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When I'm sixty-four
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中庭のある家、というと江戸・京都などに見られる坪庭であるとか、街道筋の町家であるとか、ローマ時代に始まるヨーロッパの集合住宅であるとか、高密度住宅地に見られる究極の都市住宅といわれています。

この場合はしかし、周辺に隣家が立ち並んでいる訳でもありませんが、中庭を持つ平面を採りました。キッカケは南側道路の向いに3階建ての高齢者福祉施設があり、冬に敷地の南半分には陽がささない、ということでありましたが、ならばいっその事、陽のささない部分に共稼ぎでどうせ帰って寝るだけ、という娘夫婦の家を建てて、中庭を作ってしまえ、というわけです。「上から見下ろされる家」というのは極めて都市的な条件なのですが,これからの近郊住宅ではこうしたこともあるのですね。



伝統的な「外に開いた家」でなく、「中庭に開いた家」を考えて見ると、これがなかなか快適そうです。家族が経済単位で、村中が「家族のようなもの」だった農業中心の時代の住宅では、誰もが気兼ねなく上がり込んで家中見渡せてしまうような作りが一般的だったでしょうが、近代的なけじめのある近所付き合いの為には昔のような開放的な家は、だらしなくなる危険性を持っています。外と中を区切り、かつ2世帯でのだんらん、と考えると中庭はなかなか優れた仕掛けとなります。

伝統的な屋敷構えでは建物だけでなく、農業用の付属建物、長家門、埴栽などが「家格」をつくり出し、歳月を掛けて近所とのおつきあいを形作りました。今回のように田んぼを埋め立てて、となるとなかなか難しいものがあります。丸裸の敷地に分譲地に建つような玄関に鍵の掛った建物、というのも良く見かけます。

将来的に駐車場部分に増築をすれば、昔でいう「長家門」の配置になります。

「農村」であった頃に培われた優れた環境を活かしながら、現代人の生活に適した近代的なすまい、というのが増えれば浜松市周辺の近郊集落は住むのに理想的な場所となるはずです。

この集落でも将来的に「農地」をどうするのか、地元の人で考えてみてはどうか、という働きかけが行政からされている様です。我国の食料自給率をどうするか、という大きな課題もありますし、何より現在の優れた環境は農業あってのもの、と考えると、工夫が必要なところでしょう。