(1)【世界の新聞「101紙」の視点】〜2009年6月1日(月)の紙面より〜
27日付「南ドイツ新聞」(ドイツ紙)『自暴自棄の独裁者』の社説。
『北朝鮮のように近代から隔絶した国は世界に類を見ないし、権力にこれほどひどく抑圧され、強制的に思想改造された国民は他にない。しかし実際は、北朝鮮のありようを本気で心配する者はほとんどいない。』
『北朝鮮はたしかに、韓国や日本の正当な怒りを無視してかかり、核兵器を持とうとしているが、原子爆弾の照準を近隣諸国に向けようとしているのでないことはまず間違いない。そんなことは自殺行為に等しいからだ。』
『また北朝鮮は北東アジアでの地域的な覇権が目当てでもない。平壌の権力の関心は「国内」に集中している。中国はたしかに地域に対し、今も影響力を維持しているが、これが北朝鮮の行く手をさえぎってわけではない。』
『では、核実験の目的は何か。今度の核実験は、前回の実験が期待した効果をあげなかったための「口直し」ではない。金正日の論理は別なところで働いている。』
『要するに北朝鮮の権力は核兵器をコケ脅しの材料にしなければならないほど弱まっている。北朝鮮は今、政権の移行期にある。抑圧をほしいままにしてきた政府に今、危機的な状況が近付きつつある。』
『世界は、北朝鮮の国境のうち、極端な閉鎖状態に置かれた地域は別として、息もつかせぬテンポで様変わりしつつある。』
『特に変化が著しいのが北朝鮮の北部国境周辺だ。国境の向こう側は伝統的に貧しい中国の省がひしめいていた地域だが、そこも今では、著しい中国経済の発展の影響で、人の眼を欺くばかりに経済的に発展している。』
『問題は、中朝両国間の市場規模の天と地ほどの違いだ。北朝鮮側にとっては、中国から原材料が「浸透」してきても、価格が高すぎて買うこともできない。』
『加えて、金正日が病に倒れた昨年夏以来、独裁者の健康状態は北朝鮮のエリートの知るところとなった。』
『また、北朝鮮の軍部と秘密警察の間でいわば「禄」の取り合いで闘争が激化し、これも情報としてもたらされるようになった。最高権力者の健康に合わせて、「システム」の支柱が揺らぎ始めたのだ。』
『こうした場合、軍部こそがスムーズな政権移行にとって不可欠な存在となる。金正日が、核実験の威力を利用してシステムの立て直しを図ったとしても不思議でない。』
『注目されるのが核実験で面子をつぶされた中国の出方だ。この状況下での制裁は北朝鮮のトップにとり大打撃となるのは間違い。』
『軍縮が世界の潮流となりつつある中で核実験を強行し、世界を暗転させた金正日に援助の手を差し伸べる者はいないだろう。』
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これまで、国内紙や中国紙の社説から北朝鮮の核実験について見てきたが、今回はドイツ紙社説の視点だ。ちなみに、南ドイツ新聞。「左派リベラル紙」という位置づけのようだ。
日本国内の新聞では、北朝鮮が核実験を行った理由として主に、
「国際社会への反発」「アメリカに対するアピール」「存在感の誇示」「後継体制作り」ということが挙げられていたように思う。
南ドイツ新聞ではこれについて、「政権維持とスムーズな移行」「システムの立て直し」ということがその理由と見ているようだ。『注目されるのが核実験で面子をつぶされた中国の出方だ』の一節が、興味深い。
先日当コーナーで、この問題を取り上げた中国の新聞社説について、『北朝鮮に対する「友人からの厳しい忠告」というところなのだろう』と、コメントしたが、もしかしたら本当に怒っているのかもしれない。
『この状況下での制裁は北朝鮮のトップにとり大打撃となるのは間違い』と社説にあるが、これまでかばってきた中国にソッポを向かれてしまったら、確かに北朝鮮にとっては痛い。
客観的に考えて、現行システムの「金王朝」が未来永劫続くとは、どうしても思えない。
その「転換期」は、案外間近に迫っているのだろうか。
(2)1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』35,000部まぐまぐID:0000094236
今日の一冊は・・・
「本当はヤバくない日本経済」三橋 貴明、幻冬舎(2009/04)\1,470
【私の評価】★★★★☆(82点)
■日本のニュースや報道番組を見ていると、ニュースの内容とキャスターの一言コメントばかりで論調の根拠となるデータがないことが多いものです。
この本は、そうした社会問題についてデータを基に考えよう!という一冊です。
■まず、著者は「日本は外需依存ではない」と断定しています。
輸出のGDP比率は、日本15%、米国8%、ドイツ40%、中国37%、韓国38%、ロシア27%。
したがって、「円高で輸出企業が困る」のは事実としても、それが最重要課題ではないということです。
問題は、為替ではなく、絶対需要が減少しているということ。
日本の製品は高くなっても売れるのですが、
需要自体が減ったら、これは売れないということです。
・日本は外需依存国家ではない・・・
輸出企業が苦境に陥っている最大の理由は、円高ではない
未だかつて、通貨高で経済破綻した国は存在しない(p24)
■また、「日本が米国の言いなり」という表現については、
日銀の米国債の保有残高が減っているという事実から
これを否定します。
米国の言いなりは、米国債の保有残高を増やしている
中国である。これは、中国の外需依存であることと、
関係があるのでしょう。
・日本銀行は大々的な為替介入を実施した04年をピークに
米国債の保有残高を減らし続けている・・・
飼い犬のように米国債を購入し続けていると言えば、むしろ
明らかに中国の方である。(p79)
■著者の結論は、
日本のマスコミは信用できないということです。
マスコミの論調は、
「円高・・・日本は破綻する」
「円安・・・日本は破綻する」
といったように、どうなっても日本はあぶない、
政府の対策は悪い、というものです。
つまり、これは報道ではなく「プロパガンダ」なのでしょう。(後略)
(3) Japan On the Globe(599) 国際派日本人養成講座
人物探訪: 世界を駆ける「中小企業のおやじ」
〜 スズキ会長・鈴木修 「心と心が通い合うことが重要だ」と、インドの国民車を育てた「中小企業のおやじ」は語る。
■1.「鯨」と「蚊」■
空前の不況に苦しむ自動車業界で、スズキの健闘が光っている。トヨタの営業利益が、前年の2.27兆円の黒字から一転して460億円の赤字に転落。日産も14百億円近い赤字を出した。ホンダは2輪車の好調で、19百億円近い営業黒字を確保したものの、前期比では80%減。そんな中でスズキはさすがに対前期比では約半減だが、770億円の利益を出した。
今から28年前の昭和56(1981)年、スズキはゼネラル・モーターズ(GM)と提携した。世界一だったGMと、日本の「最後尾(1,p4)」にいたスズキの提携は、いかにも不釣り合いだった。新聞記者たちは「スズキは、GMに飲み込まれてしまうのではないか」と聞いた。
その質問に、スズキ社長だった鈴木修は、こう答えた。
GMは大きな鯨です。一方、スズキは、メダカよりも小さな蚊(のような存在)です。メダカなら鯨に飲み込まれてしまうかもしれませんが、小さな蚊なら、いざという時には空高く舞い上がり、飛んでいくことができます。
その鯨が、大嵐の中で海中深く沈み込み、浮上の様子さえ見せないのに、小さな蚊は強風の中でもなんとか飛び回っている。
鯨が再浮上するには、スズキの持つ軽自動車を低価格で作る技術が不可欠だろう。「俺は、中小企業のおやじ」と自認するスズキ会長兼社長、鈴木修のリーダーシップのなせる業である。
■2.掘っ立て小屋のオートバイ工場■
鈴木修がスズキに入社したのは、昭和33(1958)年だった。
大学卒業後、別の企業に勤めていたのだが、2代目社長の鈴木俊三の娘婿となるのと同時に、スズキに入社したのである。28歳だった。鈴木は入社した時の印象を、こう語っている。
オートバイの生産工場に行って大変なショックを受けました。工場といっても木造の平屋、いや、そんな立派なものではなく、むしろ掘っ立て小屋といったほうが正確でしょうか。・・・
組み立てラインも、ベルトコンベアーではありません。工場では、オートバイを載せた手押しの台車を組長の笛の合図で従業員が押していました。「手動コンベヤー」で動いていたのです。[1,p72]
当時は、日本全国に30社以上のオートバイメーカーがあり、その多くが浜松に集中していた。地元の浜松工業学校(現・静岡大学工学部)の卒業生が、戦争からの復員後、ホンダに続けとばかり、次々に会社設立をしていたのである。スズキもその一つだった。
ホンダの本田宗一郎もやはり作業服を着て、どう見ても町工場のおやじさんとしか見えないのに、「今にウチは世界一の二輪車メーカーになる」と事もなげに言っていた頃である[a]。日本の自動車業界の夢多き少年時代であった。
以下タイトルのみ紹介します。
■3.「あると便利な」アルト■
■4.「1部品につき、1円コストを下げよう」■
■5.「真剣に話を聞いてくれたのはミスター・スズキだけだった」■
■6.「個室で、社員と幹部とのあいだに壁をつくるのは認めない」■
■7.「息子の悲願が、ようやく今日、実りました」■
■8.「心と心が通い合うことが重要だ」■
2007(平成19)年は、インド独立60周年だった。それを記念して『ザ・タイムズ・オブ・インディア』という大手新聞が「今日のインドをつくった人、育てた人」という特集を組んで、100人を選んだ。外国人はわずか3人だったが、その一人に鈴木が選ばれた。[1,p208]
(4)常識ぽてち【やや日刊】 ♪2009-06-03(第1242号)
■取引証明用の秤(はかり)
秤(はかり)にはいろいろなものがありますが、どの秤でもその計量した値、つまり重さを取引(有償・無償にかかわらず)に使う場合には「取引証明用の検定を受けて合格した秤」を使わなければいけないことになっています。
たとえば、対面式のお肉屋さんで豚こま200g買うときにグラム数が表示される秤は取引証明用の秤でなければなりません。これは計量法という法律で決まっているのです。秤がないからといって、その辺にある体重計で代用してはいけないのですね。
で、その取引証明用の秤ですが、機種によって使用できる地域が決められています。
地域区分例:
(1)北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県
(2)宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県(薩摩地方に限る)
(3)東京都(八丈・小笠原支庁に限る)、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
その秤を使用する場所が、たとえば茨城県の場合は(2)の表示のある機種を使います。北海道の場合は(1)の表示にある機種。高知県の場合は(3)の表示にある機種を使います。
(3)の表示のある機種を(1)の北海道で使うとどうなるのか?
アンサー⇒正しく軽量されません。これは、地域によって「重力加速度」が違うからです。
重力加速度って?
地球は自転していますので赤道方向に遠心力が働きます。赤道に近いほど遠心力は強いのでその分重力加速度が少なくなり、同じ質量のものは軽く表示されます。北海道で量るよりも高知県で量ったほうが軽く表示されるのです。だから正確さを要求される取引用の秤はその地域にあわせて正しく計量できるように調整されているのです。
ちなみに、ロケットの打ち上げ基地のある種子島。何の理由も無く「種子島」なのではなく、南のほうがロケットが軽くなって打ち上げ易くなるので「種子島」なのですね。日本だけでなく、世界各国打ち上げ基地は赤道に近いところで行われているようです。
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