(1)メールマガジン「授業成立プロジェクト(JSP)」 第112号 2007年12月26発行
以前にも紹介したが、その続きです。
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2 連載「若手教師に贈る 授業成立のための保護者対応術」
第6条 苦情の電話を受けたら、最後に必ず報告の電話をせよ!
山口・岩国市立通津小学校 中村 健一
そこのお若いの。今日も私の話を聞いてくだされ。
わしは苦情の電話は、保護者の信頼を高めるチャンスだと思っとるのじゃ。
今日は、そのための最も大切な最終ステップをお教えしよう。
まず、保護者の方の話を共感しながらしっかりと聞きました。なので、保護者も落ち着かれました。
次に、対応方法を説明、相談、確認しました。これで、子どもにどう対応するかも決まりました。
で、実際に子どもに対応します。保護者と相談して決めた対応です。いわば「お墨付き」。自信を持って対応しましょう。
これで終わりじゃないですよ。ここからが保護者の信頼を得る最大のポイントです。
第6条は、「苦情の電話を受けたら、最後に必ず報告の電話をせよ!」です。
また「鉛筆折られる事件」を例にしますね。
電話で確認した通りの対応をしました。
で、その夕方にもう1度保護者に電話をします。
電話で話す内容は、次の4点です。
(1)まず、先日の電話のお礼。
(2)実際に対応した内容、その時の子どもたちの様子など。
(3)子どもなので、また同じことをくり返す可能性があることを断
る。また、その時には電話して欲しいとお願いする。
(4)お礼。
この事件の場合は、次のような電話になりました。
長いですが、実際の雰囲気が少しでも伝わればと思い、書きます。ぜひ、読んでください。
『○○小学校の中村です。今、お時間はよろしいでしょうか?
先日はお電話をありがとうございました。
今日、朝の会を止めて、子どもたちに話をしました。まず、ある男の子の鉛筆が折られるという事件があったことを説明しました。やられたらどう思うか問い、どれだけ人を傷つける行為なのか強く訴えました。また、これは犯罪であり、絶対に許されない行為であることも言いました。そして、同じことがくり返されれば、先生たち全員で警戒態勢を強めることも宣言しました。
私がかなり怒りをあらわにして話したので、クラスの子どもたちは驚いた表情でした。でも、しっかり真面目な顔で話を聞いてくれました。
これで、多分くり返されることはないと思います。しかし、子どもなので、また同じ過ちをくり返す可能性もあります。何かあれば、またお電話をお願いします。ちょっとした変化でも必ずお知らせください。
では、この度は電話を本当にありがとうございました。また、本当に申し訳ありませんでした。今後ともどうぞよろしくお願いいたします』
指導後の報告電話に多くの保護者が驚かれます。
それだけこの電話を省略してしまう教師が多いということでしょう。
しかし、この報告電話は必ずするべきです。それが保護者の信頼を高めることにつながります。必ず、すべし!!です。
(2)日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第1893号☆2007年12月25日
■「数学まるかじり」(9)山崎直和(鹿児島)
【偽りの数】
今年1年を表す漢字は「偽」。
さまざまな偽装問題に彩られた2007年。「このような漢字が選ばれるのは残念です」とは,揮毫した住職さんのお言葉ですが,数学の世界にも「偽り」と呼ばれる数があるのをご存知ですか?
かつて「偽数」と呼ばれ,現在では「複素数」と呼ばれる数です。
「数」は古代から近代に至るまで,さまざまな形で拡張を繰り返してきました。太古の昔,自然界にあるものを数えるのに使われた「自然数」,分割をする際に生まれた分数などの「有理数」が,数の歴史の中での古株です。
その後,分数ではどうしても表現できない「ルート2」などの数が必要となり,(1辺が1の正方形の対角線の長さ),それらは「無理数」と呼ばれることになります。
ここまでがいわゆる正の数,プラスの数の世界です。
現実にある具体物を測るためには,上の「自然数」,「有理数」,「無理数」があれば十分なのですが,人間はさらに新しい概念を作り出します。
以前この連載でも紹介した「0(ゼロ)」です。0の発明によって,気温や標高といった「基準」を必要とする概念を数で表すことが可能になります。
例えば,水が凍る気温を0とすると,それを基準として0より高い温度をプラス,低い温度をマイナスと表現できます。また,海水面の高さを0とすると,それを基準として0より高い地点をプラス,低い地点をマイナスと表現できるわけです。
−3度,海抜−300mなどのように,0を基準とすることで負の数(マイナスの数)が作り出されました。これは0と共に,人類が概念として初めて作り出した数です。
これまでに登場した数は,例え概念として作り出した数であっても,現実世界に実際に当てはめることのできる「理解可能な数」でした。これらの数をまとめて「実数」と呼んでいます。
現実的にはこれで十分なのですが,数学的には困ったことになります。
数学を研究するに当たって,方程式を解くことはとても大切です。方程式とは値が分からない文字xを含んだ式で,方程式を解くとは,その未知なるxがいくらなのかを考え,答えを出すことをいいます。
例えば「x+3=5」という方程式を解くと,xに当てはまる数は2ですから,「x=2」と答えればいいことになります。
「2かけるx=3」という方程式を解くと,「x=3/2」となります。
「x+3=1」という方程式は小学生には難しいですが,答えは「x=−2」です。
中学生になると「xの2乗=3」という方程式を扱いますが,この答えは「x=ルート3」となります。
このように,簡単な方程式なら,実数さえ知っていれば解くことができるのですが,次の問題はどうでしょうか。
「xの2乗=−1」
2乗して−1になるのはどんな数ですか?という質問です。もっとわかりやすく言えば,□×□=−1の,□に当てはまる数を答えなさい,ということです。□に入る数は,もちろん同じ数でなければならないのですが・・・
そんなもの,あるわけがない!
というのが正解です。マイナスの数でも,2回かければプラスになってしまうので,答えが−1になったりはしません。この□に当てはまる数は,ルートでも分数でも,そしてマイナスでも表すことができないのです。こんなに単純な方程式なのに,答えが出せないなんて・・・
そこでちょっと荒業を使います。
2乗して−1になる数を「考え」て,それをアルファベット1文字で「i」と表現することにしたのです!
強引な方法ですが,こうすることでさっきの方程式の答えを表すことができますし,応用して「xの2乗=−4」など,他のどんな方程式でも,一応答えを出すことができるようになりました。
ところが問題は,この「i」という数,現実問題として,身の回りに当てはまるような具体物が見当たらないということです。
「この図形のここの長さがiメートルになる」とか,「この時間を基準として0と表すと,その時間はiと表せる」といったように,具体的,直感的に「なるほど」と納得できる説明ができない,無理矢理作り出された数なのです。
この「i」という数,ただ単に「答えがないのは嫌だ!」というわがままから作られたというだけでなく,計算上どうしても必要な数なのです。
難しくなるので要点だけ話しますと,例えば「xの3乗」という式が入った3次方程式という方程式を解こうと思ったら,計算の途中でどうしても「i」を登場させなければなりません。結果的に最後は「i」が消えてくれて,きれいな実数の答えになったりするのですが,その途中経過でどうしてもこの「作り出された数」の助けを借りなければならないのです。
方程式を研究していた数学者たちは,この「i」を「偽数」と呼んでいました。真の答えを出すために避けて通れない,ニセモノの,意味のない数という扱いだったのです。
このままだと何だかとてもかわいそうな「i」なんですが,現代までにきちんとその意味を認められています。
通常,数は小学校で習う「数直線」という1次元の世界の上にあるわけですが,これを2次元に広げ「数平面」を考えると,「i」は見事にこの平面の上に存在していることが分かりました。この平面の発見により,平行移動,回転移動などで複素数の性質も説明がつくようになったのです。
また,物理学などの分野でも「i」は運動や熱量,変化を伴う自然現象などを説明するために必要な,明確な意味を持つ存在となりました。
現在では「i」を用いた数を「ニセモノ」と呼ぶことはありません。少し意味を弱めて「虚数」と呼ぶことはありますが,複雑な性質を持った数ということで,「複素数」と呼ばれるようになり,その存在は数学に欠かせないものとなっているのです。