ブリスベン見てある記−大口町中学生海外派遣 私的随行記− bT    

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8月21日(木)
 この日は、学校から離れてノースパイン・カントリーを訪問した。ここは、コアラ保護を目的とした州立の自然公園で、広大な敷地がある。説明してくれたビル、ワーホリできていた栃木出身の女性もボランティアだ。
 ここではローン・パインコアラ保護区のようにコアラを抱けるという動物園的発想ではなく、あくまでも自然のコアラを観察することを目的としている。実際に5頭ほどのコアラを確認することができた。施設全体で12頭しかコアラがいない中で、かなり成績がよいといえる。
 コアラは、話を聞けば聞くほど興味深い動物だ。1頭当たりの縄張りが広く、生息するためには広大なユーカリ林が必要である。
 コアラは、アボリジニー語で「水を飲まない」という意味。ユーカリの葉しか食べない。それですべての水分、エネルギーを得ている。
 しかし、どう見てもやせた土地に生えているユーカリの葉に栄養があるように思えない。おまけに葉には毒がある。2mの腸でゆっくりと消化し、なおかつ腸内のバクテリアで毒を分解してなんとか生きている。そのため、コアラは体力がない。体力の消耗を防ぐために、ほとんど寝て暮らしている。
 コアラの平均寿命は、動物園で15年、野生は10年もないそうだ。交通事故にあったりや犬に襲われたりで、野生の方が危険が多く、長く生きられない。
 コアラは有袋類。袋はカンガルーが上向きなのに、コアラは下向きだ。生まれた時はコインに入るほどの大きさで、中で乳を飲んで成長する。また、母親の糞を食べて、その中のバクテリアを体内に取り込むことで、ユーカリの葉を食べることができるようになる。
 足の指は4本、手が5本。足の指は、骨格は5本あるが、内2本はくるまれて、くっついてしまっている。
 コアラの数は大きく減少しているので、今後、保護を強化しなければならないという話だった。さっそくコアラ募金に募金をした。
 近くの動物園ではコアラを抱けるところもある。生徒の多くはそれを望んでいたかもしれない。しかし、それは本物ではない。この日の野生のコアラ探しの方がはるかに価値があると思う。

 次にアボリジニー文化の体験をした。

顔のペイント エミューダンス ディデュリドゥ アボリジニーアート かんなかけ

 はじめに顔のペイント。精霊が宿るまじないと言うことだった。
 続いてエミューダンス。はじめは照れていた生徒も、徐々に乗ってきた。アボリジニーの単純なリズムとかけ声は、もともと人間が本能的に持ってるものと近いものを感じる。
 ディデュリドゥ。前回の訪問では音が出なかったが、今回は音が出た。コツは、弱い息で、下唇をゆっくり振動させることがポイント。1本欲しくなってしまった。
 続いてアート。点描をやらせてもらえた。けっこうはまっている子がいた。
 ユーカリの木のかんな削りは表面を削るだけなら簡単だが、きれいに削るのは難しい。 続いてブーメラン。意外と簡単に戻ってくる。
 以上がアボリジニー文化の体験である。

 ただ、生徒にはアボリジニーの意味、歴史がわかっていないかもしれない。もともとの原住民であり自然と共に生きた豊かな文化を持っていること。かつて白人に迫害されて、少数民族としての差別も現実にあること。最近見直され国会議員も誕生していることなど・・・
 オーストラリアは、かつての白豪政策を転換し、多民族・多文化主義に路線を変更して成功した国である。それは、それまでのイギリス至上主義から環太平洋に目を向けた結果とも言える。経済的に、東アジアに大きく頼っているという事実から生まれた現実的な選択でもある。
 経済は国の方向性に関わる大問題である。
 アイヌのことを含めたアボリジニーの歴史、日本と豪州の関係など、日本での事前学習が必要だと痛感した。

 次のプログラムはユーカリの植樹。代表者が記念に1本植える、そんなイメージを持っていたが大間違い。50本以上の苗木を植える仕事を手伝った。ボランティアの手伝いである。確かに形だけの植樹よりよほど有益だ。 

 ワーホリは仕事を探すのが難しくなったようで、ボランティアの彼女はかつては小学校の日本語教師、その後、昼はボランティアをしながら夜は日本食レストランでバイトをしている。滞在は1年期限の8ヶ月目だそうが、ブリスベン以外はケアンズしか行ったことがないと言っていた。オーストラリアに1年もいてうらやましいと思うが、現実は生活するだけでも精一杯で、とても旅行に行っている余裕はないのが現実のようである。

 ノースパインの後は、地元のショッピングセンターでの買い物をした。単3のアルカリ乾電池4本入りを買ったら、約12ドル(約千円)。日本で売っている最も薄い「おりがみ」は8.99ドル(約800円)。とにかく、輸入品は高い。