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報告者  土 井
 2008年1月10日(木)布袋北学習等供用施設にて社楽の会を開催しました。参加者(勤務校)を紹介しましす。
 土井(岩南中)、早川先生(江南北中)、大野先生(岩南小)、小澤先生(扶東小)、高木先生、鈴木先生(犬山中)、坪内先生、川井先生、大藪先生(犬南小)、勝村先生(楽田小)、野沢先生(柏森小)、天野先生(大口北小)、野口先生(城東中)、坪内先生、浅井先生(岩倉中)、織田先生(扶桑中)、大島先生(草井小)、高橋先生(門弟山小)、尾関先生(曽野小)、添田先生(古知野中)、池邑さんの計21名です。

 今日は資料集部会の発表リハーサルを行いました。
 坪内先生による「世界の人々との共生と平和について考えを深めよう」(小6)、織田先生による「自分の考える東海州を提案しよう」(中1・地理的分野)の発表があり、その発表に対して意見を述べ合いました。
 さらに、大島先生により、「社会科好きの児童を育てるために−わかる楽しい授業づくりの実践−」の報告がありました。

土井より、今回紹介したものの目次です。番号をクリックしてください。

   教材・授業開発研究所 愛知支部設立
 松岡浩講演会 
  希望社会への提言(11)―「アポロ13号」に教育を学ぶ
  社会総がかりで教育再生を〜学校、家庭、地域、企業、団体、メディア、行政が一体となって、全ての子供のために公教育を再生する〜−第三次報告−
 役立ちWeb特集  
 教育関連情報    
 MM紹介
 研究会紹介


  教材・授業開発研究所 愛知支部設立
 島原先生より連絡をいただきました。
 12月23日に岡山で,教材・授業開発研究所の第1回全国大会が開かれました。閉会後の懇親会で愛知県からの参加者が集まり,愛知支部をつくろうということになりました。ご存じのように,教材・授業開発研究所は有田和正氏が代表を務める組織です。「追究の鬼を育てる」をテーマに,授業づくりの研究に取り組んでいます。県内の皆さん,ぜひいっしょに学んでいきませんか?
 土井も参加します。みなさん、どうですか?

 松岡浩講演会
  12月30日にホテルアソシアで松岡浩氏の講演を聴いて気ました。校長日記より紹介します。
昨日は、ホテルアソシアで松岡浩氏の講演会を聴いてきました。
 松岡氏は、谷酒氏と(株)タニサケを創業し、ゴキブリ殺虫剤「ゴキブリキャップ」を開発、商品化し爆発的な大ヒット商品とさせました。社員37名ながら、売上高8億4千万円、経常利益が2億1千万円、自己資本率94%という高収益優良企業に成長させました。現在は会長である松岡氏に、その秘密を伺いました。
 初めに東海テレビで紹介された会社の様子をVTRで見ました。「オレ流で勝ち抜く」という番組です。
 会長は、朝6時に出勤し、まず工場のトイレ掃除をします。これを10年続けているのです。
 社員は、改善提案を次々にします。改善1件に対して一律300円報酬があり、採用されれば最高2万円もらえるのです。活気のある会社に、連日、経営者の見学者が絶えません。
 講演では、はじめにおもしろい川柳をいくつか披露し、場内の雰囲気を和らげました。そして、本題に入りました。「会社は、どんな人が欲しいか。」
@ 明るい人。どうすればよいか?大きな声で挨拶することだ。「○○さん、おはようございます。」と相手の名前を呼び、微笑みをつけること。これで明るくなる。
A 仕事を、「やらされる仕事」から「やる仕事」に変えることだ。やらされる仕事をしているうちは、年齢が増えても精神年齢は増えない。しかし、やる仕事をしている人は、年齢と共に精神年齢も増える。人は仕事で成長するのである。お客様への最大のサービスは、社員の人格の向上につきる。
 経営者から言うと、社員が「やる仕事」をしてくれると、やっていただいてありがたいという感謝の気持ちが生まれる。一人一人の持てる力を発揮できる会社が、よくなる会社である。
 これ以後は、校長日記1月1日、1月2日号でお読みください。
  http://www.schoolweb.ne.jp/weblog/index.php?id=2320030 
右上の検索欄で、「松岡浩」で検索。

 希望社会への提言(11)―「アポロ13号」に教育を学ぶ
 朝日新聞の社説で、これだというのがありました。紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・正解を急がず、競わせず、考える心を育てよう
・教育は投資、社会全体で知の劣化を食い止める
 この国の望ましい未来図を描いてみよう。そう考えて、昨秋からこの社説シリーズを続けてきた。新年は、教育から考えてみたい。
 社会の豊かさは、何によって決まるのか。その土台となるのは、私たち一人ひとりが持つ力、知力だろう。日本は大丈夫か、と考えたとき、まず頭をよぎるのが子どもたちの学力危機である。
 実話をもとにした映画「アポロ13」に、こんなシーンがある。
 人類が初の月面着陸を達成した翌年の70年、月に向かったアポロ13号は深刻な船体トラブルに直面する。とくに、3人の宇宙飛行士が吐きだす二酸化炭素をどう換気するか。マニュアルには想定されていない事態だった。
 地上スタッフが、宇宙船と同じ訓練用の船から使えそうなものをかき集める。刻々と限界が迫る中、試行錯誤しながら換気装置を手作業で作り、飛行士にその方法を伝えて無事帰還を果たした。 
 日本が低迷を続ける国際学習到達度調査(PISA)は「未来型学力」のテストと呼ばれる。いま何を知っているかではなく将来何ができるかを測る――。
 調査をしている経済協力開発機構(OECD)の事務総長は、日本にこんな警告を発した。「知識を再現する学習ばかり続けていると、労働市場に出た時に必要とされる力が身につかない」
 予期せぬ事態がおきた時、多くの情報から何を選び取り、どう生かすのか。宇宙飛行士の命を救ったのは「未来型学力」の果実ともいえるだろう。
 学力世界一といわれるフィンランド。福田誠治・都留文科大教授は、その教育の神髄を二つあげた。
 第一に、正解を先回りして教えない。
 理科の授業では、まず実験だ。様々な現象を見させて、各自が仮説をたてる。自分とは違う意見にも耳を傾け、もう一度考えてみる。教師が理論を説明するのは一番最後だ。正解を先に教えると、その時点で思考が止まってしまう。
 次に、他人と競わせないことだ。
 競争させると、順位に関心が向いて、考えることへの興味がそがれる。テストは各自がどこでつまずいているかを確認し、補うためのものだ。考える力がつくとともに学力格差も少ないのは、この二つの理念と実践が成果をあげているからだ。福田教授はそう指摘する。
 「競争させて順位をつけて、何かいいことがありますか」。フィンランドセンターのヘイッキ・マキパー所長は話す。「下の子はやる気をなくし、上の子は自分が優秀だと思いこむ。どちらの人生にとってもいい影響は与えないでしょう」
 日本は、どうだろう。
 学力危機は子どもに限ったことではない。大学生でも分数ができないと揶揄(やゆ)される。しょせんは試験でいい成績をとるために頭に押し込めた知識だ。のど元過ぎれば忘れてしまうのは当然か。
 学力低下は、PISA調査で勉強への意欲が際だって低いことと分かちがたく結びついている。単なる知識の量で成績や入試の合否が決まってしまう。そんな貧しい教育の姿に、学力危機の核心があるのではないだろうか。
 教室で学んでいることが現実の生活に、今後の人生につながっていく。そして、何よりも考えることが楽しいという手応えを感じさせることができるかどうか。そこが分かれ道になるだろう。 
 では、どうするか。
 学力の質を転換させることである。
 考える心を育てるには、授業を変えなければならない。未来型学力を育む教員の養成が急務だ。教科書をただ覚え込ませるのとは違って、相当の力量がいる。授業にも十分な準備が必要だ。
 フィンランドでは、教師には原則的に修士号が必要で、実習も実践的だ。授業に専念する環境も確保されている。
 大量の雑務に追われる日本からは別世界だが、授業と放課後の活動の分業など思い切った改革に踏み切るしかない。
 もちろん、義務教育だけでは完結しない。高校、大学の入試やカリキュラムの改革も欠かせない。企業が求めているのも、知識のある若者ではないはずだ。
 当然、相当な財源が必要になる。ただ、こうは考えられないだろうか。教育は未来への投資である、と。
 教育が国の未来を決めることは、歴史が証明している。社会で自立できない子が増えることは、将来の社会保障費に影を落とす。逆に、優れた学力は経済力の向上にも貢献する。政治や行政の質とも決して無縁ではないだろう。 (中略)
 社会に出たら、教室で習った公式では解けない問題ばかりである。正解がわからない問いと向き合う力をつけることこそが、未来を拓(ひら)く教育の役割だろう。
 希望の苗木を、幹太く育てたい。朝日新聞2008年01月07日(月曜日)付社説
☆★☆ コメント ☆★☆
 ここで書かれている通りだろう。ただ、随分前からこのような話はあった。
 ここでは「教育は未来への投資」と書かれているが、構造改革論議では教員を減らそうとしている。まさに逆行だ。
 GNPに対する国の教育費の割合はデンマーク8.5%、スウェーデン7.7% 、フィンランド6.4% 、フランス5.8%だが、日本はGDPに対する割合で3.5%にすぎないという。

 
社会総がかりで教育再生を〜学校、家庭、地域、企業、団体、メディア、行政が一体となって、全ての子供のために公教育を再生する〜−第三次報告−
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/houkoku/honbun1225.pdf 
 再生会議の報道が随分減った気がします。

 役立ちWeb特集 
(1)平成20年春の花粉総飛散量の予測
 平成20年春のスギ・ヒノキ科花粉総飛散量は、東海から関東、東北で平成19年春より多く、北陸から九州は平成19年と同じかやや少ないと予測。また、スギ花粉の飛散開始は例年並かやや早いと予測。
 
(2)クイズ雑学キング
  都道府県反転クイズは難しかった。
 
(3)二酸化炭素量計測機能のついた検電器
 コンセントに差し込んでボタン1つですぐ測定できる検電器が登場。積算料金(円)、CO2換算(kg)、電圧(V)、電流(A)、電力(W)、皮相電力(円)、電源周波数(Hz)、力率(PF)、積算電力量(KWH)、積算時間(H)の10種類が測定可能。
 
(4)新たな近接無線転送技術
 携帯電話、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどのモバイル機器から、写真・ハイビジョン映像等の大容量ファイルを、かざすだけで、パソコンやテレビなどに高速転送できる近接無線転送技術が登場。機器同士を直接かざして、560Mbpsの高速データ転送が可能。
 
6  教育関連情報
(1)子供の現在地を自動的に携帯メール。三鷹市が実験着手(東京)
 三鷹市は1月下旬から、GPS(全地球測位システム)機能付き携帯電話を利用して、児童が自宅や学習塾などに出入りするたびに、保護者の携帯電話へメールを配信するモデル事業「親子安心システム」をスタートさせる。 
☆★☆ コメント ☆★☆
 三鷹はICT先進地だ。「安心」の価値が高まってきた今の時代、希望者は多いであろう。
 
(2)道教委が教育計画案。「全員がわかる」授業目標(北海道)
 北海道教委は2008年度から10年間の指針となる道教育推進計画案を8日、教育委員に報告した。「社会で生きる実践的な力の育成」など5つの基本目標を掲げ、学力向上や教職員の資質・能力の向上など40の施策項目で、具体的な目標や事業を盛り込んだ。
☆★☆ コメント ☆★☆
 現代の教育課題が網羅されており、その意味で参考になる。しかし、これを全部やろうとなると学校はパンクする…
 
(3)東京都の杉並区立和田中学校が計画している進学塾講師による「夜間塾」について、「公教育の観点から疑義がある」として都教委は7日、区教委に再考を求めた。区教委は「教育の地方自治分権が求められる今日、残念だ」と反発しつつ、都教委の指摘を再検討するため、開始を当初予定の9日から今月下旬に延期することを決めた。
 「夜スペ」と題された和田中の試みは、平日午後7時以降、大手進学塾「SAPIX中学部」の講師が2年生に指導する。保護者らでつくる「地域本部」が主催し、参加費はSAPIXの正規授業料の半額程度。リクルート出身の藤原和博校長らが教材づくりに協力する。希望した19人全員が参加する予定だ。
 都教委は、(1)希望しても受けられない場合があり、機会均等の確保に疑問がある(2)特定の塾が学校を利用して営利活動をしていると疑われかねない(3)教材づくりに教員がかかわり公務員の兼業兼職の疑いがある――と指摘。7日、区教委の井出隆安教育長らを都庁に呼び、文書で再考を求める指導をした。
 都教委は「事前の相談はなく、報道を受けて情報収集し義務教育の公立学校の取り組みとして疑義があることがわかった」としている。
☆★☆ コメント ☆★☆
 「夜スペ」は前回紹介したもので、「公立中学校がやることかどうか?冷静に考えたい。」とコメントした。今回の都教委の指摘が、私には正しいように思える。塾との摩擦も起きるであろうし、学校と切り離して考えるのが筋ではないか。都知事発言や産経新聞の社説は賛成の立場だ。今後の議論を見守りたい。

 
 MM紹介
(1)メールマガジン「授業成立プロジェクト(JSP)」 第112号  2007年12月26発行
 以前にも紹介したが、その続きです。
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2 連載「若手教師に贈る 授業成立のための保護者対応術」
  第6条 苦情の電話を受けたら、最後に必ず報告の電話をせよ!
         山口・岩国市立通津小学校  中村 健一 
 そこのお若いの。今日も私の話を聞いてくだされ。
 わしは苦情の電話は、保護者の信頼を高めるチャンスだと思っとるのじゃ。
 今日は、そのための最も大切な最終ステップをお教えしよう。
 まず、保護者の方の話を共感しながらしっかりと聞きました。なので、保護者も落ち着かれました。
 次に、対応方法を説明、相談、確認しました。これで、子どもにどう対応するかも決まりました。
 で、実際に子どもに対応します。保護者と相談して決めた対応です。いわば「お墨付き」。自信を持って対応しましょう。
 これで終わりじゃないですよ。ここからが保護者の信頼を得る最大のポイントです。
 第6条は、「苦情の電話を受けたら、最後に必ず報告の電話をせよ!」です。
 また「鉛筆折られる事件」を例にしますね。
 電話で確認した通りの対応をしました。
 で、その夕方にもう1度保護者に電話をします。
 電話で話す内容は、次の4点です。
  (1)まず、先日の電話のお礼。
  (2)実際に対応した内容、その時の子どもたちの様子など。
  (3)子どもなので、また同じことをくり返す可能性があることを断
    る。また、その時には電話して欲しいとお願いする。
  (4)お礼。
 この事件の場合は、次のような電話になりました。
 長いですが、実際の雰囲気が少しでも伝わればと思い、書きます。ぜひ、読んでください。
『○○小学校の中村です。今、お時間はよろしいでしょうか?
 先日はお電話をありがとうございました。
 今日、朝の会を止めて、子どもたちに話をしました。まず、ある男の子の鉛筆が折られるという事件があったことを説明しました。やられたらどう思うか問い、どれだけ人を傷つける行為なのか強く訴えました。また、これは犯罪であり、絶対に許されない行為であることも言いました。そして、同じことがくり返されれば、先生たち全員で警戒態勢を強めることも宣言しました。
 私がかなり怒りをあらわにして話したので、クラスの子どもたちは驚いた表情でした。でも、しっかり真面目な顔で話を聞いてくれました。
 これで、多分くり返されることはないと思います。しかし、子どもなので、また同じ過ちをくり返す可能性もあります。何かあれば、またお電話をお願いします。ちょっとした変化でも必ずお知らせください。
 では、この度は電話を本当にありがとうございました。また、本当に申し訳ありませんでした。今後ともどうぞよろしくお願いいたします』
 指導後の報告電話に多くの保護者が驚かれます。
 それだけこの電話を省略してしまう教師が多いということでしょう。
 しかし、この報告電話は必ずするべきです。それが保護者の信頼を高めることにつながります。必ず、すべし!!です。
 
(2)日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第1893号☆2007年12月25日
■「数学まるかじり」(9)山崎直和(鹿児島)
【偽りの数】
 今年1年を表す漢字は「偽」。
 さまざまな偽装問題に彩られた2007年。「このような漢字が選ばれるのは残念です」とは,揮毫した住職さんのお言葉ですが,数学の世界にも「偽り」と呼ばれる数があるのをご存知ですか?
 かつて「偽数」と呼ばれ,現在では「複素数」と呼ばれる数です。
「数」は古代から近代に至るまで,さまざまな形で拡張を繰り返してきました。太古の昔,自然界にあるものを数えるのに使われた「自然数」,分割をする際に生まれた分数などの「有理数」が,数の歴史の中での古株です。
その後,分数ではどうしても表現できない「ルート2」などの数が必要となり,(1辺が1の正方形の対角線の長さ),それらは「無理数」と呼ばれることになります。
ここまでがいわゆる正の数,プラスの数の世界です。
 現実にある具体物を測るためには,上の「自然数」,「有理数」,「無理数」があれば十分なのですが,人間はさらに新しい概念を作り出します。
 以前この連載でも紹介した「0(ゼロ)」です。0の発明によって,気温や標高といった「基準」を必要とする概念を数で表すことが可能になります。
 例えば,水が凍る気温を0とすると,それを基準として0より高い温度をプラス,低い温度をマイナスと表現できます。また,海水面の高さを0とすると,それを基準として0より高い地点をプラス,低い地点をマイナスと表現できるわけです。
 −3度,海抜−300mなどのように,0を基準とすることで負の数(マイナスの数)が作り出されました。これは0と共に,人類が概念として初めて作り出した数です。
 これまでに登場した数は,例え概念として作り出した数であっても,現実世界に実際に当てはめることのできる「理解可能な数」でした。これらの数をまとめて「実数」と呼んでいます。
 現実的にはこれで十分なのですが,数学的には困ったことになります。
 数学を研究するに当たって,方程式を解くことはとても大切です。方程式とは値が分からない文字xを含んだ式で,方程式を解くとは,その未知なるxがいくらなのかを考え,答えを出すことをいいます。
 例えば「x+3=5」という方程式を解くと,xに当てはまる数は2ですから,「x=2」と答えればいいことになります。
 「2かけるx=3」という方程式を解くと,「x=3/2」となります。
 「x+3=1」という方程式は小学生には難しいですが,答えは「x=−2」です。
 中学生になると「xの2乗=3」という方程式を扱いますが,この答えは「x=ルート3」となります。
このように,簡単な方程式なら,実数さえ知っていれば解くことができるのですが,次の問題はどうでしょうか。
「xの2乗=−1」
 2乗して−1になるのはどんな数ですか?という質問です。もっとわかりやすく言えば,□×□=−1の,□に当てはまる数を答えなさい,ということです。□に入る数は,もちろん同じ数でなければならないのですが・・・
 そんなもの,あるわけがない!
 というのが正解です。マイナスの数でも,2回かければプラスになってしまうので,答えが−1になったりはしません。この□に当てはまる数は,ルートでも分数でも,そしてマイナスでも表すことができないのです。こんなに単純な方程式なのに,答えが出せないなんて・・・
 そこでちょっと荒業を使います。
 2乗して−1になる数を「考え」て,それをアルファベット1文字で「i」と表現することにしたのです!
 強引な方法ですが,こうすることでさっきの方程式の答えを表すことができますし,応用して「xの2乗=−4」など,他のどんな方程式でも,一応答えを出すことができるようになりました。
 ところが問題は,この「i」という数,現実問題として,身の回りに当てはまるような具体物が見当たらないということです。
 「この図形のここの長さがiメートルになる」とか,「この時間を基準として0と表すと,その時間はiと表せる」といったように,具体的,直感的に「なるほど」と納得できる説明ができない,無理矢理作り出された数なのです。
 この「i」という数,ただ単に「答えがないのは嫌だ!」というわがままから作られたというだけでなく,計算上どうしても必要な数なのです。
 難しくなるので要点だけ話しますと,例えば「xの3乗」という式が入った3次方程式という方程式を解こうと思ったら,計算の途中でどうしても「i」を登場させなければなりません。結果的に最後は「i」が消えてくれて,きれいな実数の答えになったりするのですが,その途中経過でどうしてもこの「作り出された数」の助けを借りなければならないのです。
 方程式を研究していた数学者たちは,この「i」を「偽数」と呼んでいました。真の答えを出すために避けて通れない,ニセモノの,意味のない数という扱いだったのです。
 このままだと何だかとてもかわいそうな「i」なんですが,現代までにきちんとその意味を認められています。
 通常,数は小学校で習う「数直線」という1次元の世界の上にあるわけですが,これを2次元に広げ「数平面」を考えると,「i」は見事にこの平面の上に存在していることが分かりました。この平面の発見により,平行移動,回転移動などで複素数の性質も説明がつくようになったのです。
 また,物理学などの分野でも「i」は運動や熱量,変化を伴う自然現象などを説明するために必要な,明確な意味を持つ存在となりました。
 現在では「i」を用いた数を「ニセモノ」と呼ぶことはありません。少し意味を弱めて「虚数」と呼ぶことはありますが,複雑な性質を持った数ということで,「複素数」と呼ばれるようになり,その存在は数学に欠かせないものとなっているのです。

 研究会紹介 
(1)伊那市立伊那小学校
  平成20年2月2日(土)
   「内から育つ」〜自己を見つめ,友とのかかわりを深めながら,自らを高めていく子ども〜
 
(2)Eスクエア・ニュース第96号:
 平成19年度Eスクエア・エボリューション成果発表会参加申込開始
参加のお申込は次のURLからどうぞ(参加費無料) http://www.cec.or.jp/e2e/symp/19tokyomf.html 
 ■日 時:平成19年3月7日(金)10:30〜18:00(10:00開場)
            3月8日(土) 9:30〜13:30( 9:00開場)
 ■場 所:東京ファッションタウンビル 西館 TFTホール


  問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp