3 第53回「指導と評価大学講座」受講記録 「教室でできる特別支援教育」曽山和彦(名城大学准教授)
──────────────────────────────────────
今回は特別支援教育についての講義。
曽山先生の話は今年で3回目。現場経験がおありなので,とてもわかりやすい。
1 人とのかかわり不足の子どもたち
(1) 環境の変化
・情報化,スピード化
・三間の消失 → 時間・空間・仲間
・その結果……自分勝手な振る舞い,わがままな行為
(2) 昔と比べ,人とのかかわり不足の子どもたち
2 人とのかかわり不足が生む問題
(1) 子どもたちの社会性が低下している。
・ソーシャルスキル(人づきあいのコツ,技術)
→ 社会の常識(ありがとう,ごめんなさい)
・2極化した行動
→通常学級における気になる子の問題がクローズアップ
・その結果……相手を消す(いじめ)か自分が消える(不登校)
(2) 子どもたちの自尊感情が低下している。
・「自分はOK!」と言えない。「どうせぼくは…」
・自分自身だけでなく,他者の受け入れも困難に。
・これもいじめや不登校,気になる子の問題などに影響する。
・セルフエスティーム
→ 自己評価の感情。自分自身を価値あるものとする感覚。他者(身近な大人,友だち など)の評価により育まれる。
3 現代の子ども像と教室でできる特別支援教育
(1) ソーシャルスキル&自尊感情が乏しい子どもたち
・学級の気になる子の存在がクローズアップ
(2) 気になる子の理解
(3) 学級集団の理解
(4) すべての子のソーシャルスキル&自尊感情を育成。
4 教室でできる特別支援教育 〜モデル実践に学ぶ〜
(1) A小学校 ─ 授業3原則
授業規律/リズムとテンポ/1指示1動作
(2) B小学校 ─ SSTタイム
週1回,朝の時間帯にSST(かかわり遊び)→学ぶことが楽しい
(3) C中学校 ─ アサーション(さわやかな自己主張)
*3校とも,気になる子が学級に溶け込んでいる。
5 教室でできる特別支援教育 〜気になる子の理解〜
(1) ユニバーサルな教育を行うために,障害特性,家庭環境,気になる子の理解は欠かせな い。→ 気になる子(学級の6.3%:2002文科省調査)
・レッサーパンダ帽青年事件2001・同級生女児事件2004・奈良エリート少年自宅放火事件 2006など
・IQ136の少年は広汎性発達障害,父の言葉をその通り受け止め(字義性)事件に及ん だ。
(2) 障害が問題や事件を起こすのではなく,周囲の理解・対応の不十分さが問題や事件の呼 び水になる。
6 教室でできる特別支援教育 〜学んだ2つの言葉〜
(1) 気になるこの理解に関して,忘れられない2つの言葉
・「うまく指導してもらえなくてもいい。でも,子どものことは理解してほしかった。」(保 護者)
・「教師は専門家である。教育を行う者が教育を行う子どもについて無知なまま教壇に立 つことは,子どもに失礼極まりない。」(愛知小児セ:杉山先生)
(2) ドナ─ウイリアムズの著書「自閉症だったわたしへ」
7 教室でできる特別支援教育 〜学級集団の理解〜
(1) 学習規律(ルール)が定着している学級には「安心」が生まれ,その安心をベースとし て集団内に「ふれあい(リレーション)」が生まれる。
(2) 「安心・ふれあい」のある学級は子どもたちにとって居場所となり,満足度も高い。
(3) 学級集団の状態を把握する診断尺度Q-Uを活用する学校が増加。
→ 客観的なもの差し
・Q-Uデータによる学級状態が良好であれば,気になるこの学級適応状態もよい。
8 学級づくりの基本 〜どの子にも居場所となる学級づくり〜
(1) ルールづくり
(2) ふれあいづくり(リレーション)
・ラポートとの違い → ラポート:信頼関係=+面と+面だけの交流→浅い(断れない 関係)
リレーション=−面も理解した交流
(3) プラグマティズム(実用主義)づくりの薦める。
・使えるものは何でも使え/役に立つ知識こそ真の知識 → 教師のプロとしての腕の見 せどころ
9 教室でできる特別支援教育 〜ソーシャルスキル&自尊感情育成〜
(1) SSTやSGE(構成的エンカウンター)を活用する。
(2) カウンセリング理論による伝わる言葉をかける。
・「伝わる言葉」の番付表
東の横綱 → いいところ探し
西の横綱 → 対決アイメッセージ
東の大関 → リフレーミング
西の大関 → 例外探し
10 言葉かけチェック 〜大人の言葉は子どもにとどいているか?〜
(1) 大人の言葉(親や教師)の言葉は子どものソーシャルスキルは自尊感情を育てているの か?
・授業中おしゃべりをしている子には?
・言われなくてもゴミを拾ってくれた子には?
11 「いいところ探し」 〜東の横綱〜
(1) 「ほめる・勇気づける・認める」をバランスよく。
・「ありがとう」「助かった」「うれしい」
(2) いいところがない!
・毎日ちゃんと学校へ来る,朝ごはんを食べてくる,放課に外で遊ぶ・・・みん
ないいところ
12 「対決アイメッセージ」 〜西の横綱〜 →アイ=I(私の感情を伝える)
(1) 行動
・相手の行動を非難がましくなく描写する。 → 「ちょっと,静かにしてくれるかな」「困 るんだけど」など
・自閉の子は「それで?」と答える。・・・・察することが苦手
(2) 影響
・相手の行動が自分に与える影響を伝える。
(3) 感情
・その影響が自分に抱かせる感情を伝える。
13 「リフレーミング」 〜東の大関〜 → 自尊感情に効く。
(1) 言葉のチェンジ
・あきっぽい → いろんなことに興味があるんだね。
・おしゃべり → お話が上手だね・
・おせっかい → やさしいところがあるね。
(2) 考え方一つで悩みは消える。(アルバート・エリス:論理療法)
14 「例外探し」 〜西の大関〜
(1) 例外とは?・・・・うまくやれていること
・暴言が多い → 丁寧な言葉を使うこともある。(例外)
・例外の責任追及 →なぜ例外が起きたのか(あのときはよかったよ)を心に貯めておく。
・自尊感情に効く。
15 教室でできる特別支援教育
〜担任の構え:個への深入りはせず,配慮をする〜
(1) 担任はすべての子どもにとって「ぼくの先生」
・40人の子どもと大きな道を歩く。
・脇道にそれる子 → それ方の程度により,校内体制(支援員等)が必要
・立ち止まるが脇道にははあいらない子
(2) いつでも戻れる居場所の確保
16 一斉指導における個への配慮
(1) 学習面
・学習レベルに合わせたプリント準備(2,3学年下げた内容) → 下げたことがわか らない配慮を
(2) 行動面
・時々立ち歩く程度は目をつむる。
・学習,対人ルールを掲示する。 → 違反の時は非言語メッセージを送る。
(3) 対象児をバカにする,えこひいきと反発する場合もあるため,学習や行動の「練習」で あることなど,他児童への説明は必要。また,後の対象児保護者トラブルを防ぐため,保 護者面談も必要。
17 おわりに
○ 新たな視座で実践更新を
○ 情熱だけでは難しいことがある → 技が必要
○ アンテナを2本立てる → ルール違反&遵守の両方を見逃さずに。
○ 最強,最高の教材は教師自身
4 お役立ち資料
ブログで、9月30日から10月29日までに紹介した資料です。
「特別な教育的支援を必要とする子どものサポートマニュアル」 |
長崎県教育委員会 |
釜石市津波防災教育のための手引き |
釜石市教育委員会 |
小学校外国語活動 研修・授業支援サイトについて |
長崎県教育センター |
特別支援教育ガイドブック |
滋賀県教育委員会 |
中学校・高等学校における発達障害の子どもたちへの支援ガイドブック |
滋賀県教育委員会
|
LD、ADHD、高機能自閉症支援ガイドブック(増補版) |
滋賀県教育委員会 |
幼稚園、小・中・高等学校等における「個別の教育支援計画」作成の手引 |
愛媛県総合教育センター
|
学習指導要領データベース |
|
特別支援教育を推進するためのポイントと事例 |
愛媛県総合教育センター |
通常の学級における支援の充実に向けて |
愛媛県総合教育センター |
言語活動の充実を図る学習指導の在り方 |
埼玉県総合教育センター |
言語活動の充実を図る学習指導の在り方に関する調査研究(2年次 ) |
埼玉県総合教育センター
|
5 役立ちWeb特集
(2)平成22年度体力・運動能力調査結果について
(3)平成23年版 科学技術白書
(4)【連載】 子どもの学習意欲を高める働きかけ
平松 孝治郎・愛知県大府市立大府小学校教諭
6 教育関連情報
(1)秋の岐阜市立研修校の発表日です。
10月21日(金)岐阜市立長良東小学校 1日目 国・生・体・道・家
10月22日 (土) 岐阜市立長良東小学校 2日目 社・算・理・音・図
岐阜市立青山中学校
10月29日(土)岐阜市立陽南中学校、岐阜市立長良西小学校
11月 5日(土)岐阜市立長良小学校、岐阜市立加納中学校
11月12日(土)岐阜市立長良中学校
11月18日 (金) 岐阜市立東長良中学校
(2)平成24年度 概算要求書
文部科学省は、全国の公立小中学校の耐震化工事に2325億円を求め、うち1419億円を復旧・復興対策の枠で要求した。文科省は「防災に特化した内容は復旧・復興対策、老朽化の対応は通常の枠で要求した」(文教施設企画部)と説明するが、境目は曖昧だ。
(2011年10月6日 読売新聞)
概算要求:文科省、学校耐震化に2325億円
文部科学省は30日、一般会計総額で11年度当初比2.9%(1609億円)増の5兆7037億円となる来年度予算の概算要求を発表した。これとは別に、復旧・復興対策に5684億円も要求。公立小中学校の耐震化には計2325億円(約2200棟分)を盛り込み、耐震化率の全国平均は今年度3次補正予算案までを加え、4月現在の80.3%から約90%に引き上げる。
35人以下学級の小学2年生までの拡大など義務教育費国庫負担金は1兆5675億円を計上した。低所得世帯などを支援する高校生向けの給付型奨学金の創設には、102億円を要求。13年度の全国学力テストについては全員参加方式を念頭に準備費を20億円とした。
毎日新聞 2011年9月30日 22時43分
(3)進学希望 過去最高96.6% 中3調査(愛知)
県教育委員会は7日、来年春に卒業見込みの中学3年生を対象に実施した進路希望調査(9月10日現在)の結果を発表した。高校、特別支援学校の高等部、高等専門学校への進学希望率は96・6%(昨年比0・4ポイント増)で過去最高となる一方、就職希望率は0・8%(同0・2ポイント減)と、昨年に続いて過去最低を更新した。