個人別に出題する。 手順
「モモ」を読んでミヒャエル・エンデの「モモ」は、ヨーロッパにおける「近代とは何か」という問いを子供の言葉で書き、話題を呼んだ。
モモの物語を成り立たせているヨ−ロッパ文化の根本にはキリスト教の歴史がある。
長く人力と家畜によるヨ−ロッパ域内の農業によって生活していた人々は、15世紀以降の大航海時代と呼ばれる頃から、
航海技術の発展とともに活動の「空間」を拡大していった。
ヨ−ロッパにおける農業基盤の一つは牧畜業であり、
「キリスト教徒である、選ばれた人間が額に汗をして働かなくても、羊が草を食べて増えれば良い。」
という考え方は、その後「神の国を広げる」という理想の元、
大規模土地所有と、家畜或いはキリスト教徒以外の人間のエネルギーを、キリスト教徒のものとして利用するという形での、
植民地の時代を造り出した。
19世紀に入り、それまで暖房用の熱源に過ぎなかった石炭を、動力に利用することが考え出されると、
時間を「神の時間」から「人間の時間」に、という挑戦が始められた。
動物エネルギーの利用によって、速度に限りのある馬車は汽車に変わり、
それまで「風を読み、神に祈って」戦われていた、大西洋横断航海のスピ−ド記録は、機械技術の進歩によって果てし無く短縮され始めた。
かっては馬の速度で運ばれていた手紙は現在、電話と電子メ−ルによって世界中が「同時」という情報化時代を迎えている。
例えば自動車を例に揚げても、技術によって手に入れた快適さの反面、
人間の自分勝手さによって問題をひき起こしている例を思い浮かべることが出来よう。
短い時間で遠回りをする、坂を楽に登る、という快適さを実現するために開発された自動車であるが、
その自動車が増えた結果、歩行者の方が遠回りをし、階段を昇り降りする地下道・歩道橋を使わなくてはならなっている。
同じ人間の身勝手さが核エネルギーのあやまった使い道に走ればどうなるかもまた、現在の世界を覆う危惧である。
化石エネルギー・核エネルギ−の利用に先んじた西欧の文明と、我が国の伝統的な産業のあり方とは対照的なものであった。
明治以降の日本では急速に産業の近代化が達成されたが、それを支えたものに、それまで我が国で大切にされて来た、
勤勉さと職人の「手力」への信頼が大きな力となっている。西欧文明の近代が、人間以外のエネルギーに依存していたのと対照的に、
我が国では「自分の手の力」で近代化を成し遂げた、という点が揚げられよう。 さて21世紀の我が国では、「モモ」が批判してみせた様な「近代」的な時間が流れるのであろうか、 あるいは「モモ」が立つ様な、西欧の脱近代的な時間が流れるのであろうか、それとも西欧文明に流れて来た、 あるいはこれから流れるであろう時間とは、別の時間が流れるのであろうか、考察を含め4000字程度にまとめよ。用紙は自由とする。 環境デザイン論後期課題ブックリスト 出放題 |