1教師力アップセミナー 野口芳宏先生
平成21年10月12日 小牧中学校において行われた野口芳宏先生のお話しを抜粋して紹介します。まずは午前の部から…
○ 伝承と伝統はどう違う?言葉にこだわるのが国語の素養。こだわることで関心が生まれる。まずこだわること。
たとえば、『論語』。辞書で引くと、孔子の言葉や行いを弟子がまとめたものとあるが、論と語はどういう意味か。
『論語』は孔子の著書ではない。キリストなど偉い人は書を書かないで弟子が書く。弟子が、いろいろ論じ合った結果、固まった話し。それが論語である。
○ 伝統。統とは何か?統一、統括、大統領、すなわちまとめるということ。統一が取れて、見解も統一されている。揺るぎない、不動の価値を持っている。伝統は、昔もあったし、今でもある。
伝統的な言語文化は、古ければいいというものではない。評価が定まったもの。
戦後の国語教育は実用主義に傾いた。「体」は、かつては「體:骨が豊か」と書いた。意味がわかる。「かなづかひ」も現代的になった。そうして、古典は日陰の存在になった。
しかし、教育基本法も改正され、戦後60年たって、日本の原点に帰ろうということになった。
長い時間の中で、価値があるというものをとりあげていこうと。そこで、論語を取り上げた。
○ 古典は、長い歴史の中で評価が揺るぎないということはすごいこと。
聖書はすごい。指導要領は10年で改訂されるが、聖書は2000年変えていない。論語も同じ。そういうものに触れる学習は大事なこと。
安岡正篤の孫(安岡定子)が子ども論語塾をやっている。
○ 指導要領の改訂はいらないのでは?小中は基礎基本。変わらないもの。10年ごとに変わるのは応用。実際に改訂されるのはわずかな一部。マスコミはそこだけに目がいく。しかし、変わらないところが大事。軸足がぶれないようにしたい。
○ 世田谷区教育委員会が「日本語」教科書をつくった。特区を申請し、授業で使っている。論語を素読し、楽しんでいる。意味は後からでよい。世田谷の子どもたちの学力は違ってくるだろう。
内容は忘れてもいい。声を出して読むことを楽しめばよい。繰り返していると覚えてしまう。
時の流れはあてにならない。小・中は、基礎をしっかり教えればよい。時代を超えて変わらないことを叩き込めばよい。新しいことだけやっていると、子どもが悪くない。
※ この他、論語の内容について、お話をしていただきました。
午後の部 規範意識を高める道徳の模擬授業
○ 規範意識には、ここだけは一致しているという部分がいる。核となる価値。
戦前は2つあった。一つは「孝」。教育勅語にも書かれている。今はそれすら揺らいでいる。
「孝」は絶対か?○の人は絶対主義、×の人は相対主義。
小中学校は、絶対主義。しかし、今は、色々言い合う。自信がなくなる。学校では、「どんなに虐待をしても、親をありがたいと思え。」これを教えるのが大事。小さいころから相対主義を取り入れるとだめ。こういうと、すぐに反論が来る。しかし、核となる価値は教えなきゃだめ。
Q 少女の売春。絶対にいけないか? A 全員○。
しかし、よいという学者もいる。宮台真司という都立大学助教授は、人権主義、性の自己決定と言って援助交際を養護した。これでぐらつく。取り巻きも多い。
東京都が援助交際を規制しようとしたら、大人が悪いという論理。だめなものはだめという、核となる価値観を持っていないとだめ。
例 専業主婦の扶養控除は働いている女性からの搾取という意見をどう思うか?
全員が働くべきだ。保育園をもっと増やせ、という意見が出る。家庭が大事だという価値観をおしえなければだめ。
神戸の事件、淳君の事件。
Q 学校に、親が(容疑者の)子どもの写真を見せてほしいといったら見せるか。
A 見せる 、見せない 半々
実際は 教え子を疑うことはできないといって見せなかった。見せていれば、殺されなかったかもしれない。これも、核となる価値観を校長が持っていないとだめ。
「孝」の部首は?
子。年寄りがやらせることではない、子がさせてもらうもの。「孝」を復活する必要がある。
親が喜ぶことをしていれば間違いない。これだけを押さえれば、規範意識の大方が抑えられる。
万引きグループがいた。一人だけやらなかった。なぜか聞いたら、「お母さんの顔が浮かんだから」しかし、他の5人は、「浮かんだ」と答えた。浮かんだからやりたくなったと答えた。親子関係が無関係ではない。
考という思想は、親からは教えにくい。第三者しか教えられない。
「先生のいうことなんか聞かなくてもいいから、親のいうことだけは聞け。」そうすると、親が先生のいうことを聞けという。まず学校から、不動の価値を教えるのが出発点だ。
2つめは「忠」。真ん中の心。国家のこと。忠臣、忠義と使う。この忠と考が日本の共有財産。
今は二つともない。核が揺らいでいる。だから、なかなか治らない。本当に大事なことを教えてきたか。
人生有限。これも大事な認識。「限」があるから、「人生をどう生きるか」、これを話し合うことになる。大方の人は、いろんな人は手に入れようとするからおかしくなる。お金、物、知識など。
死ぬときには、全部手放す。何が残る?
手に入れたものはすべて失い、与えたものだけは残る。
人に与えた、やさしさ、親切、技術、知識は残る。こうしたことがわかっていると、整理できる。
規範意識。遅刻や忘れ物は現象だ。その大元をみるべき。親を大事にしている子は崩れない。「価値の多様化」などの言葉がはやる。しかし、小学校では、絶対価値を叩き込むべきだ。
互敬。H10年から、国語の指導要領に「伝え合う力」という言葉が入った。互いに尊重し合うから伝わるという発想。
心のコップは上向きに。コップが下を向いていると、何をやっても入らない。うえを向いていると謙虚。どんどん伸びる。
台湾の1年生と日本の1年生はどっちが賢い?台湾の1年生の教科書はすべて漢字だ。教えればできる。
平等は人間が最近つくった論理。差別は、神がつくった自然の摂理。
何でも平等が正しいとは限らない。
2 金融経済教育研究会 参加報告
10月29日の金融経済教育研究会に行ってきました。
印象に残ったのが、(株)野村総合研究所の奥田 誠氏『人口減少社会が日本を変える』〜2015年、アジアの盟主としてナゴヤから新たな「開国」の時代へ〜
なぜ2015年に注目するのか?
○ 昭和22年から24年生まれのいわゆる「団塊の世代」がすべて65歳以上になる。急速な高齢化が進む。
○ 世帯数がピークになり、内需が頭打ちになる。70代以上の単独世帯が増えると予測される。
→ 日本全体の世帯の高齢化による家計支出減退(現在は330兆円。5兆円の減少)
→ 伸びるもの:保健医療
→ やや減少 :光熱・水道、家具家事用品、食料
→ かなり減少:教養・娯楽、被服・履き物、交通・通信、住居
○ 公共建築物(インフラ)の一斉更新の時期
700兆円に上るインフラ。60〜70年代建設分が更新投資が増大。
→ インフラクライシスの予兆:落橋事故、道路陥没、トンネル崩壊、モルタル落下など
→ 人材危機:インフラ運営の人材の高齢化。人材不足。
○ BRICs等の新興国がさらに成長
→ 日中のGDPは逆転。
○ 開かれた東アジア圏の構築を目指して、経済連携が進展(2015年にASEANに経済共同体設立)
まだまだありました。
3 記号の名前
[新・火曜の会メールマガジン] Vol.10 2009/10/13 より
[2] 明日に使えないICTムダ知識(第9回)〜 記号の名前 〜 奥村英樹
コンピュータで使われる記号にも、あまり知られていない(正式な)名前があります。JISC(日本工業標準調査会)で制定している規格に「JIS X 0201」があり、これにはその名称が大文字の英字で記されています(厳密には、スペースとハイフンも使われています)。
それでは、みんなで記号の名前を当ててみましょう。
問題 次の4つの記号について、JISでの正式な名称を選びましょう。
1 [ . ]
(1) DOT (2) PERIOD (3) FULL STOP (4) POINT
2 [ @ ]
(1) AT (2) AT MARK (3) COMMERCIAL AT (4) CIRCLE AT
3 [ # ]
(1) SHARP (2) NUMBER SIGN (3) SQUARE (4) HASH MARK
4 [ " ]
(1) DOUBLE QUOTATION (2) QUOTATION MARK (3) APOSTROPHE
なんとなく当たり前のようでいて、「もしかして?」と思うようなものもありますね。
1 [ . ]
最近はURLやメールアドレスなどで「ドット」と、よく呼ばれています。英文では「ピリオド」、小数では「テン」とも読みますが、答えは (3) FULL STOP です。イギリスで使われる表現だそうです。
2 [ @ ]
メールアドレスで「アット」と読むことが多いですが、正式には (3) COMMERCIAL AT です。商売に使うためで、単価記号とも言われています。
3 [ # ]
HTMLで色を指定するときに、 #FF00FF(紫色)などのようによく使います。(1) SHARP は、音楽での読み方です。答えは (2) NUMBER SIGN で、番号を表す記号とされています。
4 [ " ]
プログラムやHTMLで、文字列の前後を囲んだりしてよく使います。「ダブルクォーテーション」と読まれる方も多いかと思いますが、(2) QUOTATION MARK が正解です。ちなみに、[ ’ ] は SINGLE QUOTATION ではなく、APOSTOROPHE です。
「要するに通じればいいのでは?」とは思いますが、(正式な)名前がわかると、なんとなく正体を見たような気になりませんか?
☆★☆ コメント ☆★☆
何気なく読んでいてハッとした。
よく思うのは、木や花の名前。道沿いの木や花のなを知っているとどんなに楽しいかと思う。
これは、人の名前も同じ。学校の児童・生徒全員の名を言えるか?全員言えると、そして名前で呼んであげるとどんなに楽しいかと思う。
やはり、知っていると言うことは大切なことだ。
4 「指導と評価大学講座」聴講報告W
島原先生の報告も今回で最後となりました。
[1]「指導と評価大学講座」聴講報告 その8(連載 全11回)
─ 教室でできる特別支援教育 ─ 曽山和彦(名城大学准教授)
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1 気になる子が気にならない学級 その1
〜秋田県A小学校・教師がロールモデルを見せる〜
○ 教師が気になる子の「気にならない点」を見つけ,「ほめる,勇気づける,認める」働きかけをしている。
○ 教師が気になる子の「気になる点」は,「非言語・対決アイメッセージ・確認」による働きかけをしている。
・「非言語」……近くに行って肩をポンポンとたたく,指さして見せる,など。
・アイメッセージの「アイ」は目ではなく,「私」〈トーマス・ゴードン〉……「先生はとてもうれしいな」「今,とても悲しい」「○○君,ありがとう」→自分の素直な気持ちを開示する。
○ 教師をモデルとして「ミニ先生」が教室にあふれている。
2 気になる子が気にならない学級 その2
〜三重県いなべ市立山郷小学校・授業づくり〜
○ 学習規律・ルーティンワーク
○ リズムとテンポ
○ 1指示1動作
*気になる子が生き生きと取り組める授業は周囲の子どもにとって,さらに意欲的に取り組める授業となる。
○ 45分集中して学ぶ1年生,発言回数70回を超える3年生
3 通常学級における特別支援教育が進められるために 〜A小・山郷小の共通項〜
○ 特別支援教育コーディネーターが機能している。
○ 校内委員会が機能している。
○ 個別の指導計画の作成&機能している
4 なぜ障害理解が大切なのか〜奈良の少年事件から「草薙厚子著:僕はパパを殺すことに決めた」〜
○ 少年は精神鑑定で広汎性発達障害」を指摘されている。
○ 広汎性発達障害の人は,言葉の意味をそのまま受け取ってしまうことがある。
→父親から「成績が悪ければ殺す」と脅かされて・・・・。
○ 障害が問題や事件を起こすのではなく,周囲の理解や対応の不十分さが問題や事件の呼び水となりやすい。
5 個別支援を考える 〜障害を理解する〜
○ ある保護者の話
「うまく指導してもらえなくてもよかった。でも,子どものことは理解してほしかった」
○ 杉山登志郎2003(あいち小児保健医療総合センター)
「広汎性発達障害の児童に出会わないことなどあり得ないので,すべての教師は最低限の知識を身につけてほしい」
○ 自閉症者の自伝がそのヒントとなる
ドナ・ウイリアムズ 「自閉症だった私へ」新潮文庫
6 発達障害者支援法 2005.4施行
○ 支援法のおける発達障害定義
・「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害を言う」
○ これまで教育や福祉の支援対象となっていなかったものに対し,国,地方公共団体の支援責務を明らかにした。また,学校教育における支援,福祉増進を目的とするため,対象はやや狭義になっている。
7 対象児童生徒への基本的な支援 〜自尊感情&ソーシャルスキルをはぐくむ〜
○ 日常的な注意,叱責により自尊感情低下(2次障害)
・ほめる,勇気づける,認めることで2次障害を防ぐ。
・未学習,誤学習のソーシャルスキルを教える→教師の腕の見せ所
8 自尊感情をはぐくむ 〜2次障害のブロック〜
○ いいとこ探し……エンカウンター
・いいところのレベルを下げる……「毎日学校へ来る」「給食を残さず食べる」
○ リフレーミング……枠を作り直す
・「短所は飽きっぽいとこと」→「それは○○という長所でもあるよ」
○勇気づけ
・失敗しても自尊心,所属感を失わない態度
・「ありがとう」「うれしい」「助かった」という言葉かけ
9 具体的対応法
○ ADHDへの基本対応
・脳の実行機能に弱さがあるため,自らの動機づけが困難。故に報酬(ごぼうび)で行動をコントロールすることが基本
・改善目標を1つ決め,達成したらシールやスタンプの報酬
・注意や叱責の何倍もの賞賛を
・できていること,できそうなことを賞賛する
・賞賛,叱責は直後に,そして明確に
・指示は必ず復唱させる
・クールダウンの場を設ける
○A児の事例(パソコンが大好き)
・約束カード……朝の歌をみんなといっしょに歌う/集会に本を持たずに参加する/など,できたらシール1枚→5枚たまるとパソコン15分券がもらえる。
・パスポート……「保健室へ行きます」「職員室へ行きます」
・ソーシャルスキルトレーニング……A児だけでなく学級全体を対象として実施
有効なテキスト「ロン・クラーク みんなのためのルールブック」
○ 一斉指導における個別支援の配慮(諸準備等)
・学習指導……学習指導に合わせたプリント準備(2・3学年下げた内容)
・行動面 ……ときどき立ち歩く程度は目をつむる/学習ルール,対人ルールは指示する(違反のときは非言語メッセージを送る)
・対象児を馬鹿にする,えこひいきすると反発場合もあるため,学習や行動の「練習」であることなど,他の児童への説明は必要。また,後の対象児童保護者トラブルを防ぐため,保護者面談も必要。
・個別の指導が必要な場合,他の児童への課題も準備しておく。
10 まとめ 〜通常学級における特別支援教育が進められるために必要なこと〜
○ 対象児童生徒の障害を理解する→研修を
○ 担任が一人で対応できるかどうかを共通確認する校内体制→体制づくりを
○ 学級がすべての児童生徒にとって満足する場所になっている→学級づくりを
○ お互いに「助けて」と言える校内の雰囲気がある→職場内のコミュニケーション促進を
○ 管理職,担任,特別支援コーディネーターなど,それぞれの腕の見せ所
[2]「指導と評価大学講座」聴講報告 その9(連載 全11回)
─ 学ぶ意欲と学力の向上 ─ 桜井茂男(筑波大学教授)
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子どもの学力の低下が懸念されている。学ぶ意欲を高めることでそれに対処しようとしているが,そもそも学力と学ぶ意欲にはどのような関係があるのか。
質の高い学力を上げるには,どのような意欲が必要なのか。さらに,学力さえ上がればそれでよいのか。
1 わが国の子どもの学力低下問題とは
(1)学力の低下を確かめるにはどうすればよいか
・同じ問題での正答率で比較する……もっとも厳密か→問題の適切性が問われる。
・国際調査……順位の変化や平均値を一定にしたときの得点の変化
・数字の上では変化が見られても,ほんとうに意味があるのか
(2)実際の調査結果はどうか
・国内の調査……同一問題で正答率が上がった調査(苅谷「学力の低下の実態」)もあれば,下がった調査(H15「小中学校教育課程実施状況調査」)もある。
・国際学力調査……基礎では高く一定TIMSS,応用では低下PISAが見られる。
*参考 TIMSS数・理小4と中2/PISA読解・数理リテラシー15歳が受験/
・全体的に言えば,やや低下が見られるということか。
2 学ぶ意欲(主として「自ら学ぶ意欲」)を高めれば学力は上がるのか
(1)国際調査に見る学ぶ意欲と学力の関係 TIMSS2007の場合
・国,あるいは地域を単位として,学ぶ意欲と学力との関係を見る調査
・各国の中2生が数学を「楽しい」と思う割合と平均点の関係
〈先進国:日本・アメリカ・シンガ・韓国・台湾など〉→負の関係
〈発展途上国:カタール・アルジェリア・ガーナ・エジプトなど〉→正の関係
・安心して学ぶ環境がないため,十分に学べない国と,学ぶこと意外に興味の持てる
ことが多い・外からのプレッシャーによって学ぶ国の存在
(2)わが国の調査に見る学ぶ意欲と学力の関係 2007桜井調査
・正の関係……小6と中1対象
・アメリカでも国内調査では同様の結果
・自ら学ぶ意欲が高まると学力も上がるという研究結果も報告されている。
3「自ら学ぶ意欲」で学ぶことのメリットとは何か
・自ら学ぶ→内発的(おもしろい,楽しい)/自律的(目標にそって学んでいく)
・自ら学ぶ⇔外発的意欲(やらされる)
(1)適応的であること
・学力が高く,健康(特に精神的に)
・外発的意欲……学力が高いこともあるが,精神的に不健康(うつ・自尊感情低・自己受容不可)/学力に注目しすぎるとゆゆしき事態を引き起こす。また,身につけた知識が剥落しやすい。
(2)学力の質が高いこと
・学習内容を深く理解し,創造性も高い。
・覚えたことを使って(覚えたことを材料にして考えてみる)みることによって,覚えたことが定着する。また,考えることを楽しめるため,独創的なアイデアが生まれやすい。
(3)自ら学ぶ意欲へスムーズに移行すること→キャリア教育(就労まで)
・学ぶことから働くことへのスムーズな移行が可能になる。
・自発性がパーソナリティの一部になる。
(4)(1)についての研究例
「中学生における学ぶ理由と学力及び精神的健康との関係」
・4種類の「学ぶ理由」とその自発性の程度
ア おもしろから学ぶ(もっとも自発的)
イ 将来こうなりたいから学ぶ(自発的)
ウ ほめられたい(よい成績をとる)から学ぶ(外発的)→イに移行する場合もある
エ プレッシャーが強いから仕方なく学ぶ(もっとも外発的)
・期末テストの成績
アイウが高いほど学力はよい。その効果はイウで高い。
・精神的健康
アイウが高いほど勉強に自信がある。その効果はアが最も高い。
イウエが高いほど勉強のストレスが強い。その効果はエが最も高い。
ウエが高いほど勉強不安が強い。
・アの理由が,学力でも精神的健康でもよい効果をもたらすと予想したが,どちらかといえばイの方がよい。中学生になると,将来こうなりたいというような目標を持って自ら学べることが,学力にも精神的健康にもよい。
・人は学ぶ理由が一つだけではなく,いろいろな理由をもっている。その意味では,自発的な学ぶ理由が優位になるような学ぶ理由の持ち方でよい。
4 どのようにして「自ら学び意欲」を育てるか
(1)発達を考慮して育てる
・幼保……しつけだけではなく,知ること(学ぶ)ことの楽しさをいやなことでもやる→お母さんのために・お母さんを喜ばせたい→「人のために」の芽生え
・小学校低学年……学ぶことのおもしろさを強調/おもしろいから学ぶ/考えることのおもしろさ
・小学校高学年……将来こうなりたいという目標(自己実現のための人生目標)/キャリア教育
いやなことでも目標達成のために自発的に学べる→必要だから(自己判断できる)
(2)賢い教師が必要
・個々の子どもをよく見て,適切な指導ができる教師
・自ら学ぶ意欲を教育によって適切に喚起,維持
(3)安心して学べる環境が必要→意欲があってもこれがないとだめ
・家庭でも学校でも……勉強できる場所/教室/図書室など
・人的環境……サポートしてくれる親や教師,友だち
(4)学習習慣の確立
・小学校低学年のうちに
・自分ができることは楽しい→興味・関心
[3]「指導と評価大学講座」聴講報告 その10(連載 全11回)
こころと社会性を育てる道徳教育 ─道徳重視をどうとらえるか─ 押谷由夫(昭和女子大学教授)
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1 道徳教育は一人一人の幸福を追い求めるもの → 自分の生き方を考える
(1)あなたは,いま幸せですか
・精神的幸福感
(2)どうすれば幸せに生きられるか
・自分のよさに目を向ける→よさを広げるために弱さに立ち向かう
・感謝する心とともに,心の支えを持つ
・夢を持って,まじめに生きる
・子どもとともによりよい生き方を追い求める
・子どもを丸ごと認め,よさを生かして課題に立ち向かえるようにする
2 新学習指導要領で特に重視されていること
(1)人格形成の基礎の確立
・道徳性を基盤とした知・徳・体の調和的発達 ・言語環境
・文化,伝統の重視 ・学校,家庭,地域の連携
(2)社会的自立力の育成
・集団自治能力をはぐくみ,伸ばす
・規範,規律の重視→よりよい学級・学年・学校
・協同創造活動能力 ・キャリア教育
(3)社会の変化への対応
・国際化/情報化/環境問題/福祉問題
・学年掲示板に地図を掲示……子どもたちで状況をリアルタイムで表示していく
(4)習得・探究・活用力の育成
・ノート指導/予習,復習/学習習慣の確立/探究学習,プロジェクト学習
(5)特別支援教育の理念の実現
・共生(交流学級)/個別の指導計画/個別の教育支援計画
3 子どもの品格を育てよう
(1)美意識をはぐくむ
・環境の美しさ,行為の美しさ,心の美しさ,表現の美しさ,心理の美しさなど
(2)精神的豊かさを求めるようにする
・健全な価値意識を持つ
(3)美しい心の内面を具体的な行為として表せるようにする
・周りの人々に心の豊かさを感じ取ってもらえるような生き方ができる
(4)豊かな教養を身につける
・芸術や文化に触れ,身につける
・日常の生活を豊かにする(特に学校,家庭,地域)
4 社会的自立力を育てよう
(1)基本的な生活習慣を確立すること
・自分のことは自分でできる/身の回りを整えることができる/生活のリズムを確立する
(2)集団や社会の一員としての役割と責任を自覚し,実践すること
・かかわりの中で生きる自分を自覚する→まわりに影響を与える自分,与えられる自分
・集団や社会(文化,自然,人々など)に支えられて生きている自分を自覚する
・集団や社会の一員としてしなければならないことを自覚し,責任を持って行う
(3)個の成長と集団の成長を同時に考え,自己形成を図ること
・自分のよさや特徴を把握する/集団や社会のしくみを理解する
・自分のよさや特徴を生かして集団や社会に参画する(主体的かかわり)
・調和的に道徳性を身につける……道徳的価値の調和的内面化,そのための自己評価力の育成
・将来への夢や大志を持つ
5 各教科等の特質に応じた道徳教育を具体化しよう(真の学力を育てる)
(1)各教科の教育活動の目的を押さえる
・知識や技能の習得に関わるものと態度形成に関わるものが必ず含まれている。
→「態度形成」は見落とされがち,教科を通して「生き方」を
(2)授業の態度や授業形態の工夫
・姿勢を正す/相手の話をよく聞く/真剣に考える/相手にわかるように表現するなど
・共同学習/小集団学習/全員参加の授業/一人一人が生かされる授業など
(3)各教科等の固有の学習における道徳的「気づき」や「興味関心」の喚起
・学習内容に関わる知的な気づきや興味関心と同時に道徳的気づきや興味関心が持てるようにする。
・そのことで教科の学習が単なる知識技能の学習から,豊かな人間形成とのかかわりでとらえられるようになる。
(4)道徳的価値を正面から取り上げる学習が各教科の固有の学習の中でできないかを考える。
・作文「思いやりについて作文を書こう」「人間としての魅力を探ろう」/図工「思いやりのポスターを描こう」「思いやりの紙芝居をつくろう」/体育「思いやりの心を体で表現しよう」/家庭「愛情を伝える料理をつくろう」
(5)各教科等の学習と関係する人物を紹介する
・その学習と生き方の魅力について話す機会を持つ……人物の生き様
(6)各教科等の評価の中に「道徳的学び」を位置づける
・授業に関する子どもの自己評価に道徳的観点を入れる。
・4観点に加え,道徳的学び,(例えば「協力・助け合い」)を加える。
→4観点は個人の世界(内面)にとどまる。
6 心に響き残る道徳の授業を積み重ねよう
→奇をてらう必要はない
→内容項目に正面から向き合う,じっくり自分と向き合う(5との違い)
(1)資料との会話を深め,心に残す授業を工夫する
・資料の世界に浸る/登場人物の立場に立って想像し,創造的に考える
・資料の世界や登場人物の生き方や考え方と対話しながら自分を見つめる
・資料を通して,資料を媒介とした話し合いを通して,資料と自分自身との対話を通して新しく学べたこと,心にとめておきたいことなどを記録し,積み重ねていく。
(2)予習と復習のある授業を工夫する
→道徳ノートをつくろう……1時間分3ページ(「事前」「時中」「事後」),資料なども貼っておく。
・考えてきたこと,調べてきたこと名アドを踏まえて授業する。
・授業の後,もう一度授業をふり返って授業で学んだことや考えたこと,気づいたことなどをまとめる。
・さらに,授業の後に取り組んだこと,気づいたこと,考えたことなども記入する。
(3)道徳的価値について継続的,発展的に学べる授業を工夫する
・特に複数回取り上げる内容項目は,3〜4回分の授業とその間の学習をまとめた冊子をつくるとよい。
・「思いやり」に関する学習の冊子→心のノートも活用
・総合単元的道徳学習の工夫
(4)教科等との関連を密にした授業を意図的に計画する
→道徳的実践力の育成を多様に考え,多様に育成する
・道徳と特別活動,道徳と総合,道徳と外国語活動,道徳と国語,道徳と理科など,意図的に関連を持たせた指導を工夫する。
・それぞれの指導のポイントを押さえて道徳の時間の特質がより生かせるようにする。
→道徳で学んだことが道徳の時間を離れて生かされる
(5)自己評価を深め,豊かな自分づくりの要とする授業を工夫する
→道徳の評価は,子どもたちの自己評価を評価するという視点が必要
→道徳の「指導と評価の一体化」…道徳の評価は難しい→「人格」に関わる
・1時間1時間を積み重ねていけるようにする……自己評価を積み重ねていく
→自己課題を見つける…自己指導(教師のアドバイスが必要)
・道徳の時間の学習や自己評価をふり返り,成長を確認できるようにする。
・トータルとしての自分が見つめられるようにする。
→基本的な道徳的価値全体から自分を見つめる
(6)学級経営の中核となる授業を工夫する
・このような学級にしたい,このような子どもたちを育てたいという願いが子どもたちに伝わる授業を年度初めに行う。
・学級目標などに関わる道徳的価値の学習を総合単元的に1ヶ月くらいの期間で計画する。
→道徳の時間が「要」となるようにする
(7)学校,家庭,地域連携の要となる授業を工夫する
・教師,子ども,保護者,地域住民が郷土資料や学校資料をつくる
・地域の人材活用,地域への授業の公開
・道徳の時間を保護者や地域の人といっしょに創っていく
・道徳の時間の学習の様子を学校通信や学級通信などで知らせたり,公共施設などでパネル展示などする。
[4]「指導と評価大学講座」聴講報告 最終回(連載 全11回)
地域・保護者と連携した学校づくり 野口克海(大阪教育大学監事)
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1 はじめに
・ゆとり教育……マスコミが勝手につくった言葉/文科省は「ゆとりの中で生きる力を」→詰め込み教育の反省
・今までの教育……「おぼえましたか(知識)」「わかりましたか(理解)」「できましたか(技能)」→「はい, 次に進みますよ」
・これからの教育……学校と保護者だけで進められるわけがない。
2 なぜ連携なのか
(1)学校・教職員の現状
・極端から極端にぶれる教育改革→現場の人間はぶれないでほしい
・学校教育が「知識・理解・技能」だけなら「地域の力」はいらない
・考える教育,生涯学習の基盤,生き方を学ぶ
(2)子どもたちの現状
・孤立した子どもたち……子どもたちの2極化(富裕層と貧困層)
・生活体験の差,学習環境の差
3 大阪府の地域教育協議会(すこやかネット)
・1中学校句に50万円の予算
・府下350中学校区
・地域協議会……地域のあらゆる団体が加入/事務局長にはいい人を
・双方向の連携……子どもたちは地域に貢献(一人暮らしのお年寄り訪問など)
・ギブアンドテイクの関係,求めてばかりではだめ
・町ぐるみで子どもたちを教育
・地域の人が入れば入るほど先生は楽になる……任せてしまうことでやりがいへつながる
4 兵庫県の「トライやるウイーク」
・トライ(体験)をやる
・のぼりを立てて実践……地域へのPRとなる/地域の人も協力,参加する/地域をあげて子どもたちを応援
5 学校に地域をつくっちゃえ
・憩いのゾーン……コンビニ・レストラン
・子育て支援ゾーン……診療所・託児所・デイケアセンター
・スポーツ健康ゾーン……グラウンド・体育館・プール
・生涯学習ゾーン……公民館分室・図書室
・学びのゾーン……教室
*これらをすべて学校と一体化(同じ敷地内)
6 余談
○表現力……タイの交換留学生のあいさつ→タイの中学生は何も見ないでりっぱに自分の思いをあいさつできたが,日本の中学生は紙を見ながらたどたどしくあいさつ
○時代の要請……英語とコンピュータ
○無着成恭……墓参りしたことのない子(畏敬の念)
○ヤマアラシのジレンマ…友だちとの好ましい距離感
○「説明」と「いいわけ」……苦情が来る前に保護者に説明/苦情が来てからでは何を言ってもいいわけ
先手必勝/今日すぐ行くから教育/行ったら10分でもよいから子どもの勉強を見てやる
○保護者との面談(家庭訪問・個人懇談会なども含めて)
……子育ての苦労を共感的に,手をつなぐため
5 役立ちWeb特集
(1)あみだくじドットコム ネットあみだくじ
インターネット越しに抽選ができるあみだくじが登場。あみだくじの「横棒」の配置や、下端のアイテムの「位置」を、コンピューターが自動的に決める。離れた人たちが、公平な仕組みで、抽選によって物事を決められるとのこと。
(2)音声を逆再生する“逆さ言葉”専用のICレコーダー
音声を録音して逆再生する“逆さ言葉”専用のICレコーダーが登場。、日本語は母音と子音に分かれているため、ローマ字を逆さ読みした発音で再生される。「うに→いぬ」、「あかさか→赤坂」、「うれちぃや→愛してる」のように聞こえる。何に使えるか?う〜ん。
(3)ブログ「〜俺もないけど心配するな〜」
(4)MSの無料ウイルス対策ソフト公開
Microsoftは無料ウイルス対策ソフトを公開。正規のWindows利用者であれば無料で利用可能。ウイルスやスパイウェア、その他の悪意のあるソフトウェアからPCをリアルタイムで保護する。
(6)教育課程部会 児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループ(第6回) 配付資料
(7)梶田叡一先生の教育コラムバックナンバー
「基礎学力を考える」連載1
「基礎学力を考える」連載2
(8)教員免許更新制等の今後の在り方について
(1)抽出方式、来年度にも=全国学力テスト−文科副大臣が方針
鈴木寛文部科学副大臣は8日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、「まだ検討中だが、民主党の事業仕分けでは抽出(方式)だから、その方向に沿って内部の詰めをしている」と述べ、2010年度にも現行の全員参加方式を取りやめる可能性を示唆した。文科省内で初開催した政策会議後に記者団に語った。
同省は小学6年と中学3年の全員参加を前提とした全国学力テストを07年度から実施している。毎年60億円弱の予算が掛かり、民主党は7月に公表した事業仕分け結果で「抽出調査で十分であり、毎年実施する必要があるかも検討するべきだ」と指摘していた。
鈴木副大臣はまた、公立高校の実質無償化法案は臨時国会ではなく、次期通常国会に提出する方針を改めて表明した。
政策会議には与党議員約50人、与党議員秘書約100人が参加した。
時事通信「内外教育」メールマガジン 2009/10/8 第267号より
☆★☆ コメント ☆★☆
政権が変わって政策が変わるのはある程度仕方がない。
しかし、教育制度が変わるのはなぜか?免許更新制も始まったばかりでもう廃止の報道が流れた。
日本は政教分離ではなかったのか?先人は、教育と政治を切り離そうとしてきたのではなかったのか。
教育に人事権と予算編成権を与え、政権政党とからできるだけ独立した組織にしたほしい。