(1)メールマガジン「授業成立プロジェクト(JSP)」第191号 2009年7月1日発行
1 連載・こだわりの教育技術(その3)
「1秒先の姿をほめる(2)」 宮城・仙台市立上杉山通小学校 中嶋 卓朗
連載「こだわりの教育技術」、今回は中嶋卓朗さんの登板です。
中嶋さんは「1秒先の姿をほめる」言葉かけの効用について、次の2つを挙げます。「やらされ感がなく、自分から動くこと」「微笑がみられること」。中嶋さんの指導に気持ちよく従う子どもたちの姿が目に浮かびました。教室に「安心感」を生む、教育技術の1つですね。
私も意識して教室で使ってみようと思います。 (中村 健一)
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前回、ADHD児Aへの先輩教師の対応から学んだ【1秒先の姿をほめる】言葉がけについて書きました。今回は、A以外の子どもたちへの対応について書きます。
Aへの対応を重ねているうちに、【1秒先の姿をほめる】くせがついてきました。
頭の中に、子どもの1秒先にすてきな姿を見る回路が開発されたという感覚です。
当初、A以外の子どもたちには何の気なしに「もう少し丁寧に書くといいね」とか「背中を伸ばして」とか「もっと大きな声で」などと声をかけていました。
【今の姿を直す】声がけです。
子どもたちもそれに従って行動を修正していました。
Aへの対応と他の子どもたちへの対応を平行して行っているうちにだんだんと垣根がなくなってきたというのでしょうか。
子どもたちの間を歩きながらA以外の子に【1秒先の姿をほめる】声がけをする機会が増えていきました。
【1秒先の姿をほめる】ことで、Aは笑みを浮かべて自分から行動する。そんなAの姿を見ることは私にとって喜びでした。
【今の姿を直す】声がけと【1秒先の姿をほめる】声がけ。喜びを得られる方を自然と選択するようになったのだと思います。
A以外の子どもに声がけした例を挙げます。
・場面
○私の声がけ
●子どもの反応
・帰りのあいさつの時、「起立」と声を出した係の子に向かって
○「お、今日は元気なあいさつが聞けそうな予感がする」
●にかっと笑い、張りのある声で「明日も元気に来て下さい。さようなら!」
・算数の時間。なかなか定規を使わない子がフリーハンドで書いた線を消した瞬間
○「お、定規を使って引こうとしているね」
●定規を持って線を引く
・おしりをいすから落として座っている子が、足を動かした瞬間
○「お、いい姿勢で座ろうとしているね。」
●座り直す
・漢字練習中、弱い筆圧でさらさら書いている子。2行目に移った瞬間
○「おお、いい字を書こうとしているね。・・・うん、黒々としたカチッとした字だ」
●強い筆圧で、線一本一本をしっかり書き始める。
・野菜が苦手な女の子。おかずに箸を付けようとしたとき
○「お、今日は、いつもより多く食べようとしているでしょ。」
●「先生、今日はけっこう食べたよ」と見せに来る。
【今の姿を直す】声がけの時と違うのは
・やらされ感がなく、自分から動くこと
・微笑がみられること
A以外の子どもたちの反応も【1秒先の姿をほめる】方に軍配を上げました。Aが気づかせてくれた【1秒先の姿をほめる】は一般化できる教育技術なのだと感じています。では、どのように【1秒先の姿をほめる】のか。
どんなタイミングで、どんなスタンスで、どんな感覚で
子どもたちの反応を確かめながらの試行錯誤から3つのポイントがあることに気付きました。
1 流れの変化点をとらえる(タイミング)
2 指示せず気付く(スタンス)
3 まずほめて、そのあと「導く」(感覚)
次回、くわしくふれたいと思います。
☆★☆ コメント ☆★☆
おもしろい!実は、普段よく使っている技だが、「1秒先の姿をほめる」というとらえ方でまとめたのが新しい。書かれている通り、「やらされ感がなく、自分から動くこと」が大きい。特に、小学校高学年から中学生にかけては、自尊心を適度にくすぐる。ほめる材料ができ、注意する材料が減らせる。教室が明るくなる。
(2) ODAメールマガジン □●□ 2009年6月24日発行 第162号
○羽ばたけイラク (原稿執筆:在イラク日本国大使館 高元次郎 一等書記官)
誰かが言った、「イラクは80s(エイティーズ)の国だ」。僕にとって80sと言えば篠塚、中畑、クロマティを擁する読売ジャイアンツやつくば万博を何故か思い出す。しかし、ここイラクでいう80sとは、そんな華やかなイメージとは無縁の、80年代以降全く整備されていない国を意味する。
1990年のイラク軍のクウェート侵攻により経済制裁が加えられ、その後2003年まで繰り返された戦争により、イラクの経済活動は衰退し、国内のあらゆるインフラ施設は放置された。下水施設、発電所、港湾、通信網など生活に必要な施設の老朽化は激しい。
イラク人にとって日本は憧れの国である。同じように敗戦を経験したものの、華々しく戦後復興を遂げ、一躍国際社会のスタープレーヤーにまで成長した。イラクは日本をモデルとしている、そう誰もが口を揃える。
そんな期待に応えるかのように、日本も積極的に支援している。2003年には総額50億ドルのODAを約束し、2009年6月までに約40億ドルを超える支援を実施してきた。米国に次ぐ2番の支援国だ。確かに大金であるが、イラク復興のため、そして、なにより長期的・戦略的に日本イラク経済関係を構築していくためには必要な先行投資だ。
例えば、イラク南部のバスラにあるウンム・カスル港湾を日本の円借款で整備している。地図で確認して頂きたいのだが、この湾が商業港湾として機能すれば、ペルシャ湾からイラクを経由してトルコ、
更にはヨーロッパへ抜ける一大物流ルートが完成される。
「日本の支援が完成すれば、バスラはドバイになれる。ドバイにあってバスラに真似できないのはビーチだけだ」。バスラの人間は鼻息荒く本気で語る。ドバイとまではいかなくてもウンム・カスル港湾が整備され、バスラがイラクの物流の拠点として機能すればその経済的効果は計り知れない。もちろん、資源輸入国である日本にとっても、
石油埋蔵量が世界3位とも言われるイラクと強力なタッグを組んでおくことは後々役に立つ。いずれこのバスラが日本とイラクの貿易の拠点となる日が来るであろう。
真夏の最高気温が59度とちょっと観光は不向きだが。
☆★☆ コメント ☆★☆
イラクのこうした情報はなかなか手に入らない。イラクの人が日本に憧れているのなら、日本としても何とかしてあげなくてはいけない。
8 研究会情報
(1)第46回教育者研究会
平成21年7月30日(木)13:00〜16:30
江南市民文化会館 2階大会議室
講師 野口 芳宏 先生(植草学園大学 発達教育学部教授)
テーマ「道徳教育の今昔@,A」 模擬授業形式でとお願いしました。