(1) JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル■
現代に蘇る寺子屋教育 伊勢雅臣
国際派日本人養成講座・今週号では、江戸時代の「寺子屋」をモデルに、子供を対象にして『論語』などの素読と習字を組み合わせた塾を開いている岩越豊雄さんの著書を紹介したが、同様の取り組みが各地でなされている。その一つが、産経新聞で紹介されている。[1]
「勉強忍耐は才力智徳の種子(しゅし)なり」などと、難しい言葉を幼稚園児がすらすら覚える。日露戦争で旅順を攻略した明治の陸軍大将、乃木希典(のぎまれすけ)の言葉で、「耐えて勉強することが才能、知識、道徳を伸ばす基になる」という意味である。
福岡県久留米市の水天宮保育園での光景だ。保育士の井上里恵さん(29)はこう語る。
「子供たちは難しい言葉でもすぐに覚えます。ただ『がまんしなさい』と言うより、偉人の言葉で伝えるとよくわかってくれます。」
さらに驚くべきは、ほとんどの園児が30分間、背筋をピンと伸ばして、講師の話を聞き入っている姿だ。水天宮保育園が昨年4月からカリキュラムに取り入れた、偉人伝を語り聞かせる寺子屋授業の効果である。講師は福岡市にある社員6人の企業「寺子屋モデル」[a]から派遣されている。
西郷隆盛の少年時代をとりあげた授業では、西郷の評判に嫉妬(しっと)した少年たちが、大勢で待ち伏せして西郷を襲うが、西郷は一人で戦い、腕にけがを負いながらも勝つ、という逸話を身ぶり手ぶりで語り、子供たちの目はくぎ付けになる。
そして偉人伝授業の最後は取り上げた人物の言葉を暗唱させる。西郷伝では「幾たびか辛酸を経て志始めて堅し 丈夫玉砕するも甎全(せんぜん)を恥ず(立派な人は玉と砕け散っても何も為さないことを恥じる)」。
「勉強忍耐は才力智徳の種子なり」「幾たびか辛酸を経て志始めて堅し」などという言葉を暗唱した子供は、背筋の伸びた日本人に成長するだろう。それは本人の生き甲斐ある人生につながるだろうし、また国を興す基でもある。
■リンク■
(2) ALE(エール)マガジン No.135 2008.4.30(水)
【1】数字で確認 日本の教育シリーズ
小学校数、小学校学級数、児童数の減少傾向について
日本の小中学校の先生は、その多くが都道府県単位で採用され、県内を中心に異動する場合が多いので、所属している県の情報は、関心も高く、集まりやすいものです。その反面、日本全体の数字的な情報については、関心はあっても、なかなか情報として把握できていないように感じられることがあります。
そこで、今年の連載では、数字的な情報の内容を整理して、公的なデータを中心に、現在の日本の教育の姿を「数字で確認 日本の教育」を連載していきます。
皆さんは、日本には、今どのくらいの小学校があるかご存知でしょうか。そして、10年間で小学校数はどんな推移をしたでしょうか。この10年間の小学校数の推移を最新の平成9年度と19年度で比較してみました。
【小学校学校数の変化】
■ 国公私立学校数
平成9年度24,376校→平成19年度22,693校 1,683校(約7%)の減少
■ 公立のみの学校数
平成9年度24132校→平成19年度22420校 1,712校(約7%)の減少
■ 公立学校数のうち分校数の変化
平成9年度601校→平成19年327校 274校(約54%)の減少
【小学校学級数(国公私立)の変化】
平成9年度282,974学級→平成19年277,562学級 5,412校(約2%)の減少
【児童数(国公私立)の変化】
■ 全体児童数
平成9年度7,855,387人→平成19年7,132,874人 722,513人(約9%)の減少
■ 男子児童数
平成9年度4,020,241人→平成19年3,648,634人 371,607人(約9%)の減少
■ 女子児童数
平成9年度3,835,146人→平成19年3,484,240人 350,906人(約9%)の減少
このように、日本の小学校を取り巻く基本的な数字は、全体的に減少傾向にあります。減少からはあまり発展性のない印象も受けますが、学校数や児童数の減少に比べ、学級数の減少率が少なかったことで、1学級あたりの児童数が減少したことが読みとれます。具体的には、この10年で1学級あたりの児童数が27.8人から25.7人に、減少しました。昨年度の収容人員別学級数のデータをみると、1学級あたりの児童数は、31人~35人が約27%、26人~30人が約24%で、26人~35人規模の学級が半数を占めています。また、7人以下の学級も約12%あることがわかります。
上記のような状況からも、教師一人当たりの児童数が減っていくということがいえます。つまり、子どもたち一人一人に対応した、丁寧な指導ができる環境になってきたということです。学校数、児童数の減少をマイナスにとらえるだけではなく、これから新しい学習指導要領のもと、子どもたちに活用できる知識を育てていくうえでも、一人一人に対応した指導の工夫につなげていっていただければと思います。
出典:「平成19年度学校基本調査」、東京都の小学校数は「東京都教育委員会 東京都の教育2007」
(3) 安岡正篤一日一言 〜心に響く366の寸言〜
【根に返る】
とにかく人間というものは、
栄えようと思ったならば、
まず何よりも根に返らなければいけない。
草木でも、本当に健(すこ)やかに
繁茂(はんも)させようと思ったならば、
いたずらに枝葉を伸ばしては駄目で、
幹を逞(たくま)しくし、
根を深く養わなければならない。
根に返ることが大事である。
『安岡正篤 一日一言』より(致知出版社刊)
(4)メールマガジン「授業成立プロジェクト(JSP)」 第130号 2008年4月30日発行
1 連載「授業成立のための『ワークショップ型授業』講座」
第4回 「貿易ゲーム」は、ぜひ経験したい
簡単に書くと、Development Educationを日本語に直訳した言葉であり、開発途上国への支援を促す教育として1960年代にスタート。現在は、先進諸国と開発途上国との間に起こっている構造的な問題の解決を、一人ひとりが参加し、行動していくことで図っていこうとする教育活動として徐々に変化してきているものである。
その代表的なプログラムの一つが、「貿易ゲーム」である。日本でも、大津和子さん(現北海道教育大学)らが積極的に紹介・実践してきたものであり、授業で実施するということを想定した、典型的なワークショップのはしりであった点で、歴史的にも意義深いプランである。
ルールを簡単に説明する。
(1)いくつかの小グループに分かれる。
(2)あらかじめ決められた寸法・形状の「製品」(通常はボール紙などで作成する)を生産する。
(3)それを、市場で売り(ディーラー役がいる)、お金に換える。
(4)グループには、紙の枚数、定規や分度器、コンパス、鉛筆などの道具が不均衡に与えられている。先進国を想定したグループなら、道具がたくさんある。開発途上国なら紙や人員はあっても、道具がなかったり、紙さえなかったりする。
(5)NGO役を設定して、ニーズに合わない支援などを取り入れてもおもしろい。
(6)最後に稼いだお金を発表し、感想交流となる。
この貿易ゲームに中3を対象に、久しぶりに取り組んだ。英語科の教諭と一緒に英語の時間を使って実施した。英語科はふだんからTTで授業を進めているので、私を含めて3名の教師での実施である。
3人でファシリテーター役、市場役、それにNGO役を3学級で輪番で行った。
実におもしろい。まずワークショップ型授業の基本構造である「説明」「体験」「振り返り」が、端的に位置づけられている、完成度のプログラムであることを再認識した。特に、ワークショップが、そもそも「共同制作体験」であったことを考えると、話し合い活動などを中心とするワークショップ型授業よりも、本来的なワークショップの有り様に近い。
また、活動自体がエキサイティングでおもしろい。
しかし何よりもおもしろかったのは、最後の振り返り活動が、3者3様だったことだ。というか、新卒の教師にファシリテーション初挑戦をしてもらったのだが、やはり苦戦するのは、「振り返り」だということがよくわかったのだ。
終わった後、3人で話し合うと、ああすればよかったこうすればもっと意見を引き出せた、と、その新卒教師から、意欲的な「反省」が次々と出てくる。「説明」が難しいのかと思っていたら、実際は、「振り返り」が難しかった、という。
ワークショップ型授業の腕を上げる一番の方法は、自分がファシリテーションを体験すること。つまり、ワークショップ型授業運営の腕前の上達は「ワークショップ」的に行うのが一番だということが、改めてよくわかったのである。
貿易ゲームの詳細を知るには、下記から資料を購入するのが一番である。
ワークショップ型授業に取り組みたいと考える人なら、この「貿易ゲーム」はぜひとも体験しておくべきだろう。なお、私は、大津さんらと、数年前にd-net(北海道開発教育ネットワーク)というグループを立ち上げた。貿易ゲーム以外にも様々なワークショップ型アクティビティを提供しているグループである。興味のある方は、下記にぜひアクセスしていただきたい。
(5) 連載「若手教師に贈る 授業成立のための保護者対応術」
第10条 お詫びの電話をお願いせよ! 山口・岩国市立通津小学校 中村 健一
そこのお若いの。今日もわしの話を聞いてくだされ。
保護者同士の関係が悪くなるとキツイものです。教師はどちらの側につくわけにもいきません。できる限り未然に防ぐ努力をしたいものです。
たとえば、子ども同士のケンカです。
昔、クラスの男の子が取っ組み合いのケンカをしたことがありました。下校中、ささいな口ゲンカがきっかけで、NくんがIくんに殴りかかったのです。もちろん、Iくんも反撃しました。しかし、Iくんはアスファルトに叩きつけられ、頭から血が出るケガをしました。
養護教諭に見てもらったところ、幸いにもケガはたいしたことがありませんでした。
そこで、2人から話を聞きました。ケンカなので、もちろん、どちらにも悪い所はあります。お互いの悪い所を謝らせました。これで、子ども同士は解決です。
子どもを帰らせた後、さっそく保護者に電話をかけました。
まずは、Nくんの家に電話します。
『今日、下校中にNくんがIくんと取っ組み合いのケンカをしました。幸いNくんにケガはないようです。でも、ケンカの時は思わぬ力が入っている場合も多いです。後でどこか痛みだしたら、病院に連れて行くなりしてください』
最初に、事実を告げ、Nくんの体を心配しました。
『Iくんは、頭から血を流すケガをしました。Nくんに投げつけられ、アスファルトで頭を打ったのが原因だと思います。ただ、養護教諭に見てもらったところ、幸いにもケガは小さそうです』
お母さんは、ホッとされた様子でした。
『一つ間違えば大きなケガになるので、2人は厳しく指導しました。お互いに悪かった所を反省し、仲直りもしました。子ども同士の関係は大丈夫だと思います』
指導したことを伝えます。
『2人から話を聞いてみると、Nくんが先に手を出したようです。また、軽かったとはいえ、頭にケガをさせてしまっています。大変申し訳ないのですが、Nさんの方からIさんにお詫びの電話を入れていただけますか?』
低姿勢でお願いします。お母さんから、「もちろん!」のお答えをいただき、私も一安心です。
『ありがとうございます。では、よろしくお願いします。また、Nくんの体も心配しています。何かありましたら、御連絡ください』
お母さんからも「お電話をありがとうございまいした。申し訳ありませんでした」のお言葉をいただきました。
その後、すぐにIさんにも電話です。
『今日、下校中にIくんとNくんが取っ組み合いのケンカをしました。Iくんは頭から血を出すケガをしました。養護教諭に見てもらったところ、今のところ大丈夫そうです。ただ、頭なので心配です。何かあればすぐに病院に連れて行ってください』
まずは、事実を告げ、Iくんの体を心配しました。
『2人から話を聞きましたが、お互いに手を出しています。Nくんは幸いケガをしていないようです。しかし、一つ間違えば大ケガになるので、厳しく指導しました。お互いに悪かった所を反省し、仲直りもしました。子ども同士の関係は大丈夫だと思います』
Iさんには、「ケンカはどちらも悪い」ということを伝えました。
後は、もう一度Iくんの体を心配して電話を切りました。
Iさんは、お互いに悪いと思っています。そこに、Nさんからお詫びの電話がかかるのですから、2人の関係は悪くなりません。
Nさんに電話を入れると、「お詫びの電話をしたら、恐縮されました」とのことでした。これで一件落着です。
最近の保護者の中には、お詫びの電話を入れるという発想さえない方がいらっしゃいます。ケガをさせた子の保護者に電話すると、「で、先生、私はどうすればいいんでしょうか?」と相談されることもしばしばです。
お詫びの電話1つなければ、保護者同士の関係が悪くなる恐れがあります。そうならないように、お詫びの電話をお願いすることが必要ですね。
ケガをさせた子の保護者にはお詫びの電話をお願いしましょう。もちろん、「低姿勢で」が大切です。
(6) 常識ぽてち【やや日刊】 ♪2008-05-06(第1178号)
■硫化水素と亜硫酸ガス
硫化水素を発生させて自殺する事件が増えています。硫化水素は有毒ガスに値しますので、自殺するかどうかよりそれを発生させること自体犯罪となりますので止めましょうね。
硫化水素の化学式はH2S。硫黄のSの手は4本ありますがHは1本。Hが二つ結合しても手は2本余っています。だから反応(燃焼=酸化)しやすい。こういった酸素と反応しやすい気体は吸うと危険です。体内の酸素を奪って酸欠になるからです。一酸化炭素も同類。
硫化水素の特徴はその臭いです。よく「腐った卵の臭い」と表現されますが、これこそ硫化水素の臭いです。火山や温泉などで硫黄を噴出しているところでよくある臭いです。硫黄の臭いと誤解されることがありますが、硫黄自体は無臭なので、ほとんどがこの硫化水素の臭いを指しています。
硫化水素は嫌気性微生物が硫黄を分解することよっても発生しますので卵のほか硫黄を含む有機物が腐っても同じ臭い発します。糞やおならの臭いにも硫化水素は微量ですが含まれています。つまり、これを読んでいるあなたも体内で硫化水素を製造している。だから臭いけどなんとなく親しみのある臭い!?
硫化水素は燃焼しやすい物質でかつ有毒です。登山家の間では硫化水素が危険であることは事前知識としてもっています。空気より重たいので、風向きによっては山肌に沿って登山道に流れてくることもありますので、この臭いが強くなったら避難することが常識。昔あった山荘がいつのまにか移築されているのもこの硫化水素ガスの流れを避けるために行なっているのです。
燃えやすい硫化水素は燃焼(酸素と反応)して亜硫酸ガス(二酸化硫黄)になります。化学式はSO2。これはSの4本の手とOの2本の手がつながって安定していますが、水と反応して亜硫酸となりこれが酸性雨として環境問題になっています。
亜硫酸ガスも刺激臭で、硫化水素よりは毒性が低いですが、これも長時間吸い込むと呼吸器系に障害を起こし、濃い濃度の場合は死に至ることもあります。山の場合は硫化水素と亜硫酸ガスは一緒に流れてくるので、ともに注意しなければならない山の常識となっています。
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