8 愛知県社会科高校入試B日程社会科問題分析 校長日記より
☆★☆ 愛知県社会科入試問題−1− ☆★☆
昨日行われたB日程の社会科の入試問題を解いてみました。
よく問題分析を頼まれるのですが、私は知識のレベルと、正解を導くための手順を指標にしています。例えば、「鎌倉幕府をつくったのは誰か?」という問題は(こんな単純な問題は出題されませんが)、知識レベルが最も基本のA、手順は最も単純なAで、A-Aレベルと判断しています。
問題を解説していきますので、朝刊に掲載されている問題を見ながらお読みいただけたら幸いです。
1は資料をみて考える問題です。しかし、生徒にとって見慣れた資料ではありません。
(1)は鎌倉の地図を抽象化してありますので、まず、ここが鎌倉であることを見抜かなければなりません。手順はBレベルです。次に、ここで幕府を開いた人物について述べた文を選びます。
アは足利尊氏、イは徳川家康、ウは平清盛、これらは知識Aレベルです。エが正解の源頼朝ですが、「平泉を拠点とした奥州藤原氏を滅ぼした後、征夷大将軍に任じられた。」の説明は知識Bレベルでしょう。 よって、A’-Bレベルの問題と言えます。
(2)は「ある幕府の政治の中心として建てられた京都の邸宅」とありますので室町幕府なのですが、この説明も資料の絵もわかりにくいものです。しかし、選択肢はウに「金閣」とあるので平易です。同じくA’-Bレベルと言えるでしょう。
(3)は大阪についての問題で、「誤っているもの」を選びます。「大塩平八郎の乱が起こった都市」「国会期成同盟をつくった都市」はC〜Eレベルです。「天下の台所」はAレベル。日米和親条約で開港された港「下田・函館」はBレベルで、B-Bレベルと言えるでしょう。
いずれも工夫されていますが、決め手になる知識ABレベルの情報もあり、考えればできるレベルといえるでしょう。
☆★☆ 愛知県社会科入試問題−2− ☆★☆
続きです。
2の(1)は、一見複雑そうですが、要するに金印の頃の文化を選べばよいので、手順はBレベルです。
金印についてあまり詳しく教えませんが、弥生文化を選べばよいので、知識レベルはB+ぐらいです。
(2)は出島での輸出入品を選ぶ問題です。日本と中国は、日宋貿易、日明貿易とありますが、その内容はあまりしっかりとは押さえません。知識Cレベルぐらいです。
(3)はまず日清戦争であることに気づくかどうか。そして三国干渉につながるかどうか。さらに「4字で書け」とあるので、漢字で書けるかどうかです。漢字で手こずった人がいるかもしれません。
(4)は、日中平和友好条約です。私の20歳の誕生日に調印されたのでよく覚えています。もう、「歴史」なのですね。それ以後に起こったことを選べばよいのですから、大人の私たちには「ベルリンの壁崩壊」と簡単にわかります。他の選択肢が、ワシントン会議、ブロック経済、NATO結成と古すぎるので比較的平易です。
3は、2万5千分の一の地図の問題です。最近よく出題されるパターンです。
(1)は会話文から場所を特定する問題で、等高線が理解できていいれば、よく読めばわかります。良問といえます。
(2)は、図が小さくて見づらく、よくわかりませんでしたが、アの「約2q移動」は計算すると「約750m」であり作業を必要とします。これも良問です。
(3)は2つの資料を比較して、なおかつ、「中国地方にある県」、すなわち「岡山」と漢字で書く必要があります。工夫された良問です。
(4)が、現在の地理の試験として、最も典型的な問題です。複数のデータから、愛媛県を選ぶものです。解き方は消去法です。製造品出荷額から、Aが広島県であることがわかります。降水量よりDが高知県もわかります。そして、降水量・製造品出荷額を見比べて、Cが島根、Bが愛媛であると判断します。情報を総合しなければ解けない良問です。
全体としては、個別の知識よりも考える力を必要とするように工夫が見られます。
問題と解答例は、次の佐鳴予備校のサイトでも見ることができます。
☆★☆ 愛知県社会科入試問題−3− ☆★☆
4は、3と同様の世界地理版です。限られた情報から、まず、ニュージーランド、エジプト、アメリカ、ポルトガルを特定します。
Aは、航空機産業からアメリカです。BはEU加盟国からポルトガル、Cは島国なのでニュージーランド、Dはナイル川でエジプトです。

これを前提に(1)を解いていきます。アからオは、どれも違います。カも迷うかもしれませんが、消去法でカしか残りません。
(2)はさらにやっかいです。表Uの国を、データから特定しないといけません。
1人あたりのエネルギー消費量などから@はアメリカ、降水量からBはエジプト、7月の気温からCが南半球のニュージーランド、したがって、ポルトガルはAになります。
ここまでわかればあとは平易です。日本と比較して考えると正解は出てきます。
共に手順が複雑で、一つの解答を導くために多くの労力を必要とする、C-Cレベルの良問といえます。
5は公民・経済の問題です。
(1)は需要・供給曲線の基本問題です。
(2)は最近よくでる作図問題ですが算数レベルです。次にその読み取りですが、「入荷量」が「供給量」であることがわかれば平易です。
(3)は株式会社の正しい説明を選ぶ問題です。誤りが仕組んであるため、消去法で解くことができます。
(4)は、株式売買の方法の問題です。
5は、地理(3・4)とは正反対の、単純な知識で解くことができる問題です。少し前は、だいたいこういう問題が主流でした。
6も5と同じような傾向が続きます。
「ある年の国会のようす」と実例を出したことは新鮮ですが、その内容は単純です。
(1)は特別会、臨時会が理解できていれば平易です。
(2)は内閣と国会の関係について述べた文ですが、両院協議会が問われています。ねじれ国会の現状を反映した問題です。その意味では、タイムリーな良問といえるでしょう。
(3)は「委員会」を答えさせる問題です。漢字3字は、ヒントになっています。
総じて、歴史は工夫してありましたが、基本的な知識で解けるように作ってあるので、それを見抜けるかどうかです。地理は知識以上に思考力が問われているので、パズルを解くみたいにじっくり取り組んでください。公民は比較的単純で、用語が理解できていればできる問題です。教科書太字レベルの用語は押さえる必要がありますね。
さて、木曜日のA日程の問題はいかに?