(1)JMM [Japan Mail Media] No.708 Monday Edition-6
『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』
Q: 日本国債の「暴落」
◇回答 □土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部教授
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■今回の質問【Q:1280(番外編)】
ギリシャの債務危機以来、日本国債暴落のリスクが語られることが多くなった気がします。そもそも長期金利がどのくらい上昇すれば、「暴落」なのでしょか。またどんな状況において、「暴落」が起こると考えられるのでしょうか。
「国債金利が2〜3%になれば「暴落」とも…」
「暴落」という言葉は、経済学の学術用語ではありませんから、何%下落したら「暴落」と呼ぶかは、報じ方や認識次第といったところがありますが、国債金利(流通利回り)が現状の金利水準から2〜3%以上に急上昇するような状況であれば、ひょっとすると「暴落」とも言えるかもしれません。
釈迦に説法ですが、利回りの計算式は、{表面利率+(額面‐取引価格)÷残存年数}÷取引価格×100です。これに基づけば、直近の10年利付国債(10月4日入札)では、表面利率が0.8%、額面100円では発行価格が100円30銭ですから、応募者利回りは0.767%です。
さて、この10年利付国債が1年後に、その時点での国債金利が2%になったのに連動して、流通価格が変動したとします。このとき、流通利回りが2%になるような取引価格(時価)は、残存年数は9年ですから、先の計算式を用いれば、90円84銭です。このとき、100円30銭で購入した新発10年利付国債が1年後には9.4%下落することになります。同様に計算すれば、その時点で国債金利が3%になれば、取引価格は84.40円となり下落率は15.8%、国債金利が4%になれば、取引価格は78.82円となり下落率は21.4%、となります。
国債金利が2〜3%となるのは、異常な状態とは言えません。国債金利が2〜3%になったからといって日本の財政が破綻すると誰も言わないでしょう。しかし、国債価格の変動を見ると、現状の金利水準からみれば、2〜3%になったとしても10%を超える下落率になります。
したがって、国債価格の下落で怖いところは、平時では当たり前のような金利水準である2〜3%という水準に国債金利が変動したとしても、それだけで日本の財政は大混乱という話ではないにもかかわらず、国債保有者に与える影響は大きいものがある、ということです。現状が、目下史上最低ともいうべき国債金利の水準(すなわち史上最高ともいうべき国債価格)である、という認識をしっかりと持つことが重要だと言えます。
(2)社会人の雑学 |●6372部発行
疑問No.994 ピアノの鍵盤の数はどうして、88鍵のものが多いの?
アンギラスさんから●─────────────────────
標準的な88鍵のピアノの、いちばん低い音はA(27.5Hz)で、いちばん高い音はC(4186Hz)です。低い方はAより低いと聞き取れないし、高い方はCより高いとキンキンして聞いていて不快で音楽的に美しくない!また、この音域があれば、オーケストラの最低音の出るコントラファゴットより低音が出せ、高音を担当するピッコロよりも高音を出せ、すべての楽器の音域をカバーできます。
このような理由で音域が設定されたのだと思います。
それに、100鍵以上あったら端から端まで移動するのが大変です(笑)。
余談ですが、ピアノの正式(?)名称は、「グラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」と言い、ピアノ(弱音)からフォルテ(大きな音)まで出せる大型のチェンバロという意味です。
音楽用語の「ピアノ(弱音)」の方が先だったんですね。
───●moon-jellyさんから●─────────────────────
この質問にはピアノ調律師である私が答えなくてはいけませんね。
モーツアルトの頃のピアノは57鍵でした。
ベートーベンの頃に、61鍵→65鍵→68鍵→78鍵に増えます。ピアノの鉄骨(鋳物)の技術が発達し、より強い張力に耐えられるようになったこととベートーベンがこの広がった音域を使って作曲した結果でしょう。
ショパンの頃に81鍵まで増えましたが、ショパンは当時普及していた78鍵を超える曲を作曲していません。
その後ピアノは高度な技術に対応するため、アクション(内部構造)も改良され、大ホールに対応できる音量を求められ、現在の88鍵が一般的になっていきました。
鍵盤の数が増えると使用出来る音域が広がるだけではなく「倍音」が増えるので、豊かな音色/大きな音量、になります。ラヴェルの『水の戯れ』では、88鍵全部が使用されています。
ちなみに、ベーゼンドルファーの最上級のグランドピアノ「インペリアル」は97鍵です。最低音の「ラ」の下に9個増やして「ド」まであり、完全な6オクターブになっています。
88鍵に慣れているピアニストがミスタッチをしないように昔は蓋が付いていましたが、現在では蓋が無くなり、代わりに白鍵が黒く塗られています。
バルトークのピアノ協奏曲第二番は、この「インペリアル」の使用を前提として作曲され、88鍵を超える低音が使われています。
ベーゼンドルファーの88鍵最高機種であるモデル280は、19,950,000円ですが、97鍵のモデル290インペリアルは、21,000,000円です。鍵盤9個で、1,050,000円の違いがあります。
簡単にいうと、曲の使用音域/音色/音量/価格、などから88鍵に落ち着いたというのが答えでしょうか?
ピアノは音が高くなるにつれて弦長が短くなるので音が小さくなります。そのため最高音から十数個の弦には音を止める装置(ダンパー)が付いていません。普通は押さえた鍵盤から指を離せば音は止まりますが、最高音部は止まりません。そうやって少しでも響きを増やして弱点をカバーしています。
88鍵より上の音を増やせばもっと音が小さくなり、そのため音程の判断も難しくなります。