の回答を読むと、いつも新しい発見がある。今回は尾木先生。ぜひ自分と尾木先生の回答を比較してお読みいただきたい。
=相談コーナー= 物事を悪い方に考え、感情的になる小3の娘
【相談内容】全文
小3の娘。先のことを考えすぎて日常生活でしばしば立ち止まってしまいます。新学期にはクラス替えで担任も替わったため、緊張感から、朝気分が悪くなって学校へ行けなかったり、保健室に通ったりしました。算数の宿題は、間違えるのではないかと思うあまり全く手がつけられない。遠足で電車に乗ると考えただけで朝具合が悪くなったり、友達と遊びたいのに「どうせ暇じゃないに決まっている」と聞く前からあきらめたり。物事を悪い方へ想像してしまう上、少しのことですぐに感情的になります。ちょっと注意を受けただけでも、なにもかもだめだと感じるらしく、これでは本人もしんどいばかりだと思うのです。親としてもおおらかに受け止めてやりたいと思いながら、「ああまただ……」と疲れてしまうこともしばしばです。このような性質の子にはどのように接していけば情緒が安定するでしょうか?私自身が娘の心配をあまり理解できていないからよくないのでしょうか? ―――大阪府、女性
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以上で質問は終了。さあ、あなたなら何と答えるか?
いかにもありそうな例なので、まず、自分で考えてから、つぎの回答をお読みいただきたい。
自分なら、「@ 簡単なことの成功体験を積み重ねて褒めてやる。さらにそのことを形に残し、目に見えるように累積していく。そうやって自信をもたせる。A より多くの経験をするために、親も一緒に楽しみながら、体を使った活動をさせる。ものづくり、野菜栽培、手芸、調理、その他の体験を含めて、行動する楽しさを体感させていく。」などと思ったが、これは、やや間接的なものをねらっている気がする。
さあ、考えた人は次をお読みください。
【回答】教育評論家、法政大学教授 尾木 直樹
これはご心配ですね。
娘さんは、よほど慎重で完璧主義なのですね。すべてが予定通りに出来て当たり前と思い込んでいるようです。ですから算数の宿題も、間違えたらどうしようと立ちすくんでしまうのだと思います。友達に「遊びましょう」と声をかける前に、「今日は忙しくてダメ」と断られた以前の記憶が想い出されて、ここでもまた「どうせー」と、足が出なくなるのでしょう。お母さんのおっしゃる通り、ものごとを「悪い方へ、悪い方へ」ととってしまうから、苦しいのでしょうね。本人は、がまんにがまんを重ねているのでしょう。だからこそ、ちょっとした注意を受けただけでも、イラ立ち、感情のコントロールが効かなくなって、いわゆる「キレ」てしまうのです。そういう自分がきっと嫌で、嫌でたまらないのだと思います。絶望感にも襲われているのではないでしょうか。
考えただけでも、本当に苦しくなるような悪循環ですね。
お母さんのタメ息が伝わってくるようです。
これは、お母さんが娘さんの気持ちを理解していないためではないようです。具体的にどうすればいいのか、考え方や対応の仕方を半歩リードしてやることが必要だと思います。
そのためには、「こう考えたら」「こうすべきよ」などと高見に立った指示やお説教をするよりも、お母さんも共に行動してみてみることです。うまく事が運ばずに失敗した時に、それは決してゼロやマイナス評価にはならないこと。むしろ予定が実現できた時よりも、すばらしい発見、広がりや奥行きの深さを味わえるという体験を体感させてあげることではないでしょうか。人間の生活には、「○」か「×」の結論ではなく、その行為やプロセスそのものに意味があり、楽しいのだというものの見方、人生観を親自身が日常の生活の中で娘さんと共有することではないでしょうか。
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さすがにきれいにまとまっている。やや具体性に乏しい気がするが、親を安心させるにはこれでよいのかもしれない。皆さんの感想はいかがであろうか。こうした練習には、このメルマガはありがたい。
(2) 日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第1654号☆
■「教師の視力検査」(6) 木原 ひろしげ(福岡県) 三原色
「ちょっと違うんじゃないか?竹の緑と楠の緑は違うだろ。椿の緑はもっと違う。同じ楠の木でも、元々の葉っぱと新しい葉っぱでは全然違うだろ。ミドリも最低四つのミドリ位は使い分けなくちゃ。」 初めて(久しぶり)の図工の授業、5年生。(中略)
「四つのミドリ」に子どもたちはポカンと口を開けた。12色の絵の具箱には‘緑’と‘黄緑’の二つのミドリしかない。四つは無理だ、ということらしい。成り行きだから仕方がない。留守番先生は、赤・青・黄と白の四つのチューブだけを残して、後は箱ごと机の中に仕舞わせた。「この四つのチューブで、四つのミドリを作ってみよう」。私が若い頃ブームになった“三原色の絵の具箱”の手法だ。黄と青をミックスすれば簡単に緑ができる。二つの割合によっていくらでも無段階で緑が創出される。肝心なのはこれに赤を加えること。これによってありとあらゆる緑ができる。即興でやってみせる。ポカンとした口が益々大きくなる子、手品を見るように目を大きくする子、どういう訳かため息をつく子。いずれにせよ、“色塗り=塗り絵=チューブ色のベタ塗り”からの脱出だ。
この授業の最後に子どもたちに話したこと、―――(中略)
「うちの大根畑は2週間おきに植えているから1メートルおきの段々畑みたい。これが一段ずつ全部違うミドリなんだ。この違いが楽しい。窓の外の里山のミドリもひとつずつ全部ちがう。絵の具のミドリが足りない。しかしね、赤・青・黄と白さえあれば木々のミドリは全部描ける。今日の練習で分かっただろ。」
そして、思ってはいたけど、チャイムが鳴ったので言わなかったこと、―――
「色の作り方の技術以前に、ミドリの美しさが良く目に映ることが大切なんだけどね。」
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いつも紹介するメルマガより、キミ子式(三原色法)を見つけた。小学校で教えていたときには、ポスター以外はいつも三原色法を使っていた。対象をよく見て、それに応じて色を自分で作るようになるからだ。色を見ると形を見る。凹凸を感じ光と影を感じる。対象の遠近や重なりを見る。これだけで、絵が数段良くなる。
(3)MM小学1743 森竹高裕 □ 火事を防ぐ 〜ニセ消防士の登場〜
消防士さんがより早く火を消すために、普段からどんな活動をするのかを考えた。まず初めに
発問1 もし学校の回りで火事が起こったとき、消防車は何分くらいで来るでしょうか?
5〜10分と予想する子どもたちが多かった。学区にある消防署に問い合わせたところ2分弱ということだった。正解を告げてから
発問2 こんなに早く消防車が来るために、119番の電話はまず最初にどこにかかるのだろう?
・一番近い消防署だから、K田出張所だと思う。
・警察の110番は通信司令室だったから、消防も同じような司令室だと思う。
警察の学習をしたばかりだったので、司令室の存在に気づくことができた。そこで、教科書の図を見て119番をかけてから消防車がくるまでの流れを確かめた。消防では、電気会社、水道会社など、一度にいろいろなところに連絡が行くことにも気づいた。
指示1 実は今日、K田出張所から消防士さんをお呼びしています。今呼んできますから、ちょっと待っていて下さいね。
こう言い残して、大急ぎで隣の部屋に入り込んで着替えをした。私のいでたちは、ゴム長靴、雨ガッパ上下、自転車用ヘルメット、水まき用ホース、軍手である。
「やぁ長田西小の皆さんこんにちは」元気よく教室へ入っていくと、「あっ、森竹先生が変装している」「なんだ本物じゃない」という声、声、声… 。そんな声は無視しつつ、「森竹先生によく似ていると言われますが、私は消防署からきました。わからないことは何でも聞いて下さい」
みんな疑わしい人でこちらを見ている。
「今日来てくれた消防士さんは、本物ではないと思う人?」「はーい」
と元気よく全員の手があがった。「どうして本物でないと思うのですか?」と聞くと、あそこがおかしい、ここがおかしいと口々に言い始めた。そこで
発問1 ニセ消防士の怪しいところを探してみよう。
偽物、まがい物の類が子どもたちは大好きである。本物の消防士と比べて、どんなところがおかしいのか間違い探しをさせた。消防士の写真と見比べて、どこがおかしいのか間違い探しをした。
・服装が違う。カッパだとすぐに燃えちゃう。
・ヘルメットがおかしい。本物は頭巾みたいになっている。首が出ちゃっている。
・ホースがおかしい。長さが短いから届かないし、太さも細い。
・ベルトをしていないから、火が服の中に入ってきてしまう。
・メガネをしているから火の中では熱くて溶けてしまうんじゃないか?
・手袋、ゴーグル をしていない。
以前使ったニセ消火器を再び持ち出して「そうかな、この消火器を持っていけばよく消えると思うけどな」とトボけてみたが「違うよ」とすぐに却下されてしまった。(後略)
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これもいつも紹介する森竹先生。土井の好きな授業だ。このニセ者消防士はいかにも社楽的で楽しい。
子どもたちが乗らない訳がない。
9 書籍紹介
『心を育む道徳教材24』モラロジー研究所 本体\1,000
『愛知県史 資料編16 近世2 尾西・尾北』付録 尾張国図絵複製2枚 \5,000
『国のしくみ大達人 憲法から地方自治まで』集英社 \850+税
こち亀の両さん、中川、麗子が憲法、三権や地方自治、国際社会について解説している。
10 教育ルネサンスフォーラム
2006年5月20日(土)にサッポロファクトリーホール(札幌市)で行われた、札幌フォーラム「教師力セミナーin北海道 教師力をみがく」の模様を動画で見ることができます。
* 授業を見よう 授業実践
1. 市川 恵幸(北海道教育大付属札幌中研究主任)33分14秒
2. 森 寛、石川 晋(研究集団ことのは)35分24秒
3. 小林 篤史ら8人(TOSS)30分18秒
4. 菅原 英司(北海道教育大付属札幌小)32分14秒
* 講演「優れた授業とは」 陰山英男(立命館大教授)31分21秒