(1)知らなきゃ損する!面白法律講座 2011年 3月 7日 第569号
■ 短期集中!知らなきゃ損する税金の話 第1回
□Q□ 主婦のAさんは、家計を助けるためにパートに出ています。年間いくらまでなら、 税金を支払わなくてもよいのでしょうか?
□A□
家計を助けるためのパートの場合、留意すべきなのは、(1)Aさん本人に税金がかからないようにすること、に加え、(2)Aさんの夫(仮にBさんとします)の税金が増えないこと、の2点となります。以下、順に説明します。
(1) Aさん本人に税金がかからない金額
税金がかかるのは、年収から各種控除を差し引いた額が1000円以上となった場合です。
バイトの収入は、通常給与所得です。給与所得の場合、まず、給与所得控除を年収から差し引きます。給与所得控除は、年収162万5000円以下であれば、65万円です。
上記に加え、基礎控除として38万円を差し引くことができますので、38万円+65万円=103万円以下であれば、Aさん本人に所得税はかかりません。
(2) Bさんの税金が増えない金額
Aさんの合計所得金額(給与所得額−給与所得控除)が38万円以下であれば、Bさんは配偶者控除を受けることができるため、その分、税金が安くなります。逆にいうと、これまでパートをしていなかったAさんがパートを始め、合計所得金額が38万円を超えると、Bさんの税金が増えることになります。
つまり、年収が103万円(給与所得控除65万円+38万円)を超えると、Bさんの税金が増えることになります。
なお、Aさんの合計所得金額が38万円超76万円未満の場合(年収が103万円超141万円未満の場合)には、配偶者特別控除を受けることができます。したがって、年収が141万円以上になると、Bさんの税金はさらに増えることになります。
以上をまとめると、おおむね以下のようになります。
●Aさんの年収 ●A君の所得税 ●Bさんの所得税
103万円 かからない 変わらない
以下の場合
103万円超 かかる 増える
141万円未満の場合 (配偶者特別控除は受けられる)
141万円 かかる 増える
以上の場合 (配偶者特別控除も受けられない)
(2)JMM [Japan Mail Media] No.625 Monday Edition-6
■今回の質問【Q:1201】
来年度予算ですが、国債の新規発行をこれまで発行済みの国債償還費(22年度だと20兆円強)に限定し、歳入を税収および特別会計からの受入金だけ(22年度だと約48兆円)でやりくりすると仮定すると、国民生活はどのくらい厳しいものになるのでしょうか。
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■ 津田栄 :経済評論家
来年度予算を、国債の新規発行を償還国債に充てる国債費に限定して、税収および特別会計からの受入金のみの歳入でやりくりするということは、歳出をどこまで圧縮するかということになります。つまり、当初の予算において国債費を除いた経費分71兆円に対して、税収の41兆円、特別会計を含めたその他収入7兆円の計48兆円で賄うことになりますから、23兆円の歳出経費を圧縮しなけければならないということになり、実に32%の財政の大幅な縮減になります。
こうした大規模な歳出経費の削減は、どこの分野で行うかは、難しいところです。すべての経費項目に対して一律3割減という単純なやり方もありますが、そうなれば、国民生活に直結する部分には大きな影響が出ますが、どの程度の厳しいものになるか予想がつきません。そこで、国民生活にできるだけ配慮した経費削減をということで検討してみますが、結論としては、どういった削減の形を取っても最終的に国民生活には少なからぬ影響は出ると思われます。
まず、財政の厳しさから、国が負担する人件費7.5兆円の3割減というよりは、もっと多くして4割減にしても、3兆円の削減にしかなりません。加えて、地方では、税収不足から、地方交付税交付金でなんとかしのげるようになっていますが、それは裏返せば、実質的に地方交付税交付金の多くで地方公務員の人件費を賄っているようなものです。その地方公務員の人件費額は来年度21.3兆円予定となっていますから、その分も同様に4割減とすると、8.5兆円、国と地方を合わせると11.5兆円、重複部を除いて11兆円と見積もれます(国会議員や地方議員、首長は財政の厳しさと責任からけじめとして当面無給でもいいかもしれません)。
もう一つは、国民にも分かりにくい天下り先である特殊法人、独立行政法人や公益法人などです。財政において、こうした法人に国が補助金などを交付していますが、その額は2,3年前では12兆円余りありましたから、それをそっくり廃止してしまえば、前の人件費の削減と併せて、23兆円近くなります。そうなれば、ほぼ必要削減額に達し、国民に影響がないように見えます。もちろん、人件費の削減は、給与カットどころか、大幅な人員削減しなければ可能ではありません。そして、そうなったときは退職金が必要でしょうが、財源がないとして退職金代わりに国債を渡すぐらいしかないかもしれません。しかし、これでは、公務員は全くやる気をなくすので、行政サービス業務は停滞して、目に見えない形で国民生活に悪影響を与え、非効率社会が深刻化して昔の共産主義国のような状況になるかもしれません。
もう一方、社会保障関係費、地方交付税交付金、公共事業関係費、防衛関係費などという歳出項目別の視点での削減の考え方があります。こういう項目別でみると、一番伸びているのは、当然のごとく、少子高齢化が進行することによって起きている社会保障関係費、次は過疎化と人口減少、経済のグローバル化が続くことによる税収減から逼迫している地方財政の支援としての地方交付税交付金です。一方、国民生活にできるだけ影響のない項目といえば、経済協力費0.5兆円ぐらいなものであまりありません。もちろん、防衛関係費も生活に関係ないという見方もありますが、昨今の日本を取り巻く状況は、それを許さず、むしろ国民の生命・身体と財産を守るためには増やすべきかもしれません。
そう考えると、どの項目を削減しても国民生活に大なり小なりの悪影響があるといえますが、そのなかでどの項目の予算を削るかということになると、国民の誰がその不利益を受忍するかになります。もちろん、各項目一律3割削減であれば、表面的にはある程度公平といえますが、高齢者人口の増加、少子高齢化に伴って大きく増加し、給付も大きく削られていない社会保障関係費を考えると、その他の削減されてきた項目に比べて、不公平だと言えなくもありません。その社会保障関係費28.7兆円の中で大きいのは高齢者に対する年金や医療費、介護費などであり、他の項目に比べて一段と削ることが求められるとしたら、4割から5割と見て11.5兆円から14.3兆円が想定されます。
しかし、この10年前後で高齢者が倍増していることを考えると、年金給付額は10年前より少なくなり、高齢者の生活は一段と苦しくなり、貯蓄の取り崩しが一段と増える可能性が高いといえましょう。また年金だけで生活している高齢者は、生活できなくなるかもしれません。あるいは、生活保護世帯への生活費の大幅な削減で、生活できない世帯が出てくるかもしれません。それは、憲法25条に規定する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」及び「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」を求める国の責務に反することになるかもしれません。一方で、財政破綻すれば、そうした給付そのものもなくなりますから、どこまで我慢してもらうかになります(その場合、生活費の安い地方への移住などで対処してもらうことも選択肢に入るかもしれません)。一方、貯蓄の減少は、国債の買いが減り、逆に売りが増えることで金利上昇につながることになって、経済を悪化させ、ひいては国民の全体の生活を苦しくする可能性もあります。
また地方交付税交付金は、16.8兆円(先ほどの地方公務員の人件費額とは合いませんが、東京都などの都市部である程度財政的余裕のある地方公共団体がありますし、その他重複部分などがあるからでしょうが、そのこと自体、国民には不透明であって問題があるといえましょう)が計上されていますが、先ほどの人件費を考えるならば、約5割減にするとかになりましょうが、それでは問題ありとなれば、3割減としても5兆円、4割減としても7兆円弱の削減にしかなりませんし、その結果として、行政サービスの低下で過疎化と人口減少を加速化して、地方経済は一段と悪化、崩壊する地方も出てくるかもしれません。
また、その他の項目で、文教及び科学振興費の5.5兆円、公共事業費の5.0兆円など主要なものを削ることも考えられますが、これまで世界的にも低水準にまで落ちるほど教育関係や科学振興関係が削られてきた中で、果たしてさらに削減できるか疑問ですが、それをやれば将来の成長の芽を摘み取ることにもなりかねませんし、公共事業費でも削減を一段と行えばインフラ整備に大きな支障をきたして、経済成長に大きな障害になりますので、これ以上の削減は無理かと思います。あるいは、その他の経費5.6兆円、食料安定供給関係費1.2兆円を削減するなどのほか、1兆円以下の項目の全部3.4兆円などを削減することもありますが、結局メリハリのある削減をしないと、削減しても効果が小さく、むしろ成長を阻害するだけかもしれません。
ただ、マクロ的に見ますと、どんな形にしろ、予算を3割削減することは、経済にとって、大きな財政引き締めにあたりますから、景気へのマイナス効果は大きく、大雑把に見て3〜5%近い成長率の押し下げにつながります。そうなれば、需要の減少から需給ギャップは一段と拡大し、今でさえデフレから脱却できないのに、さらに物価が下落し、デフレは一層深刻化します。それは、企業収益の減少、所得の減少、雇用の悪化を通じて、国民生活を一段と苦しくするでしょうし、経済格差は今以上に厳しいものになると思われます。もちろん、そのマイナス効果を少しでも緩和させ、経済の活性化を促すには、以前から述べてきた規制の大胆な廃止・緩和が必要でしょうし、そのために行政の役割を大きく減らし、公務員の人数及び給与におけるカットから人件費削減が望まれるでしょう。(以下略) 経済評論家:津田栄