Seoul090719
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瘴癘の地
人外魔境
持家持車
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持家持車

月曜日の朝7時半。ところは城東区紫陽洞付近です。この辺りに住む「人外ども」いや失礼、ちゃんと「人間の証明」である3ナンバーの高級車をお持ちであろう、勤労者の方々が、地下鉄江辺駅へ向っております。イナカモンと違って、都の人は自家用車通勤なんかしないのであります。

周辺の住宅地を見物に出かけよう。このあたり集合住宅が主体なんでありましょうか。日本の感覚からすると持家なのか、賃貸なのか、判然としませんが、これって韓国の不動産所有形態である「チョンセ」というやつでありましょうか。「現代」と書いてあるのはイミョンバク大統領が会長をやっていたと言う、私企業の私物であって、勤労者は大家さんに住宅価格の50%程を保証金として預けて、アパートに住まわせてもらっているのであります。その代わり家賃はありません。









下は戸建てっぽい感じであります。しかしガスメーターを見ると集合住宅っぽい感じもします。よく解らん。鉄骨の屋外階段がついているのは、庭の代わりに屋上を使う、という昔ながらの都風でしょう。





「人間の証明」である3ナンバーの高級車を持たない、アパート住まいの「人外」どもと違い、やたらに力の入った建物もあります。娘に「おピアノ」を習わせるのも、「人間の証明」でアリマス。





なんとなく「懐かしさ」を感じさせる下町の風景です。しかし何も竹ボーキまでビニールにしちまうことは無かろうと思うのですが。





路地を覗いてみると、結構リキの入った門構えもあります。ちょっと気をつけて頂きたいのは、路地の巾と車の停め方です。





少し広い道だと、一階を店舗に使う店舗併用住宅の様なものも見られますが、店先に停まっているのはおお客さんの車、というより、2階の住人のもの、という趣でもあります。ソウル市でも「駐車場整備地区」などという制度を作ったりしている様ですが、道遠しではないでしょうか。感動的だったのは右下の写真。どうやって車を出し入れするのか、「外人」にはとんと見当がつきません。





20世紀以降、世界の都市は「自家用車に取り殺され。つつあるのですが、ソウルもその例に漏れません。日本でも昭和40年代に開発された郊外型住宅地が、自家用車に取り殺されつつあります。当時の日本での自家用車は通勤手段でなく、家長が運転して休日に一家でドライブに出掛ける手段でした。しかし今では自動車通勤出来なければ、収入の道はなく、郊外型住宅地での自家用車台数は成人家族数と同じです。その駐車場の為に郊外型住宅地は急速に変貌しつつあります。

ソウルの下町ではまさかに、自家用車台数は成人家族数と同じは無いでしょうが、私から見ると異常な路上駐車風景です。漢南のまちなみが自家用車を前提とした「人外魔境」であることとも関連しているのでしょうか。これまで韓国経済を牽引して来たのは日本同様、業績が上がらなければ、社長は馘首という、資本主義的営利法人であるよりも、同族経営の私企業という側面が強かった様です。ソウルの下町でもそうした家族経営による生計が多いのではないでしょうか。3ナンバーの自家用車が「社長様の証明」であれば、異様な駐車風景もそれなりの存在理由があることになります。

しかし経済の資本主義化が進めば、家族経営の崩壊と労働の個人化も進むはずです。ソウルの下町はともかく、郊外型住宅地では自家用車台数は成人家族数という時代が来てもおかしくありません。駐車台数が現在の数倍となった時、韓国の住宅地はどうなるのでしょう。日本の住宅地はこれまで、耐用年限の比較的短い木造住宅を主体として来た為、そうした社会経済的変化に対応して、建替えることが出来てきました。マクロにみればそうした柔軟性が、日本経済の強さにもなっていたはずです。

韓国では伝統文化、あるいは住宅建設資金制度の違いも有ってか、遥かに初期投資の大きな、長期にわたる使用を前提とした建物が、住宅の主体となっています。路上駐車風景から見る限り、経済構造の変化に対応して、これを建替えるのは日本よりも困難である様見えます。



かって上田篤さんが「京都のまちには坪車が似合う。」と言われた通り、現在世界に横行する自家用車文明は、米国に於ける「幌馬車」の名残を引きずっている様にも見えます。軽自動車に見る様に、日本の伝統からすれば別のあり方も考えられます。米国の住宅地の道路は、訪問者が住宅の前に、幌馬車を止められることを前提に、作られている様です。

これに対して19世紀末の英国で、鉄道駅周辺に開発された住宅地は、乗り合い馬車から鉄道へ、というまちなみであり、その後の自家用車の路上駐車に、ソウル同様喘いでいます。

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