(1) 常識ぽてち【やや日刊】 ♪2010-07-12(第1263号)
■ルーシーとアルディ
ルーシーはエチオピアで発見された約320万年前の猿人の化石。身長は1.1m、体重29kgのこの女性の猿人は、骨盤と足の骨から推測して確かに直立歩行していたと推測される現代人類のルーツ。ちなみにルーシーの命名は発掘現場の宿営地で流れていたビートルズの曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんだものだそうです。
ルーシーをはるかに上回る440万年前のものとされる化石も発見されています。身長1.2m、体重50kg程度の女性とされるこの猿人はアルディピテクス・ラミダス猿人と呼ばれます。なので、愛称「アルディ」。
人類の起源は約770万年前とされ、その頃の一番の近縁はチンパンジーです。よくゴリラとチンパンジーを「猿」として比べますが、チンパンジーはゴリラよりもむしろ人類に近い近縁なのです。そして人類に次に近いのがゴリラ、そしてオランウータンと続きます。
770万年前から400万年前くらいまでは、人類の祖先とチンパンジーが交雑する時代となります。つまり、パン君(NTV 天才!志村どうぶつ園)とあなたは同じ祖先かもしれません!?またルーシーもアルディも女性であることから、もしかしたらあなたの曾々々…おばあさんかもしれません1?
ネアンデルタール人は約20万年前に出現し2万数千年前に絶滅したとされるヒト属の一種。最近、このネアンデルタール人もクロマニヨン人と交雑の可能性があると発表され、そうなると我々現代人の祖先にネアンデルタール人を持つ人もいることになります。
クロマニヨン人は約4万〜1万年前に存在し、その後消滅したとも、現生人類に吸収されたとも言われています。1万年前というとつい最近のことですねぇ。人類の祖先に関してはまだまだわかっていないことが多く、今後の発見に期待されます。
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(2) 教育情報 Magazine/ある小学校教師の独り言
[1]授業中における教師の言葉がけを意識して〜考える授業への手立て〜
岡山県・津山市教育委員会指導主査 高岡昌司
4月から指導業務に携わるようになり,いろいろな授業を拝見することが多くなりました。授業中に生起する教師の言葉がけは様々です。私は,今,教師の言葉がけが少し気になっています。教師の言葉がけが「考える授業づくり」において大きなポイントになっていると感じるからです。皆さんは,どのようなことを意識して,授業中の言葉がけを行っているでしょうか。
1時間の授業の中で,励ましや誉める場面は多々あります。私たちは,ともすると励ましや誉め言葉を使うという段階で留まっていないでしょうか。その子の内面にまでその言葉は届いているのでしょうか。その言葉はズレていないのでしょうか。時に立ち止まり,自己内省することが必要だと感じます。どの子に,どのタイミングで,何のために,どのような言葉がけを意識すれば,自ら考えることに直結するのでしょうか。私なりに取り組んできた,意識してきたことを紹介します。
〜社会科授業における教師の言葉がけを例に〜
社会科は社会認識を踏まえた公民的資質を育成する教科です。簡単に言うと,社会事象をもとにして,より良いくらしを築く知恵を創造することです。そこで,子どもと生活の結びつきの中から,子どもたちが消費者として生活者としての自分自身を見つめるような言葉がけを大切にしたいと考えます。特に,話し合いの場において,「自分がとる立場(主張や意見)」,「主張するその根拠」「よりよいものを創り出そうとする態度」などに視点をおいた言葉がけを意識しています。子どもと教師,子ども同士がお互いの立場を尊重しながら共同してより良い社会のあり様を考えることが必要であると思うからです。
次に,授業場面をもう少し限定して考えてみます。
1)問題をもつ場面
一枚の絵や資料をもとにその子がもっている経験知や既有知識などの情報をどれだけ引き出せるかがポイントとなります。「数・量」,「目のつけどころ」,「疑問や気づき」を大いに誉めることで事象の様々な面が見えてきます。出てきた感想や意見をカテゴライズする中で,「A君の疑問から〜」,「Bさんのこだわりは〜」など,一人の子又は,複数の子の問題意識に焦点化し,クラス全体の学習問題となるような言葉がけを行います。
2)問題を追究する場面
問題が明確になると必ず家で調べてくる子がいます。まずは,そのことをおおいに認め取り上げることを意識します。インターネット資料や,図書資料はもちろん,実際に相手先に電話をしたり,尋ねたりするなどして調べたことはなるべく具体的な方法も含めて,紹介しています。次の日や後日,同じようにまねた子にもその行動力をしっかりと誉めるのです。そうすることでその子自らが手に入れた資料や情報という意識が芽生えます。発言の際,その資料はその子の根拠として活用され,足で稼ぐことの重要性を実感します。これらの励ましや誉め言葉が学習活動を進める大きな原動力となります。
3)問題について議論する場面
私は,基本的に,議論を行う時に前もって座席表(A4紙に座席の順に子どもの立場や考えを記入したもの)をつくります。調べてわかったことを発表するだけなら必要ありませんが,追究活動から得たその子の考えや意見の広がり等をある程度掴んでおくためです。
話し合いの中で,座席表をもとに,発言されない意見(特に,発表しにくい子)を取り上げたり,同じ(違う)考えをつないだりするための教師用のデータとしています。
ここでは,子どもに十分しゃべらせたり,考えさせたりする場や機会を与えることが大切です。教師と子ども,子ども同士で共に学ぶという構えをつくるのです。その言葉がけとして,「Cさんの意見をどう思うか」,「同じ(違う)考えのD君はどうか」など一人の発言をみんなで分かち合えるように働きかけます。また,一人の子の資料や考えにこだわる場を設定することもあります。例えば,「Eさんの資料によると〜」,「F君の考えに賛成か?反対か?」など意図的に取り上げることで,取り上げられた子は自分の意見や資料が,みんなの役に立ったと感じます。周りの子にとっても「G君の意見のおかげで,気づけた」という意識をもつのです。例え,その子から出されたものが一般的な資料や意見であっても,Cさんの資料・Fくんの意見という位置づけをすることで,子どものこだわりや意識が変わるという手ごたえを感じています。その気にさせるということです。
4)かかわりを深める場づくり
かかわりを深めるには,わからないことや,間違っているかもしれないことを遠慮なく出し合えるような学習集団・雰囲気が重要です。私は,45分間ずっと座学で学習を進めるだけでなく,同じ意見や立場同士が自由に席を離れ交流したり,黒板前に集まったりするなど,ちょっとした動きを取り入れる言葉がけをしています。このような言葉がけは子どもの緊張をほぐし,身体をひらく上で大変有効だと感じています。全体の中で発言しづらい子にとっても,小グループでの交流は意見が出し易いようです。また,活動中の様子を取り上げ,全体の中で認め励ます言葉がけを行います。例え,考えが間違っていたり,不十分であったりしても自分たちの力で考えたという自信と安心感につながっているように思います。動きのある授業やメリハリある授業には教師の言葉がけは重要です。
以上,今回は社会科における実践を紹介しましたが,もちろん他教科でも同じ場面は多いです。いずれにしても,教師の言葉がけがその子の願いに直結するものであるためには,授業中はもちろん生活場面においてもその子をしっかり探らなければなりません。教師の言葉がけが妥当かどうか常に問い直す視点が必要です。そのためには,その子との対話や振り返り,表現物などに見られる子どもの変容に敏感でありたいものです。その子の内面に迫るには,ハウツーではない教師の日々の絶えまない努力が求められます。
[2]授業中における子どもの身体性に着目して 〜 考える授業への手立て 2 〜
岡山県・津山市教育委員会指導主査 高岡昌司
前回に続き、「考える授業への手立て」として、教師の言葉がけと共にターニングポイントとなっていると思うことがあります。
それは、子どもたちの身体性に関することです。
最近は、「子どもをじっと席につかせておくだけでも大変」という声をよく聞きます。一人ひとりに対する支援のニーズが増え、学校現場は本当に大変です。授業中の教師の様子をみると、特に、T・Tや支援員さんが入っている授業では、授業を進行する教師と、「ちゃんとしなさい」「前を向きなさい」などの声かけや姿勢を正すことに終始している教師という場面を良く見かけます。
しかしながら、考えてみると、どの子でも45分なり50分ずっとよい姿勢のまま座っておくのは苦痛ではないでしょうか。脳科学の研究からもじっと座って考えるよりも動きながら考える方が脳は活性化する?とも・・・言われます。
授業は動と静、メリハリが大切です。私は、授業の中で、もっと動きのある授業展開をすることが、発問とともに必要だと思うようになりました。豊かで自由な発想は子どもが身体をひらいている状態の中で表現されるものではないでしょうか。もちろん子どもの集中力が高まっている時は無理に動かす必要はないと思いますが、日常的な授業の中で心の開放を与え、授業としてもメリハリをつけるためにも、ずっと座学という学習活動(形態)では難しいのではないかと思うのです。
今回は、先達の授業に学びながら、私なりに実践してきた一例を紹介します。
(1)発問に対し、挙手だけでなく、意見をもった子は次々と起立させる。
(2)起立した子は、自由に動くこと(相談すること)を保障する。
(3)1時間の授業の中で、必ず小グループの活動を位置づける。
以上、動きをつくる活動を授業の中で、意図的に仕組むということです。
(1)について、挙手だけで進める授業では特定の子に偏りがうまれ、動きがつくりにくい面があったり、単調な授業の原因につながったりします。教師からの指名や列指名などを取りいれながら、合わせて、「意見がもてた人は立ちましょう」と少しでも考えが持てた子には次々と起立させます。座っている子は、周りの子が起立するにつれ、次第に考えざるを得ない状況になります。ある意味子どもを追い込んでいくのです。なかなか立てない子へ、教師が支援や助言に入ります。
教師の発問に対する子どもの意思表示は挙手が一般的で、圧倒的に多いのですが、起立させることで動きが違ってきます。何でもかんでも、ずっとというわけにはいきませんが主要な発問やしっかりと考えさせたい発問において、起立させることで、授業の雰囲気や子どもの反応が変わります。しゃべりはじめは子ども自らが「はい」という返事をした人から発言します。譲り合いの気持ちも生まれます。
(2)について、起立した子は起立している者同士で、自由に意見交換をしてもよいこととします。座っている子へのヒントや言葉がけも授業のじゃまにならない範囲(子どもなりの授業全体への配慮)で認めます。ここでどの程度時間をとるのかなどは学習内容やその場の雰囲気、状況によってかわりますから、毎回同じというわけではありません。45分の内3〜5分のこともあれば、10〜15分以上のときもあります。また、そのまま席に戻らず、集まったその場で発表をさせることもあります。
例えば、算数で早く問題が解けた子は、発表の仕方をノートに書いたりすることもありますが、同じ考えの友達を探し、お互いにやり方を確認しあうという活動を取り入れています。一見ごちゃごちゃするように感じるかもしれませんが、できた子ができていない子にヒントを出して教えたり、黒板に発表をしたりするような動きが生まれます。自分の意思でどのような動きをするのか考えさせることにもつながり積極性が生まれます。
もちろん、学習のまとめや意見の整理をするときなどは一旦席に戻り、ノートに書かせるなどのメリハリはつけます。
(3)については、答え合わせや、交代読み、議論などの意見や立場が分かれる時などに、小グループで話し合いをさせます。(2)と重複する面もありますが、ここでは隣同士の交流や、ミニミニ班と称して、席が近い4人組での交流、教室を真二つ、あるいは四隅に分けての交流、身体だけ移動しての交流、黒板前や席の周りに集まっての交流など様々な形での交流を仕組むのです。交流するパターンをある程度システム化させておくことで僅かな時間でさっと動き、その中で話し合います。だらだらと長時間はとりません。もちろん、話し合う必然性があることが前提ですが・・・。国語や社会科の話し合い(討論)などでよく実践しました。
以上のように、1時間の授業の中で動きをつけることが、子どもの身体をひらき、心の開放につながりやすいと考えています。授業の雰囲気をやわらかくし、何でも話せる自由な場づくりを意図的につくりだすのです。このような指導を進めていくことで、いつしか友達同士で意見交換をすることが当たり前になってきます。最初は男女や好きな者同士で集まる傾向がありますが、ここに対しては、当然、自由に相談できることの意味や話し合いの意義を伝えながら、指導をいれていきます。
「考える力」を育てる授業づくりでは、子ども同士の対話をどのタイミングで、どのようにシステム化していくのか重要であるように思います。(実際は試行錯誤の日々ですが・・・)
カルテによる座席表指導案で有名な築地久子氏や服部英雄氏(兵庫教育大学附属小学校)など先達の実践に学びながら、子どもの身体性という視点から「考える力」について私なりに取り組んだものです。