(1) 初中教育ニュース(初等中等教育局メールマガジン)第93号 2008.7.10
□【トピック】教育振興基本計画が策定されました
〔生涯学習政策局政策課教育改革推進室〕
この度、教育振興基本計画が本年7月1日に閣議決定され、国会に報告されました。
教育振興基本計画は、平成18年12月に改正された教育基本法第17条第1項に基づき、政府が定める基本的な計画です。
この計画は、改正教育基本法で明確にされた教育の理念を踏まえ、教育再生の道筋を明確にするため、今回初めて策定されました。計画では、本年4月の中央教育審議会答申を踏まえ、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を示した上で、平成20年度から24年度までの5年間に取り組むべき施策などを記載しています。
文部科学省では、この計画を着実に実施し、教育の振興に向けて、一層の取組を進めてまいります。また、同条第2項では、各地方公共団体は政府の計画を参考にし、地方の実情に応じながら、各自の判断により「教育に係る基本的な計画」を策定するよう努めなければならないとされており、今後、各地方公共団体において、計画策定の動きがとられていくことが期待されています。引き続き、皆様方のご理解とご協力をお願いいたします。
(2) 日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第2033号☆
■「社会科の読解力」
西澤 俊英(滋賀県)
社会科における読解力は、さまざまな資料を活用する際に資料ごとに個別に発揮される。文章資料を読み取るときには、文字や文章の読解力が求められ、これは主として国語科の学習で培われる。また、グラフや図表、統計などの資料を活用する際には、算数や数学で身につけた数学の読解力が発揮される。写真や絵、イラストなどビジュアルな資料は、映像感覚が動員される。社会科の読解力とは、資料を読み解きながら問題解決を実現していく力である。
○読解力をどうはぐくむか
★資料にあたって問題解決しようとする意志力
★資料から事実を公正かつ多面的にとらえる力
★事実を操作し全体的な傾向性や特色を考える力
★学習問題の解決を導く力
★資料の限界性に気づく力
◆ねらいに即して多用な資料を活用し、有用な体験を味わわせるとともに、それらの資料の特性を理解させること、個々の形態の資料について、その見方や活用の仕方を丁寧に指導すること、資料を活用して問題解決する習慣を日常化すること。
◆資料を読み解く力は、設定された学習問題を解決するために必要とされるだけでなく、日常生活における問題や課題をよりよく解決し、充実した生活を送るために生かされる。
(3)日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第2037号☆
■「教育実習のアラカルト」(14)上西 好悦(京都府)
◆教材観・生徒観・指導観の関係について
指導案の書き方について述べさせていただいています。前回は「教材観」について述べましたが、「難しい内容だった」という連絡も受けましたので、今回は少し違った手順から説明したいと思います。キーワード的には「簡潔に説明」とでもしておきましょう。しかし「簡潔」=「安易」ではないよう
にしたいと思います。
先述しましたが前回のテーマは「教材観について」でした。教材観とは、という問を挙げるならば、「教材の内容,性格,系統などについて指導者の考えを示す」という様な答えになります。要するに授業担当者が、授業で扱う教材について、どの様に解釈し、どの様な分析をし、授業としてはどう考えているのか等を書き記します。逆の切り口から言うと、教材観を見れば、授業者がなぜその教材を授業で扱うのかをが分かる、と言うことなんです。単に教科書にあるから、教科書の順番で、というような理由で授業を作るのでないのです。年間の教科としての目標があり、教科で扱う内容が指導要領に示され、それに沿って授業で扱う単元の設定・年間の授業計画が作られます。
ここの部分は誰が作成しても大差はないと思いますが、単元の指導計画やそれぞれのひとコマの授業については、指導する教師の解釈が入り、その結果として授業者の個性が出るのです。単元全体に対する教材観や、それを指導時間に割った1時間分の教材観は、授業者によって違ったものになって良いのですし、そうなるはずです。(もちろん限度もありますが) もしそれが許されなかったとしたら、おそらく授業は画一的なものとなり、その授業は誰が行って授業を行ったとしても「同じ」になるのではないでしょうか。
そういう授業の例としては「プリントの穴埋め」的な内容が挙げられますが、そのような授業内容では授業者による授業展開の工夫も期待できず、結果として薄い内容の授業に陥るのではないかと思います。
さて、授業者が分析したその教材ですが、抜かしてはならないのは「どの様な児童・生徒に教えるのか」という点です。いくら教材についてその教材の重要性などを説いたとしても、授業を受ける立場の児童・生徒を授業者が分かっていなければ、結果的に授業者の独りよがり的な展開の授業となります。
教材観で分析した教材内容を、「この様な現状の児童・生徒らに教える」という視点で、児童・生徒の分析を行う必要があるのです。それがないと効果的な授業は望めないはずです。極端な社会科としての例を挙げますが、小学校一年生の授業の導入部分に、「昨日から北海道で行われているG8なんですが、みなさんニュースを見ていますか」なんていう話題を持っていっても「難しすぎる」という理由でダメでしょう。
授業を受ける児童・生徒が「その授業(教材)を受ける前までにどの様な内容を学んでいるのか」「その授業(教材)に関してどの程度理解しているのか」「その授業(教材)を受ける態度(授業に向かう関心意欲)はどの様なものか」等を分析しておく必要があるのです。
児童・生徒の分析の結果、その教材を効率よく理解させる為に必要であるから、敢えて班学習をさせたり、OHPやビデオ教材やPCを使ってプレゼン的な授業を行うということなのです。児童・生徒の分析無くして、期間巡視にしても班学習にしても安易に入れるべきことではないと思います。この「敢えて班学習をさせたり、OHPやビデオ教材やPCを使ってプレゼン的な授業を行う」ということを「授業者の指導観」「授業者の指導意図」と言うのです。
「こんな内容を」「こんな児童・生徒に」「こう教える」というのが、教材観・生徒観・指導観の関係だと言えます。
授業の目標についての記述が後になってしまいましたが、もちろん授業には目標があります。主観が入りますが、その目標は英語や数学等のように「単元の目標」が先にあって、その目標を達成する為に授業の教材を考え授業展開を考えるというものと、社会科等の様に教材を持ってきてからその単元としての目標を立て、次に授業として単元計画等を立ててそれぞれの時間に目標を設定するという教科の違いがあるのではないかと思います。どちらにしても授業の目標は必ず設定され、それに基づき「評価の観点」も設定されます。
今回は前回の反省から、ひとつの項目の説明ではなく、教材観・生徒観・指導観の関係について関連させて述べてみました。それでも難しそうですが、この関係の理解をすることで、授業の展開をより意味を持たせて考えることができると思うのです。
以上が今回の原稿なのですが、以上の内容をふまえて書かせた指導案の教材観・生徒観・指導観を、字数が多くなることを危惧しながらも、敢えて載せさせていただきます。単元の教材観・生徒観・指導観・目標を掲載しますが、もちろん「本時の教材観・生徒観・指導観・本時の目標」が次に続きますが字数の関係で割愛しています。参考にしていただければ幸いです。
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(1)単元名「第二次世界大戦と日本」
(2)単元設定の理由
1教材観
本単元は「近現代の日本と世界」という大項目の中にある「日本がアジアで行った戦争」という中項目の内容である。この中項目では、昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き、中国などアジア諸国との関係、欧米諸国の動きに着目させる。また、経済の混乱と社会問題の発生軍部の台頭から戦争までの過程を理解させ、戦時下の国民の生活にも着目させる。ここでの狙いは、世界の動きと我が国との関連を重点的に捉えさせるとともに、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させ、国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であると気づかせることである。
第一次世界大戦の終結によってヨーロッパ諸国の復興が進み、日本は戦後恐慌が発生した。1929年にはアメリカで世界恐慌が始まり、各国は様々な対策を進めた。ドイツ・イタリアは独裁政治による軍事力の再強化によって国力を高めていった。日本経済も世界恐慌の影響を受け、行き詰まっていく。
そこで、日本は資源の豊かな「満州」の支配を進め、不景気を解決していこうとする。満州事変を起こした日本は国際的に孤立し、ついに日中戦争に突入する。日中戦争は予想以上に長期化し、日本は苦しむ。そこで、日本は援蒋ルートを断ち、東南アジアの資源を確保するために、日ソ中立条約を結んだうえで南方進出を図る。一時は東南アジア・太平洋の島々の広い範囲を占領し、アメリカとの戦争を始めた日本であったが、徐々に勢力は衰えていく。
そして、ミッドウェー海戦での敗北以後、日本の戦局は悪化する。ポツダム宣言を黙殺した日本に対しアメリカは原爆を投下し、ついに日本はポツダム宣言を受諾することになる。
この戦争は何のため行われたのか、を考えることは大変意義がある。いつまでもこの出来事を風化させないためにこの単元の学習は欠かせない。
2 生徒観
本学級の生徒は、この4月に学習旅行で沖縄へ行っている。そのため、下調べなどを通して沖縄戦を中心とした、第二次世界大戦については既に学習している。沖縄では資料館を訪れるだけでなく、実際にガマの中に入って戦争の話を聞くという貴重な体験をしてきている。そのときは、話の途中で恐がる生徒もいて生徒の多くは戦争の恐ろしさを肌で感じてきたところである。
戦争についての知識は、平和学習のほか、自分で本を読むなどして詳しく知っている生徒もいる。教科書の内容についてはほとんどの生徒が理解できている。授業中は、私語もほとんどせず集中力が高いが、挙手をする生徒は限られている。それは、発達の段階であり、授業に対する意欲がないわけではないと考えられる。全く発言しようとしない生徒でも一生懸命メモをとる姿が見られるからである。また、発問は漠然としたものや、単純で答える価値のないものについては、くいついてこない。
3指導観
この単元で扱う時代は、短い期間に歴史を動かすような重要な事柄が凝縮されている。そのため、細かいところまで授業で取り上げる必要がある。例えば、日本が降伏に向かうところであれば、出来事の年月日まで取り上げていきたい。その際、その出来事によって歴史がどう動いたのかを考えるような場面をつくりたい。ただ単に出来事の順番を覚えるような授業では、生徒に社会科の魅力は伝えられない。その背景には何があるのかを取り扱うことによって、生徒の知的好奇心をくすぐりたい。本学級の生徒は平和学習によって、戦争についての知識はある程度もっている。また、自主的に本を読んで、詳しい知識を身につけている生徒もいる。そのため、発問は一問一答のものや、単純すぎるものを避け、生徒が答える価値があると思えるような工夫をして投げかけたい。
(3)単元の目標
・世界の動きと我が国との関連を重点的に捉え、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解する。(知識・理解)
・出来事を暗記するだけではなく、その背景を調べてみようとしているか。(関心・態度)
・資料集の地図やグラフから適切な情報を読み取り、整理することができる。(技能・表現)
・国際協調、国際平和の実現に努めることがなぜ重要なのか考えることができる。(思考・判断)
(4)ワールド・ニューズ・メール ☆ 金曜スペシャル版 2008.7.4 No.897
[2]特集 ◆中国傾斜強めるASEAN
●日本離れが顕著に
●経済だけでなく文化面でも
日本の外務省は先月、東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国で実施した世論調査結果を発表した。それによると、「日米中のうち、現在重要なパートナーはどこか」との設問に対し、ASEAN全体で中国が30%を占めトップ。次いで日本が28%、米国が23%となった。また、「今後重要なパートナー」は中国が33%、日本23%、米国13%で、中国への傾斜ぶりと日本離れが顕著になっている。(バンコク・池永達夫)