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報告者  土 井
 2008年10月2日(木)布袋北学習等供用施設にて社楽の会を開催しました。参加者(勤務校)を紹介しましす。
参加者は,土井(岩南中)、野口先生(城東中)、稲山先生(江西中)、鈴木先生(楽田小)、大野先生、高木先生(犬山中)、奥村先生(岩倉南小)、大島先生、森本先生(古知野中)、坪内先生(岩倉中)、天野先生(大口町教委)、高橋先生(曽野小)、早川先生(江南北中)の計13名でした。

土井が紹介したものの目次です。番号をクリックしてください。

  社楽版社会科用語集H20
 工場見学
  麻生太郎ってどんな人? 塩谷 立ってどんな人?
  首相所信表明演説
  役立ちWeb特集  
  教育関連情報    
  MM紹介

 社楽版社会科用語集H20
 ただ今改訂中の自分専用の用語集です。何かの時にはすぐ取り出せるようにしておきます。
 
 
 工場見学
 校長日記より紹介します。
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  月曜日の代休を利用して、岩倉市内にある工場を見学してきました。代休は、平日に工場を見ることができる絶好のチャンスなので、事前に予約をしておきました。
 上の写真は、北島町にある大原硝子店です。家庭や事業者から回収されたガラスビンを選別して細かく砕いて、カレット(右下)とよばれる再生原料までを作るのがこの工場の役目です。ここのカレットの7割は、石塚硝子で再生ビンに生まれ変わります。
 始めに色別に手で選別をします。その後粉砕し、ラベルをはがしゴミを選別します。その後、何段階もの工程を経て不純物を取り除き、最後は画像処理精製機(左下)で違う色のガラスも取り除きます。
 ガラスには、大きく分けて透明、茶色、緑色の3種類あり、その他、青や黒のビンがありますね。
 ここで問題です。いろいろな色のガラスを混ぜると何色になるでしょうか?
 何と透明に近づいていくそうです。光の三原色を混ぜると白になりますよね。それと同じ原理です。
 2軒目は、野寄町にあるミヨシ油脂(左上)を見学しました。以前は食品も作っていましたが、今では、私たちが直接目にするものは作っていません。排水や煙、土壌などの中の有害物質を固定化する、「環境産業製品」が主力です。また、ティッシュペーパーを柔らかくする柔軟剤など、他品種少量生産しています。需要のあるものを探して、次々に開発していかなければならない企業の研究開発の厳しさを見ることができました。
 3軒目は、北島町にある五条川右岸浄化センターです。一宮、犬山、江南、岩倉、大口、扶桑の4市2町の下水道の処理を担当します。ちなみに岩倉市は、五条川から西側のみで、南部中学校のような東側は岩倉団地の東にある五条川左岸浄化センターで処理しています。計画処理能力は15万立方m/日で、現在は2.1万立方m/日の能力があります。
 説明を聞いた後、実際に汚泥沈殿池、バクテリアに食べてもらう反応槽、最終沈殿池などを見学し、顕微鏡でバクテリアの様子も見せていただきました。 
私たちの生活になくてはならないものばかり。知らないところで、多くの人の働きがあって私たちのくらしが支えられていることを改めて感じた1日でした。
 お世話になりました。
  出典 http://www.schoolweb.ne.jp/weblog/index.php?id=2320030  9月24日の校長日記です
 麻生太郎ってどんな人? 塩谷 立ってどんな人?
麻生太郎
 第23代新総裁  第92代内閣総理大臣(内定)
 父は麻生セメント株式会社の社長を務めた麻生太賀吉。母は吉田茂元首相の娘である和子
妹はェ仁親王妃 信子。母方の母は、牧野伸顕(大久保利通の三男)の娘である雪子。系図には、岸信介や佐藤栄作、鈴木善幸、三島 通庸、武見太郎もあり、歴史上の人物がごろごろ出てくる。
 麻生派は宏池会から別れた河野派が前身で、現在は麻生太郎が会長を務めている。本人のカリスマ性で小派閥ながら小泉・安倍両政権では大きな位置を占めていたが、07年の総裁選で敗北してからは、福田政権に距離を置き、非主流派的な存在になっていた。勢力は20(衆院16、参院4)。小派閥だが、無派閥議員や他派閥議員にも「隠れ麻生派」がいるとみられる。
 モントリオールオリンピッククレー射撃・スキート日本代表(41位)。元麻生セメント代表取締役社長。
 自身が神道ではなくクリスチャンということもあり、靖国神社の非宗教法人化を提唱している。
 読書が趣味。特に漫画好きであり、一部からは漫画文化のよき理解者として非常に人気が高い。
オフィシャルサイト http://www.aso-taro.jp/diary/index.html
塩谷 立   1950年生まれ
  1972年 5月 米国アンバサダーカレッジ卒業
  1974年 3月 慶応義塾大学法学部政治学科卒業
  1978年10月 財団法人国際青少年研修協会設立
  1990年 2月 衆議院選挙初当選
  文部科学委員会筆頭理事 、文部科学副大臣などを歴任。
 ブログを開設している
  塩谷立の21世紀雑談 http://blogs.yahoo.co.jp/shionoya_ryu  
 
 
 

 首相所信表明演説
 毎回恒例の所信表明演説・教育編です。麻生首相はたったの2行です。
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 学校への信頼が揺らいでいます。教育に不安が生じています。子どもを通わせる学校を信頼できるようにしなければなりません。保護者が納得するに足る、質の高い教育を実現します。
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《参考》福田元首相の所信表明演説(子育てを支える社会の実現)
 教育は、家庭にとって極めて関心の高い問題です。学校のみならず、家庭、地域、行政が一体となって、教育の再生に取り組んでまいります。
 信頼できる公教育を確立することが、まず必要です。授業時間の増加や教科書の充実などにより、子どもたちの学力を高めるとともに、体験活動や徳育にも力を入れ、自立と思いやりの精神を養います。先生が子どもたちと十分に向き合える時間を増やすとともに、メリハリのある教員給与体系の実現に取り組みます。
 女性も男性もすべての個人が、喜びや責任を分かち合い、個性や能力を発揮できる「男女共同参画社会」の実現に向け、取り組みます。十分な育児休業を取り、その後も仕事を継続できるようにするなど、安心して子どもを産み育てることのできる環境を整備します。長時間労働の是正に取り組むなど、社会全体で働き方の改革を進め、仕事と家庭生活の調和を推進します。
 
《参考》安部元首相の所信表明演説(教育再生を具体化する)
 良質で負担の少ない公教育があってこそ、子どもたちみんなが、明日へのチャンスをつかむことができます。改正教育基本法、教育再生三法の成立を受けて、いよいよ具体的に、高い学力と規範意識を身につけるための改革にのり出します。
 授業時間を増やし、教科書を充実し、全国学力テストを有効に活用して、きめ細かに学力の底上げを行います。体験活動や徳育にも力を入れます。良き教師を確保するため、メリハリのある教員給与体系を実現するとともに、教員免許更新制の円滑な実施に取り組みます。事務負担を減らすことなどにより、先生が子どもたちと十分に向き合える時間を増やします。保護者のご心配やご意見に対し、専門家も参加して対応する仕組みを整えます。
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 過去の内容と比べても、今回の演説は異例中の異例であることがわかります。

 役立ちWeb特集 
(1)西暦、元号、天皇 対照表  http://www.nnc.or.jp/~a-si/gen-700.html 
 
(2)携帯電話からテレビに、写真とコメントをメール送信
 携帯電話のメール機能を使って写真とコメントをテレビに送ることができるサービスがスタート。携帯電話で撮影した日常生活の一コマや旅先の景色を、撮ったその場で、自宅や離れて住む家族のテレビに気軽に送れるようになる。
 
(3)マウスさばきを判定・器用さチェッカー
 マウスさばきから手の器用さを判定するフリーソフトが登場。白いキャンバス画面にフリーハンドで極力まんまるな円を描くようにすると、それが真円にどれだけ近いかを採点し、コメントしてくれる。
 
(4)地球温暖化の基礎知識
 最新の科学的知見をまとめた、国際組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告書および気象庁による異常気象レポート2005などをもとに、地球温暖化のメカニズム・実態・予測についてわかりやすく解説。   http://www.mri-jma.go.jp/Dep/cl/cl4/ondanka/cover.html 
 
(5)携帯電話に『雨雲アラート』
 事前に設定したエリア付近で雨雲が発生したときに、メールで知らせるサービスがスタート。設定エリアは全国任意で3エリアまで登録でき、自宅や学校、会社や屋外の作業現場、旅行や出かけ先等、様々な行動パターンに応じて設定できる。
 
 
6  教育関連情報
(1)東京都江東区は、区内全域から希望校を選択できる「学校選択制度」を一部見直し、来年度から小学校については、住所で決まる通学区域の学校への入学を原則とすることにした。選択制で地域と子供たちのかかわりが薄れてきたとの住民の指摘を受けた措置で、選択制度が全国に広がる中、議論を呼びそうだ。   毎日jp9月26日より
☆★☆ コメント ☆★☆
 「学校選択制度」は、人口密度が高く、交通の便がよい都会の話で、日本の大多数の地域では縁のない話である。「選択制で地域と子どもたちのかかわりが薄れ」るのは初めからわかりきった話である。公立学校が「競争」することが大切なのか、地域の中で育つことが大切なのか、どちらをとるかの問題である。よくわかっている人は後者を選ぶであろう。
 

 
 MM紹介
(1)教育情報 Magazine/ある小学校教師の独り言
  「第50回 指導と評価大学講座」 最終回 
  「PISA型学力と評価のあり方」          北尾倫彦先生(大阪教育大学名誉教授)
1 PISA調査のねらい
(1)「学習内容の習得状況調査」ではなく「将来の課題に対処する能力のアセスメント」
  ・ 2000年から3年に1回実施→将来を予測するテスト(習熟度調査ではない)
  ・ PISAのリーディングリテラシー(読解力)は「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発   達させ,効果的に社会に参加するために書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」
  ・ 注目されるのは→社会の激しい変化を見通した学習内容の習得を目指しているため。
(2)知識基盤型社会における鍵となる能力(キー・コンピテンシー)
  ・ 知識
    ア.道具(言語,情報,テクノロジー等)を相互作用的に活用する能力
    イ.異質な集団で交流する能力(コミュニケーション能力)
    ウ.自立的に活動できる能力
  ・ 領域カテゴリー
    ア.読解力 イ.数学的リテラシー ウ.科学的リテラシー エ.問題解決能力
  ・ これらがテストの内容となっている。
(3)グローバル化による学力の「国際標準」の必要性 → グローバルスタンダードになりつつある。
  ・ 参加国数…2000年:32カ国  2003年:41カ国  2006年:57カ国
  ・ 順位よりも学力の質的特徴を把握する。
  ・ 世界各国と比べて未熟な面を知る。 
2 言語活動に関するPISA型学力
(1)幅広い解釈力を育てる指導と評価
  ・ PISAにおける読解のプロセス
    ア.情報の取り出し(テキストの情報を正しく取り出す)
    イ.解釈(情報の意味を理解し,推論する)
    ウ.熟考・評価(情報を自分の知識や考え,経験に関連づける)
  ・ 日本はイ.解釈が苦手
  ・ 読解力の問題とは言いながら「思考力(読み取って推測して答える)」を試される問題
  ・ 新指導要領での対応 → 国語を中心とした各教科における言語力の育成
  ・ 今後の改善点
    1) 幅広い情報提供(長い文章,型破りの材料,非連続制テキスト)
    2) 書き手の意図や矛盾点,対立点を見抜く力を試す。
(2)表現力や批判力を育てる指導と評価
  ・ PISA調査において,自由記述式問題で白紙回答が多かったという事実
  ・ その中にはウ.熟考・評価プロセスを試す問題が多い。
  ・ 新学習指導要領での対応 →言語活動(発表,討論など)の充実(欧米での言語技術教育の参照)
  ・ 今後の改善点
    1) 読み取ったことを自分の知識・考え・経験に関連づけて表現させるテスト問題
    2) 情報を吟味・批判し,自分の意見,考えを問うテスト問題
    3) 自由記述式テスト,論文,レポート,ワークシート,発表,討論の活用と採点基準の厳格化
   〈採点基準〉読み取ったことや事実に基づいた意見や主張/紋切り型や拾い読みではなく,自分なりの表現/論旨の明確さ/重点の強調や言い換えによる説得力のある表現/多角的な見方や批判力 など。
  ・ 評価の基準(採点基準)が指導の目的となる。
3 主として問題解決に関するPISA型学力
(1)現実の領域横断的解決能力を育てる指導と評価
  ・ PISAの問題解決能力
    問題解決の道筋が,瞬時には明らかでなく,応用可能と思われるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学,科学または読解のうちの単一の領域だけには存在していない,現実の領域横断的な状況に直面した場合に,認知プロセスを用いて問題に対処し,解決することができる能力 
  ・ PISA調査で結果がよくなかった事例
    ア「図書館の問題」…貸し出しのルールをフローチャート図にする。→システム解析・設計
    イ「用水路の問題」…水が流れなくなった。どこをどうチェックするか。→トラブル解決
  ・ いずれも論理的思考力を試す問題。知識よりも認知プロセス
  ・ 新学習指導要領での対応 → 総合的な学習の時間の再検討
(2)現実的問題を視野に入れた化学知・学問知を育てる指導と評価
  ・ PISAの科学的リテラシーをみる問題でよくなかった事例
    ア.「クローニングの問題」…羊のクローンに関する非常に長い文を読み,「小さな切片とは何か」という問いに答える。長文の隅から隅まで読まないと回答できない。
    イ.「温室効果の問題」…数多くのグラフや表,文を読み取り,「二酸化炭素が原因であることを確かめる前にやっておくべきことは何か」という問いに答える。批判的な考えを問う。
  ・ 対策
    1) 活用を視野に入れた問題提起と発問
    2) 核概念や考え方の深化を促し,深化度を厳しく評価する。
    3) 科学・学問の探究を促し,探究の深さと広がりを評価する。
  ・ 新学習指導要領での対応 → 習得型と探究型をつなぐ活用型の授業
                  科学知・学問知の深化と現実問題の視野拡大
4 達成状況に応じた指導と評価 …「求同」と「求異」
(1)学力低位層には基礎・基本の徹底と厳しい評価
  ・ PISA調査における学力低位層の多さ…フィンランド4〜6%・日本12〜18%
  ・ 基礎基本の達成状況を厳しく評価し,未達成者の補充課題学習 → 「求同」
  ・ 求同…画一的に集団目標準拠評価。全員が同じ目標に向かって。  
(2)学力中位層には基本の深化をはかる指導と深まりの厳しい評価
  ・ 深化度の指標…学問的文脈の把握と知識の関連づけ/現実文脈の把握と活用力/他者への説明力
  ・ 「思考力」「判断力」を厳しく評価し,その後,深化課題学習
(3)学力上位層には発展的な学力の形成と評価
  ・ 基礎基本の延長線上に位置づけた発展的学力の形成と評価
  ・ 個別化された目標…思考・判断・科学的思考力
  ・ 発展的学力の評価…集団目標準拠評価ではなく,個人目標準拠評価→「求異」
    目標の事前設定ではなく,事中・事後の設定/質的に卓越性に注目した横断的個
   人内評価
 
(2)知らなきゃ損する!面白法律講座    2008年 9月22日  第451号
□問題□
  隣の家の木が延びてきて、木の「根」と「枝」双方が境界線を越えてきました。困ったあなた自ら切り取ることができるのはどっち?   1. 木の「根」   2. 木の「枝」
□解答□
 1. 木の「根」
 民法233条2項は、隣地の竹木の「根」が境界線を越えてきたときは、それを自ら切り取ることができると規定しています。
 一方、竹木の「枝」が境界線を越えたときは、竹木の所有者に枝の切除を請求できるだけです(民法233条1項)。これは、竹木の景観等を重んじ、その所有者に植え替えの機会を与えるためと言われています。
 
(3) Japan On the Globe(565)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■
      The Globe Now: ロシアから日本を見れば
         私達が抱いている自画像とは、まったく異なる国の姿が見えてくる。
■1.「私たちには日本人の心が絶対理解できない」■
 ロシア在住の北野幸伯(よしのり)氏の近著『隷属国家日本の岐路』[1]の一節。氏が、ロシア政府の高官や大学教授たちと飲んでいると、必ず聞かれることがある、という。
  「私たちには日本人の心が絶対理解できない」
  「また来たか」と思いつつ、「なんですか?」と聞くと、日本人はアメリカが大好きだろう? それが私たちには理解しがたい。だって、アメリカは広島・長崎に原爆を落とし、人類史上最悪の大虐殺をした国じゃないか。なんで犠牲者のあんたたちが、アメリカを好きになれるんだ?
 こう言われてみると、この疑問はしごく合理的かつ常識的である。戦争中とは言え、一般市民への無差別虐殺という犯罪的性格においては、2001年のニューヨークで起きた同時テロと同じである。しかも、犠牲者数は、広島・長崎あわせて30万人とも言われ、ニューヨークの約3千人の100倍規模である。
 そんな日本人がアメリカを好きになるのは、アメリカ人がアルカイダを好きになるよりも、100倍も難しいはずだ。それなのに、なぜ日本人はアメリカが大好きになったのか?
 米国は日本占領中に大規模な宣伝工作、言論検閲を行って、すべては戦争を仕掛けた日本の責任という洗脳を行ったのだが、これに現在まで日本人は騙されてきたのである。[a]
 ロシアから見れば、こういう点が一目瞭然なのだろう。
■2.日本の「お人好し」ぶりは世界一■
 ちなみに、ロシア人は先の大戦におけるソ連の行動をどう見ているのか。北野氏が「ソ連は日ソ中立条約を破って攻めてきたではないか」といっても、謝る人はいない、という。
「あれは米英と同意の上での行動だ」とか「日本だって真珠湾に奇襲攻撃をした。ドイツも不可侵条約を破ってソ連を奇襲した」とかいわれ、軽くかわされます。
 北方領土についても、「あれは元々ロシアの領土だ」とか「そもそも固有の領土なんて存在しない。ある国の領土は戦争のたびに変わるものだ」とかいわれてしまいます。
 ただシベリア抑留に関しては、「あれはクレイジーなスターリンがしたことだから許してくれ」といわれたことはあります。[1,p235]
 いずれも反駁可能な主張であるが、唯一、北方領土に関して、「領土というのは戦争のたびに変わるものだ」というのは、リアリズムに立った説得性のある世界観ではある。しかし、これとても、北方領土は日本が降伏した後にソ連が攻め取った、という不法性を隠した勝手な言い分である。[b]
 要するにアメリカもロシアも、自国に都合のいい歴史だけを教えている。自国に都合の悪い歴史を教えているのは、「世界で唯一日本だけ」と知っておくことも大切です。  [1,p236]
 というのが、北野氏の結論である。言わば、日本の「お人好し」ぶりは世界一と言えるだろう。
■3.末期ガンに冒された王様を杖が支えている■
 現在の日本について、ロシア人はどう見ているのか[1,p236]。
 数年前、フラトコフを首相にするようプーチン大統領(当時)に進言した、ある有力者と会った時のこと。その人は、ロシアのトップが世界の構造をどう見ているか話してくれました。
 彼は、「世界の構造を一言でいえば、末期ガンに冒された王様を杖が支えている状態だ」といいました。・・・
「王様とは、覇権国家だが、世界一の債務国アメリカ。それを支えるのが日本の資金力」
 アメリカのトップは、たとえ、こんな見方をしていても、絶対に口外しない。したがって日本人がアメリカからの情報に頼っているだけでは、こういう「搾取構造」には気がつかない。
 その有力者は、王様(アメリカ)から杖(日本)を取れば、アメリカは破産し世界恐慌になるので、そんな事は望まないが、として、
「・・・しかし、私がいいたのは別のことだ。なぜ日本は、そんなパワーをもちながら、アメリカのいいなりになっているのか?」
 私は即答できませんでした。
 金を貸してやっている国が、なぜ借りている国のいいなりになるのか。これも他国民から見れば「絶対理解できない」日本のお人好しぶりの一つだろう。
■4.日本は世界で最も好かれている国の一つ■
 しかし、ロシア人が日本人を理解できないからと言って、日本人が嫌いなわけではない。逆である。
ロシア人は日本人が大好きなのです。また、同じ大学にいた東欧、アフガニスタン、ユーゴスラビア、カンボジアなどの学生も、日本に好意的。90年代のはじめ、中央アジアのキルギスやウズベキスタンを旅した時は、まさに神のような扱いを受けました。[1,p238]
「世界で日本を嫌っている国など、中国、韓国、北朝鮮くらいしかないのです」と北野氏は言う。筆者の海外体験でも、世界で嫌われているのは、逆に中国、韓国、北朝鮮の方である。
 それなのに、日本人は「自分たちは世界で嫌われ、孤立している」と信じて込んでいる。これも戦後、アメリカに植え付けられ、さらに近年は近隣諸国から植え付けられた自虐史観の結果だろう。
 私は長年人種のろつぼ・モスクワに住み、いろいろな国で様々な人に会い、日本は世界で最も好かれている国の一つであることを確信しています。
 北野氏は、この理由として以下の4点を挙げている。
    1)驚異的経済発展
    2)貧富の差が少ない
    3)日本人の謙虚さ、礼儀正しさ
    4)無条件の支援
■5.「どうすれば、日本のようになれるか教えて下さい」■
 最初の「驚異的経済発展」について、北野氏は次のような体験を語っている。[1,p239]
 キルギスに行った時、政府の高官から「日本人はキルギス人と同じような顔をしている。しかし、私たちの給料は日本の150分の1しかない。どうすれば、日本のようになれるか教えて下さい」といわれました。
 エジプトで会った若い現地人ガイドは、「日本人をはじめて見た」と喜び、そして「ドキュメンタリー番組で、日本の戦後復興を特集していたよ。エジプトは、僕が生まれた頃とちっとも変わらない。どうすれば日本のようになれるか、教えてくれないか?」と聞かれました。
 いきなり質問を受けた私は、とっさに「結局国が繁栄するかどうかは、国民一人一人の意識にかかっているんだ」と答えます。自分自身「つきなみな回答」と思いましたが、彼は目をウルウルさせてうなずいていました。
 現代世界は人種差別は少なくなったとは言え、まだまだ「白人の支配する世界」である。その中で世界有数の経済大国になった日本は、有色人種にとって、自分たちも努力すれば日本のようになれる、という「希望の星」なのである。
「共産主義の理想は、日本で実現した」■
 第2は「貧富の格差が少ない」と言う点。
 ソ連をはじめとする共産主義国は、「国民全員が平等に豊かになること」を目指しました。
 そして、日本のことに詳しい研究者は、GDP世界2位であること以上に中流階級に属すると考えている」という意識調査に感動したのです。
「共産主義の理想は、ソ連で実現しなかったが、日本で実現した」というわけです。[1,p240]
 しかし、最近はアメリカ流の市場万能主義が世界で広がり、日本でも貧富の差が広がってきている。
 世界から尊敬されるためには、豊かで、なおかつ貧富の差が小さいことも条件であることを知っておきましょう。事実、「貧富の差の少ない北欧に学ぼう」という意見も出てきています。
 最近、あるロシア人研究者(女性)が、「日本は理想の国だったのに、最近は貧富の差が開いてダメね。ロシアは目標とする国を失ったわ」と嘆いていました。
 近年の「格差社会」論は、小泉改革を批判するが為の左翼の宣伝工作の賜物でもあり、世界的に見れば、日本はまだまだ格差の少ない平等社会である[c]。この国民の平等をいかに維持・強化していくか、国家としてのビジョンが必要である。
■7.「あなたたちを見て発展するのが当たり前だとわかったわ」■
 第3に「日本人の謙虚さ、礼儀正しさ」。北野氏の知り合いのロシア人女性は、日本人男性と結婚してその後、別れたが、後悔するどころか、「次も絶対に日本人と結婚する」と断言。
  北野氏がその理由を聞くと:
 日本人は謙虚でいい。レストランで会社員が何人か座っていても、誰が社長か部長か見分けがつかない。ロシア人は金ができて地位が高くなると、傲慢になっていばり散らすから、すぐに誰が社長かわかる。それでロシア人は金と地位ができると、傲慢になって女を物のように扱うようになるのよ。[1,p241]
 北野氏がモスクワ国際関係大学に在学中、通訳のバイトで中央アジアに行った時、一人のウズベキスタン女性はこう語った。
 あなたたちは、言葉がきれいだ。一緒に仕事をしている間、一度も汚い言葉を使わなかった。それと、相手の地位にかかわらず全ての人にやさしい。日本のことは、遠い国でお金持ちの国だと聞いていたけど、あなたたちを見て発展するのが当たり前だとわかったわ。[1,p241]
「驚異的な経済発展」も「貧富の格差が少ない」も、こうした 謙虚さ、やさしさの賜物だろう。
■8.「日本はナスタヤッシー・ドゥルック(真の友)だ」■
 第4に「無条件の支援」。ソ連崩壊後、日本もアメリカも旧社会主義国を支援してきたが、あるロシア科学アカデミーの教授は北野氏にこう語った。
「アメリカは、金を貸すときに本当に細かい条件を出す。政府がこれこれの改革を実行すれば金をやるという具合にね。」・・・
 私は、同じような話を世界のあちこちで聞きました。何はともあれ、アメリカは支援するにあたって、自国の改革案を高圧的に押し付け、他国民のプライドを傷つけているようです。
 教授は、「そういう意味で日本はナスタヤッシー・ドゥルック(真の友)だ」といっていました。つまり、日本は金を貸す際、借りる側のプライドを傷つけないということです。[1,p243]
 これも、日本人の謙虚さ、思いやり深さのあらわれだろう。
■9.「私たちは日本人、今のままでいい」■
 ロシアから日本を見れば、謙虚さ、思いやりの深さから、世界有数の経済大国を築き、しかも国民の多くがそれを享受している平等の国、さらにその富で他国を支援している「真の友」という姿が浮かび上がってくる。しかし、その無類のお人好しぶりから、自分の力に気がつかず、それを発揮できないでいる。
 こうした経験から、北野氏は「日本人は日本人のままでいい」と主張する。二流のアメリカ人などになる必要はない。中国におべっかを使う必要もない。北野氏は言う。
 国家も個人と同じく、金銭面(経済)では、上がり下がりがあります。苦境に陥ったとき力を与えてくれるのは、外国ではありません。それは私たちの歴史であり、私たちの文化。
「私たちの先祖は、蒙古が来襲しても、黒船が来ても大丈夫だった。戦争に敗れても立ち直ってきた。今回も私たちには、乗り切る力がある」と確信すること。
「私たちは日本人、今のままでいい」と考え、ご先祖様に感謝しつつ、「力を貸してください」とお願いしてみましょう。
 力がみなぎってくるのを感じませんか?
 こうした姿勢から、北野氏は政治、外交、経済、教育など各分野において日本が目指すべき道を説いている。この点が、また多くの評論家諸氏とは違う魅力の一つである。   (文責:伊勢雅臣)
☆★☆ コメント ☆★☆
 日本人として勇気の出るような話である。もう少し深く調べてみたくなってきた。


  問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp