(1) 知らなきゃ損する!面白法律講座 2011年12月12日 第603号
■ 隔週連載:世界の離婚 第15回 「韓国編」
「世界の離婚」、第15回目の今回は韓国編です。
◯婚姻
婚姻年齢は2007年の民法改正で男女とも18歳になりました。ただし、未成年(20歳未満。2013年からは19歳未満)の場合は、父母などの同意が必要となります。
近親婚については、2005年改正までは、同姓同本(姓と宗族の出身地である「本貫」が同じ)の場合は、婚姻が禁止されていました。現在は、(1)8親等以内の血族、(2)6親等以内の血族の配偶者、配偶者の6親等以内の血族、配偶者の4親等以内の血族の配偶者である姻戚である者、(3)6親等以内の養父母系の血族であった者と4親等以内の養父母系の姻戚であった者、の婚姻が禁止されています。
韓国でも、2005年改正までは、再婚禁止期間の規定がありましたが、現在は削除されています。
婚姻しようとする者は、婚姻する当事者及び成年者である証人2人の連署した書面で届出を行うとされており、日本と似た制度となっています。
◯離婚
韓国における離婚は、裁判のほか、協議による離婚も認められています。もっとも、協議離婚の場合でも、家庭法院の確認が必要とされているため、日本のように離婚届を作成して提出するだけ、というわけにはいかないようです。
また、2007年の改正で、協議離婚する夫婦は事前にガイダンス(必要に応じてカウンセリングも)を受ける必要があり、子のガイダンス受講から1カ月(未成熟の子がいる場合は3カ月)経過しないと、離婚届を提出できないとされています。
裁判による離婚の場合、法定の離婚原因は以下の通りです。
(1)配偶者に不貞な行為があった時
(2)配偶者の悪意で他の一方を遺棄した時
(3)配偶者またはその直系親族から不当な待遇を受けた時
(4)自己の直系親族が配偶者から著しく不当な待遇を受けた時
(5)配偶者の生死が3年以上明らかでなかった時
(6)その他婚姻を継続し難い重大な事由がある時
夫婦間の虐待だけでなく、親族に対する、あるいは親族による虐待も離婚原因となっているのが、韓国の特徴といえます。
韓国では、離婚後の親権は父母どちらか一方が行うこととされています。また、他方の親については、面会交流権が法律上認められています(837条の2)。
■ なっとく!法律相談 第591回
「土地権利書を持ち出された!勝手に売られない方法はある?」
□相談□
一年以上たまにしか家に戻らない夫が家の権利書を持ち出してしまいました。預金もかなり使い込んでいます。(家計はすべて夫が握っています)勝手に売却されないようするにはどうしたらいいのでしょう? 私自身、専業主婦で収入が無く子供をふたり抱えてとても不安です。
(40代:女性)
□回答□
土地の売買を行い、登記をするには、権利書の他に実印と印鑑登録証明書が必要ですので、持ち出されたのが権利書だけの場合には、勝手に売却されるおそれはやや低いといえます。以下では、家屋の所有者が誰であるのかによって分けて説明していきます。
まず、相談者が家屋の所有者である場合であって、持ち出されたのが権利書だけの場合には、土地を管轄する法務局に「所有者本人の意思に基づかず、登記済権利書が持ち出されてしまい、登記の申請がなされる恐れがあるので、登記の申請があったときは連絡をしてほしい」旨の上申書を、印鑑証明書を添付して提出することで、登記の差止めをすることができます。実印と印鑑証明証(カード)も持ち出されてしまった場合には、まず、市役所に印鑑登録証明書の発行停止を依頼したうえで、印鑑登録の抹消(再登録)を行います。
次に、家屋が相談者と夫の共有名義であった場合には、相談者の同意がなければ売却をすることはできません(民法251条)。実印と印鑑証明証(カード)も持ち出されてしまった場合の対応は、上と同じです。なお、夫が自己の持ち分を売却することは可能ですので、その場合には買主との共有となります。
相談者が家屋の所有者でない場合には、限られてはいますが以下の方法があります。
まず、離婚話がある程度進んでおり財産分与の額が確定していれば、仮に夫により家が売却されたとしても詐害行為取消権(民法424条1項)によって、売買を取り消せる可能性があります。詐害行為取消権とは、債権者が債務者の法律行為を一定の要件の下に取消してしまうことができる権利です。ただ、詐害行為取消権を行使することによって保全する債権の種類は原則として金銭債権でなくてはならないので、離婚協議等で財産分与や慰謝料の金額が確定しており、相談者が夫に金銭債権を有している必要があります。
次に、相談者と夫の間で離婚話がない場合で家屋が売られてしまった時には、夫が相談者に負う扶養義務(民法752条)を根拠に他の住居の確保を求める方法もしくは、権利の濫用として当該家屋の売買を無効であると主張することが考えられます。
後者に関してはかなり無理のある主張になるかとは思いますが、別居中の夫が共有名義の家屋を代金分割のために競売しようとした事案で、権利の濫用で競売が認められなかったという裁判例(大阪高等裁判所平成17年6月9日判決)などもあるので、主張してみる価値はあると思われます。