(1)ぶんけい web site
梶田叡一先生の教育コラム
「『言葉の力』を考える」連載2
「『言葉の力』をより深くとらえるために」
(1)「言葉の力」の2面性
子どもを賢くする、これは教育の本質に関わる目標です。誰にでもこの思いはありますが、具体的にどうすればよいか、何に着眼したらよいのかが、問題なのです。
着眼したいのは、「言葉の力」です。この「言葉の力」には、実は2つの面があります。
1つは、論理的な意味での「言葉の力」です。きちんと読みとること、きちんと書き表すこと。そのために概念を、論理を、大事にすることです。5W1H的な分析的な思考を、言葉によってフルにはたらかせることです。そしてきちっと読み取り、きちっと書き表すことです。今までの国語の指導では、ややこの概念の指導、論理の指導が弱かったと思います。
もう1つは、イメージや連想に関わる「言葉の力」です。「メタファー」(隠喩)で表したものをどう読みとるか、「メタファー」を使って何を表すか、つまり文学的な意味での「言葉の力」です。これは、なかなか一筋縄でいきません。
□□□この続きは
「学校用教材」−「梶田叡一先生の教育コラム」でご覧ください□□□
(2)JMM [Japan Mail Media] No.605 Extra-Edition
□■ 院内感染の届出義務化と刑罰化 ■□ 井上清成(弁護士)
1.院内感染への過剰反応
帝京大学医学部附属病院(東京・北区、以下帝京大病院)で発生した多剤耐性アシ
ネトバクター・バウマニの院内感染につき、9月初めに病院自らが発表したところ、
マスコミや厚生労働省、警視庁が過剰反応してしまった。医療者や医療団体が次々に
沈静化を求める見解や声明を発表したため、過熱報道をはじめとする過剰反応も、少
しは平静を取り戻しつつあるように感じる。
しかし、こんなヒステリックな反応をしていたのでは、院内感染情報の公開や共有
化を進めることすらままならない。公表するよりも、まずは病院自身で院内感染への
対策を積み重ねてきた帝京大病院の対応が正しかったと評価できよう。
今後の情報公開・情報共有化を推し進めるためにも、マスコミ・厚生労働省・警視
庁はその過熱ぶりを反省すべきである。
2.厚労省による届出義務化の動き
長妻昭前厚生労働大臣は、帝京大病院の公表後すぐに、多剤耐性アシネトバクター
の院内感染発生を感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法
律)上の届出義務化してはという趣旨の動きをした。間もなく、「多剤耐性菌の動向
把握に関する意見交換会」も開かれている。しかし、アシネトバクター感染症を感染
症法第6条第6項に定める「5類感染症」に加えるべきでない、と考える。
5類感染症と言えば、有名なところではインフルエンザ・ウイルス性肝炎・後天性
免疫不全症候群・梅毒といったところである。到底、アシネトバクターが同等とは感
じられない。院内感染で言えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症もある。そも
そも弱毒のアシネトバクターを入れたのでは、余りにもバランスを失していると言え
よう。
もちろん、5類感染症に加えたならば、感染症法第12条第1項第2号で届出義務
を課されかねない。感染症により死亡した者の死体を検案した医師も届出義務を課さ
れてしまう。まるで医師法第21条の異状死届出と同様に扱われかねない。当然、届
出義務違反に対しては、感染症法第77条第1号で刑罰が科される。
翻って、仮に届け出たとして、厚労省はどういう効果的な対処措置を講じうるので
あろうか。予防、感染拡大は、厚労省というよりも、感染症専門家や病院自身の多大
な手間と労力に頼るほかはない。かと言って、厚労省は人的・物的資源に対する緊急
予算措置も難しいであろう。また、感染した患者に対する治療の側面でも、厚労省に
は有効な手立てが今はないらしい。つまり、届出をしても効果的な権限を行使できな
いのに、医療者に対してだけ届出義務を課しても無意味である。かえって有害ですら
あろう。
厚労省は、届出義務という規制ではなく、本来の給付をすべきである。現在、治療
に有効かもしれない未承認薬として、コリスチンとチゲサイクリンという医薬品があ
ると聞く。これもドラッグ・ラグの一側面であるので、直ちにこれらを給付(つまり、
承認)すべきではないか。具体的には、これらの医薬品を薬事法上の承認は飛ばして、
直ちに大臣告示を発して薬価基準に収載して保険適用すべきであろう。それは法的に
も十分に可能であると考えられる。
3.警視庁による刑罰化の動き
警視庁も、帝京大病院の公表後すぐに、院内感染に介入した。業務上過失致死罪
(刑法第211条第1項)の容疑に基づく任意捜査だという。しかし、院内感染は犯
罪捜査の対象ではない。
現に、全国医学部長病院長会議をはじめ各医療者の団体が声明を発表した。たとえ
ば、9月14日に発表された全国医学部長病院長会議は、次のように述べている。
「今回、警視庁が当初より、業務上過失致死罪に該当する行為があるのかどうか、誰
が同罪の容疑者となりうるか、任意であるとはいえ同病院関係者から事情聴取を行っ
ていることに対し、全国医学部長病院長会議は大変遺憾に思うと同時に、強い懸念を
抱いております。私たちは、医療現場における刑事捜査はその対象を明らかな犯罪や
悪意による行為に限るべきであると考えております。刑事責任の追及を目的とする捜
査は、医療現場を萎縮させます。」
その他の団体による声明も皆、同じである。院内感染の何たるかもわからないまま、
公然と病院内に入って捜査に着手したため、マスコミに大きく取り上げられ報道され
た。これでは、一般国民は、病院が犯罪を犯したと勘違いしてしまう。この報道を見
た他の病院は、もしも(いつも当り前に存在する)院内感染が知れたら警察がいつ何
時事情聴取に来るのかと疑心暗鬼になるかもしれない。
おそらく警視庁は、大々的にマスコミ報道されたので、「とりあえず」捜査に入っ
たに過ぎないのであろう。本格的な犯罪捜査というよりも、内偵もしくは情報収集活
動という方が近い。しかし、その「とりあえず」の捜査がもたらす悪影響は甚大であ
る。結局、その被害は、巡り巡って一般国民が受けてしまう。
警視庁は、直ちに帝京大病院の捜査を終結すべきである。警察は今後も、院内感染
を犯罪捜査の対象とすべきでない。
4.院内感染対策は医療者自らで
院内感染は、病床を抱えている病院にとって宿命であり、日常のことでもある。病
気退治に抗生剤を多用してきた現代の医療にとって、やむを得ないことでもあった。
にもかかわらず、マスコミは社会部を中心に加熱し、厚労省はその効果も影響度も
考えずに規制強化をし、警察も相変わらずで犯人探しをしている。いずれも医療の特
質と社会における重要度を十分に考慮していない。いつものワンパターンを繰り返し
ているだけである。これでは、せっかく医療崩壊から立ち直ろうと努力している医療
機関と医療者をまたつぶすだけであろう。
院内感染対策は医療者自らが行うことである。マスコミは、院内感染の何たるかを
自らできちんと理解して、国民に分かりやすく報道すれば足りよう。厚労省は、いか
にしたら医療者を支援できるかを、まず考えるべきである。警察は、そもそも介入す
べきことではない。
(月刊『集中』2010年10月号所載「経営に活かす法律の知恵袋」第14回を転載)
(3)世界の新聞「101紙」の視点】〜2010年10月1日(金)の紙面より〜
28日付「人民日報 日本語版」
『釣魚島はなぜ中国固有の領土なのか』の社説。
『釣魚島沖で9月7日、中国の漁船が日本海上保安庁の巡視船に拿捕(だほ)され、船員が違法に拘留された事件をきっかけとして、中日両国間で懸案となっている釣魚島問題が再び全世界の関心を集めている。』
『釣魚諸島は中国固有の領土である。早くは1561年、明朝の中国古代地図に釣魚島が中国福建省の海上防衛区域として記載されている。』
『さらに清朝・康煕皇帝の冊封使として琉球王国を訪れた徐葆光の琉球録『中山伝言録』にも釣魚諸島に関する確かな記載があり、琉球王国の権威的な学者の見解として「琉球の姑米山(沖縄の久米島)は琉球王国の西南端にある主山、つまり国境線上にある主島」と説明されている。』
『事実、釣魚島つまり日本側の言う尖閣諸島に関する記載で1868年の明治維新以前のものは見られない。』
『『日本外交文書』第18巻の記載によると、明治政府は1879年に琉球国を編入した後、釣魚島に領有権を示す標識(国標)を立てるため、1885年から3回にわたって秘密裏に調査を行った。』
『そこから得られた結論は「『中山伝言録』に記載されている釣魚台(台湾・香港での呼称)、黄尾島、赤尾島などと同一の諸島に属する」ため、「清国との領有権交渉にかかわる」が、「現在の情勢とは合致しないように思われる」というものだった。』
『ここから、釣魚島は占有された土地であると当時の日本政府がすでに認識していたことがうかがえる。』
『ところが1894年7月に日清戦争を起こした日本は、下関条約の締結を間近に控えた1895年1月、勝利を確信すると、釣魚島に国標をひそかに設置した。』
『そして同年4月、下関条約の締結により、台湾および付属諸島が日本に占領されることになった。』
『1945年の日本降伏以降、釣魚島は台湾に属する島としてカイロ宣言に基づき中国に返還されるべきであった。』
『だが第2次大戦後、沖縄を領有した米国は1953年12月、いわゆるサンフランシスコ講和条約に基づき、経度線と緯度線による線引きで釣魚諸島を沖縄の一部として区画した。』
『一方、中国政府は早くから、サンフランシスコ講和条約の違法性と無効性を主張していた。』
『しかし1971年6月、日米間で沖縄返還協定が締結される際、沖縄の施政範囲が見直されることはなく、中国政府および国民から激しい非難が起こった。』
『これを受け、米政府は同年10月、「施政権を日本に返還するが、主権にかかわる問題には全く抵触しない」「釣魚諸島をめぐる全ての紛争は当事者間で解決すべき事項とする」との見解を表明した。』
『中日間の領有権問題で、米国はいまも中立の立場を貫いている。』
『1972年の中日国交正常化、1978年の平和友好条約締結を背景として、中日双方は両国関係の大局にかんがみ問題を棚上げする道を選んだ。』
『しかし日本は冷戦後、釣魚島問題における態度を一転、強硬な姿勢を示した。1996年8月、当時の池田行彦外相は「中国との間に領有権問題は存在しない」と述べ、釣魚島を日本固有の領土とする立場を強調した。』
『21世紀に入り、米ブッシュ政権の発足後、アーミテージ副国務長官はイラク戦争などで日本の支持を獲得するため、「尖閣諸島は沖縄返還以来、日本政府の施政下にある。日米安保条約は日本の施政下にある領域に適用される」との見解を表明した。』
『米国のお墨付きを得たことで勢いづいた当時の小泉政権は、釣魚島への管理を本格化させていった。』
『今回の漁船衝突事件には以上のような歴史的背景がある。さらに特筆すべきは、日本で現在、今回の事件に乗じて「防衛計画の大綱」に釣魚島問題への対応を盛り込もうとする動きがみられることだ。』
『こうした動きは両国の戦略的互恵関係をひどく損なうものである。』
『両国に与えられたもう一つの選択肢は、戦略的互恵関係の枠組みの下、敏感な問題の解決策を模索することにより、戦略的相互信頼を築き、両国関係の障害を取り除きながら前進することである。』
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日本のメディアからは当然のことながら、「尖閣諸島は日本の領土」という主張しか聞かれない。釣魚島(尖閣諸島)がなぜ中国固有の領土なのか、中国側の言い分である。
言い分も聞いてみたい。
日本側は国際法上の「無主地先占の法理」を主張するが、それが正しいのならば釣魚諸島を最初に発見したのは中国であるのだから、中国に領有権が生ずるということだろう。