(1)JMM [Japan Mail Media] No.620 Monday Edition6 2011年2月1日発行
■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』
Q:1148 消費増税の最大のデメリットは?
消費税増税のデメリット=副作用も多くの点で、消費税の持つメリットと表裏一体であると言えます。そこで、消費税増税の副作用について、景気、所得分配、税体系に与える影響から考えてみたいと思います。
景気に与える影響としては、物価の上昇による実質可処分所得の低下による消費の減退がしばしば指摘されます。実際には、増税前のかけ込み需要増加と増税後の反動といった複雑な要素もあります。また増税分は政府最終消費支出に回るため、消費の実質ベースでの減少がそのままGDPなどで見た経済の縮小につながるわけではありません。97年に橋本内閣が消費税増税を実施した後に日本経済が再度景気後退退に陥った経験が過度にトラウマとなっている感はありますが、当時の情勢を客観的に見ても消費税増税のみに景気腰折れの要因を求めることはできないでしょう。(中略)
所得分配に与える影響についてしばしば指摘されるのが、税負担の逆進性という問題です。ただし、この点については、消費税を目的税化し基礎年金や社会保障の財源とするならば、一方で所得の再分配が強化されることになり、低所得者層ほど厚い恩恵を受けます。
税体系に与える影響はやや複雑です。企業利益に課税する法人所得税などと比べて、消費税は景気動向の影響を比較的受けにくく、安定した財源とされます。また税収は物価水準に連動しますので、特に支出水準が物価に連動する年金や社会保障の財源としては好適といえます。一方、累進税率を持つ個人所得税などはインフレによって自動的に税率が上昇し、法人所得税もインフレ時には企業のマージンが改善して増収となる傾向がありますが、消費税はインフレによって税収が受ける恩恵が他の主要な祖税に比べて少ない、という面があります。
従って、実質的な税収を増やす必要があるときは必ず税率引き上げの手続きが必要となります。そのため消費税は「民主的な税制」と言われますが、常に政争の具となる危険があり、消費税増税によって全体の税収に占める割合が高くなった場合のデメリットとして指摘できるでしょう。
今後、長期的には増税の方向にあると同時に、税収の消費税への依存度が高まる中では、国民による合意の確保が重要となります。国民の理解を得る意味でも、消費税の目的税化は必須といえます。消費税の引き上げは多くの国民にとって重税感を強く意識させるため、国民の社会保障制度の運営の効率化に対する監視も厳しくなり、負担と受益のバランスについても健全な議論が深まることが期待されます。税の持つ「情報」としての機能という点が重要になると考えられます。 外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎
JMM [Japan Mail Media] No.621 Monday Edition1
Q:1149 消費税増税で社会保障はどの程度の改善・改革が見込めるか
まず、わが国の予算に占める社会保障費のマグニチュードについて整理します。
2011年度の民主党の予算案を見ると、一般会計の予算総額は約92兆円4千億円です。その中で、社会保障費予算分は約28兆7千億円です。ということは、予算案全体の約31%が社会保障に関する歳出ということになります。また、国債費や地方交付税交付金などの既に歳出が決まっていて政府の裁量の余地のない部分を除く、一般政策経費の約53%を占めています。この数字を見ると、わが国の予算の中で、社会保障費が占める割合が高いことが分ります。
一方、政府の収入である歳出についてみると、2011年度の税収は約40兆9千億円と予想され、今年度も、昨年度と同じように44兆円を超える国債の発行が必要になると見られています。国債の発行額が、税収を上回る事態が続くわけです。その結果、国債の発行残高は雪だるま式に拡大することになります。(中略)
財政の立て直しの観点から、税制と社会保障スキームの一体改革を見ると、基本的に、税収を増やして、なお、社会保障で国民が受けるベネフィットを減らすことは避けられないでしょう。現在の経済状況で消費税率を1%引き上げると、約2兆円程度の税収が増えるといわれています。ということは、社会保障費を消費税で賄うためには、消費税率を10数パーセントまで引き上げることが必要になります。
その場合、二つの問題があると考えます。一つは、消費税率を一度に現行の2倍にすることは現実的ではないでしょう。そんなことをすると、わが国の経済を過度に冷やしこんでしまうからです。段階的に時間をかけて税率を引き上げることになると思いますが、その間にも、財政状況の悪化が続くことになります。それを防ぐためには、社会保障のスキームを改革することが必要です。
具体的に社会保障の制度改革を行うということは、国民が受けているベネフィットを低下させることになるはずです。国民にとっては痛みを受けることになります。本当に、そうした政策を打てるかどうかがポイントになることでしょう。個人的には、現在の民主党政権が、そうした政策を実行できるかと言えば、かなり大きなクエスチョンマークがつくと考えます。
もう一つ、わが国は少子高齢化が加速していることもあり、現在の社会保障のスキームでは、毎年、社会保障費は自然に増えます。ですから、消費税率を引き上げて、一時的につじつまを合わせたとしても、時間の経過に伴って、社会保障費が膨らみ、財政赤字が増加傾向を辿ることが考えられます。
これらの事を総合的に考えると、消費税率の引き上げと、かなり思い切ったベネフィットの縮小を含む社会保障制度の改革を断行しない限り、わが国の財政状況の悪化に歯止めが掛からないことになります。重要なポイントは、政府が、増税・社会保障の制度改革という不人気な政策を実行できるか否かということになります。それに対する一つの選択肢として、選挙を実施することによって、国民に事態の重要性を喚起した上で、直接賛否を問うことも検討に値すると考えます。 信州大学経済学部教授:真壁昭夫
(2)知らなきゃ損する!面白法律講座
2011年 1月31日 第564号
■ 法律クイズ 第238回 【問題】
@「総理大臣が死んだらどうなる?」
Aさんは、日本の内閣総理大臣です。このAさんが急な病気で死亡してしまった場合、日本国憲法によると、内閣は総辞職しなければならない。○か×か?
A「受刑者も外泊ができる?」
Aさんは、ある罪を犯して有罪判決を受け、刑務所に拘置されている受刑者です。Aさんに、どうしても外泊をしたい事情があるとき、日本の法律上、外泊を許可することができる場合がある。○か×か?
□ @の解答は ○
憲法によると、内閣総理大臣が欠けたとき、つまり、内閣総理大臣が死亡、失踪、亡命、除名されたときなどは、内閣は、総辞職しなければならないとされています(70条)。
そのため、本問でAさんが死亡してしまった場合、内閣は総辞職しなければなりません。
新たに内閣総理大臣が任命されるまでは、それまでの内閣が引き続きその職務を行います(71条)。ただ、内閣総理大臣が死亡した場合は、そのあらかじめ指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行います(内閣法9条)。
Aの解答は ○
刑務所などの刑事収容施設の管理運営については、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が定めています。
同法によれば、受刑者の改善更生や円滑な社会復帰を促進するために、外出や外泊を許可することができるとされています。
具体的には、仮釈放を許すことができる期間を経過した懲役受刑者または禁錮受刑者が、開放的施設において処遇を受けている場合などに、その円滑な社会復帰を図るため、刑事施設の外で、釈放後の住居や就業先の確保その他の一身上の重要な用務を行い、更生保護に関係のある者を訪問し、その他その釈放後の社会生活に有用な体験をする必要があると認めるときは、刑事施設の職員の同行なしに、外出し、又は7日以内の期間を定めて外泊することを許すことができるとしています(106条1項)。
そのため、Aさんも、要件を満たせば外泊できる場合があります。
(3)★雑木話★ 第1179回配信
Q 昔の人は、「富士山が日本一高い山だ」とどうやってわかったのか?
「富士山」は最初から、日本一「高い」山だったのでしょうか?
種々の古典と言われるものにはよく出ており、知識人層には日本中の高山の情報があったとは思いますが、単に極々一部の人の「知識」の状態であったと思います。
江戸時代になると交易により、各地の情報が日本最大の消費地江戸に集まるわけですが、結局海路もしくは街道を通るにしても、そこを中心にした情報が主なものだったと思います。
確かに富士山は、独立峰のため目立ち、並はずれて高く、美しく、信仰の対象となる等、畏敬の念を起こさせるものですが、おそらく、「日本一」の後には高いという形容詞がつかなかったか、ついていたとしても確たる証拠もないまま身近な山としてはいちばん高いとのことではないでしょうか。(後略)
───●少伯さんから●────────────────────────
日本一高い山としての富士山は、明治時代の大日本帝国陸軍参謀本部測量局(後、陸地測量部、国土地理院につながる)による全国の地図作成のための測量が初めてのことになると思います。
当時の機器・技術からすると驚異的な精度で、現在、国土地理院から発行されている地形図の元となっています。
それまで、富士山が日本一と言われる所以は、その姿の美しさからで江戸時代以前は日本一美しい山として知られていたものと思います。
蛇足になりますが、富士山の高さの測量だけならあの伊能忠敬も行っていますし、その他個人、団体の多くが試みています。
(4)ごまめの歯ぎしり メールマガジン版......
衆議院議員 河野太郎の国会日記
昨年の臨時国会で、自民党の反対を押し切って民主党政権は給与法を改正した。
では、この給与法で民主党は、どの役職の給与(月額)をいくら下げたのだろうか?
あっ、そうそう民主党は参院選のマニフェストで「政治家、幹部職員などが率先し、国家公務員の総人件費を2割削減します。」と言っている。
政治家、幹部職員が「率先して」いくら削減をしたのか?
改正前 改正後 削減額
内閣総理大臣 2,065,000円 2,060,000円 5,000円 (0.24%)
国務大臣 1,507,000 1,503,000 4,000 (0.27%
副大臣 1,444,000 1,441,000 3,000 (0.21%)
大臣政務官 1,231,000 1,228,000 3,000 (0.24%)
事務次官 1,424,260 1,420,720 3,540 (0.25%)
局長 1,084,420 1,082,060 2,360 (0.22%)
地方機関課長 483,000 476,000 7,000 (1.45%)
「率先した」総理は5000円の月給引き下げ。与謝野大臣の給与は、4000円の引き下げ。これで総人件費を四年間で二割削減できるのだろうか?
この地方機関課長さんは56歳という想定。人事院勧告では中高齢層の俸給水準の引き下げ幅を大きくするとしている。人事院勧告全体では1.5%の削減が中高齢層は7%の引き下げになっている。
それは民間の給与体系にあわせようということだからよいとして、なぜ、それから幹部職員である事務次官や局長が外されているのだろか?幹部職員は率先して削減するとマニフェストにうたった結果がこれなのか?菅総理、お答えください。