第34回 社楽の会報告    第33回へ   第35回へ
                                  報告者 布袋中 土 井

8月21日(月)6:00〜9:00,布袋北学供にて第34回の社楽の会を開催しました。参加者は,土井木本川井,勝村,高橋日比野大島奥村,高田,栗林,熊木,滝口(敬称略)和田先生の13名です。
○ 前回から今回までにいろいろなことがありました。8月9日には,被爆体験者や戦争体験者が中学生たちと語り合う「平和シンポジウム−中学生が考える戦争と平和」が犬山市国際観光センターで開催されました。犬山市では,『ノーモア戦争』という冊子も作られました。中学校の授業実践に生かしたいと考えています。
○ 松坂屋では,“戦後50年記念展”が開かれました。豊富な映像と実物資料,わかりやすいパネルにより,充実した内容でした。小・中学生や戦争体験者らしい方が多く見に来られていたのが印象的でした。
○ 江南市では,すいとぴあ江南などで原爆パネル展が行われ,その会場で冊子「平和作文集」が配布されていました。市民26名の方の戦争体験が載せられています。
○ 一宮市スポーツ文化センターでは,「戦中・戦後の生活展」が開かれました。当時の軍事品・生活用品など400点を越える生々しい資料は見ごたえがありました。一宮市遺族会青年部編の「たまゆら 父の遺稿集」が配られていました。
○ 木曽川町の総合福祉体育館では,20日,住民500名による「ぞうれっしゃがやってきた」が上演されました。
○ 武豊町の歴史民俗資料館では,戦後50年「回覧板に見られる戦中戦後のくらし展」が開催されていました。生活に欠かせない情報のほとんどは,回覧板で伝えられたため,食糧や日用品の配給,金属・軍需品供出の実態がリアルにわかります。
○ 恒例のフィールドワークは18日,中島地区で行われました。起の町並みなどの見学だったそうです。平成9年度は丹葉地区の担当です。

☆ 木本先生からは,「戦争体験を取材しよう!」の呼びかけと,お義父さんの取材結果を報告していただきました。昭和18年より豊川海軍工廠で働き,たまたま帰郷していたときに空襲され,その2日後に工廠へ帰ってからは死体の処理をされていたそうです。「当時は死ぬのは恐くなかった。国のために戦って死ぬのが当たり前だと思っていた。」「終戦になり,本当に希望がなくなり途方にくれてしまった。軍国主義の教育しか受け てこなかった当時の若者はみんなそうだと思う。それを思うと,教育というのは本当に 大切であると今思う。」よく本で目にするこれらの言葉ですが,身近な人から聞くと,言葉に重みが感じられます。その意味でも,聞き取り体験は大切だと思います。
・ 次に,「横浜もののはじめ一覧」を紹介していただきました。横浜発祥のものが,食肉・ビールなど76点紹介されています。横浜開港資料館発行の『横浜もののはじめ考』\2,000からの抜粋です。また,「横濱歴史イロハカルタ」も紹介していただきました。
・ 丹葉地区の実践「個に応じ,個を生かす授業実践〜個に応じ,個を生かす評価のあり方」の中間発表の提案です。個に応じ個を生かす評価のあり方の概要として,@指導計画に評価の場・評価基準・支援方法を位置づける,A特に支援したい児童・生徒を位置づける,B評価を蓄積する,C自己評価・相互評価を生かすの4点が挙げられています。詳細は,次回検討する予定です。


☆ 高橋先生からは,自己実現について書かれている文献を紹介していただきました。1点目は,『内面性の心理学』…「自己実現とは,自分自身に対して働きかけ,それまでになかった何かを,自分自身の上に実現していくことである。そして,そうした何かの実現は,価値的なものであり,人間としての成長・発達の達成として考えられるものでなくてはならない。」と定義し,自己実現へと向かう力と姿勢を育てていくための課題が示されています。
 2点目は,『自己実現の探究』で,「現在潜在している自己の可能性を十分に発達させること」と定義され,自己実現の概念が形成された歴史が書かれています。
 興味のある方は,ぜひお読みください。

 大島先生からは,「自己評価」についてまとめていただきました。安彦忠彦氏(名大)の論文より,「教師生徒ともに,自分の行動(学習・生活)を改善するデータを得ること。評定を目的とするものではない。」として,時間がかかっても「文章法」でいきたいこと,「自己評価票」の効果的構成,自己評価の視点の例が具体的に紹介されています。勝村先生の師,田中耕治氏(兵庫教育大)は,自己評価とは「今までの考え方がどのように変化したのか,自分は何ができるようになって,まだ何ができないのかというモニタリング」としてみえました。
勝村先生は,田中氏の著作『だれにでもできる形成的評価』の中で,「学力には動態力と静態学力」(態という字が違うかも?)があり,動態は量でなく質を,静態が従来の評価,と述べていると紹介していただきました。
・ 関連して,大島先生から伊藤英樹氏の論文「学習計画をもとに学習をすすめる」(授業研究21,1995・1月号)を紹介していただきました。単元サイクルの問題解決的学習を取り入れ,一人一人が学習計画を立案し,段階ごとに自己評価を行っています。

☆ 土井からは,原爆や核実験についてのディベートの資料として,「戦後50年 原爆論争あれこれ」をまとめました。夏休みに入ってからの新聞記事・雑誌の記事より「原爆投下を肯定するもの」「原爆投下を否定するもの」「核実験を批判するもの」「核実験を肯定するもの」を集めてみました。旧日本軍が原爆投下の情報を知っていたが避難命令を出さなかったことは知りませんでした。今年は,米国人による原爆投下に反対する論調が目立ったような気がします。                    
・ 続いて,『「近現代史」の授業改革』(明治図書 社会科教育'95年9月号別冊)より,故田畑寿一先生の「原爆投下は正しかったのか−「チャーチル発言」でディベート−」を紹介しました。これまでの‘心情的平和教育(事象提示型)’ではなく,‘理性的平和教育(原因追求型)’をめざしたもので,豊富な資料をもとに,やや冷たく感じられほど理性的にディベートが進められています。当時の人の証言・手記などをもとにしたものであるならば,もっと心情的な部分があってもいいのではないかと思われます。心情と理性のバランスのとれた実践が丹葉でできないものでしょうか。

☆ 日比野先生からは,中学校の授業実践についての提案です。広島派遣・平和シンポジウムの報告会を受けて,原爆についての課題作り,討論のための再調査の後,原爆投下についてディベートします。さらに,核問題について自分の考えを持ち,世界に向けて自分たちの意見を発信するというものです。今後,さらに詰めていきたいと思います。

☆ 川井先生前回提案の授業構想の修正版の提案です。岩倉の戦没者の戦没場所・年月日を調べ,地図や表にまとめます。3時では,中国との戦争について調べた児童の発表を生かしながら,「日本侵略中国漫画鳥瞰図」を用いて話し合います。4時では,東南アジア進攻の様子を知り,その原因を考えます。さらにアジア諸国の教科書や大使館からの手紙のより,アジアの人々が太平洋戦争をどう見ていたかを考えます。第5時では,空襲についての児童の発表のあと,体験者の話を聞き,原爆へ話を進めます。岩倉に落ちた場合の被害の様子を考えます。次に3時間かけて,ディベートのテーマ作り,調査,ディベートをします。さらに,第2次大戦以後,戦争をしていない国を調べ,現在の紛争状況を知ります。最後に,大使館にお礼の手紙と平和決議文を送るというものです。
・ 戦争資料を新たに12点紹介していただきました。特に,『戦時下・愛知の諸記録不完全データ95』はきわめて綿密に調べてあります。  

☆ 奥村先生からも,本をいくつか紹介していただきました。『戦時下の市民のくらし』岐阜市歴史博物館,『記録写真集 沖縄戦』那覇出版社,その他でまたリストをいただきたいと思います。

☆ 栗林先生からは,小学校で戦争の後どう立て直っていくか,当時の人の努力を合わせて追ってほしい。中学校では,「もしあの原爆が落ちてなかったら」「あの原爆でどう変わったのか」という視点も考えてほしいという意見をいただきました。

      問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp