(1)MM小学1848 荒木茂□ 詩「今日」の音読授業をデザインする
連載(88) 音読授業を創る そのA面とB面と
詩「今日」の音読授業をデザインする 荒木 茂 http://www16.ocn.ne.jp/~ondoku/
●詩「今日」(まど・みちお)の掲載教科書…………………………大書5下
今日 まど・みちお
きがつくと今日をむかえている そして当たり前顔でその中にいて
いつのまにかその今日をおくりだしている くる日も くる日も
今日の中にいて思うのは 明日のこと昨日のことだが
その明日にも昨日にも出会うことはない 出会えないからこそ思うのだろうか
たしかにあるのは今日だけなのか 今日こそ昨日であり明日でもあるのか
今日こそ生きてさわれる全部なのか 今日こそこれしかない一生なのだ
★教材分析★
わたしたち人間は、その日その日を仕事や雑事に追われ、毎日をあくせくと過ごしているのがふつうでしょう。なにやかやと今の今を何気なく、のほほんと過ごしているのがふつうでしょう。毎日の雑事にかまけて、一日一日を「今日の一瞬一瞬を充実して生きよう」などと意識して生活しているわけではありません。この詩は、こうした常態化を改めて考え直して、今日の今の今を充実させて生きようと反省させてくれる詩です。この詩は、それを言葉の表現として取り出し、詩的表現として構成して提示しているところに優れた存在意義があるといえましょう。
第一連
大体の内容はこうでしょう。
わたしたち人間は、朝が来れば「夜があけたなあ、あさめしを食べなくちゃ、寝床から起きなくちゃ」と思います。当たり前のように今日の朝をいつものように迎えます。そして一日をあくせくと過ごし、いつのまにか今日の一日がなんとなく終わってしまっています。
当たり前のように今日が昨日となり、当たり前のように明日が今日となり、漫然とそれを繰り返しています。「今日の今日、今の今を生きている、よい一日一日だった」などとその日その日の充実した時間を意識して、それを反省しながら、そうしようと努力しながら生活している訳ではありません。第一連では、このような現実を書いているように思われます。
第二連
大体の内容はこうでしょう。
今日を生きるとは、昨日(過去)を引き受け、明日(未来)を見通しながら今日を生きている。しかし、今日を生きている時は、明日(未来)にも昨日(過去)にも出会えない(同じ時間に生きられない)のだ、と書いているように思います。
「出会えないからこそ思うのだろうか」の「思う」は、補語「何を」が省略されています。「出会えないからこそ≪今日の中にいて、明日のことや昨日のことを≫思うのだ。」のようになるのではと思います。「のだろうか」は、単なる疑問の推量表現ではなく、「そうだ、そうだ。」という軽い反語表現にもなっているように思います。
第三連
大体の内容はこうでしょう。
文末が「……なのか」と問いかけ表現になっていますが、これは言表に自信がなくて婉曲にぼかした言い方になっているわけではありません。問いかけ表現の裏に強力な肯定意見を含んだ反語表現があると思います。「今日だけだ」「明日でもあるのだ」「全部なのだ」という、語り手の強い肯定意思が裏に隠されている言い方になっていると言えます。
ここで語り手が言いたいことは、最後の一行にあるように思います。「今日こそがこれしかない一生なのだ」です。
「今日=一生」と、かなり強い言い方で言表しています。子ども達に、語り手(まど・みちお)が主張したい、訴えたい真意は何かと問いかけてみましょう。そして、わたし達は「だからどうすべきだ」ともうひと押しを言葉にするとどうなるかを考えさせたいと思います。
全体の感想
この詩全体を読んで、荒木はこんな感想を持ちました。
わたしはこの詩を読んで、ハイデガー『存在と時間』の中で書いている事柄を思い出しました。
ハイデガーはこう言います。人間たちの平均的な日常生活の過ごし方を考えてみよう。それはどうでもよい日常茶飯の空談やつまらんおしゃべりに夢中で、「気散じ・気晴らし」の中で我を忘れて、その日その日をのほほんと、なんとはなしに過ごしている。「空談」で満足し、他人への「好奇心」にうつつをぬかしては語り、どうでもよい事柄に熱心で、それら日常生活に「曖昧性」という本質が常態化している。日常生活は頽落しており、本当の自己を見失っている。非本来的生活の落とし穴の中にはまり込んでしまっている。
わたしたち人間は、こうした非本来的な生活から脱却し、本来的な自己を見出し、それを取り戻すことが重要だ、そうした時間の中に生きることが重要だ、本来的な自己の実存のあり方を探すこと・開示することが重要だ、死の不安の脅かしや自己の良心の声の呼びかけに耳を傾けることが重要だ。かいつまんで言えば、こんなことをハイデガーが言っていたことを思い出します。
つまり、時間は、過去・現在・未来と区分けされた客観的時間ではないということ、実存的時間として了解すべきだということを言っています。昨日(過去)を今(現在)の中に手繰り寄せ、明日(未来)を今(現在)の中に引きずり込み、そうした実存的時間の今(現在。瞬間瞬間の実存的な生活時間の流れ)をいかに生きるべきかを自覚して本来的な自分の生存を気遣いつつ生活すべきだと言っていたことを思い出しました。
★音声表現のしかた★
次の【 】の中の詩文を、( )の中のようなメリハリの音声表現にするのも一つの方法です。( )の中は、音声表現するときの気持ちの入れ方やメリハリのつけ方について書いています。参考にしてみてください。
第一連
【きがつくと】(どうかというとの気持ちで次へつなげて)
【今日をむかえている】(軽く押さえて断止する。軽い間をとる。)
【そして】(つけたす気持ちで次へつなげて)
【当たり前顔でその中にいて】(次につながる息づかいで)
【いつのまにかその今日をおくりだしている】(はっきりと断止。軽い間をとる。)
【く・る・日・も】・【く・る・日・も・】(スタッカートのように一つ一つを区切る。ゆったりと、たっ ぷりと、声を落として読んで、繰り返す。)
第二連
【今日の中にいて思うのは】(次のようだという気持ちで次へつなげて)
【明日のこと・昨日のことだが】(二つを対比して目立たせ、「が」で軽い間をとる。)
【その明日にも・昨日にも・出会う・こ・と・は・な・い・】(はっきりと断止する。軽い間をとる。「こ とはない」を、一つ一つ区切って、ゆっくりと読む)
【出会えないからこそ・思うのだろうか】(文末は推し量る気持ちの思いをたっぷりと入れて。「の・だ・ ろ・お・か・」のように一つ一つをスタッカートのように区切って、ゆっくりと読むのもよい)
第三連
【たしかにあるのは・今日だけ・な・の・か・】(軽い間。)
【今日こそ・・昨日であり・明日でも・あ・る・の・か・】(軽い間。)
【今日こそ・生きてさわれる・全部・な・の・か・】(軽い間。)
【今日こそが・これしかない・一・生・な・の・だ・】(いっ・しょう・な・の・だ/ のように一つ一つ をスタッカートのように短く切って読み、あとに思いが残るように、印象に残るように、た っぷりと・ゆっくりと・思いをこめて読む。)
☆★☆ コメント ☆★☆
おもしろい!詩の解釈が正しいのかどうか、音読表現が合っているのかどうかはわからない。ただ、音読表現をデザインする過程を示してもらえたことが、これからの者にはありがたい。一つの詩を読むために、これだけのことを分析して読むんだということを教えてもらった。
(2)【世界の新聞「101紙」の視点】〜 2007年12月11日(火)〜 これはすごい!
☆本日のラインアップ☆
・国内主要6紙の本日の社説 ・「本日、あなたが最も共感した社説は?」アンケート
・国内主要6紙サイトのトップ記事・中東メディアの論調・世界主要紙の論調・今日のニュースレター
・国内政党機関紙の主張・読者の価値観
(各種お知らせ事項)
・去年の今日は、こんな社説でした・独断と偏見はご容赦! 最近の社説の、ここに注目・編集後記
(3)MM小学1849 内山義朗□飛び込み道徳授業 2007/12/11(火)蔵満逸司編集
正義と勇気を育てる学級&学年集団づくりNO73(2007年12月)
飛び込み道徳授業 道徳教育改革集団鹿児島 内山 義朗
先日、藏満逸司氏の勤務校で「飛び込み授業」をやらせていただいた。「人権・同和教育」研修会の一部であり、「いじめ」をテーマとする授業。
授業学級は6年約30人の学級。問いかけに、くいついてくる素敵な6年生だった。子どもたちの表情が豊かで書く力もついている素敵な6年生だった。
その時配布した授業案を掲載する。私の授業の組み立てや腕は、まだまだ。参考資料としてピックアップした関連法規や文書の部分は、人によっては役立つかもしれない。
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小学校6年道徳授業案
2007年11月26日(月)14:15〜15:00 授業者 内山 義朗
0 「飛び込み授業」をするに当たっての留意点
「5 展開案」は、小学校6年生を対象に45分間授業の前提で作成した内容である。今回の授業は、事前に授業学級の実態を全く知らない。よって、自らの担任学級での授業とは、次の点で変えて実施する。
担任学級の道徳授業では、子どもたちは常時、横書き罫線ノート・国語辞典を活用している。辞書等は調べる・考える活動の際自由に使っても良いルールにしている。今回は、横書き罫線の紙のみを使用。
また、日常は、子どもの発言に対し「発言し直し」や「突っ込み」や「ゆさぶり」も頻繁に行う場面でも、今回はソフトな指導のみ。1年間を見通した中での1単位時間の授業と1単位時間のみの「飛び込み授業」では当然異なるべきである。
また、今回は「飛び込み」授業のため、初めて出会う子どもたちを対象とする授業。当然ながら自己紹介から導入する。
いわゆる「年度初めの授業開き」と同じである。ということで、「学級づくり」も意識した授業づくりを進めていく。
1 テーマ 「いじめ」
2 授業名 刑法
3 ねらい
(1)「いじめ」は卑怯な行為であり、法律でも規制されている事実を知る。(知識・理解)
(2)人間関係にとっての+−行為を考え、箇条書きする技能を伸ばす。(技能)
(3)子ども同士・子どもと授業者の人間関係づくりを進める。(関心・意欲)
(4)よく聞き、堂々と意思表示(挙手・発言)する力を伸ばす。(態度)
4 学習指導要領の関連項目
【小学校学習指導要領・道徳[第5学年及び第6学年]から】
4 主として集団や社会とのかかわりに関すること。
(2)公徳心をもって法やきまりを守り、自他の権利を大切にし進んで義務を果たす。
5 展開案(部分掲載)
0 授業者自己紹介。
1 授業者について考える。
(1) どんな教員だと思いますか。
・怖い。・恐ろしい。・面白い。・不思議。・かっこいい。・真面目。
(2) どれも当たっています。それぞれ、どんな子が、そう感じると思いますか。
・怖い。恐ろしい。→暴力行為。・面白い。不思議。→よく見る。よく聞く。よく学ぶ。
・かっこいい。→かっこいい行為をめざしている。 ・真面目。→真面目。
2 人間関係を良くする行為(プラス行為) について考える。
(1)「+」(プラス)には、どんな意味がある でしょう。
・加える。・加点。・増加。・向上。・良い。・良くなる。・良い方に考える。
(2)「人間関係を+にする行為」は、どんな 行為ですか。
・正義行為。・世のため人のための行為。
3 人間関係を悪くする行為(マイナス行為)について考える。
(1)「−」(マイナス)には、どんな意味があるでしょう。
・減らす。・減点。・減少。・後退。・悪い。・悪くなる。・悪い方に考える。
(2)「人間関係を−にする行為」は、例えばどんな行為ですか。
・暴力。暴言。・物を隠す行為。・盗み。・脅す行為。・無視。
(3) まとめると何ですか。 ・いじめ。・卑怯な行為。
4 資料「刑法」を読んで考える。
(1) 読む。
(2) 気づいたことを箇条書きしましょう。
・「いじめ」は、刑法に違反する行為。・「いじめ」行為の殆どが犯罪。
(3)「無視は犯罪ではない。だから、やってもよい。」の意見に賛成ですか、反対ですか。
5 授業感想を書く。 (以下略)